第7話 知名度アップはヒートアップ(5)
そして、手賀沼の花火大会当日。我孫子の会場にいる、たまきと女子5人は浴衣姿。たまきは、メイクアップしており、他の5人といても自然と馴染む。たまきとかえでとうららの浴衣姿を見て、みつばは新鮮な感じである。
「うららちゃんが浴衣着ると、お淑やかさが出ているよね」
「そう? 確かにこういう時じゃないと着ないからね。すみれとまりちゃんとみっちゃんは、去年着ているからね」
「たまちゃんとは、小学校の時依頼だもんね」
「そうだね。浴衣を着たの何年かぶりだもん」
「かえでちゃんも、あまり着ないし、髪型はいつも通りのまま」
すみれ、みんなの浴衣姿を眺めている。
「みんな、個性出ていて良いかも」
久哉、半袖のTシャツにハーフパンツ姿でやってくる。
「おや? 俺だけ私服かいな」
「1人だけ私服って浮いているじゃん」
「すみれにそう言われるとはな。というか、すみれが浴衣で来るなんて珍しい」
そして、航琉と真裕の姿はいない。
「あれ、わたさんと真裕くんは?」
たまきが尋ねると、久哉が答える。
「なんか、来れないみたい。真裕は松戸の花火大会に言っているみたいだし。わたさんは、人多いところに行くの面倒臭いって理由で来ないみたい」
「何それ? 2人とも協調性無さ過ぎでしょ」
みつば、ボロクソに言う。
紫色の空を背景に花火が打ち上がる。その光景は手賀沼という名の湖にも映る。まさに、千葉県の夏の風物詩。久哉、かえで、すみれ、たまき、まりな、みつば、うららの順に横に並んで花火を鑑賞。
まりな、たまき、かえでは目を輝かせながら花火を眺める。ハイテンションなかえで。
「間近で見たの久々!」
みつば、笑いながらツッコむ。
「はしゃぎ過ぎ」
無邪気そうな笑顔で花火を眺めるたまきを見るすみれ。
「たまちゃん見ていると、まるで幼い男の子みたい」
たまき、軽く赤面する。
「そう?」
「だって、たまちゃんは昔から変わらないもん」
まりなが、優しくフォローする。たまきは穏やかな表情で花火を見ているすみれを眺めながらうっとりする。
(紫色の静寂な空に、明るい花火。その背景と一緒に映るすみれちゃんが、いつもとは違う美しさがあるなぁ)
久哉とうらら、たまきがすみれに夢中な姿を見ている。久哉はかえで、うららはまりなとみつばを呼び寄せ、5人で集まる。
「せっかくだから、2人にさせて俺達5人で少し場所ずらすか」
かえでとみつば、久哉とうららの考えを汲み取った上で同意。ただ、まりなは内心ではたまきが気がかりなため、2人に視線を向けたままだった。
たまきとすみれ、2人きり。たまきはすみれ、すみれは花火を見ている。花火を見ているすみれは、微かに優しく微笑みながら見ている。
「すみれちゃんって、夜の背景がしっくり来るかも」
「どちらかと言えば、昼より夜の方が好きからだと思う」
すみれ、花火の写真を撮る。たまきは、そんなすみれの写真を撮る。
「今日のすみれちゃんで、良い絵が描けそうかも」
「良い絵?」
「ほら、去年も今年も、雪女の衣装がこの浴衣でしょ。そして今日も着ているわけだし、すみれちゃんらしい絵が描けると思って」
「もしかして、雪女の私と全く同じに見えるってこと?」
たまきは一瞬、戸惑ったがすぐ回答する。
「同じではないかも。今日のすみれちゃんは、ぼくが今までに見たことがない感じがしていて。貴重だと思うんだよね。この際、D組のお化け屋敷に飾る絵とかに使うのは?」
「やめて。それじゃ、みんな私を雪女だって思わなくなるから」
「すみれちゃんの優しい部分を見せないと」
「私は正反対だと思うよ。うららみたいに優しくて頼りになる分けじゃないし。かえでと違って明るくないし、みつばと違ってビビリじゃないし。それにはまりなみたいにお節介じゃないし」
たまき、くすりと笑う。
「私、なんか変なこと言った?」
「すみれちゃんの、そのツンとしている感じ。やっぱり好きかも。ツンとしているだけじゃなくて、頼りになるって」
「それは、たまちゃんが、かよわいからでしょ」
「かよわいだなんて…」
すみれ、微かにくすりと笑う。たまきはすみれに軽く寄り付く。
まりな達は、少し離れた場所からたまきとすみれを眺めている。
「すみれ、いつもより優しい顔をしているみたいね。ちょっと不思議かも」
比較的すみれが心を許す、うららから見ても新鮮に映る。
「たまちゃんがいるからじゃね? 独特なかわいさと幼さがあるからさ」
「あの姿が毎日で、私達の前でも同じようなら嬉しいんだけどね」
みつば、若干皮肉めいたことを言う。
「優しくても、冷たくても、頼りになってもすみれちゃんって感じだから、あれはあれで、良いんじゃないかなぁ」
かえでは、至って肯定的。その隣でまりなは、呆然とたまきを見つめている。
(たまちゃん、すみれちゃんに結構近寄ってる)
かえで、まりなの顔の間で手を振る。
「まりちゃーん? 大丈夫?」
「えっ!?」
「やっぱり、たまちゃんのことが気になっちゃうみたい」
「そうよね。小さい頃からずっと一緒だったから」
みつばとうらら、まりなを気にかける。
「みんな…。もう、まりなったら何しているんだろう」
まりなとしては複雑だ。自分よりすみれの方が、頼りになって魅力があるように映っている。たまきとずっと歩んできたこともあり自分の存在が薄くなるということにどこか悲しさを感じつつあった。
かえで、まりなの両頬を触る。
「もう、そんな顔しないで。かえでちゃんとみっちゃん、うららちゃんがいるでしょ」
まりな、少し落ち着く。
花火大会が終わり、帰り道。たまきとすみれが隣り合って歩き、後ろをまりなが歩く。たまきとすみれの距離は近い。
「たまちゃん。ちょっと近くない?」
「実はぼく、昔から夜の道を歩くの怖くて。とくに1人の時は尚更」
「まりな、それって本当?」
まりな、首を縦に振る。
「まりなも怖いんだけどね。すみれちゃんって暗い場所平気なの?」
「平気というか、何も感じない。2人とも相変わらず子どもっぽい」
まりな、すみれの隣に近付く。すみれ、まりなから若干圧迫感を抱く
「ちょっと、まりな?」
「でも、たまちゃんのそういうところが好きなんでしょ?」
すみれ、沈黙の末に答える。
「まぁ、男気があるとたまちゃんっぽさがないから。全てにおいて私と対照的なところが、案外面白いかも」
「そう言われると」
たまき、少し嬉しそうに照れる。
「やっぱり、すみれちゃんには叶わないかも」
まりな、少し残念な表情。
「まりちゃん?」
「私と何で比較しているの?」
「わからない…」
まりなの家の前に着く。
「たまちゃん、すみれちゃん。家まで着いてきてくれてありがとう。お休みなさい」
まりな、家に入っていく。そして、たまきとすみれが2人きりになる。
「わざわざ、まりちゃんのことまで送ってあげるなんて優しいね」
「2人とも、夜の道が怖いって言うから」
「冷たそうに見えるけど、本当は心強い。だから、みんなから頼りにされているんだってぼくは思っているよ」
「煽て過ぎ」
たまきの家の前に着く。
「今日は楽しかった。それじゃあ、また。お休み」
「お休み」
たまき、楽しそうに家に入っていく。
2学期になり、B組ではたまきはうららと、転校生について会話をしていた。
「転校生の子。変わった苗字だったよね」
「ぼく、名前のイメージの方が強くて。まりちゃん達、もともと知っている子みたいだし」
「かえでちゃんなんて、転校してくるのを楽しみに待っていたくらいだから」
「ちょっと、気になっていたのは真裕くんが、その子の名前を聞いて微かに反応していたような」
久哉と航琉、たまきとうららのそばに駆け寄ってくる。2人とも少し、焦りのような表情。
「あれ? いつもクールな感じの2人が今日はそんな顔して」
うらら、2人の顔を見て、違和感を抱く。
「たまちゃん。すみれのこと、止めてくれないか!?」
久哉はたまきに、すみれを落ち着かせるようお願いをする。
「あいつ、最近機嫌が悪くて、今日はついに怒り爆発だ」
航琉も、同じくたまきを頼もうとする。
「もしかして、玄斗・昂汰コンビに? 1年の最初の頃のぼくみたいにからかわれている子が?」
「いや、違う。早く行こうぜ。うららちゃんも」
たまきとうららは気になり、久哉と航琉に着いていく。4人は、D組の教室を覗くと、すみれがとある女子生徒を詰めている光景を目の当たりにする。女子生徒は壁に背をつける。すみれは徐々に接近する。
「あんたね! 転校生だからって、文化祭で何もやらないなんて許されるわけ無いでしょ!」
「でも、すみれちゃんだっていつも気怠そうにしているんだけどね~」
「もう1回、言ってみなさい! 私のこと何も知らない癖に!」
「のんは、わかるもん。すみれちゃん、男子にモテなさそう」
笑う"のん"という生徒。彼女の名前は小豆沢かのん。この日は、ハイライトの茶髪に耳上のツインテールのヘアスタイル。スカートも短めな、やんちゃギャルっぽいタイプ。いかにも、すみれとは折り合い。たまき達に映っているすみれは、これまでとは違っていた。




