第7話 知名度アップはヒートアップ(2)
多目的教室には、9人と悠乃、カメラ係の戸部修平がいる。戸部は1年生。
カメラに映る9人と悠乃の姿。配置を考えている。
「誰かセンターに立ちたい人?」
悠乃が、尋ねるとみんなで顔を見渡し合う。
「ここはリーダーがセンターが良いかもね」
うららが提案する。
「俺? 目立つのが好きで、言いだしっぺってことで、かえでだろ」
久哉、パスしようとしている。
「ま、かえでちゃんでOKだよ!」
かえでは快く承諾する。
「それなら、俺と真裕はそれぞれサイドだな」
航琉、自らサイドを希望する。
「かえでの隣には、まりなとみつばが立って。まりなの隣にたまちゃん、みつばの隣にうらら」
すみれ、何気なく全員の配置を決めている。
「たまちゃんの隣が私、そして真裕くん。逆にうららの隣に久哉、わたさんで並べばOKじゃない?」
「というか、すみれちゃんが配置決めちゃってるし」
諸々話し合い、左から真裕、すみれ、たまき、まりな、かえで、みつば、うらら、久哉、航琉の順に並ぶ。悠乃、並ぶ9人を眺める。
「なんか、バランス良いかも」
たまき、すみれとまりなに挟まれ、相互に見渡す。
「そんなにキョロキョロしなくても、良いでしょ」
すみれ、微かに笑いながらたまきをフォローする。
まりなとたまきが並んでいる姿、悠乃が興味津々に見つめている。
「まりちゃんと、たまちゃん。並んでいるのを見ると、似た者同士って感じがする。かわいい」
まりな、照れ笑いする。
「幼稚園から一緒で、良く遊んできたから」
「すご! まるで双子みたい!」
悠乃、感激してしまう。
「よく言われていたんだよね。まりちゃんがお姉ちゃんで、ぼくが弟みたいって」
たまきも微笑ましい感じになる。
「どちらかといえば、たまちゃんは甘えんぼう。まりなだけじゃなくて、私が面倒を見ているような感じだし」
すみれ、相変わらず皮肉をいう。
「因みに、幼馴染は、まりたまコンビだけじゃないから。すみれちゃんと久哉くんも」
うららは悠乃に、すみれと久哉の2人がずっと仲良しだと教える。
「まぁ、久哉とは小学校からの腐れ縁」
すみれの発言に対し、久哉がツッコミを入れる。
「おいおい、もっと良い言い方があるはずなんだよな」
すみれは、からかうように笑う。当然、久哉もそれはわかっている。
「でも、うららちゃんとすみれちゃんって中学から知り合いだったんでしょ。同じようにクールに見えてもキャラが全然違う。でも仲が良いなんて」
「性格が違っても、仲良くはなれるからね。久哉くんとわたさんみたいに」
航琉が会話に入る。
「俺と久哉も、中学から知り合いだったしな」
「それも、知ってる。剣崎くん、1年の時た
「えっ! 私!?」まにクラスに来て、寒河江くんと絡んでいたもん」
かえで、周囲の話を笑顔で聞いている。逆にみつばと真裕はだんまりムード。かえで、みつばに声をかける。
「おやおや、みっちゃん、せっかく悠乃ちゃんもいるわけだし、アピールしないと!」
みつば、かえでの声に反射するように、少しビビる。
みつば、かえでにひそひそと話す。
「私達2人と真裕くんだけ仲間外れみたいになっていない?」
「大丈夫。みんなたまたま昔から仲良し同士だから、会話のネタが膨らんでいるだけ」
かえで、陽気にみつばにリアクションする。
「私って、この場にいる意味ある?」
「ある。みっちゃんは、まりちゃんとたまちゃんは和やか担当だから」
「和やか!? まぁ否定はしないけどね」
「久哉くんとうららちゃんはリード担当で、その場をまとめるのには必要だもん」
「それで、すみれちゃん、わたさん、真裕くんは裏方。そしてかえでちゃんは真逆のムードメーカーキャラ」
「そうそう。かえでちゃんだけじゃなくて、もう1人同じタイプの子がいればなぁ」
「それじゃ、のんちゃんの合格祈るしかないかもね」
「無事に合格したら、勧誘するって決めているから!」
「かえでちゃんは何回か会っているけど、私は去年の文化祭で一度きり」
真裕は、みつばとかえでのひそひそ話を気にしていた。みつば、真裕に視線を移す。
「真裕くん? ずっとだんまりしているけど?」
真裕、みつばの声に動揺してドキッとしてしまう。みんなも真裕に視線を移す。真裕、更に緊張する。
「僕目立たないし、そこまで話すことがないから、みんなの話を興味深く聞いていただけ」
「俺も、真裕と同じスタンスのはずが、なぜか会話に入ってしまった…」
航琉、自らボケてしまう。みんな、つられてふと笑ってしまう。
そして、撮影が始まる。悠乃が9人の紹介をする上で、かえでの紹介から始まる。
「今回は、仲が良い有志が揃ったサークル、"いろどりいいとこどり"を紹介します! まずは、放送委員にアシスタントとして頑張っている滝川かえでさんです!」
「はーい。滝川かえでちゃんでーす! イメージカラーはオレンジです! いろどりのムードメーカーやってまーす。次はみっちゃん」
「みっちゃんこと、栗橋みつばです。マイペースなんですけど、みんな個性強すぎて、振り回されています。でも、楽しいでーす。次はうららちゃん」
「幸田うららです。実は2年になってから入った新参者です。そこまで個性は強くないかもしれないですね。よく、真面目でしっかりしているって言われることが多いので。そんな私と、9人ですが、よろしくお願いします。次は久哉くん」
「どうも、剣崎久哉です。とりあえず、僕がリーダーってことになっています。みんな変わっている奴らばかりなんですけど、面白くて退屈しないんで毎日が楽しいです。それじゃ次はわたさん」
「待った。一旦パス。すみれ、たまき、まりなの順で」
航琉、自分を後に回すよう促す。すみれ、「はぁ?」と口に出したくなる表情をしている。
「すみれさん、大丈夫?」
すみれ、悠乃に機嫌を聞かれると、ため息を付く。
「寺本すみれです。とりあえず、変わり者ばかりのサークルなので、新しく入る人はいないと思います。じゃぁ次はたまちゃん」
「どうも、星野たまきです。最初は多目的サークルで色々なことをやっていたんですけど、ここ半年でイベントを行うようになりました。楽しいサークルなので、よろしくお願いします。次は幼馴染のまりちゃんです」
「杉原まりなです。次は…」
まりな、航琉と真裕を交互に見渡す。久哉が声を上げる。
「わたさん、自己紹介しな」
航琉、諦めたような顔をする。
「寒河江航琉っす。自分、人付き合いとか表舞台に立つの苦手なんで、裏方やってます」
「他にも、裏方として工藤真裕くんがいるんで」
久哉に言われると、真裕はドキッとする。
「最後は僕…。工藤真裕です。一番の下っ端です。不束者ですが、よろしくお願いします」
9人の自己紹介が終わる。
悠乃、自己紹介を終えたタイミングでコメントをする。
「はい、ありがとうございました。やっぱり、画面に映るのが恥ずかしい人もいるかもしれないですけど、みんな個性があっていいですねぇ」
かえでが割り込む。
「でしょでしょ!」
まりな、たまき、久哉、うららは同感の素振りを見せる。
「確かに恥ずかしいけど、大人になった時に思い出したら、どんな感じかきになるかも。でも、まりなは大人っぽくなれるかなぁ」
「ぼくだったら、赤面しちゃうけど、どこか楽しかったって思えるようにしたいなぁ」
「俺は、恥ずかしいとは思わない。むしろ面白いって思えるようにしたいな」
「みんなが楽しければ、私も楽しい。かえでちゃんに近いかも」
すみれとみつばは中立的だ。
「私は、はっちゃけるタイプじゃないから。後から見返してもそんなに恥ずかしいって感じ話しない。でも、面白さはあるかも」
「なんか、いじられている自分が残るのは恥ずかしい。私はゆったり、おっとりって感じのタイプのイメージのほうがしっくり来る」
相変わらず、微妙な感触なのは航琉と真裕。だが、微々たる気持ちの変化はあるようだ。
「正直、自分を見るのはダサい。けど、自分がダメな人間とは思っていない。むしろ、みんな楽しければそれで俺は構わない」
「僕も。自分よりもみんなが楽しければそれで十分」
航琉が真裕にツッコむ。
「真裕は、もう少し自分の特技とか興味をみんなに共有しようぜ」
真裕、そのまま航琉に言い返す。
「それは、わたさんもだよ」
真裕、くすりと笑う。航琉も口角を少し上げた。他のみんなも笑う。




