第8話 赤が入って乱れ始める(2)
次の日。たまきは真裕と会話をしていた。
「確かに、恥ずかしかったなぁ」
「やっぱり。のんちゃんって、関わらないほうが安心な子なんでしょ?」
「別に僕は嫌いじゃないし。というか、いじめから助けてもらったこともあるんだ」
たまき、真裕が放った言葉が信じられなかった。
「でも、流石に恥ずかしい話を暴露されたんだから、いじめに近いんじゃ…」
「それはたまちゃんの思い込みだよ。むしろ、ちょっと懐かしくて面白さもあったし。意外と楽しかったかも」
「ぼくとまりちゃん。すみれちゃんと久哉くん。みたいな関係かぁ」
横からまりながやってくる。
「たまちゃん。それに真裕くん」
「まりちゃん。ちょっと話があるんだけど?」
たまき、まりなを連れて行く。入れ替わるタイミングでかのんがやってくる。
「まーひー。あれ? さっき、まりちゃんがいたような。あと、かわいい感じのジェンダーレスっぽい男の子も。確か、たまちゃんだよね。あの子、すみれちゃんと付き合っているみたいだけど?」
「そうだよ。2人ともタイプが真逆なのにね」
「のんが見る限り、あの子に嫌われているかも。すみれちゃんの肩を持っている雰囲気メチャクチャ出ていたもん」
「いつもは、明るくて何事も一生懸命なタイプ。人懐っこくて、甘えん坊で純粋で、僕とも真逆」
「のん、たまちゃんのこと、気になるかも。まりちゃんとかえでちゃんとみっちゃんからの話も聞いているし、仲良くなってみたいなぁ」
かのんの表情は笑顔だった。たまきと友達になりたいと思っている。ただ、すみれの存在があってなかなか、実現が難しいと感じている。
渡り廊下では、たまきがまりなに、かのんについて色々と質問している。たまきとしては、かのんのイメージが払拭出来ずにいた。
「ねぇ。のんちゃんと関わって大丈夫?」
「のんちゃんはやんちゃでわがままだけど、無邪気で前向きな子だから。心配しないで」
「まりちゃんが変な方向に行かないかちょっと心配かも」
「そういうたまちゃんだって。すみれちゃんが嫌な気分になっただけなのに、のんちゃんのこと、悪い子だと決めつけちゃうのはダメだと思うよ」
「嫌な気分なのは、すみれちゃんだけじゃないもん。ぼくも、D組の子達も」
「たまちゃんも、のんちゃんと喋ってみればイメージ変わると思うのに…」
「やんちゃキャラはかえでちゃんで十分。そもそも、かえでちゃんと違って、周りに迷惑ばかりかけそうだと思うけど」
「そこまで言わなくても…」
「すみれちゃんとのんちゃん。同じクラスでも、お互い仲良くはなれないでしょ。タイプが違うし」
「じゃあ、どうしてたまちゃんとすみれちゃんは、仲良くなれたの?」
たまき、まりなからの質問に答えられずにいる。
「たまちゃんが、好奇心旺盛で人懐っこいからでしょ? まりなが見る限り、のんちゃんもたまちゃんと似ているところがあると思うの」
「似ている? 全然。ぼくはのんちゃんと違って、自分勝手でわがままな振る舞いなんてしないもん」
「たまちゃん。ちょっと、おかしいって。まりなは、優しくて泣き虫なたまちゃんだから、ずっと付き合ってきたのに。変わっちゃってる」
「ぼくは、ぼくのままだけど…」
ここまで、2人が噛み合わなくなることはお互い初めてなため、どうしたら良いかわからずにいた。
放課後のF組。まりな、みつば、かえでのもとに、かのんが入ってくる。
「みんなー! のん、ちょっと聞きたいことがあるの」
「のんも、みんなのサークルに入ってみたいなぁって思って」
「かえでちゃんは嬉しい! のんちゃんと2人で盛り上げる係ができるから」
一方のみつばとかえで。2人とも賛成だが、たまきとすみれの顔を想像をすると怖かった。
「たまちゃん、どう思うかな?」
「入っても、すみれちゃんにいじめられそうで怖い」
かえで、まりなとみつばの顔を見て一瞬考える。
「そっか、すみれちゃんいるんだよね。のんが入るの認めてくれないかも…」
かのんも、3人の顔を見て考えてしまう。かえで、一瞬うららを介して相談する考えを思いつく。
「大丈夫! うららちゃんもいるから、説得してみる」
「うららちゃんが、すみれちゃんの肩を持っちゃったらどうしよう…」
みつば、未だに案じている。
「久哉くんとわたさん、真裕くんはどう思うのかな」
まりなも、男子3人の声が気がかりだった。
「やっぱり、のんが入ると邪魔?」
「大丈夫! って」
かえでは答えた後に、視線をまりなとみつばに移す。
「2人とも、意見はどう? のんちゃんが入ることは賛成?」
まりなもみつばも、ゆっくりと首を縦に振る。かのん、3人に抱きつく。
「ありがとう。やっぱり、この学校に来てよかった!」
「まずは、見学かも。本格的に入るのは、文化祭が終わって落ち着いてからかなぁ」
みつば、今は文化祭の準備があって忙しいので、落ち着いた頃をおすすめした。
まりな、みつば、かえではうららと渡り廊下で会話をしている。
「私は構わないけど。やっぱり、すみれとたまちゃんよね」
「もしかして、まりな達に肩入れしちゃうと、うららちゃんまで巻き込んじゃうことになるし…」
「気になるんだけど。みっちゃんみたいなビビりな子が、のんちゃんみたいなやんちゃな子と気が合うのがちょっと不思議なのよね」
「私も、最初の頃はすみれちゃんと噛み合わなかったから。のんちゃんを見ているとあの時の自分と似ていると思って」
「あれ? かえでちゃんのことは煙た合っていたのにー。酷いー」
「私も、この1年で成長したの」
「わかった。私から、すみれに話を持ちかけてみるから。みんなからも、入れたい理由を伝えて」
すみれ、4人のそばにやってくる。
「あなた達、こんなところで何しているの?」
「ごめん、すみれ。これから行くね」
多目的教室に9人が集まる。うらら、すみれと男子4人の前でかのんの入部について相談を持ちかけた。まずは、うららが話しかける。
「あの。もしかしたら、新しいメンバーが入るかも。入りたい子がいるの」
「入りたい子? どんな子」
たまきが、うららに問いかける。
「女の子なんだけど、比較的元気な子で」
みつばが答える。
「愛嬌があって」
まりなも追加で答える。
「ただ、今文化祭の準備で忙しいからなぁ」
久哉からそのような答えが出ることは、まりな達の想定内であった。
「それって、もしかして…」
航琉が言い出し、さり気なく真裕と目が合う。
「のんちゃん?」
まりな、みつば、かえで、うららは4人揃って首を縦に振った。
勿論、すみれは良い返事をせず、反論する。
「あんた達、さっき話していたのって、まさかそのこと!?」
4人とも、すみれの声に萎縮してしまう。
「でも、まずは見学なら大丈夫でしょ?」
かえで、陽気に場を和ませようとする。たまきが割り込む。
「見学でも、あの感じじゃ、ぼくはちょっとね…」
「たまちゃんにしては賢明ね。久哉、わたさん、真裕くんはどう?」
すみれ、たまきを除く男子3人に問う。3人とも回答に困っている。
「お願いだから、文化祭近いのにイライラさせないで!」
「すみれ、言わせてもらうけど。なんか最近変だよ。のんちゃんのこと、なんで目の敵にするんだ?」
「私は、のんの不真面目な態度を見ていて不快なの。それに、まりな、かえで、みつばがのんと、ずっと前に知り合って仲良くなっていたのが信じられなくて」
すみれとしては、裏切られたような気持ちだった。たまき、すみれを慰めようとする。
「なんか、すみれちゃんが辛そう」
「たまちゃん、今日は一緒に帰ろっか」
すみれに言われると、たまきは2人で帰宅することにした。
「たまき。まるですみれの言いなりになっているように見える」
「たまちゃん、僕と話しているときものんちゃんのことを、良く思っていない印象だったなぁ」
男子3人は、たまきの身を案じている。勿論、まりなもだ。




