第4話 恋がふくれる(2)
11月になり、学校周辺の木々が赤やオレンジ、黄色に色づいてきた。
D組の教室ではたまきが、イチョウの写真を見ながら、絵を描いているた。脇からかえでが覗く。
「もうすっかり秋だね~。すみれちゃんだったら秋ってことは、冬が始まることって言いそうだけどね」
たまきが腑に落ちるようにくすりと笑う。
「わかる。逆にまりちゃんとかみっちゃんならそんなことないって反論しそう」
「だよね。あの2人。自然とか生き物とかを愛するところがあるから」
みつばが教室に入ってきて、たまきの絵を眺める。
「イチョウに黄色。たまちゃんっぽいよね」
「かえでちゃんも何か描こっかなぁ。名前の通りカエデの葉をオレンジで」
「紅葉だしカエデは赤の方が良いんじゃない?」
「両方使うのもありかも。」
たまきが、楽しそうに2人のやり取りを眺める。みつばが、紅葉をバックに自撮りした写真を2人に見せる。
「ねぇ。この飾り気のない自然の風景。緑が減ってきてちょっと寂しいけど、個人的には気に入ってるんだよね」
たまき、写真のみつばを可愛らしそうに眺める。みつば、たまきを見て少し驚きつつ照れる。
「たまちゃん? そんなに写真見つめてどうしたの?」
「なんか。緑って感じのみっちゃんが赤に囲まれていて…」
すみれが脇を通り、写真を見つめる。
「緑に赤ね。補色の関係だから、メリハリがついてるように見える。いつもマイペースなみつばも、赤の刺激を受け続ければビビリを克服できるんじゃない?」
たまきとかえでが笑う。
「ちょっと、それどういう意味?」
すみれ、みつばに問われると、軽くあしらうように返答して3人から離れていく。
「嫌味じゃなくて。色を使った例え話」
「すみれちゃん、相変わらず口が悪いっていうか口下手っていうか…」
若干愚痴気味のみつば。
「すみれちゃん、例え方が面白い。そうなるとぼくとすみれちゃんが補色の関係ってことかな?」
「それだとかえでちゃんは久哉くんってことになるなぁ」
「まりちゃんのピンクって補色だとなんだろう? 赤に近いから緑。ということは私?」
「ぼくからすると、赤とピンクって違う色に見える。でも色の捉え方って人それぞれだと思う」
かえでが、赤にまつわる話を出してくる。
「ねね。このグループにも、赤って感じの子が入れば、面白くなりそうじゃない」
「赤? ということは私と真逆でかえでちゃんみたいに突っ走るタイプとか、感情的な感じの子ってこと?」
「誰か身近にいればいいけど、インパクトがある子ってなかなかいないよね」
「かえでちゃんも、暑苦しいっていう意味では、インパクトはあるけど、親近感があるから、赤というよりやっぱりオレンジな気がする」
かえで、みつばをおちょくる。
「こらこら。それはかえでちゃんを褒めているのかい?」
「褒め言葉でいいよ。なんか私、すみれちゃんみたいなこと言っちゃってる」
3人の笑い声が響く。
すみれ廊下を歩いていると、まりなと久哉が会話しているのを目撃する。彼女は2人に見つからないように、身を隠す。
まりなが真剣な眼差しをして至近距離で、久哉を見つめる。若干戸惑った表情の久哉。
「そんなマジな顔で見るなって。それに近い…」
「ねぇ。まりなのこと、どう思ってる?」
まりなは、どうしても気になっていた。久哉が自分のことを好きなのではないかと。
「かわいいと思ってるよ」
「それってお世辞?」
「この際、ハッキリ言う。お世辞じゃなくて本心だ!」
久哉は少し大きめな声で答えたため、まりなは動揺しながら照れてしまう。
「そんなに、大きな声で言わなくても」
「でも、どうせ俺とは釣り合わないと思ってるよ。俺、ナンパっぽく見えるだろ?」
「久哉くん、冷静になり過ぎ。まりなに気を使って遠慮しているんでしょ?」
「まりちゃんさ、俺がそんな感じに見える? からかう時の俺とそれ以外の俺、同じに見える?」
まりな、久哉の真剣な言葉を聞き、一瞬詰まる。
「俺さ、気は使う時は使うけど、必要以上には考えないから。基本的にざっくばらんに話しているし」
「そうだよね。久哉くんが、クラスのみんなやグループのみんなのこと見ているの、まりなも知っているから」
「わかってくれれば、それで嬉しい」
「だって久哉くん、意外とスマートって感じだから。何か合っても引きずらないし。まりなやたまちゃんだと、すぐ落ち込んじゃうから」
「やっぱり思うわ。まりちゃんの一番の相方はたまちゃんだって。その次はみっちゃんかな」
「確かに、たまちゃんは幼馴染だからちょっと特別かな。でもみんな同じくらい大事な友達だって思うから」
「そういうところは、まりたま揃って純粋だな」
久哉、笑顔でまりなから離れていく。
すみれ、通り過ぎる久哉の脇から話しかけてくる。
「あんたにしては、なかなか自分の気持ちを言えた良い機会だったんじゃない?」
久哉、若干動揺する。
「すみれ。てか俺のこと監視していたなんて、趣味悪いな」
「監視? たまたま通りかかっていたから見ていただけだけど」
久哉、鼻で笑う。
「でも、今日の久哉を見て、案外紳士的には見えたかも」
「案外は余計だろ」
「一応、褒めているんだけどね」
すみれ、久哉に背中を向けて去っていく。
「たく、本当に口が悪いやつだ」
たまき、さり気なく久哉の隣に立っている。
「ぼく、すみれちゃんのあんなところ、惹かれている気がするんだよね」
久哉、たまきに気づき、ビビる。
「てか、たまちゃんまで驚かすなって」
たまき、くすりと笑う。久哉もつい笑ってしまう。
「それにしても、たまちゃんも物好きだな。すみれみたな奴が好きだなんて」
「そうかな…」
「みっちゃんとかえでのことも好き。そして俺も好き。好みのタイプが全然わかんないな。俺ら4人の共通点ってなんだろう?」
「やっぱり、やさしくて頼りになるところかな」
「そうかい? 俺あんまり自覚してないなぁ。確かにすみれは頼りにはなる。みっちゃんもかえでもやさしいしな。」
正面から歩いてくる玄斗と昂汰が、2人に話しかけてくる。玄斗が2人の恋バナを既に聞いていたかのように問いかけてきた。
「そんで、2人は誰が好きなの?」
「俺? そりゃ見た目も性格もどっちも平均以上なら合格かな」
その回答を聞いた昂汰が、思わず笑ってしまう。
「軽そうに見えて意外とハードル高くて、面倒臭えな。たまちゃんは?」
「ぼく? えーっと」
「俺とすみれとかえでと…」
「ちょっと待って、あまり言わないで」
「意外とたまちゃんも物好きだな」
「だって、久哉のグループって、5人みんな変わっている奴らばかりだろ」
「結局、ぼくって普通じゃなくて変わっているんだ…」
「何言ってんだって、俺がそういうキャラばかり集めたからだ」
「けど、久哉もたまちゃんも、女子の中にいても自然と馴染んでいるのがすごいわ」
「寺本って無愛想でとっつきにくいし、滝川は元気だけが取り柄でやかましくて、ずっといるとしんどいわ」
「でも、ぼく達同じクラスだけどね」
たまきは玄斗と昂汰にさり気なくツッコむ。
「てか久哉、まりちゃん距離近くて意外と怖いし。みつばちだっていつ騒ぐかわかんないし。あの2人ってクラスでもあんな感じなの?」
「ま、その通りだな」
みつばとかえでが背後から声をかける。
「ちゃんと聞こえてたよ~」
「たまちゃん以外の3人。裏でも私のことからかうなんて」
「からかっているのは玄斗と昂汰だから。俺はその…愛情表現ってやつだ。それじゃ」
久哉、逃げていく。玄斗と昂汰は久哉を追う。
「あ、自分だけ逃げやがって」
「ちょ、久哉待てよ」
たまき、くすりと笑う。みつば、話題を切り替えて、お茶会の提案をする。
「ねね。そろそろ寒くなってきたから、お茶会でもやってみない?」
「みっちゃんが、お茶担当。かえでちゃんがお菓子担当だよ」
たまき、軽く目を輝かせる。
「なんか面白そう」




