第7話 知名度アップはヒートアップ(1)
とある日の昼休み。とあるクラスにあるテレビ画面に映るのは、かえでの姿。
かえでの隣に座るのは放送委員の加賀美悠乃。
「毎週水曜日は、クラス訪問コーナーです。今回からお手伝いとして滝川かえでさんが加わります」
「どうも、滝川かえででーす! 2-F組所属で、"いろどりいいとこどり"っていうサークルを9人でやってまーす!」
9人という言葉を聴き、悠乃は動揺。
「あれ、9人? うららちゃんが入ったのは聞いたけど?」
「他の2人入ったけど、ちょっと恥ずかしがりやな男の子達」
「ねぇ、もしかしてそのうちの1人って、寒河江くんだったりして…」
「そうそう。じゃぁ、かえでちゃん含めて、メンバー9人を紹介しちゃいまーす」
F組の様子。クラスは賑やかそうに笑い声。まりなとみつば、「あちゃぁ」とした表情。
「まりな達目立っちゃうけど、大丈夫かな?」
「私、目立つのはちょっと…」
B組の様子。うらら、自分の名前が出て少しドキッとした表情。周囲がうららを見ている。
「もう、かえでちゃんったら」
たまきと久哉がそばに来る。
「かえでちゃんに、依頼が来たみたいだよ」
「あいつに、合った仕事だしな」
「でも、ぼくの名前が広まるって、どんな感じになるんだろう」
「つまり俺ら、結構目立つ存在になるってことだぜ」
うらら、軽くため息。
D組の様子。すみれと航琉、面倒臭そうな表情でテレビに映るかえでを見る。
「俺が目立つのはゴメンだ」
「何も考えないで、テレビに映って目立ちたいだけでしょ」
玄斗と昂汰が笑いながら、2人近寄ってくる。
「2人とも、滝川に紹介されてるじゃん」
「俺ら入らなくて、セーフだったわ」
「お前らが羨ましい」
航琉、2人を見て羨ましく思う。
「でも、タダでさえ目立たない、真裕くんが目立つことになるけど。それってどうなのかな?」
すみれ、廊下を出る。真裕が廊下を歩いている姿を目撃し、彼に近付く。
「真裕くん」
真裕、振り向き、すみれだったので安心した。
「良かった、寺本さんか。流石に僕まで目立つのは」
「ちょっと、かえでのことは、怒っておかないと」
昼休みが終わり、かえでが教室に戻ってくると、まりなが笑顔で出迎える。
「どうだった?」
「まりなは面白かったけど」
まりなの隣にやってくる、少し不機嫌なみつばの姿。
「クラス訪問コーナーの前に、私達の紹介していたけど、あれ要らなかったと思うよ。というか、みんな興味ないでしょ」
「そうかな? 文化祭とかイベントをきっかけに、和を広げたいと思ってやってみたの」
「みっちゃん、そんなに怒らなくても。かえでちゃんだって、イタズラでやったわけじゃないんだから」
「気持ちはわかるよ。でも、名前出されて、よく思っていない子が数名いることくらいはわかっているでしょ?」
「ごめん。やりすぎちゃった…」
かえで、ちょっぴり反省モードになる。
「放課後は、反省会ムード確定かなぁ」
「たまちゃんと久哉くんなら、気にしないけど。他の子達が…」
まりな、不安げな表情。
放課後の多目的室。かえでは、たまき、久哉、うららに囲まれる。始めにうららが問う。
「あの、かえでちゃん。もしかして、みんなでテレビ画面に映ろうって考えている?」
「うん。悠乃ちゃんにもお願いしているところ」
「ぼくは大丈夫」
「俺は構わない。けど、首を縦に振らないやつが3人いるからなぁ」
その3人とは、すみれ、航琉、真裕の3人だ。
「確かに、すみれはかえでちゃんとはキャラが真逆だし。わたさんと真裕くんは裏方だからっていうの理由に拒否するかもね」
教室、後方でやや機嫌が悪そうにかえでを見つめるすみれ、航琉、真裕。3人を見て、久哉とみつばが気を使う。
「あの3人は一旦、パスして俺ら6人で映ってみるか」
「アドリブは極力なしで。ビビっているところ見られると、恥ずかしいし」
かえで、放送室でのオフ時に悠乃と会話していた時のことを話す。
「ねね、うららちゃん。悠乃ちゃん、うららちゃんがここに入るって聞いた時、結構驚いたみたいだよ」
「確かに驚いちゃっていた。あの子、結構リアクション大きくて、みっちゃんみたいだし」
悠乃は、1年次はうららと航琉と同じクラスだった。クラスではうららとは仲が良かった。最近はクラスが変わって、関わる機会が少なくってきている。
「ぼくが、テレビに映るってことは…。もう少し見た目を気にしないと」
「まりなも。当日の髪型とかも考えておいて」
まりなとたまき、テレビに映ることが前提で、自分のイメージを考えている。
「いやいや、まりちゃんもたまちゃんも、気が早すぎるって。かえでちゃんが急に、放送員の仕事を手伝うって言ったのに、話が大きく膨らんじゃったでしょ」
みつば、かえでに文句を言う。後ろからすみれが割り込んでくる。
「もともとは、何でも屋サークルだったから、かえでもそこは頭を働かせて放送委員の子達に頼んだってことでしょ」
「流石、すみれちゃん。鋭いね」
航琉も意見を言う。
「ある意味、グダグダしているところを見せるのはありかもな」
真裕も入ってくる。
「7人でね」
すみれ、航琉と真裕に文句を言う。
「7人ってことは、私は含んで、あなた達は外れるってこと?」
久哉、航琉と真裕に共感する。
「そう言うことだな」
「どうせ新しいメンバーは当分入ってこないと思うから、メンバー募集というより、私達の紹介で良さそうね」
うららが、その場を丸く収め、みんなが納得する雰囲気になった。
「まぁ、人前に出るのがどしても嫌って訳じゃないから、私もカウントして良いわよ」
すみれ、渋々だが何気なく了承した。
そして収録の日の朝。たまきは、鏡を見ながらゆるふわにヘアセットをしている。
「どうしたの? 今日はデートでもするの?」
鏡に映る麻紀絵の姿。
「デート? えっと、しようかなぁ…」
「何かあるんでしょ?」
「校内のテレビ撮影があるから、ちょっと見た目を整えようかなぁって」
「いつも通りでも、十分大丈夫でしょ。メイクもしているじゃない。高校生っぽくナチュラルに」
「なんか、気合い入れたくなるんだよね」
「なんか、まりちゃんみたい」
「まりちゃんは、もっと悩んでいるかも」
「すみれちゃんだったら、いつも通りにやると思わない?」
「すみれちゃんなら、いつも通りにいくかも。というか、他のみんなもそうかも」
「でしょ」
たまき、麻紀絵からデートという言葉が出てきたことを踏まえて、デートについて語りだす。
「せっかくだから、デートに誘ってみようかなぁ」
一方のまりな。二つに分けて結んだ三つ編みをいじりながら鏡を見て、愛美梨に相談をしている。
「どうかな? 今日はテレビに映るから、可愛く魅せたくて」
「テレビと言っても校内でしょ?」
「そう。このままにするか、輪っかにするか、お団子にするか、ちょっと悩んで。あとは何で結ぶか」
「文化祭の時と同じように悩んじゃって。いつも通りの自分を魅せるって感じで良いと思うよ」
まりな、三つ編みを指でくるくる巻き付ける仕草をする。
「それとも、ポニーテールにでもする? それとも結ばない状態にする?」
まりな、少し動揺する。
「それだと、まりなっぽくない…」
左右に分けた結んだヘアスタイルが自分らしいと思っているまりなとしては、一つ結びには抵抗感がある。
「ごめん。あまりにも激変しちゃうと、まりちゃんじゃなくなるしね」
「後は学校で考えてみるね」
A組。このクラスには真裕が所属している。そして、放送委員の悠乃もいる。真裕は悠乃に声をかけようとするが、悠乃は教室を出ていく。
悠乃が、教室を出ようとすると、たまき、すみれ、かえで、うららが悠乃のの前に現れる。
「あれ、今日は4人?」
「そういえば、悠乃ちゃん。A組ってことは真裕くんと同じクラスってことだよね」
うららが、悠乃に尋ねる。
「真裕って? 名字は?」
悠乃、真裕の名前だけ言われてピンと来ない。たまき、真裕に視線を移し、こっちに来るようジェスチャーをする。真裕、たまき達のそばまでやって来る。
「もしかして、もう1人の新しいメンバーって、工藤くんだったの!?」
悠乃、動揺する。真裕、内心自分の存在感が薄いことを承知の上で、首を縦に振る。
「もう、真裕くんったら、もっと存在感出さないと! かえでちゃんと一緒にトレーニング」
「いや、それは勘弁して…。せめて、僕とわたさんは、似顔絵で代わりを立てて欲しい。たまちゃん、頼む」
「絵を描くのは良いけど、せっかくだし、みんなで出ようよ」
すみれ、怖気づいている、真裕に軽く圧をかける。
「せっかく入ったわけだから、多少は存在感出さないとダメだと思うけど…」
真裕、だんまりする。
「ということは、僕も出たほうが良いってこと?」
「そういうこと! 勿論、わたさんもだよ!」
かえで、真裕と航琉をテレビに出すことに決めた。それを聞き、動揺する真裕。
「でも、流石に…」
「生放送じゃないから、安心して」
悠乃が真裕をフォローする。
「ぼく達が着いているから、大丈夫」
「真裕くんらしくやれば良いから」
たまきとうららもフォローする。真裕、ようやく落ち着く。
「後は、わたさんの説得ね。彼だけ映らないってことは認めないから」
すみれにしては、強気なスタンスである。




