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祥華院ガラシャ 次元を超越し聖騎士として覚醒した美しき姫。 流線型の白銀防護スーツと漆黒の南蛮胴具足の隙間から覗く純白の羽六枚の翼を纏う  作者: インフィニティ・G・イプシロン


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『三賢女(?)の華麗なる噛み合いゼロ日常』

第一章:プレゼン中の会議室

午前10時50分。某IT企業のメイン会議室では、来期の重大な事業計画プレゼンテーションが行われていた。プロジェクターの青い光が照らし出す中、ホワイトボードの前に立っているのは大天使ラファエル・ガブリエルⅡである。


「見よ! これが我が天界……いや、我が部が総力を結集して作成した『40億光年事業推進プロジェクト』の全貌である!」


大天使は黒い翼を誇らしげに広げ、レーザーポインターでグラフを指し示した。


「昨日提出された不倫の顛末書……ではなく、昨期の収支報告書によれば、我が社の利益率は暗黒領域並みに低下している! 認印がシャチハタだったため経理部で差し戻された契約書を回収し、直ちに業務の正常化を図らねばならん!」


会議卓の最前列に座っているのは、絢爛豪華なドレスに身を包んだマリー・アントワネットであった。彼女は優雅に扇子をあおぎながら、心ここにあらずといった様子でうっとりと呟く。


「あら、利益率が低くて予算が足りないなら、全部お菓子で支払えばよろしいのに。昨日ケーキ屋で買った特製タルト、私みたいに甘くてトロトロだったわ♡ 全社員にあのタルトを配れば、私の美しさにひれ伏して全員が無給で働くはずですわ」


その隣で、漆黒の髪をなびかせ、ゴールドのアクセサリーをジャラジャラと鳴らしているのはクレオパトラである。彼女は脚を組み、鋭い視線で大天使を睨みつけた。


「ふん、ぬるいことを言っているな。40億年前の古代エジプトの砂場で、シーザーが私以外の女とピラミッドを作っていた写真が昨日見つかったのだ! 会社の予算などどうでもいい! 今すぐその女の領地(部署)にナイルの毒蛇を解き放ち、歴史ごと消滅させてやるわ!!」


大天使はポインターを握りしめ、深刻な顔で大きく首を振った。


「ええい、二人とも静粛に! プレゼンの最中だぞ! 問題は不倫でもタルトでも砂場遊びでもない! 昨夜、社内LANに流出した『極秘プロジェクトの証拠データ』なのだ!」


だが、二人は全く大天使の話など聞いていない。


大天使の頭の中にあるのは「社内手続きと社内政治」。

マリー・アントワネットの頭の中にあるのは「自分を中心とした優雅なスイーツ世界観」。

クレオパトラの頭の中にあるのは「歴史上の愛憎劇と理不尽な嫉妬」。


思考のベクトルは完全に三方向へ散らばっていた。しかしここで、奇跡の事故が起きる。


大天使が額の汗を拭いながら、神妙な声で言った。


「……フッ。だが人間なら、残業でふたりきりになった夜の過ちなど誰にでもある。問題は、その証拠の写真を今すぐシュレッダーにかけられるかどうかだ!」


その瞬間、マリー・アントワネットの目が輝いた。


「そうですわ! 残業中の給湯室で私とお菓子の写真を撮られてシュレッダーにかけ損ねたら、私の美少女スキャンダルで株式市場が大暴落してしまいますもの!」


クレオパトラの瞳に暗黒の炎が宿った。


「やはり写真が残っていたのだな!? 残業と嘘をついてその女と40億光年先のケーキ屋に行っていたのだろう!? 許さぬ……シュレッダーごと超新星爆発魔法で吹き飛ばしてやる!!」


「残業」「写真」「シュレッダー」。

奇跡的に3つの単語が重なり、あたかも高度な議論が交わされているかのような錯覚が会議室を包み込んだ。


「そうだ、シュレッダー処理だ!」と大天使が叫ぶ。「処理を怠れば、明日の出社時に社内監察官がやってくる! 監査が入れば、私が会議室横に増設した6畳用エアコンまで没収されてしまうのだ!」


「監察官?」マリーがほほ笑む。「あの方も私に夢中なのよ。パンがないならケーキを食べればいいじゃない、と言ったら『おっしゃる通りです姫様!』と涙を流していたわ。罪な美少女ね♡」


「民を惑わすな!」クレオパトラが叫ぶ。「それよりシーザーよ! 今どこで何をしている!? 『ちょっとローマへ出張に行ってくる』と言ったきり連絡がつかぬ! 絶対に浮気相手の家でモンブランを食べているのだわ!!」


第二章:ランチ中のフードコート

午後0時15分。オフィス街の巨大フードコートは、昼休みを迎えたサラリーマンやOLでごった返していた。その中央のテーブルで、またしても異様なオーラを放つ3人が向かい合っている。


「ぬうっ……フードコートの混雑がピークに達しているな」


大天使はトレイに乗った「日替わり定食」を見つめながら、重々しく言った。


「40億光年先の暗黒領域から届いた警告によれば、今日のA定食の小鉢は『冷奴』のはずだった。しかし、目の前にあるのは『枝豆』だ。これは社内LANを経由した天界の陰謀に違いない!」


「あら、枝豆なんて野蛮な食べ物、私のランチにふさわしくありませんわ」


マリー・アントワネットは、自分で持ち込んだ三段重ねのアフタヌーンティースタンドからスコーンをつまみ、優雅に口へ運ぶ。


「昨日、給湯室で専務と手が触れ合った時の感動が、まだこの指先に残っているの。これって完全にオフィスラブの始まりでしょう? 全社員が私に嫉妬して、ランチの席すら譲ってくれないのね。罪な美少女だわ♡」


「黙れ泥棒猫!」


クレオパトラは激しくテーブルを叩いた。彼女のトレイには、なぜか生のコブラが乗っている。


「私の目の前で甘い妄想を繰り広げるな! 昨日の夜、押し入れから出てきた40億年前のアルバム……そこに写っていたシーザーの初恋の女! なぜその女が、今日のランチタイムにB定食を注文しているのだ!?」


「ええい、人のランチを睨むな!」大天使が冷奴(枝豆)を箸でつつく。「問題はB定食の女ではない! 昨日の夜、太閤様……いや、部長が残した『経費の領収書』の宛名が『上様♡』になっている件だ! 経理の認印が押せんと何度も言っているだろう!」


ここでも会話は1ミリも噛み合っていない。各自が己の怒りと自惚れと業務連絡を叫んでいるだけだ。


だが、大天使が不意に溜息をついて呟いた。


「……まぁ、残業で胃が荒れた日に、甘いケーキで腹を満たしたくなる気持ちは分からんでもない。だが、写真に撮られて噂になるのだけは避けるべきだった」


マリー・アントワネットがパッと表情を明るくする。


「まあ! 残業中に召し上がるケーキの美味しさを理解していただけますの? 私の写真が社内LANに流出したのも、その甘い誘惑のせいなんですのよ♡」


クレオパトラが毒蛇を掴んで立ち上がった。


「やっぱり残業と嘘をついてケーキを食べていたのだな!? その写真を撮った奴も同罪だ! 今すぐフードコートごとナイルの底に沈めてやるー!!」


「残業」「ケーキ」「写真」。

再び3つのキーフレーズが偶然にも重なり、フードコート全体にピンと張り詰めた緊張感が走る。


「沈めるな!」大天使が叫ぶ。「フードコートが沈めば、会社のエレベーター横に増設したエアコンの室外機が水没する! 明日の出社時、聖なる室温が28度まで上昇してしまうのだぞ!」


「28度?」マリーが扇子をパタパタと動かす。「あら、少し暖かいほうがドレスのデコルテが映えて美しく見えますわ。全社員が熱中症になりながら私に見とれるのね♡」


「熱中症になる前に殺してやるわシーザー!!」クレオパトラの叫び声がフードコートに響き渡り、周囲のサラリーマンたちが一斉に悲鳴を上げて逃げ出していった。


第三章:夜のバー

午後9時00分。街の喧騒から離れたオーセンティックなバー。薄暗い店内にはジャズが流れており、カウンターの端にその3人は並んで座っていた。


カクテルグラスを傾けながら、大天使が低い声で呟く。


「……ふう。今日のプレゼンも、フードコートの混乱も、すべては天界の不倫トラブルに端を発しているのだ。不倫の顛末書にシャチハタを押した奴は、明日の朝一番で出頭しろと言いたい」


グラスの中の氷をカラントと鳴らし、マリー・アントワネットが酔いしれるように目を細めた。


「暗い店内のスポットライトが、私を一番綺麗に見せてくれるわ。昨日給湯室で課長と手が触れ合い、ランチタイムに専務と目が合い、今夜はバーテンダーさんまで私に恋をしている……一度にこんなに愛されてしまうなんて、本当に罪な美少女ね♡」


その隣で、クレオパトラはストレートのウイスキーを煽り、グラスをカウンターに叩きつけた。


「静かにしろ! 40億年の時を超えて届いたこの嫉妬の炎が、バーテンダーのシェイカーごと爆破しそうなのだ! シーザーめ、今夜も『接待』と言ってどこかの女と飲んでいるに違いない! 許さぬ……許さぬぞ!!」


店内の空気が重く沈み込む。マスターは震えながら氷を削っていた。


大天使は静かにカクテルを飲み干し、言った。


「……フッ。だが人間なら、残業でふたりきりになった夜の過ち、誰にでもある。だが、証拠の写真だけはシュレッダーにかけろと、あれほど言ったのだ」


マリー・アントワネットが微笑む。


「そうね。残業のあとに撮ったふたりだけの写真は、心の中のシュレッダーで思い出に変えればよろしいのよ♡」


クレオパトラが立ち上がり、バーテンダーの首元を掴み上げた。


「やっぱり写真を隠していたな!? 残業と偽って撮った浮気の証拠を、このシュレッダーで消そうとしていたのかー!!」


「私じゃないです!!」と叫ぶバーテンダーの声も虚しく、クレオパトラの極大消滅魔法がバーの天井を吹き飛ばした。


第四章:明日という名の狂気

夜空に爆発の炎が上がり、バーの天井から星空が見えた。


「ぬうっ!?」大天使が頭の灰を払い落とす。「爆発の衝撃で、会社のエレベーター横に増設したエアコンが破裂したぞ! このままでは明日の出社時、聖なる室温が28度まで上昇し、私のデスクの栄養ドリンクが温まってしまう!」


「キャッ!」マリー・アントワネットが崩れた壁の隙間から星空を見上げる。「夜空の星々までもが私を照らすスポットライト……完璧な美少女のクランクアップにふさわしい演出ですわ♡」


「逃がさないわよシーザー!」クレオパトラが夜空に向かって叫ぶ。「過去の初恋の写真も、不倫の証拠も、オフィスラブの妄想も、全部まとめて歴史から消去して、私の『永遠の奴隷』として再契約しなさい!」


「ええい、話を聞け!」大天使が叫ぶ。「明日の9時までに、認印を押した経費精算書を提出しろと言っているのだ! シャチハタでは経理の審判を通り抜けられんのだぞ!!」


爆煙が立ち込めるバーの跡地で、三人の声は夜の静寂へと消えていく。


誰も相手の話を聞いていない。

誰のテーマも噛み合っていない。


しかし、明日もまた陽が昇れば、彼女たちは「残業」と「写真」と「シュレッダー」と「エアコンの室温」を巡って、どこか明後日の方向へと爆走し続けるのだろう。


【完】

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