ハチ公像の屋根から、 美少女たちが待つ 真ん中めがけて、 人生最大の 顔面スライディング特攻を敢行
【ズガガガガガガアン!!!】
令和8年(2026年)8月15日、16:00。
昼間の狂騒が嘘のように静まり返った、
東京・渋谷スクランブル交差点の真上。
残照の下、俺は忠犬ハチ公像の屋根から、
かつてないほどの絶望感とともに見下ろしていた。
「おい……嘘だろ……。
なんで錦糸町から、夕方の渋谷の
真ん中にワープしてんだよ……!
しかもスクランブル交差点を一望できる
特等席じゃねえか!」
俺の手には、相変わらず
手から離れない
聖剣「ロッポンギ」が握られており、
口の中は
昼間に浴びたクレープの生クリームと、
消えないターメリックのスパイスが混ざり合って
最悪のハーモニーを奏でている。
「ふぅ……風が心地いいじゃない、バカ先輩」
涼やかな声とともに、
あの形状記憶ベッドが空を滑るように
降下してきた。
上に座るのは、もちろん
最強美少女・涼風アリス。
彼女はこの街に映える
生足の絶対領域を組み直し、
冷ややかな、しかしどこか満足げな
笑みを浮かべて俺を見つめている。
「昼間の竹下通りじゃ人目が多すぎて
みっちり精算できなかったからね。
この渋谷のスクランブルをバックに、
あんたの
『未読メッセージ』と『命令無視罪』の
裁判を再開するわよ」
「裁判じゃねえよ!
営業時間はとっくに終わってるだろ!
帰らせろ!」
俺が叫んだその瞬間、
渋谷の空を切り裂いて、
さらなる爆音が鳴り響いた。
【ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!】
「逃さぬと言ったはずですわ、
大天使様ぁーーーーッ!!!
さっきの借りは今日のうちに倍返しですわ!」
「ル、ルルターズ! お前らまで
渋谷に湧いて出てくんじゃねえ!」
スクランブル交差点のビルの屋上から、
ルガール帝国の王妃ルルターズ、
ジャスミン王女、そして聖女ラーダーが
光の粒子を引きながら舞い降りる。
さらに、109の屋根からは
ギャル剥き出しのガラシャムチョと、
黄金のサイバー曲刀を構えたラクシュミーが
華麗にダイブしてきた。
「渋谷なんて、アタシたちの
『終身雇用(正妻)』の誓いを立てるには
最高の舞台じゃない!」
「M&Aの買収交渉は
渋谷のほうがスムーズに進むのよ、
大天使様!」
「ちゅ!
月明かりの下で吸い尽くす不老不死のエキス、
最高に
ナイト・ストリーミング再生されますわーっ!」
「お前ら全員、頭のネジが
時空の彼方に飛んでいってやがる……!!
警察呼ぶぞ!
いや、もう渋谷署のパトカーがこっち向けて
赤色灯回してるからな!!
セキュリティアラートが
限界突破して大爆発寸前だわ!!」
俺が聖剣「ロッポンギ」を振り回して
絶叫した瞬間、
頭上の時空の亀裂から再びあの黒幕――
いや、もう名前はどうでもいい
ジジイの笑い声が響いた。
「わはははは! 8月16日、
渋谷のスクランブル交差点こそ、
愛のエネルギーが収束する
究極のシンギュラリティ地点じゃ!」
「お前は黙ってろボケ老人!!!
くらえ、
俺のヤケクソ・ナイト・アタック!!」
俺はハチ公像の屋根から、
美少女たちと黒幕のジジイが待つ
真ん中のアスファルトめがけて、
人生最大の
顔面スライディング特攻を敢行した。
――【ドガシャーーーン!!!】
夏の渋谷の真ん中で、
大爆音とともに
盛大に崩れ落ちる俺と美少女たち。
空に舞い散るターメリックの黄色い粉と、
どこからか飛んできたクレープの残骸。
冷や汗とスパイスの涙にまみれながら、
俺は渋谷のアスファルトに大の字で寝転がり、
遠くに見えるスクランブル交差点を
ぼんやりと眺めた。
「……で、これからどうすんだよ」
アリスが俺の腹の上にちょこんと座り、
ふふっと意地悪く微笑む。
「決まってるでしょ? 明日は8月16日、
どこへ逃げようと、
私たちが追いかけてあげるから」
「……もう勝手にしてくれ」
真夏の渋谷の喧騒の中、
俺の乾いた笑い声と美少女たちの
楽しげな笑い声が、
夜空の彼方へと吸い込まれていった。




