第6話 微かに感じる影と刺激(5)
GWが明けたとある日。航琉がB組に入ってきて、久哉とうららのそばにやってくる。
「わたさん、悪いな俺の作戦に乗ってくれて」
「まぁ、ダチの頼みだからな」
「私とわたさんと真裕くん。会話が弾めばいいけど。頑張らないとね!」
たまき、遠くから3人の会話を、若干羨ましそうに眺める。久哉、たまきのそばにやって来る。
「結局ぼくじゃ、ダメなんだよね。お陰でGWにみんなで遊ぶこともできなかっった」
久哉、笑顔でたまきを慰める。
「なんか、たまちゃん。真裕みたいになっているぜぇ」
「別にそんなことないって。真裕くんより、ぼくの方が明るいと思うけど。それにわたさんじゃ暗いし、うららちゃんだと真面目過ぎて、話がおもしろくなるかも」
たまき、若干ムキになる。うららと航琉もたまきのそばにやって来る。うららはくすりと笑う。
「たまちゃんが感性豊かなのって、元気な証拠でしょ。それくらい、明るいなら真裕くんも和むと思うけど」
「そうかなぁ。でも、今はうららちゃんとわたさんに賭けるしかないし」
「任せな。俺とあいつは暗い者同士話しが合うかもしれない」
「じゃ、2人とも頼むぜ」
うららと航琉、教室を出ていく。
真裕、うららと航琉と会話をしている。盛り上がりはないものの、意外とスムーズに弾んでいる。
「真裕くんって癖がなくて、話しているとちょっと落ち着くかも」
「そうかな? 僕と会話していても面白くないでしょ」
「俺はそうは思わない。真裕と俺ってどこか似ている気がする」
うららがまとめ役を果たしている。
「私も。なんとなく2人とも似ている気がして。ちょっと暗いところがね」
真裕と航琉、口を揃える。
「やっぱり」
「でも、真裕くんの落ち着いて気取らないところ、私は良いと思うけどね」
「僕、個性ないでしょ。久哉くんみたいに要領良くないし、杉原さんや栗橋さんみたいに優しくもない。それに、たまちゃんや滝川さんみたいに無邪気でもないのに」
「すみれがいないね」
うらら、くすりと笑う。
「寺本さんみたいに、気が強く堂々としていない」
「なぜか、真裕といるとなぜか安心する。俺のペースを崩さないからさ」
真裕、微かに口角を上げる。
「なんか、2人と話していると安心する。因みに、2人とも好きな色って何?」
「私は白」
「俺は黒」
真裕はふとひらめいたかのように、気づきを得た表情をする。
「僕は。グレーかな。地味で影が薄いし、それに優柔不断で曖昧なことばかり言うし」
「そんなに自分のことをネガティブに表現しないで」
「大人しくて目立たない。でも良い意味で主張しないところもある」
「あなたの落ち着いているところを見てると、グレーが似合うかも」
真裕、2人と打ち解ける事ができて、内心嬉しかった。
「2人とも、2年になって入ったってことは、僕達はほぼ同期ってことか」
「3人揃って、モノクロになったな」
航琉が言うと、うららと真裕はくすりと笑う。
「因みに、"いろどりいいとこどり"に入りたい?」
真裕、うららに問われて答えようとするが、たまきが間に入ってくる。
「あ、真裕くん」
真裕、たまきが一瞬入ってきたため、答えるのをやめた。その代わりに、たまきに別の話をする。
「あのさ、たまちゃん。僕のイメージカラー決まった。グレー」
「グレー?」
たまき、3人を見渡す。
「モノクロトリオってこと?」
「そう言うこと。たまき、後はよろしく頼むぜ」
うららと航琉、その場を去り、たまきと真裕の2人きりになる。たまき、にこやかに真裕から色々と話を聞いていく。
「3人で楽しそうだったけど、何の話をしていたの?」
「色々と。2人とも僕が面白いみたい」
「なるほど。3人ともほぼ同期だから話も弾んだんじゃない?」
「そうだね。あの2人がいれば僕も、安心して入れるかも」
「やっぱり、ぼく達初期メン6人はダメかな?」
真裕、一瞬考えたが、前向きに答えを出す。
「そんなことはない。たまちゃんや他の5人を見ていて面白そうだって去年から、気になっていたくらいだし」
たまき、ホッとして、ウキウキした表情をする。久哉がやって来る。
「おやおや、白黒コンビと話していると思いきや、たまちゃんと2人きりだとはな」
「あのさ、明日。多目的教室に来て、答えを出そうと思うんだ」
「OK。この場で答えて欲しいけど、みんなの前のほうが良さそうだな」
こうして、真裕はみんなの前で、グループに入ることを伝える決意が出来た。
多目的教室に真裕と、まりな、たまき、他の6人が集まっている。真裕はみんなの前で意思表明をする。
「僕も、入りたい。お願いします」
真裕、あっさりとした口調だが、頭を下げる。
「大丈夫、頭を下げる必要ないって」
たまきが優しく言葉をかけると、真裕は頭を上げる。頭を上げると、6人(すみれと航琉以外)が笑顔で、真裕を見つめる。
「みんな。その顔は…」
「ダメ! なんて言うわけないじゃん!」
かえでから、励ましの言葉が始まる。
「私も。大人しい子が増えたほうが、落ち着くからね」
みつば、安らいだ感じの表情。
「ほら、みんな真裕くんが入ることに賛成しているから」
うらら、改めて歓迎の言葉を送る。
「真裕は、俺と一緒に裏方頑張ろうな」
航琉、真裕に手を差し伸べた。真裕、航琉と手を握り合う。
「お、わたさん。かっこいい。真裕の冷静さなら、みんなを落ち着かせることができるって俺は信じているよ」
久哉、エールを送る。
「今まで以上に、安心してきた。こんな僕でも迎え入れてくれるなんて」
まりな、真裕に近付き、両手で真裕の手を包む。
「ありがとう、真裕くん。まりなも、色々不器用で迷惑ばかりかけているけど、一緒に頑張ろうね」
「杉原さん。手が温かい」
まりな、顔を赤らめる。
「あっ、ごめん」
周りから笑い声。すみれ、真裕とみんなに近付く。
すみれ、真裕を真剣な眼差しで見つめ、軽く口角を上げる。
「この前より、しっかりとした感じになっている。今の真裕くん、悪くないかも」
「それって…」
真裕が問うと、まりながすみれの言葉を代弁し始める。
「すみれちゃんも入ってくれるのを賛成しているみたいだよ」
まひろ、ホッとした表情。
「去年から3人も増えたから、文化祭やイベントの役割分担や準備も大部スムーズになりそうだな」
久哉は早速、文化祭やイベントの議題を持ちかけようとしている。
「それより、リーダー決めない? 私はうららが良いと思うんだけど?」
すみれは、リーダーの件を持ち出す。
「私? リーダーなら久哉くんで良いんじゃない? 私ってある意味新人みたいなものだから」
「俺がリーダーか。まぁ成り行きでなっちゃっているみたいだけど、まぁ良いだろ。すみれとうららちゃんでサブリーダーを頼むわ」
「サブリーダーが2人? ちょっと違和感あるんだけど…」
「すみれは、裏リーダーってことにするか」
「私も、サブリーダーならやってみるね」
「じゃ、かえでちゃんとみっちゃんで情報収集係やりまーす!」
「私は書記の方が、向いている気がするけど…。まぁ大丈夫」
「みっちゃんは書記と情報収集兼任だな。
「まりたまコンビで、俺、すみれ、うららちゃんのサポートを頼む」
「うん。まりな頑張る」
「すみれちゃんのサポート…。 ぼくも頑張る」
「それで、わたさんと真裕は、裏方特化で諸々頼む」
「雑用か。俺としては目立たなくて助かるわ」
「僕も」
「ちょっと。あなた達、逃げるつもり?」
みんなで、役割分担をしながら談笑が続く。




