12:30 東京・新宿駅東口、アルタ前広場のど真ん中で
令和8年8月17日、正午を30分過ぎた時。
東京・
新宿駅東口、アルタ前広場のど真ん中。
真夏の
太陽が容赦なくアスファルトを焼き付け、逃げ場のない熱気が陽炎となって
立ち上る中、
俺は聖剣「ロッポンギ」を杖のように地面に
突き立て、
フラフラとどうにか立ち上がった。
頭の中では
昨夜の川崎駅前からの時空ジャンプの衝撃を引きずったまま、
いまだに
サイバーパンクな警報音と警告ランプが点滅し続けている。
「ちくしょう……
川崎のペデストリアンデッキから必死の思いで逃げ出したってのに、
なんで
よりによって一瞬で新宿の真ん中まで飛ばされなきゃならねぇんだよ……!」
思わず
地べたを蹴り飛ばしながらそう愚痴をこぼしたその瞬間、
新宿の
喧騒と巨大ビジョンの電子音を切り裂くように、
頭上から
あの聞き慣れた甘ったるくも冷徹な声が降ってきた。
「ふふっ、バカ先輩!
川崎の夜空を逃げ出したところで、日本の中心である新宿アルタ前を
スルーできると
本気で思っていたのかしら?」
顔を上げて見上げれば、青空と高層ビルの狭間を
バックに、
形状記憶ベッドを優雅に滑らせる涼風アリスの姿があった。
彼女は
相変わらず完璧な生足の絶対領域を誇示しながら、
冷ややかな、
しかしどこか悪戯っ気を含んだ勝利の微笑みを浮かべて俺を
見下ろしている。
「なっ、アリス!?
お前、どうやって俺の逃走ルートを完璧に先回り予測できたんだよ!」
「ふっふっふ、
甘いわねバカ先輩。愛の5G電波ネットワークと全地球規模のビッグデータ解析力の
前では、
あんたの足取りなんて丸裸よ。しかも、ルルターズたちだって、
今頃は
歌舞伎町のど真ん中で臨戦態勢に突入しているわ」
アリスが勝ち誇ったように歌舞伎町方面の空を
指さした。
その指し示す方向を見ると、果たしてリガール帝国の王妃
ルルターズ、
ジャスミン王女、聖女ラーダーの3人が、ド派手な
黄金の
サイバー神輿に揺られながら
「大天使様を今度こそ全面買収(M&A)して終身雇用契約を結ばせるわよーっ!」と
狂気的な
絶叫をあげて突撃してくるところだった。
さらに
それだけにとどまらず、新宿サブナードの地下街からは、
ガラシャムチョと
ラクシュミーがアスファルトの地面を盛大に突き破りながら飛び出してくる。
「うわあああああ! 地上も地下も、新宿のすべてが完全に包囲されてんじゃねぇか!!」
俺が
恐怖のあまり絶叫しながらアルタの巨大ビジョンの下に飛び込んだ時、
周囲を
通り過ぎる数多の通行人たちは「また何かYouTubeのドッキリ企画か
ユーチューバーの
撮影でもやってるのか?」という
極めて
冷めた目でスマートフォンを向けてくるだけであった。
逃げ場のない
新宿のど真ん中で、俺は聖剣「ロッポンギ」をぎゅっと握りしめ、
迫り来る
狂気的な美少女軍団と容赦ない真夏の太陽に向かって、
再び
絶叫の狼煙を上げるのだった。




