# 第十一話 試し
洞窟甲虫は一匹だった。
俺は岩陰から様子を見る。
以前なら緊張していた。
見つかったらどうしよう。
勝てなかったらどうしよう。
そんなことばかり考えていた。
でも今は違う。
少しだけ余裕があった。
もちろん油断はしない。
ただ。
勝てるかもしれないと思える。
そのくらいには成長していた。
甲虫は発光茸を齧り始める。
相変わらず夢中だ。
(食うの好きだな、お前)
少し前の俺も同じようなものだけど。
俺はゆっくり近付く。
距離を詰める。
甲虫は気付かない。
あと少し。
届く。
その瞬間。
俺は飛び出した。
身体を広げる。
甲虫へ覆い被さる。
甲虫が暴れた。
脚を動かす。
触角を振る。
だが。
俺は身体の表面を硬くした。
ほんの少しだけ。
まだ未熟なそれでも効果はあった。
甲虫の脚が刺さりにくい。
削られにくい。
(おっ)
思ったよりいい。
そのまま包み込む。
押さえ込む。
暴れる。
押さえ込む。
やがて甲虫は動かなくなった。
勝ちだった。
俺はそのまま取り込む。
空腹が少し和らぐ。
最近気付いたことがある。
甲虫を食べた時の満足感。
発光茸だけ食べた時の満足感。
明らかに違う。
(肉の方が腹持ちいいんだな)
スライムなのに肉とか言っていいのか分からないけど。
取り込み終えた時だった。
洞窟甲虫
解析進行度:20%
頭の奥に情報が浮かぶ。
二十。
とうとうそこまで来た。
何が起きるのかは分からない。
だが。
十七から十八になった時より嬉しかった。
ゲームみたいだな。
そう思う。
もっとも。
ゲームなら死んでもやり直せるんだけど。
俺は少しだけ身体を震わせた。
笑ったつもりだった。
その時。
触角のような突起から振動が伝わる。
遠く。
かなり遠く。
小さな反応。
(ん?)
洞窟甲虫じゃない。
洞窟蜥蜴でもない。
跳ねる生き物でもない。
知らない反応だった。
しかも。
近付いてくる様子がない。
何かを引きずるような。
不思議な動き。
俺は少し迷う。
危険かもしれない。
でも。
興味もあった。
この洞窟にはまだ知らない生き物がいる。
それを知ることは。
生き残ることに繋がる。
俺は方向を確かめる。
そして。
初めて自分から探索するために動き出した。




