第3話 魅惑に遊ばれる日々(4)
2学期に入り、1週間後には文化祭を迎える頃まで時が進んでいた。
1-D組の教室内で。たまきとかえでが、お化けに扮したクラスメイト達の動画を撮影をしている。たまきとかえではシャツの上にハッピを羽織っている。
お化け役の中には、白い着物に紫の帯、真っ白な化粧を施したすみれの姿があった。まさに雪女そのもの。たまきは彼女をずっと眺め続けてているが、怖さというよりは、麗しさを感じているように映っている。
(綺麗…。やっぱり、似合うなぁ)
かえで、たまきの顔の前で手を振って呼び起こす。
「たまちゃーん? もしかして、お化けに呪われちゃってる~?」
たまき、かえでの声に気づき、視線をかえでに変える。
「あっ、ゴメンゴメン! すみれちゃんが一際目立つからつい…」
「すみれちゃんって普段から笑ってないから、やっぱりしっくり来るよね」
「だよね」
近くにいる女子達3人がたまきとかえでの会話に入ってくる。
「すみれちゃんってすごいよね。お化け役を引き受けてくれるなんて、流石は鋼のメンタル」
「やっぱり、オーラがあるし。見応えバツグン」
「お馬鹿な男子達にしてはいいアイデアを出したかもね」
「ぼくやかえでちゃんみたいなキャラだと、お化け役には向かないから、すみれちゃんみたいに落ち着いた子が適役なんだよね」
楽しそうに会話が続く。
たまき、かえでに髪型の話題を持ち出す。
「当日の髪型、どうしよっかなって考えていたんだけど。あとメイクも」
「良いよね、たまちゃんには美容師のママがいるから。かえでちゃんは少し濃い目にメイクしよっかな~。髪も少しアイロンで巻いちゃおっと」
たまき、かえでの姿を妄想する。ぼーっと見つめながら語り出す。
「かえでちゃん、やっぱり張り切っているね」
「勿論~。すみれちゃんは多分、そこまで大して変わらないかも」
「あのままでも、十分出来ているもんね」
「まりちゃんとかみっちゃんは、どんな髪型にするのかな~? あの2人なら結び方とかも考えてそうだよね。まりちゃん、もしかしてポニーテールにしてくるとか」
「まりちゃんね。昔から左右に分けて結ぶこだわりがあるから、変化球はあまり期待できないかも。後はリボンや花飾り辺りをつけそう」
「まりちゃん、やっぱり、昔から三つ編みかツインテールが多かったんだね」
「もしかしたら、三つ編みの輪っか、いつもより高い位置でツインテール、ツーサイドアップあたりにしそうかな」
まりなの髪型事情を知るのは、たまきと、まりなの家族と麻紀絵くらいだ。
「みっちゃんの方が多彩かも。結んだり結ばなかったりだし、髪をどのくらい巻くのかなぁ。それともストレートかな。シンプルでいくか、アレンジでいくか。かえでちゃんすごい楽しみ~」
たまきは妄想の対象を、みつばに変える。脳内には、多くの髪型のパターンが次々と浮かんでくる。
(まりちゃん以上に、選択肢が多い。当日のみっちゃん、結構悩むかも…)
D組前の廊下では、久哉が、玄斗と昂汰が出し物に関する雑談をしてた。久哉は他のクラスの出し物の話題を出す。
「F組もお化け屋敷をやるんだってさ」
「こっちも負けてられないな」
昂汰がF組への対抗心を燃やす。
「F組の仲良い奴に話聞いて、試しに撮影しにいったら、互角だな」
久哉の言葉を聞き、玄斗は誇りを持っているように返す。
「うちの方がリアリティあるから。こっちにはリアル雪女いる訳だしさ」
「因みに、寺本を雪女役に推薦したの俺だから」
お化け屋敷は玄斗、雪女役がすみれという案は昂汰が出していた。
「昂汰、見る目あるな」
「お喋りばかりで、随分楽しそうね」
すみれ、不気味そうに3人の背後から声をかける。3人が振り向き、すみれの姿を見てビビる。
「ぎゃぁーっ!!」
すみれ、鼻で笑う。みつば、久哉を呼び戻しにやってくる。
「久哉くん、こっち手伝って~」
「今戻ろうとしていた。流石にすみれが怖過ぎる。てか、すみれのおかげでリアリティのあるお化け屋敷になりそうだ」
B組ではまりながクラスメイト達と、教室の椅子と机を整理しながら、セッティングをしていた。久哉とみつばが戻ってくる。さり気なく玄斗と昂汰もついてくる。みつばは、玄斗と昂汰を軽く追い払おうとする。
「あなた達まで来る必要ある?」
「俺らだって、B組の出し物見てみたいから」
「至って普通の考えだとおもうよ。みつばちちゃん」
昂汰からそのように呼ばれ、みつばは若干不服。
「それより、未だにみつば呼びだなんて」
「ま、いいじゃん。虎柄の浴衣でも着てくるんだろ?」
久哉、玄斗と昂汰に乗る形でみつばをからかう。
「着ません」
まりなが久哉に声をかける。この日のまりなの髪型はツインテールだった。
「久哉くん、撮影しないと。うちのクラスまだ出来てないよ」
「そうそう。今撮影しないと。明日、放送室から流せないよ」
みつばも久哉に働くよう促す。
「わかった。よし、みんな今から宣伝の撮影するよ」
あっという間に、撮影が終わってクラスメイト達が談笑している。その中でまりなは、若干失敗したというような心情でスマホを自撮りモードにしている。
「浴衣持ってくれば良かったかも。髪型もいつもより可愛く」
みつば、まりなの隣で軽くフォローする。
「ここは、当日にとっておこうよ。十分その髪型でもまりちゃんはかわいいわけだし」
「そこまで煽てられちゃうと…」
久哉、まりなとみつばの髪型の話をしているところを軽く笑顔で眺めている。3人をたまきとかえでが、廊下から眺めていた。たまき、久哉がまりなに視線を向けているのに気づく。
玄斗と昂汰、たまきとかえでのそばまでやってくる。
「久哉くんと随分楽しそうだったね」
「意外にあいつと気が合うんだよな」
玄斗曰く、自分達と久哉は若干似ているとのことだ。
「一緒にうちのグループに来ればいいのに」
「久哉以外がクセあり過ぎでついていけない」
昂汰にとっては、女子4人のキャラがクセありと見ていた。
「ぼくもクセがあるってことかな?」
かえで、まりなとみつばのそばにやってくる。
「ねね、2人とも髪型の話ししてたでしょ?」
久哉、かえでが乱入してきてテンションが下がる。
「まりちゃん、宣伝の撮影なのに髪型と浴衣で気合い入れたかったみたいだよ」
「まりな、当日のみっちゃん、楽しみにしているから」
「みんなが楽しみにしているよ」
「そこまで、注目されないと思うけどね」
たまき、玄斗と昂汰とひそひそと久哉について話をする。玄斗、久哉がまりなに好意ありと見ている。
「久哉、絶対まりちゃんのこと好きだって」
「ずっと見てたもんな」
昂汰にもそう見えていた。
「ぼくもなんとなくわかってたよ。文化祭の打ち合わせ、あの2人で行ってたから」
玄斗がたまきに問う。
「たまちゃん的にはどうよ? あの2人ってお似合い?」
たまき少し考えなが、答える。
「意外と合うかも。まりちゃんは面倒見が良いし、久哉くんはキザだけど紳士的って感じがあるから」
たまきとしては、わりと肯定的な回答であった。
「泣き虫なまりちゃんを慰める久哉。なんとなくわかるわ」
昂汰の抱くまりなと久哉のイメージは、たまきと玄斗にもしっくり来ている。たまき達の背後からすみれが声をかける。雪女姿から制服に戻っている。
「面倒くさがりな久哉を、やる気付けようとするまりなの方が、しっくり来ると思うけどね」
3人、後ろを振り向いてビビる。
「すみれちゃん!?」
「とりあえず、ただのナンパじゃないか私もお手並み拝見するね」
たまき、まりなと久哉を軽く笑顔で見つめる。
(久哉くん、まりちゃんのこと好きそう。でも、まりちゃん気付いてる…?)




