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キヘイジのこだわり
「『いちど』じゃねえだろ。 ヘイタだってずっといい子にして待ってんだ。 なのにまた、こんなとこにくるってのか?」
「ああ、だってよ、やりかけたままってのは、よくねえ。 それに、ひとりだけあたらしい『面』がもらえねえなんて、ひでえはなしになっちまうだろ?」
ヒコイチにいって、戸口にいる男にうなずきかける。
前から思っていたのだが、このキヘイジは、どうにもこだわるところが普通と違うようだ。
彫り物の腕がいいのに、彫り師になる気はないといい、みごとな仏像もつくれるほどの腕があるが、仏師にもなる気はないといいはって、彫り物が得意な大工をやっている。
棟梁に頼まれても、柱や欄間の持ち主がきにいらなければ、そこに彫りものはしないときている。
「・・・キヘイさんよ、あんた、ほんとうに自分からここに仕事に来たのかい?」
かどわかされたわけでなく?




