第6話 微かに感じる影と刺激(4)
「それで、"いろどりいいとこどり"に入りたいの? それとも違うの?」
すみれ、真裕に問う。
「入ったほうがいいかなぁ? でも僕がいたところで」
「それは、あなたが決めないと」
真裕、答えを出せずにいる。そんな中、かえでが提案する。
「じゃあ、かえでちゃんとみっちゃんと3人で、トークをしながら入るかどうか決めるっていうのはどう?」
「それだけで、入るか判断できるわけないでしょ…。せめて8人と絡むくらいはしてもいいんじゃない?」
みつば、かえでの安直な提案にツッコむ。
「じゃぁ組み合わせ的には、俺とすみれ。たまちゃんとまりちゃん。わたさんとうららちゃんの組み合わせで行こうか」
加えて、久哉がコンビを決めて提案してきた。
「まりちゃんとたまちゃんなら心を開いてくれていいかも。かえでちゃんとみっちゃんは、テンポ大丈夫かなぁ。すみれと久哉くんだと、ちょっと詰められそう」
うらら、自分意外のコンビを評価し始める。
「俺と幸田さんの組み合わせか。新参同士のトークも悪くないな」
真裕、表情に疲れが表れる。まりなとみつば、真裕の表情を見て心配そうになる。
「大丈夫? 疲れてない」
まりな、至近距離で真裕の表情を見つめる。若干動揺する真裕。
「まりちゃん、ちょっと近いって。心配なのはわかるけど。みんなに圧力かけられちゃって大変だったでしょ?」
みつば、真裕をリラックスさせようとしている。
「帰ろうとしていたところ、無理させてごめんね」
うらら、みんなを代表して謝罪する。
「別に無理はしていないけど…。 それじゃ」
真裕、みんなに背中を向け、校舎を出ながら下校する。ぞんな真裕の後ろ姿を、たまきは無心に眺めている。
「なんか、変わった子。入っても馴染めなくて抜けそうかも」
すみれ、どちらかと言えば彼が入部することには消極的な様子。そんな姿を見たたまきが、久哉にとある提案をする。
「あのさ、久哉くん。コンビの組み合わせなんだけど、ぼくとすみれちゃんで来んでも良いかな?」
まりな、若干動揺する。
「たまちゃん? まりなじゃダメなの?」
「別にまりちゃんがダメってわけじゃないから安心して。たまには別のパターンで組んでみたいんだ」
「OK。それじゃ、俺とみっちゃん。まりちゃんとかえででやってみるか!」
「あのー。なんで、うららちゃんとわたさんのペアだけは固定なんですかー?」
みつば、うららと航琉のコンビだけ変わっていないことに疑問を持つ。
「わかった! 2人とも入ったばかりだから、一緒に話すと安心すると思ってじゃない?」
かえでとしては、うららと航琉なら2年次から入部した者同士になるので、気持ち的に楽になるのではと思っていた。
「その通り。それに俺もあいつのこと、ちょっと興味出てきたからさ」
まりな、たまきに近付き、ひそひそ話をする。
「もしかして、すみれちゃんの様子を窺っているでしょ?」
たまき、まりなに言われれた反動で動揺する。
「すみれちゃん、真裕くんが入ってくることにあまり乗り気じゃなさそうだよね」
たまき、ひそひそしながらまりなに言葉を返す。
「えっ!? よくわかったね」
「まりなは、真裕くんが入ることには賛成だから。たまちゃん、お願いね」
「わかった。やってみるね」
翌日、たまきは真裕を誘いつつ、すみれと3人でショッピングモールの中を歩く。真裕は、まりなとすみれの後ろを歩いていた。
「たまちゃん。本当にこれで良かったの? 付き合っている者同士の後ろにくっついていても、流石に馴染めないでしょ」
「もしかして、ぼくのチョイスってダメだった?」
「たまちゃんが、ちゃんと話してあげて」
「良いよ。真裕くんって、僕たちのことを知ったのっていつ頃から?」
「1年の夏から文化祭あたりかな。部活じゃないけどユニークな子達が集まっていて楽しそうに見えた」
「私みたいに、無愛想がいても?」
「それは…」
真裕は、黙り込んだ末に回答する。
「そうかも」
「本当にそう思っているの?」
すみれ、若干不信に思ったため、詰め気味に聞いてくる。
たまき、視線を逸らすと、遠くから久哉とみつばが眺めて、"これはダメだ"といった感じで首を振っている姿が映る。
「ヤバい。やっちゃったかも」
たまき、すみれと真裕に視線を移す。
「すみれちゃん。そんなに詰めないで」
「ごめん。やっぱり、私じゃこういうの向いてないから。たまちゃんが話題を振って」
「因みに、真裕くんって好きな色は?」
「好きな色? 特に無いかなぁ。因みに何色が合うと思う?」
「そうだね。赤って感じゃなさそうだし。となると、水色とか紺とか、んー…。ごめん。なかなか出てこない」
「たまちゃん。色のことを急に聞き出すのは、脈絡なくて答えるのに困るでしょ?」
「ごめん。因みにぼくは黄色」
「まぁ、私は紫」
「他に仲が良くしている子っていないの?」
「いない。僕はボッチだから」
「なんか、わたさんと似ているかも」
「そうかな? わたさんは久哉くんと絡んでいるじゃん」
「真裕くんって。なんか話していても面白くないのよね」
「すみれちゃん。ちょっと言い過ぎ」
「なんか、温度感が違いすぎて僕には"いろどりいいとこどり"が合わない気がする」
まりなとかえでが現れて、真裕に近付く。
「まだ諦めないで! まりな、真裕くんのこと応援しているから!」
「かえでちゃんもいるから!」
真裕、まりなとかえでの至近距離に圧迫感を抱く。
「2人とも、僕なんかのために、そこまで」
「まりちゃん。かえでちゃんも、そんなにゴリ押ししなくても」
たまき、2人の距離感を懸念している。一方のすみれは、2人が鬱陶しく感じる。
「あのね。今、真裕くんは温度差を感じているの。あなた達、それくらいわからないの?」
まりな、「しまった」と思い、顔を隠してしまう。
「ごめん、まりなムキになっちゃった」
たまきとかえで、まりなを慰める。
「ぼくの方が空回りしているから、落ち込む必要ないし」
真裕、場の空気をしんどいと感じ取り、最終的に変える決断をする。
「ごめん。やっぱり今日は帰る」
真裕、その場を去っていく。
入れ替わるように久哉とみつばが、4人のもとに駆け寄ってくる。まりな、たまき、かえでが2人に謝る。
「ごめん、ぼくのせいで」
「まりなも。ごめんなさい」
「ドンマイ! 無理に誘う必要も無いからさ」
「そうそう、ここはポジティブに切り替えないと」
「確かに。真裕くんの気持ちを優先しないとね」
久哉、かえで、みつばの言葉が続き、まりなとたまきを慰める。一方のすみれは、内心不信を通り越し、苛立ちが徐々に芽生え始めている。
「あのさ、真裕くんもみんなも、なんか中途半端過ぎるんだけど。正直私は、しんどい」
「すみれ? なんでそんなに機嫌悪いんだ?」
「みんな、本当にあの子に入って欲しいと思っているの?」
「ぼくは、入ってくれると嬉しい」
「まりなも。どこか寂しいそうなところもあるから、助けたくて」
「まりな、それって真裕くんが求めていることなの?」
まりな、黙り込んでしまう。
「かえでちゃんは、逆にあのようなタイプ、もっと関わってみたいんだよね」
「かえでも。遊び半分で関わっていたら、あの子にとっては迷惑なだけ。もう少し真面目に考えなよ」
かえで、珍しく動揺してしまう。
「私、なんか疲れた顔を見ていると、自分と重なっちゃうんだよね。だから、真裕くんに安心できる場所を作ってもいいかなぁって」
「みつばまで、安直になるなんて。同情して喜ぶ感じには見えないけど」
みつば、悲しい表情をする。
「すみれちゃん、ごめん。全部ぼくが悪かった」
「あなたにはリードする役は無理。気が弱いんだから」
たまき、黙り込んで目が潤む。たまきの潤目を見たまりな、がむしゃらにすみれに反論する。
「すみれちゃん。まりなは何言われても構わないけど。たまちゃんやみんなのことは悪く言わないで!」
すみれ、まりなに初めて抵抗された気がして、一瞬戸惑う。
「みんな、落ち着け。後は、白黒コンビに任せるからさ」
久哉が、その場を丸く収めにかかる。すみれ、真っ先にその場を去って帰っていく。しばらくして、久哉とみつばとかえでが帰る。
まりなとたまき、柏の葉アクアテラスの三角広場にあるベンチに隣り合って座り、夕日を眺めている。
「たまちゃん、ごめん。まりな、ついムキになっちゃって」
「まりちゃんは何も悪くない。ぼくがすみれちゃんとコンビ組みたいってわがまま言ったせいだから」
「うららちゃんもわたさんも、まりなとたまちゃんのおかげで入れたみたいなのに」
「真裕くんは、ぼく達じゃ、ダメなのかなぁ」
「それよりも、すみれちゃん。たまちゃんのこと何もわかってない。たまちゃんは、いつでも前向きに頑張っているのに。すみれちゃん冷たすぎるって…」
「すみれちゃんを責めないで。すみれちゃんも不器用なところがある訳だし…」
まりな、たまきを抱きしめる。
「まりなは、たまちゃんの味方だから」
「ありがとう、まりちゃん。後はうららちゃんとわたさんに頼めばいいかな」




