第5話 いろどってものくる(6)
放課後の多目的教室。7人に加えて、航琉の姿がある。みんな、航琉が加入してくれて嬉しそうだった。
「そういう訳で、みんなよろしく」
かえでが、嬉しそうに近づき、大きな声を出す。
「よろしく~。これでもっと賑やかになるね!」
航琉にとっては、少しやかましそうに感じているが、内心は嬉しい。
「そのポジティブさ。なかなか良いと思う」
みつばも、航琉に近づいてくる。
「私、わたさんと似ているかも。マイペースなところがね」
「そうかもな」
うららも、近づいてくる。
「私とわたさんって。ある意味、白黒コンビ、モノクロコンビだよね」
「そうだな。その響き、悪くはないな」
航琉は少しドキッとしているが、3人から歓迎されて嬉しそう。そんな航琉達を見て、まりなとたまきが、嬉しそうに微笑んでいる。
「まりな、わたさんが入ってくれるって信じていたよ。だって、みんなに興味があるような感じだったから」
「ぼくも。昨日のあの感じだったら間違いなく入ると思っていたから、良かったね」
2人のそばに久哉がジト目をしながら寄ってくる。
「なぜか、2人に美味しいところを持っていかれるんだよな。誘ったのは俺なのに、つまらない」
2人とも、まずい空気になるのか不安でドキッとする。久哉、爽やかな笑顔で2人にお礼を言う。
「冗談だって。色々と助かったわ、サンキュー」
2人ともホッとため息をついた。すみれも近づいてきて2人を褒める。
「私からも、お礼を言うね。うららの時もちゃんと言えていなかったから。ありがとう」
"いろどりいいとこどり"は8人体制となり、イベントをメインとした多目的サークルとしての活動をしていくことになった。
たまきは、すみれと帰っていた。たまきは航琉がサークルに入ってくれて嬉しそうだった。とはいえ、自分1人だと叶わなかったと感じている。
「やっぱり、すみれちゃんのアドバイスって的確だよね。おかげで、うららちゃんとわたさんも入ってくれたから」
「別に大したことしてないよ。たまちゃんだから頼んだだけ」
「結局ぼく1人じゃ何も出来なかったし。それに2人とも、まりちゃんと一緒だったから距離が縮まったような気がして」
「そうね。たまちゃんって1人だと心細そうな感じがする。でも、こういう時は1人でやるより、みんなで力を合わせることも大切だって思ったの。みんなの良いところを引き出せれば、良いグループになるでしょ」
すみれは相変わらず淡白な言いっぷりだが、たまきにはどこか優しさを感じるような言葉に聞こえていた。たまきは、照れながら時めいている。
「すみれちゃんが一緒にいると安心すると思って。しっかりしている子と一緒にいればぼくもしっかりできるんじゃないかなぁって」
すみれ、首を横に振る。
「たまちゃん、それは違うよ。私と付き合えば、たまちゃんのキャラが変わるのはちょっと無理があるかも」
たまき、悲しい顔をする。
「それに、私はたまちゃんのママとかまりなと違ってそこまで温もりはないかから」
「すみれちゃんの冷たいけど頼れる感じ、ぼくは好きだよ」
「結局、たまちゃんは甘え上手。それに物好きで変わっている」
「だって昔からそうだもん」
「人当たりが良いの嫌いじゃないから」
「好きまではいかないの?」
「友達としては、好きになるのかも」
「すみれちゃん?」
「そんな、真面目に見つめられても。まるでまりなみたい。じゃ、また明日ね」
たまき、帰っていくすみれの後姿を、真顔で見つめている。
たまき、自転車で走っていると、目の前にまりなの姿があった。たまきは、まりなに追いついて声をかける。
「まりちゃん」
「あ、たまちゃん」
2人は、いつもの公園に立ち寄り、ベンチに座ってシャボン玉を吹いている。たまき、寂しげな顔をする。
「すみれちゃん、シャボン玉誘ってもなかなか一緒にやってくれなくて」
まりなは、たまきを心配そうに見つめる。
「何となくすみれちゃんって、相手に合わせるタイプじゃないよね。少しはたまちゃんの気持ち考えないのかなぁ」
「すみれちゃんも、自分なりに色々考えていると思うんだ」
「たまちゃん、すみれちゃんに対して優し過ぎるって」
「そんなに、すみれちゃんを責めないで」
たまき、まりなの言動に困惑してしまう。まりなはたまきを軽く抱きしめや。
「どうしたの?」
「たまちゃんは、すみれちゃんから温もりって感じたことある?」
「それが…。でも、冷たいところが、すみれちゃんの魅力だと思う」
「無理はしちゃダメだよ。すみれちゃんが冷たいなら、まりなはたまちゃんを温めてあげる。落ち込んでいる時とか、悲しい時は、まりなを頼って」
「まりちゃん…。でも大丈夫。ぼくもまりちゃんも、みんな大人になるでしょ。だから甘えっぱなしとか頼りっぱなしのままだと…」
「でも、どうしてすみれちゃんには頼ったり甘えようとするの?」
「それは…」
たまきは、言葉が出てこない。代わりにまりなが答えた。
「わかるよ。好きだし、頼りがいがあるからでしょ」
「やっぱり、まりちゃんはお見通しだね」
「辛かったら、まりなの前ではたくさん泣いて大丈夫だよ」
「まりちゃん、まるでママにみたい」
たまきは微かに、まりなからの母性を感じていた。
まりなが、頬に涙を浮かべる。
「まりちゃん? どうして泣いているの?」
「ここずっと、悲しくて。新しいクラスになったり、新しい友達が出来たりしても、2年経ったらみんなバラバラになるって考えていたら。たまちゃんやみんなとずっと…」
「そんな悲しいこと言わないでよ。今、これから楽しくなりそうなのに」
たまき、まりなに感化されたかのように悲観的になってしまう。
「ぼくも寂しくなっちゃうじゃん。でも中学卒業した時もそんな感じなのに。高校卒業後を考えると、それ以上に寂しい気がするのはどうしてなんだろう」
「たまちゃんとずっと一緒だったのに。進路のバラバラだと、卒業したら会えなくなっちゃうのが辛いの」
「ぼくもみんながいなくなると、ボッチな気分になりそう。でも、今大事なのって、みんなとの時間を大切にしながら過ごしていくことだと思う」
「たまちゃん」
たまき、まりなの肩を擦る。
「だから、まりちゃん。そんな悲しくならないで。みんなだって辛くなるから。もっと前向きにならないと」
「たまちゃん、ありがとう。明るくて前向きなところ、まりなは好きだよ」
「まりちゃん…」
まりな、たまきの頭を撫でる。
「いつも、頑張ってくれてありがとう。お疲れ様」
たまきも、まりなの髪を撫でる。
「まりちゃんも、お疲れ様」
「たまちゃん、まりなの頭を撫でるの初めてかも」
「えっ、そうかな?」
「昔はまりなが結んでいる髪をよく興味津々にいじって遊んでいたのに」
たまき、顔を赤くする。
「ちょっと、やめてって!」
まりな、たまきの赤くなった顔を見て笑顔になる。
「もう、顔真っ赤になっちゃって」
「赤。そういえば8人の中で、赤担当の子がいない気がする」
「じゃ、また新しいメンバー呼びかけてみる?」
「いいかも。楽しくなりそう」
2人とも気が少し楽になり、ベンチから立ち上がる。




