第3話 魅惑に遊ばれる日々(3)
夏休みに入り、6人は文化祭絡みで多忙な日々を送っていた。というのも各々のクラスだけでなく、グループでの出し物もあり、文化祭実行委員会のサポートもあるからだ。
多目的教室では教卓の前で、まりな、たまき、久哉、かえでの4人が話し合いをしている。話題はグループでの出し物ではなく、B組とD組の出し物について語っていた。
「D組の宣伝は、かえでちゃんとたまちゃんでやることにしましたー!」
「この際だからぼくも、やってみようと思って」
「背後からすみれが登場するパターンもありだな」
久哉は、D組のお化け屋敷に興味津々だ。
「久哉くんったら、うちのクラスの宣伝も考えてね」
「一応B組は、まりちゃんとみっちゃん。で、このグループは俺以外の5人」
軽く、久哉がグループの宣伝について触れた。
「久哉くんも表舞台に立たないと。グループの意味がなくなっちゃうよ」
かえでが、ツッコみながら久哉が目立つポジションに立つように促す。とはいえ、久哉は自分以外の5人を煽てながら逃げようとする。
「大丈夫、美少女4人とかわいい男子がいれば宣伝はバッチリだからさ」
「久哉くんの方が、ぼくよりトーク力高いから宣伝向いているって」
「たまちゃんのほうが、キャラとしての受けがいいだろ」
まりな、文化祭当日の開会式に関しての話題を持ち出してくる。
「それより、開会式での司会アシスタントを6人の中から誰か選んでって頼まれているんだけど…」
「かえでは目立つし、ここはまりちゃんとたまちゃんで行くか」
「それいいかも。かえでちゃんも賛成! ね、すみれちゃんとみっちゃんは?」
気だるそうなすみれと、バテ気味のみつばは、教室後方の壁に寄り掛かりながら、お喋りをしていた。
「想像以上にやること多いし、暑いから今にも倒れるそう。ね、すみれちゃん」
「確かにね。でも私が暑さに負けたら、雪女の意味がなくなるから」
「クールなすみれちゃんも暑さには弱いなんて」
久哉が、茶化しながらすみれとみつばを呼ぶ。
「そこの2人、ちゃんと会話に入ってこいよ~」
「大丈夫、ちゃんと聞いていたから」
「私も。うちのクラスの宣伝はまりちゃんと私でOK。でもクラスのみんなと話し合わないとね」
ここで、すみれがグループの出し物について話題を出し始める。
「クラスの出し物の宣伝もいいけど、グループでの出し物は?」
すみれの言葉で、みんなが忘れていたという素振りをする。久哉がその場をうまくまとめて、話題をグループでの出し物に切り替えた。
「そうだよな。やっぱりやること増えると何か忘れそうになるからな。よし、じゃここからはグループの出し物について話し合うか」
「やること多くて大変だけど、みんなで楽しくやりたい。クラスでも、グループでも」
「かえでちゃんも」
「まりなも」
みんな、前向きなスタンスで臨もうとしているようだ。
久哉がアイデアを出す。
「お笑いコントはどう?」
「いいんじゃない。久哉とみつばとかえでの3人で」
「いやいや、すみれはツッコミで必要だって」
「かえでちゃんはボケ、すみれちゃんはツッコミ確定だからね。私と久哉くんは両方出来るし」
すみれ、まりなとたまきの名前が出ていないことに気づき、2人の顔を見て察した上で、みんなに問いかける。
「まりなとたまちゃんは?」
まりなとたまき、なかなか4人の会話に入ろうとするも、自分の役割が思い浮かばない。
「ぼくってお笑いだと何が向いていると思う?」
「まりなもあまり、しっくり来ないかも」
まりなとたまきの言葉を聞いて、他の4人が役割について考える。そんな中、かえでがお笑いに絡んだアイデアを思いつく。
「ねね、コントを交ぜた劇はどう?」
「お芝居を混ぜた方が飽きずに見られそうだから、いいんじゃない」
すみれとしては珍しく、快くかえでの意見に賛成した。他の4人も同じく賛成の意向を示す。
「ぼくもいいと思う」
「まりなも。配役と設定を考えないとね」
団らんとした会話が続き、モチベーションが上がっていく。会話が続く中、まりなとたまきの内心では、どこかモヤっとした状態だった。そして、たまきがテーマが思いついたテーマは文化祭だった。
「テーマは文化祭ってどうかな? 文化祭の出し物を活かしたネタを使ってみようよ」
「随分変わったアイデアだな。でも面白いと思う」
「賛成。私達のリアルな日常が伝わるから、逆にやりやすいかも」
久哉とみつばが賛成の意を示す。勿論、まりなとすみれとかえでも賛成。
「まりも賛成。クラスの出し物の衣装のままでも出来るからいいと思う」
こうして、グループでの出し物が決まった。
まりなとたまきは公園のベンチに座り、シャボン玉を吹きながら黄昏れていた。2人ともどこか疲れている表情。まりなはたまきの表情を見て心配そうに見つめる。
「まりちゃん?」
「たまちゃん、無理してる?」
「そんなことない。と言いたいけど、やること多くて疲れちゃって。ただでさえ、ぼくってひ弱なところがあるから」
「ひ弱なのはまりな。結局あの時も久哉くんに助けてもらったし」
「まりちゃんは頑張っているって。ぼくなんて。みんなに申し訳ないことばかりしている気がする」
「どうして? たまちゃん頑張っていると思うけど」
「ぼくって、アイデア出しているだけであまり役に立っていないかも」
「それを言ったら、まりなだってサポートしか出来ていないよ」
「まりちゃんは、みんなのケアが得意じゃん」
2人とも、自分の価値に対して疑問を抱いていた。どうしても、他者と比べてしまう。
「それでも、ママには叶わないし。たまちゃんはまりなよりも明るくて輝いているって」
「それを言っちゃえば、明るさならぼくよりも、ママやかえでちゃんのほうが上だと思う」
数十秒程の沈黙が続き、まりながたまきに問う。
「ねぇ、たまちゃんって自分のことどう思ってる?」
たまき、少し考えながら答える。
「やっぱり、みんなと比べて全然大したことないって思う。グループでもクラスでも、みんなが魅力的に見える」
「そっか。やっぱりまりなと同じ」
「まりちゃんも?」
「たまちゃんが、みんなのことを見て惚れているようなところを何回か見ているの」
たまき、少しドキッとしてしまう。
「嘘? そう見えてたの?」
「たまちゃんの仕草ってわかりやすいもん」
「ぼくって立場が一番下に見える気がして。久哉くんはお兄ちゃん、まりちゃん達はお姉ちゃんみたいに」
まりな、たまきの両頬に触れて顔を見つめる。
「どうしたの?」
「何抱えていたり、悩んでいたら、どんなことでもまりなに言ってね」
「今までそうしていたと思うよ。困ったら時は誰かに相談するって」
まりなが、目を潤ませる。
「ごめんね。まりな頼りなくて」
「どうしてそう思うの?」
「だって、たまちゃんがかわいいから。放っておけなくて」
たまき、シャボン玉を膨らませて、まりなの頬にくっつける。そして、指でシャボン玉を潰す。まりな、少し驚いた評定をする。
「まりちゃん心配し過ぎ」
たまきの表情は無邪気な笑顔だった。
「たまちゃんが元気な証拠だね」
まりなも、無邪気な笑顔になって、シャボン玉をたまきに吹きかける。




