第5話 いろどってものくる(5)
まりなが、自転車で2人のそばにやってくる。
「あ、たまちゃん。わたさんも」
「まりちゃん。わざわざ、こっちに来るなんて」
「ちょっと気になっちゃって。それよりたまちゃん、すみれちゃんと帰っていたんじゃなかったの?」
「さっきまでいたんだけどね」
「俺と久哉が一緒に帰っているところに、すみれとたまきが来て」
「ぼくとわたさんが仲良くなれるようにって感じで、帰っちゃった」
「2人とも、ちょっと人使いが荒いような気がする…」
まりな、たまきと航琉の話を聞き、悲しい顔をしながら2人を見つめる。まりなの表情を見て、航琉が問いかける
「どうした? そんな顔して」
「あの2人、ちょっと酷い。なんか冷たくて。久哉くんは要領良いけど、わたさんに無理させようとしていないかちょっと不安」
「俺は別に大丈夫だけどな。気にし過ぎだと思う」
「まりちゃん、誰かが困っていると気になっちゃうから」
「それに、すみれちゃん。たまちゃんのこと置いてけぼりにしちゃって」
「すみれちゃん、ぼくとわたさんに気を使ってくれて2人の時間を作ろうとしたんだと思う。久哉くんも」
「それならいいけど。たまちゃん、すみれちゃんから下に見られていないかちょっと気になって」
まりなにはわかっている。たまきが、すみれと久哉に置いてけぼりにされて、寂しく感じていることはお見通しだ。
たまきは笑顔で答える。
「ぼくは大丈夫だよ」
「まりなは心配性だな」
「まりちゃん、昔からそういうところあるから。ぼくに何かあるとすぐ、駆けつけてくるし。それも頼んでいないのに」
「まりなとたまちゃんは、ただの知り合いじゃないから」
「2人とも、まるで双子みたいだな」
「よく言われるんだよね。まりちゃんがお姉ちゃんで、ぼくが弟みたいって」
航琉、無表情のままだが、2人の関係性を興味深く羨ましそうに感じている。
「2人とも、面白いな」
「だって、たまちゃん。うららちゃんの時も、すみれちゃんに頼まれて、まりなと一緒に勧誘した感じだったもん」
航琉、2人の話を聞き、僅かながら心苦しさを感じていた。
「2人とも、無理はするなよ。俺は口下手だけど、2人とは友達になれそうかもしれない」
まりなとたまき、少し気持ちが和らぎ、笑顔になりながら、至近距離で航琉を挟むように口を合わせてお礼を言う。
「ありがとう」
「おいおい。挟み撃ちするなって…」
航琉は圧を感じて少し顔を赤らめているが、内心は嬉しい。
「いつでもF組に遊び来て。みっちゃんもかえでちゃんも、喜ぶから」
まりながそのように言うと、航琉は微かに他のメンバー達と触れ合っていみたいと思うようになってきた。
「そうか。俺が陽キャになるのは無理だけど、"いろどりいいとこどり"に入れば、今までより楽しくなる気がする」
まりなとたまき、お互い顔を合わせて頷く。
まりなとたまき、2人きりになり、ベンチに座る。
「わたさんも入ってくれればいいなぁ」
「一緒に話してみて、どうだった?」
「ぼくとは間逆なタイプ。どこか不思議な感じだけど、意外と話してみると面白いかも。ただ、コミュ力はイマイチかなぁ」
「まりな達が色々と助けてあげないと」
「まりちゃんは、わたさんのことどう思う?」
「雰囲気が独特で変わったタイプ。話すのは苦手そうだけど、意外と人に興味を持ったり、気にかけてくれる。そんな感じかな」
久々に笑いを交えた会話をする。徐々に日が暮れると同時に、2人ともどこか寂しげな表情をする。
「時が経つのって早い。もう入学して1年だし。時が止まればいいのに」
「まりなも。ずっと、たまちゃんやみんなと一緒がいいなぁ」
「まさか、すみれちゃんと付き合うなんて。入学式の日だったら想像すらできなかったもん」
「まりなも。みんなでサークル作って活動するって全然考えていなかったから。たまちゃんが頑張って来たおかげで、ここまで来たって感じがする。ありがとう」
たまき、少し照れてしまう。
「そんな、お礼だなんて、大したことしていないのに…」
「最初はみんなバラバラだったけど、まとまったのはたまちゃんのおかげ」
「それを言えば、まりちゃんがみんなのことを気にかけてくれたことのほうが大きいと思うよ」
まりなは、どこか浮かない様子。
「たまちゃんやみんなが変わってきているど、まりな全然変わっていなくて…」
「そう? ぼくだって。そんなに変わっていないかも」
「たまちゃん、高校に入ってから、まりな以外の子達と関わる時間が増えていて、色々と充実していて楽しそう」
「まりちゃんは楽しくないの?」
「楽しいよ。でも、やっぱり不安や心配のほうが大きくなっちゃって。まりなの悪いところなんだけどね」
「まりちゃんって、昔から自分のことより、ぼくやみんなのことを考えているから。少しはわがままになったり、好きに考えて動いたりするのもありなんじゃない?」
「それは、困っていたり悩んでいたりしている人を見ると、助けたくなっちゃうの。まりながやりたくてやっているから」
「まりちゃんらしいね」
「考えてみれば2年経ったら何しているか、なかなか考えられない。たまちゃんって進路どうするの?」
「ぼくは、美容とか服飾に行きたい。まずは、ママのサロンを手伝えるようにして、もう少しサロンを大きくしてみたいかなぁ」
「昔からたまちゃんはママっ子だもんね。まりなは、何が合うかなぁ。ママみたいに優しくて頼りになる人になりたいから」
「まりちゃんは、幼稚園や保育園の先生が合うかも。面倒見が良いし」
「この際だから、もっとみんなで進路について話し合ってみない?」
「そうだね。ぼくもみんなの夢が気になる」
少しずつ、寂しげな雰囲気が和らいでいった。
次の日。廊下ではすみれ、久哉、航琉の3人が会話をしている。
「俺入るわ。みんなと一緒に、"いろどりいいとこどり"を楽しんでみたくなった!」
航琉の声を聞いたすみれと久哉は珍しいことに、見て目を大きくして彼を見つめている。
「わたさん、どうしたの? 急に堂々としちゃって」
「俺のおかげかな」
久哉、少し鼻を高くしながら誇らしげに言う。
「確かにきっかけは久哉だ。けど、昨日2人が帰った後に、たまきとまりなと一緒に会話をして、楽しくなった」
久哉、まりなとたまきに美味しいところをとられたかのうように、若干つまらなそうな表情に変わる。
「ブレーンは俺なのに、結局褒められるのはたまちゃんか。それにあの後、まりちゃんもいたなんて」
「今回も、たまちゃんの勝ちね」
「すみれ、お前だって何もやってないだろ。うららの時もそうだし」
「私は、愛想悪いからこういうのは不得手なの。だから、たまちゃん達にお願いしているの」
「2人とも、揉めるなって。この際幸田さんと、かえでと、みつばとも色々話してみたい」
久哉、航琉の心意気を聞いて、少し元気を取り戻す。
「いいぞ、その調子だ!」




