第3話 魅惑に遊ばれる日々(6)
翌日、一般公開で多くの人が来場。体育館のステージでは、浴衣姿のまりなとみつば、ハッピを羽織ったかえでのコントが行われ、まりなとみつば、クラスの出し物をネタにしている。
「男子達から、文化祭で浴衣着るか?って言われたけど、縁日だからって答えたんだよね」
「まりなのアイデア、否定されちゃってたのかな…」
「そんなことないなって。かえでちゃんとたまちゃんのほうがツッコまれていたもん」
かえでが、2人をフォローする。
「確かに、お化け屋敷にハッピってワケワカメみたい」
「お祭りの中のコーナーでなら、なんとなくわかる」
まりな、みつばをフォローする形で、ふと思いついた話し出す。
「そういうことなの?」
「イエス」
「2人とも、絶対今考えていたでしょ…」
みつば、まりなとかえでの回答に突っ込む。観客席から笑い声が届く。3人とも安心しながら、次の話題に入る。
「私思ったんだけど、文化祭って勉強になるよね」
会話のネタを持ち出すことは、みつばの特技になっていた。
「まりなも。来年は何をやるか。考えちゃうよね」
「来年、何やりたいかもう考えているよ。私達のコント」
かえでが、同じことをやると言い出すと、まりなとみつばのツッコミが炸裂する。
「えー、また同じ? やっぱりまりなは、ダンスとか音楽ライブかな」
「延々に喋っているだけで何が面白いのか、わかんないし。来年は飲食。でも、一旦お休みもありかも」
雪女姿のすみれが背後から声をかける。
「あなた達、ちゃんと働きなさい」
まりなとみつば、すみれを見て驚く。
浴衣姿のたまき、走りながらまりな達の後ろに隠れるように現れる。
「ぼく、お化け怖くて無理~」
「もう、たまちゃんったら。小さい時からまりなの後ろに隠れていたもんね」
観衆からの笑い声。みつば、まりなに隠れるたまきを見て、かわいらしく思いながらツッコミを入れる。
「たまちゃんのオトメ街道まっしぐらだよね」
「あれ? 久哉くーん?」
たまきが、辺りを見渡しながら呼びかけると、他の4人も辺りを見渡す。
「まさか、逃げ出したりしてないよね」
「久哉のことだから、何か考えがあると思うけど」
みつばは、逃げていると疑うが、すみれは何か仕掛けていると見ていた。
観客席から、スーツ姿でメガネをかけた久哉が、紙袋を持ちながらステージにあがってくる。5人は一瞬、"誰?"というリアクションをとるが、じっくりと見て久哉だと気づく。まりなが思わず声を上げる。
「久哉くん!?」
「自分だけ、かっこつけちゃって。ずるいよー」
かえで、笑顔で久哉を茶化す。久哉、メガネを外して5人に花束を渡す。
「ちょっと、久哉くん。昨日はちゃんとずっといてくれたのに。どうして今日は?」
みつばが問う。
「俺がいたら、かわいい君たちのコントが台無しになるからさ」
「あんた、かっこつけたいだけでしょ?」
すみれ、いつも通りに久哉にツッコミを入れる。観客席から笑い声。
「俺からみんなへのプレゼント。日頃のねぎらいさ」
「ありがとう」
たまきとすみれ以外の3人が声を揃えて、久哉に感謝する。一方、たまきは久哉に思い切り抱きつく。女子4人と観客席の人達は少しびっくりした表情。
「ありがとう、やっぱりかっこいい!」
「おいおい、たまちゃん。ここはステージだって」
観客席から笑い声と拍手が送られ、無事、パフォーマンスが終わった。
文化祭が終わる。空がオレンジ色になり、多目的教室ではまりたま以外の4人が。下校する準備をしようとしていた。
「ごめん、みんな先に帰って。まりな残ってやることあるから」
「ぼくも。一緒に帰りたいけどね」
久哉は、まりなに何かありと思ったが、快く返事をする。
「了解。今日は楽しかった。次は何る?」
「私は、茶道体験がいいかな」
「それ、みつばのソロで実演すればいいでしょ」
「じゃ、バイバーイ。また来週ね」
4人、手を振って教室を出ていく。
まりなは少しモヤモヤした気分で、たまきと2人きりになる。
「どうしたの?」
呆然としているまりな。たまきが、話題を変える。
「もうすぐハロウィンだよね。なにかイベントとかパーティーやらないと」
「そうだね」
まりな、少しビクッとしながらたまきに返答する。因みに、ハロウィンの日はまりなの誕生日。
「たまちゃん、もしかしてなんだけど…」
「どうしたの?」
「好きな子、いる?」
たまき、一瞬口が止まる。答えづらかったが、軽く問い返す。
「いると、思う?」
まりな、首を縦に振り、真剣な眼差しで見つめる。
「4人の中にいる。というより、まだ絞れないかも」
たまきはやや抽象的に答えた。
「やっぱり…」
まりなは、若干落ち込むような声で返す。
「どうしたの? 元気ないけど?」
「たまちゃん、久哉くんのことなんだけど。もしかして、まりなのことが好き?」
たまき、答えるのが更に辛くなる。
「久哉くんに直接聞いてみないと」
「そうだよね…。因みに、たまちゃんから見てそう見える?」
「そうかも…。ぼくも久哉くんには憧れているから」
「…。ねぇ、まりなどうしたらいいかなぁ。」
「ぼくも同じ。ぼくの周りってすごい子ばかりだから」
まりたま、揃って夕日を見ながら黄昏れる。次第にお互いの方向に首を傾げて、軽く目をつぶる。




