第6話 微かに感じる影と刺激(1)
杉原家ではリビングでまりなと愛美梨が、進路について話し合っていた。
「2年になってから、クラスはどう?」
「楽しいよ。みっちゃんとかえでちゃんもいるし。それにサークルも。6人から8人になったから」
「楽しそうで良かった。それより、進路は考えている?」
「勿論。保育あたりがいいかなぁって。たまちゃんやみんなから面倒見が良いって言われているし」
「もしかして保育士や幼稚園の先生になりたいの?」
「そこまでははっきり決めていないけど。出来れば、まりなもママみたいに困っている人を助けるような仕事をしてみたい」
「なるほどね。でも仕事っていうのは、まりちゃんが思っている以上に大変なことは覚えておいて。と言うのも、世の中って同じようなタイミングで色んなことが起こって複雑になるから」
「働くって大変。でも、どこかで覚悟はしておかないと」
「たまちゃんは何目指しているって聞いている?」
「まりちゃんは、美容や服飾に行きたいんだって。ママのお店を手伝って、一緒にやりたいって行っていたの」
「たまちゃんは相変わらず、ママっ子だね。でも、まきちゃんのことを考えていて成長しているように見えるかも」
「でも、卒業したらたまちゃんと…」
「寂しいのはわかるよ。でも二度と会えない訳じゃないから」
「でも、今までよりは会えなくなっちゃうし…」
「まりちゃんったら。相変わらず、自分のことよりたまちゃんのことを心配しちゃうところがあるよね」
「まりな、お節介なのかな…」
「たまちゃんのことを思っていてもいいけど、干渉しないように注意してね」
まりなもわかってはいる。ただ、未来を考えると悲観的になってしまう。
一方の星野家。たまきが麻紀絵とリビングで進路について会話をいている。
「ぼくも、ママと一緒にお店をやりたい」
「確かに嬉しいけど、経営についての知識も必要になってくるからね」
「そこは、勉強するから」
「勉強だけじゃなくて、実際の腕も必要よ」
「勿論。じゃないとママと肩を並べられない」
「大人になるってことは責任や覚悟も必要になってくるから、そこは忘れないでね」
「はーい」
「それより、すみれちゃんとはどう?」
「仲良くやっているかな」
「1回しか、家に来たこと無いけど、もしかしてなにかダメなのかな?」
「すみれちゃん、気難しいところがあるから。基本的に馴れ合いは好きじゃないし」
「たまちゃんと一緒に帰ったり、みんなでサークルで楽しんだりしているのに?」
「成り行きで、入った感じはあるけど、しっかりしていてまとめるのも上手だから、ぼくもみんなも助かっているんだよね」
「ママは、まりちゃんの方がいいかなぁ」
「どうしてそう思うの?」
「優しくて、ずっと、たまちゃんのことを気にかけてきているから。だから、まりちゃんと会えなくなっちゃうと、相当寂しくなりそう。たまちゃんが」
「そうかなぁ? でも二度と会えない訳じゃないから」
「会える機会が減るのはやっぱり寂しい。でも、その新しい出会うもあるから、その寂しさも忘れちゃうかも」
「だよね」
「勿論、たまちゃんとまりちゃんにはこれからも仲良くい続けて欲しい。母親同士が今も仲が良いようにね」
「わかった。因みにママは、すみれちゃんのことってどう思っているの?」
「すみれちゃんって、つかみどころがないように見えるんだよね」
「ぼくもそう思うことはあるんだよね…」
たまき、麻紀絵の話を聞き、図星に感じて思わず口に出してしまう。
GWに差し掛かろうとする中、多目的教室では8人が話し合ってている。
「せっかく8人に増えたことだし、何かイベントでもやらない?」
かえではGWに何かをやりたいという考えをもとに、切り込んできた。
「そういえば、うららちゃんとわたさんの歓迎会がまだだったよね。それはどう?」
みつばが、歓迎会の提案をしてくる。
「まりなは、賛成」
「ぼくも賛成」
「かえでちゃんも!」
「俺も」
「私もいいけど。2人は?」
すみれに、聞かれたうららと航琉も賛成だった。
「歓迎会だなんて。わざわざ、ありがとう」
うらら、快くお礼をいう。
「歓迎会だなんて、大げさだ。けど、今はその…ありがとう」
航琉、若干戸惑ったが、建前上でもお礼を言わなければ空気が悪くなると悟ってお礼を言う。
「よし、決まりだな」
「イェーイ!」
かえで、1人ではしゃぎ出す。
「はしゃぎ過ぎだって」
すみれとみつばがツッコむ。
「かえでちゃん、嬉しそうだね」
たまきが、まりなに言いかける。
「まりなも嬉しいよ。それに、みんなだって」
まりな、みんなの顔を見て、嬉しそう。
議題は文化祭の出し物についてだった。まず、久哉が話を切り出す。
「あ、そうだ。メンバーが8人になったことだし、文化祭についてなんだけどさ。去年とは別のことやるのはどうだい?」
「私、表舞台に立つのはそこまで…」
「俺は裏方専門だしな」
うららと航琉は、ステージで自らパフォーマンスすることに乗り気ではない。
「うららなら大丈夫だとは思うけど。むしろ私のほうが不向きだから」
すみれは、自分のほうが舞台に相応しくないと言い出す。
「私も、今年はパスしようかなぁ…」
みつばは、去年は思い切り喋ったから、今年はのんびりやりたいと考えている。
「みっちゃん、去年楽しそうだっったじゃん! あそこまで喋れるんだからトーク力活かそうよ!」
「だよな。みっちゃんのトーク、案外面白いし」
みつばはかえでと久哉に、激励されてしまい、余計だるく感じてしまう。
「雪女とゾンビがいる、パワーアップしたお化け屋敷なんてどう?」
たまきが提案する。
「たまちゃん、私をお化けだと思いたいの?」
すみれ、乗り気かつ若干怖そうにためきに問い詰める。
「別にそういう訳じゃいけど…」
「どうせ、お化け屋敷はクラスの出し物になりそう。私とわたさんが同じクラスだから」
「まりな、盆踊りやってみたい」
「盆踊り。俺のキャラと合わないな」
航琉に否定され、まりな悲しい顔をする。
「ごめん。ただ、俺にはしっくり来ないだけだ」
「なんか、これじゃ埒が明かないな」
久哉、若干頭を悩ませる。
すみれ、久哉をフォローする。
「文化祭の出し物ならまだ時間があるし、今日は一旦、パスでいいんじゃない?」
「そうだな。てか、すみれにフォローされるなんて」
「すみれちゃん、フォロー上手だもんね」
たまき、すみれを褒める。
「たまちゃんからその言葉が出るとはな。すみれも変わったってことか」
たまきの言葉を聞いた久哉は、すみれの些細な優しさに気付いたようだった。
「別に、私は今まで変わらないけど…」
すみれの、リアクションは相変わらずだった。
すみれを除く女子4人、くすりと笑う。
「すみれも、相変わらず愛想が無い。でもそれがすみれっぽいってことなのかもね」
「とっつきにくいのも相変わらずだけどね」
みつばが、皮肉交じりに評価する。
「いいなぁ、たまちゃん、すみれちゃんの色んな部分がわかるみたいだし」
まりな、微かな嫉妬心を秘めていたものの、自分ではどう思っているのかがイマイチわからない。
「案外素の状態をキープしようとしているだけかもね」
1年次同じクラスだったかえで曰く、すみれは自然体を理想しているとのこと。




