第5話 いろどってものくる(2)
とある日、たまきがF組の教室を覗き、うららを見かける。うららと視線が合う。うららが、たまきのそばに寄ってくる。
「どうしたの?」
「今日って、放課後大丈夫?」
「大丈夫だけど。もしかして他の子達もいる感じ?」
「一応、ぼくだけ」
まりなが、そばにやってきて、2人を見て少し動揺する。
「たまちゃん?」
たまきとうらら、まりなに視線を移し、声を揃える。
「まりちゃん?」
「たまちゃん、もしかしてうららちゃんと」
「放課後、ちょっとね。もしかしてまりちゃんも、同じこと考えていた?」
まりな、首を縦に振る。うららが2人の顔を交互に見渡す。
「それなら、3人でどう?」
「えっ?」
まりたま揃って口を合わせ動揺する。うらら、くすりと笑う。
「流石は幼馴染同士、息ぴったり」
2人は照れてしまう。
すみれと久哉が遠くから眺める。
「まさか、まりなも同じタイミングだなんて」
「すみれ、一緒に同行すればいいのに」
「私がいたら、あの子達が話すタイミング少なくなるでしょ」
「そっか。すみれなりの優しさって訳か」
みつばとかえでが、2人の会話に入ってくる。
「え、たまちゃんも一緒ってことは3人!?」
「そしたら次は、かえでちゃんとみっちゃんのコンビで言ってみようよ」
「いやいや、うららちゃんとかえでちゃん、温度差ありそう。ただでさえ私とも温度差ある訳だし…」
まりな、たまき、うららはカフェに立ち寄る。まりなとたまきが隣り合ってテーブルを挟み、反対側にうららが座る。まりなとうららが会話をしている。その脇で、たまき、うららを見ながら、紙に絵を描いていく。
「2人とも、シャボン玉遊び好きでしょ?」
まりな、少し動揺する。
「えっ? どうして知っているの?」
「何回か見ているんだよね」
「楽しみの一つんだよね。お絵描きもそうだけど」
たまきが、会話に入る。
「うららちゃん、すみれちゃんと違ってシンプルで描きやすいかも」
「もしかして、褒めている?」
「そうだよ。確かサークルができる前に、すみれちゃんとここ来たことがあって。その時も絵を描いたんだ」
まりなとうらら、たまきが描いたうららの絵を眺める。たまきが描いたうららの似顔絵は優しく微笑んでいて、清楚さと真面目さが伝わる。
まりなもたまきに感化され、スケッチブックと色鉛筆を取り出す。
「まりなも、かわいくキレイにうららちゃんを描いてみようっと」
「なんか、2人とも双子みたいにシンクロしててかわいい」
たまきは右手に白の色鉛筆、左手に水色の色鉛筆を持って交互に眺めながら悩む。うららが問いかける。
「たまちゃん、どうしたの?」
「どっちの色で縁取ろうかなぁって」
「白で縁取るなら、黒を使ったほうがいいかも」
「黒とかグレーを使う手もあるけど」
まりなが、水色の色鉛筆を指差す。
「たまちゃん、水色使おうよ。うららちゃん、水色好きって言っていたから」
「やっぱり、水色でいこうっと!」
たまき、縁取ろうとするも手が止まる。
まりなとうらら、たまきを心配そうに見る。
「水色だけだと、うららちゃんの白のイメージがなぁ」
「たまちゃん、水色で薄っすら塗っていくのはどう?」
たまき、まりなのアイデアを聞いてひらめきながら、力を入れずに水色の色鉛筆でうららの似顔絵を軽く縁取っていく。
「まりちゃん、ナイスアイデア! 水色で薄っすら塗って」
たまき、水色で塗った部分を白い色鉛筆で塗りつぶしていく。
「できた!」
薄い水色のオーラを纏ったようなうららの似顔絵が完成した。まりなも拍手する。
「まりなも頑張らないと」
まりなも、うららの似顔絵を描きあげる。まりなの画調はポップさのあるたまきと比べ、やさしくかわいさがある雰囲気だ。
「久々にまりちゃんの描いた絵を見た気がする」
「たまちゃん最近、まりなと一緒に帰っていないもんね」
「そういえば、すみれと付き合っているけど、どんな感じ?」
たまき、一瞬考えながら答える。
「結局、甘えちゃっているかな。すみれちゃんのほうがしっかりしているし」
まりなが補足する。
「結局、たまちゃんは甘えるのが上手だから。すみれちゃんみたいにしっかりした子の方が合うのかも」
「そういうまりちゃんも、私から見たら世話を焼くのが得意な気がするかな」
3人の談笑が続く。
うららは2人が描いた似顔絵を交互に眺める。2人とも絵が上手だと感じながら少しばかり目を輝かせている。
「私って絵にすると、こんなにキレイというか、かわいいというか」
まりたま揃って、ホッとした表情。
「2人ともありがとう。ちょっと、借りても良い。私やってみたいことがあって」
うらら、2人の描いた似顔絵のオーラの部分に、水色で縁の線を書いた。
「どう?」
2人とも、目を輝かせ感銘を受ける。
「2人とも純粋。私、こう見えてシンプルな趣味の方が好きなんだよね」
「まりな達と同じで、うららちゃんも純粋。潔癖そうなイメージが合ったけど、優しくてさっぱりしていて、一緒にいると安心する」
「だよね。話していて楽しいし」
まりなとたまき、目を合わせる。まりなが提案する。
「それなら、まりな達とイベントサークルに入ってくれると嬉しいかな」
たまきも、おねだりポーズをする。
「ぼくからも、お願い! 別にやりたいことが明確に決まっていなくても、一緒に楽しめるなら大丈夫だから」
うららは悩みつつ、薄っすらと答えを出す。
「4月からでもいい? 新年度のタイミングでちょうどいいと思うんだよね」
うららの答えを聞き、まりたま揃ってはしゃぐ。
「もう、はしゃぎ過ぎだって」
うらら、嬉しそうに2人を見る。
まりなとたまきは、久しぶりに2人で一緒に帰っていた。
「4月からが楽しみだなぁ。ぼく達やること増えるけどね」
「他にも新しく誰かが入ってくれると嬉しいかも」
まりな、話題を切り替える。
「それより、たまちゃん。すみれちゃんとはどう? 今日のうららちゃんとの会話って、すみれちゃんの案でしょ? たまちゃんに任せた理由もなんとなくわかる気がして」
「まりちゃん。もしかして…」
「別に嫉妬しているわけじゃなくて。すみれちゃんが、たまちゃんにお願いした理由があると思ってきいてみたの」
「ぼくが人当たりが良いからかな。すみれちゃん、敢えて他の子との時間を作ろうと考えていた気がする」
まりなはたまきの答えを聞き、自分の考えとほとんど同じだったので、たまきがすみれのことを理解しているように改めて感じた。
「流石たまちゃん。すみれちゃんのこと、わかっているね」
「だってクラスも一緒だし、それに付き合ってからなんとなく色々と分かってきたかも。癖が強いけど頼りになって、ちゃんと色々考えている。あのように見えて、結構気負っているかも。何かと抱え込むことも多いし」
「ありがとう、たまちゃん。すみれちゃんが大変そうならまりなにも教えて。まりなも助けてあげたいから」
「まりちゃんがいると心強いね。でも、すみれちゃん、自分から人に頼るのは好まないところあって」
「うららちゃんが入ったら、グループのリーダーに合いそうだよね」
「バランスが良さそうだしね」
2人は、想像・妄想を膨らませながら会話をし続ける。
「じゃあ、また明日。まりちゃん今日は付き合ってくれてありがとう」
「たまちゃんも。暗いから気をつけて帰ろうね」
お互い、家に向かっていく。




