第8話 赤が入って乱れ始める(4)
文化祭当日。多目的教室には巨大なお手製の、すごろく式ボードゲームが床に敷かれていた。マス目に描かれているお題は豊富で、学校や生徒達に因んだもの、出し物に因んだものが中心である。基本的に何もないマスの色は白、他の色のマスはお題がついたものになっており、メンバーに因んだお題はメンバーカラーが使われている。9人でボードを眺めている。たまきは目を輝かせている。
「こんなに大きくてカラフルなボードゲームは初めて」
「いろどりいいとこどりだもんな。俺達の知名度が上がっているわけだし、多分みんな楽しんでくれるさ」
久哉としては誇らしげだ。航琉は、黒地の用紙に白文字のマスに目を向ける。そこには「ゾンビ姿の2-D・寒河江航琉と一緒にお化け屋敷の中で写真を撮って」と記載。
「俺と写真を撮って、意味あるか?」
「あるな。俺達のアルバムや、学校の広報に使えるだろ」
他に、ピンク地のマスは「2-F・杉原まりちゃんとシャボン玉で遊んで」、黄地のマスは「2-B・星野たまちゃんに似顔絵を描いてもらって」、紫地のマスは「雪女姿の2-D・寺本すみれと一緒に縁日に行って写真を取って」、青地のマスは「2-B・剣崎久哉と青春トークをしよう」、緑地のマスは「2-F・栗橋みっちゃんが点てたお茶を飲んで」、オレンジ地のマスは「2-F・滝川かえでちゃんとステージで3分間のトークを披露」、水地のマスは「2-B・幸田うららに悩みや秘密を相談」と書かれている。
かのんが入ってくる。文化祭のためか、いつも以上に髪やメイクの手入れをしていた。
「おはよー!」
「あら、のんちゃん。おはよう」
うららが、かのんへ快く挨拶を交わし、すみれ以外のメンバー達も挨拶を交わす。
かのん、カラフルなボードゲームのマスを見渡す。
「結構、普通のお題が多いかも」
かのんがほっぺに指を当てながら言い出すと、みつばが答える。
「流石に、バラエティ番組程のクオリティは出せないし、度を越したものだと、炎上レベルだからね」
「あっ! グレーのマス、なかなか面白いじゃん、まーひー!」
かのん、グレー地の「2-A・工藤真裕に一発芸をやってもらって」の文字を目にして、はしゃぐ。真裕も見ると、「えっ?」という表情。
「僕もわたさんと負けないくらい、変わっているお題だなぁ」
「真裕くん、頑張ってね」
たまき、真裕を励ます。
「のん、楽しみにしているから!」
「よっぽど、俺達のグループに入りたいんだな。のんちゃん」
久哉、さり気なく笑顔でかのんを見守る。
「じゃあ私、雪女の時間だから行くね」
すみれが、クラスの出し物に向けて教室を出ていく。他のメンバー達も自分達のクラスの出し物に向けて出ていく。残ったのは、みつばとかえで。そして、かのんであった。
「これで、みんなをドッキリさせちゃおうっと」
かのんは、赤地のマスを取り出し、白無地のマスと取り替える。そして、みつばとかえでと3人で顔を合わせて、首を縦に振る。
「のんちゃんを知ってもらう良い機会になる!」
「あまり私らしくないけど、今日はのんちゃんに賭けちゃうよ」
3人の作戦(実際はまりなも絡んでいるので4人)は、上手くいって楽しめるよう願いを込めている。ただ、最終的な結果はどうなるかは未知数であった。
出展が始まり、多目的教室にも何人か訪れる。サイコロを振ってスタートから3つ進むと、3つのルートに別れる。これらのルートはルーレットを回して選ぶことになる。1つはトークルートで、久哉、かえで、真裕に因んだお題のマスが控えている。とある男子生徒が、このルートを当てて進むと、グレーのマスに止まる。
「真裕くんの一発ギャグ、見られるのか。というか探さないと!」
2つ目はクリエイティブルートで、たまき、すみれ、航琉に因んだお題のマスが控えている。とある女子生徒が、このルートを当てて進むと、黄色いマスに止まる。
「たまちゃんに絵を描いてもらえるの?」
そして、時間が経ち、時間が経ち、たまきと久哉が入ってくる。
「結局、たまちゃんは何人分絵を描いた?」
「一応、まだ1人かな? 久哉くんは誰かとトークした?」
「そうだな。俺も1人。というか、相手がどうも陰キャだったしなぁせっかく出し、たまちゃん。俺らも遊んでみるか」
「そうだね!」
たまきは、サイコロを降ると4の目が出る。ルーレットを回して、サポートルートを進むことになる。サポートルートでまりな、みつば、うららに因んだお題のマスが控えている。
「さてと、誰のお題になるかなぁ」
そして時間が経つと、赤いマスに進む。たまきはマスの文字を読み上げる。
「2-D・のんちゃんとデートで楽しんじゃう♡? って、えーっ!?」
思わず、驚いてしまうたまきのそばに久哉が駆け寄る。
「どうした、たまちゃん?」
実は、各3つのルートにはかのんに因んだマスがそれぞれ控えていた。久哉も文字を眺める。とはいえ、たまきとは違い冷静で思わず笑ってしまう。
「参ったなぁ。こりゃドッキリレベルだわ。たまちゃん、楽しんでこいよ」
ゾンビ姿の航琉と真裕が入ってくる。
「どうしたたまき?」
「流石にのんちゃんに関するお題って、無かったような気がする」
「きっと、のんちゃんがサプライズを仕掛けたんだと思うよ。昔からの癖で」
真裕曰く、かのんは天真爛漫を通り越し、自由奔放できままな振る舞いをし続けてきているとのこと。さりげなく、かのんが入ってくる。
「たまちゃん。お題は何だった?」
「のんちゃんとデート…。本当にやらないとダメ?」
かのんはおねだりポーズをする。
「一緒に文化祭をエンジョイするだけだから。ほら、行こ!」
「えっ、ちょっと!」
かのんは、たまきの手を握り、教室を出ていく。
久哉、航琉、真裕とひそひそと話す。
「間違いなく、すみれがブチギレるな」
3人とも、背筋が凍りそうだ。




