第6話 微かに感じる影と刺激(6)
かえでのスマホからLINEの通知音。かえでがLINEの画面を開くと、"のん"という女子高生からのメッセージ。「のん。編入試験受けてみる。かえでちゃん達と同じ学校に入りたいと思ったから」。かえで、喜んでいる。
「ねね、まりちゃん。みっちゃん」
かえで、まりなとみつばを呼び、3人で教室の片隅に移動する。
「どうしたの?」
「実は、のんちゃん。もしかしたら、転校してくるかも」
みつばに聞かれると、のんという女子高生が転校してくることを示唆するように答える。
「それって、決まっているの?」
「試験を受けるみたい」
まりなに聞かれると、これから試験を受けると答え、LINEのメッセージを見せる。
「まだ、確定していないんかーい」
「でも、文化祭でまりな達と知り合っただけで、うちの学校に入りたいと思うなんて」
「それより、かえでちゃん。知らない間に仲良くなっていたなんて」
「2人だって、のんちゃんから名刺みたいなカード貰っていたでしょ」
真裕、3人のやり取りを眺めている。
「のん。もしかして…」
真裕は、のんが誰なのか、心当たりがあるような素振りをしている。
「おーい。そこの3人。何をヒソヒソしているんだい?」
久哉に呼ばれると、3人はみんなの輪の中に戻ってくる。
放課後、まりなとたまき、すみれの3人で帰っていた。まりなはすみれにお礼を言う。
「すみれちゃん、ありがとう」
たまきもお礼を言う。
「ありがとう。真裕くんのことを迎え入れてくれて」
「別に私は、何もしていないけど…」
まりなとたまき、くすりと笑う。
「迎え入れてくれるだけでも、ぼくは嬉しかったよ」
「2人とも相変わらず、純粋なんだから」
「でも、たまちゃんと付き合っているのって、純粋で明るいところが良いと思ったからでしょ」
まりな、嬉しそうにすみれの心情を微かに探ろうとする。
「そう、思っていれば。まぁ、否定はしないけどね」
すみれ、内心恥ずかしかった。その思いから、話題を切り替える。
「それより、文化祭の出し物。何かやりたいことある?」
「まりな、まだ考えていなかった。自分のクラスの出し物も含めて。お笑いコントでも良いけど。うららちゃんと、わたさんと、真裕くんの3人って、お笑いのイメージがピンとこなくて…」
「言われてみれば、そうね。というより、お笑いコントやるには人が多過ぎる。となると、2グループに分ける形になりそう。というかそもそも私としてはオススメできない」
すみれ、お笑いコントを却下する。
「せっかく、わたさんと真裕くんが加わったから、もっとクリエイティブな出し物が良さそう」
「たまちゃん、なかなか良いところつくね。あの2人が裏方でしっかり働ける機会ができるから」
すみれ、自分のクラスの出し物について、話を持ち出す。
「因みにうちのクラスなんだけど、なんとなく分かると思うけど、お化け屋敷になりそう」
2人、笑う。
「笑うほどのことじゃないと思うけど」
「今年も雪女やるってことでしょ?」
「どうせ、私とわたさんがいるから、雪女とゾンビに役を割り当てたいだけだし」
「また見られるなんて、まりな楽しみ」
「私、この後ママと予定があるから、また明日ね」
すみれ、自転車で走っていく。まりな、すみれの姿を眺めて、微笑む。
「今日のすみれちゃん、いつも以上に素直っていうか、柔らかく感じる」
「仲間が増えたからだと思うよ。うららちゃんとわたさんが入るまで、結構1人でいることも多かったし」
「言われてみれば、そうかも。1年の時から、まりなとみっちゃんって、一緒に関わっているイメージあまりなかったかも」
「同じクラスだったかえでちゃんよりも、中学の頃から知り合いのうららちゃんと絡むことが多く見えた気がする」
「後は、昔から友達の久哉くんと、今同じクラスで似たタイプのわたさんとはよく関わっているイメージかも」
2人で笑い合う。
「まりなね。すみれちゃんが友達のことをちゃんと考えてくれているって、わかった気がする」
「確かに素っ気ないけど、すみれちゃんなりにぼく達やみんなを気遣っているんだよね」
「ずっと、たまちゃんと釣り合うか心配していたの。タイプがあまりにも違うから」
「でも、心中では色々抱えていそうな気がする。でも、触れすぎちゃうと、怖いからなぁ」
たまきが悩むような顔をしているのを見て、まりなは何かたまきも抱えていると感じていた。
たまき、まりなに質問をする。
「そういえば、みっちゃんとかえでちゃんと3人で何話していたの?」
「もしかしたら、2学期になったら転校生が来るかもってかえでちゃんから話が来て」
「転校生? かえでちゃんの知り合いってこと?」
「一応、去年の文化祭で、まりなとみっちゃんで縁日の当番をやっていた時に知り合って。松戸に住んでいて都内の高校に通っているみたい」
「一体どんな子?」
「簡単に言うと、明るくて元気な女の子」
「それだけで、仲良くなれるって。恐らくその子、相当フレンドリーなんだね」
「しかもその場に、かえでちゃんもいたから余計に盛り上がっちゃって」
「そっか。ぼくの知らないところで、色々なことがあったなんて」
たまき、ボーっとしている。まりなの話を聞いて、自分だけ、あまり面白いエピソードを抱えていないと思っている。
「どうしたの?」
「みんな羨ましいなぁ。色々な出会いがあってって思って。ぼくはあまりないから」
「そう? たまちゃんのおかげで、グループに人が集まったじゃん」
「真裕くんの場合は、うららちゃんとわたさんの助けが大きかったけどね」
たまき、少しずつ笑う。まりなもたまきの笑った顔を見て安心する。
「でも、仮に転校してくるなら、知っている子がいてその子も安心するかも」
「できれば、まりな達みんなで、温かく迎え入れたい」
「まりちゃんったら、気が早いって」
今の2人はまだ笑い合っている。2人にはこの先どのようなことが待ち受けているのかが、想像できていないからである。それでも2人は今をみんなで楽しく生きようと頑張っている。




