第2話 いろどりいいとこどり結成(5)
翌日、多目的教室にすみれとみつばが2人きりでいた。みつばは気を落ち着かせるため、ペットボトルの緑茶(煎茶)を飲んだ。
「大丈夫?」
すみれ、自分に怯えているのかと思い、声をかけた。みつばは、飲んで少しスッキリした表情。
「すみれちゃん。緑茶とウーロン茶と紅茶の違いって知ってる?」
「茶葉の発酵具合でしょ」
「…知ってたんだ」
みつばは一瞬、期待を外したような顔をした。
「みつばって、お茶好き?」
「好き。私は抹茶が好き」
「抹茶と緑茶って何が違うの?」
「抹茶は緑茶の一種で、茶葉を日光で遮って作られるの。茶葉を細かく砕いて粉にするから、溶かして飲んだり、お菓子に使われたりするんだよね」
「なるほど。普段飲む緑茶は抹茶とは違うのね」
すみれは、興味げにみつばの話に乗っていた。みつばも好きな話題になると、熱が入り舌が回る。この光景を目の当たりにしたすみれも、無表情ではあるが、内心楽しそうである。
「ペットボトルで売っている緑茶は大体煎茶。日光を浴びて作って、茶葉を乾燥させるから、抹茶とは別物」
「緑茶について、ここまで知っているなんて。みつばって意外と物知りね」
「そう? ありがとう」
まりなとかえでが入ってくる。
「みっちゃんとすみれちゃんが楽しく話しているなんて。かえでちゃん感動!」
かえでは、珍しい光景にはしゃいでしまう。
「大げさ」
すみれとみつばが口を揃えるも、2人とも内心嬉しかった。
「みっちゃんって緑が好きなんだよね。お茶について詳しいし、穏やかな空気を好むからそんな気がする」
まりなが、みんなを色に例えながら話し始めた。
「すみれちゃんは、紫かな。すみれの花の色もそうだけど、独特な雰囲気と美意識高いところがあるから」
「好きだよ。明るい色より暗めの色の方が好き。なんとなく暗めのイメージがあるからね」
「かえでちゃんは、明るく賑やかだからオレンジだと思う」
「ピンポーン、オレンジ大好きでーす!」
みつばが会話に乗りながら、まりなをピンクに例えながら話す。
「まりちゃんは、優しくて慈悲深いところがあるからピンクかな」
「まりなの一番好きな色はピンク。服もヘアゴムも小物もピンクを選ぶことが多いし」
「たまちゃんは何色だと思う?」
すみれが問いかけると、たまきが入ってくる。
「一番好きな色は黄色なんだよね。それより、ぼくこのグループの名前思いついたんだ」
女子4人がたまきの答えを興味津々に待っている。
「『いろどりいいとこどり』はどうかな?」
久哉が、割り込むように入ってきて意見を言う。
「俺は『剣崎久哉と変わった5人』がいいと思う」
「却下」
久哉以外の5人、口を揃えて反対する。
「冗談。たまちゃんの意見に賛成」
久哉、たまきの意見に快く賛成した。女子4人も首を縦に振る(まりな、みつば、かえでは嬉しそうに、みつばは爽やかに)。
「因みに俺の好きな色は青」
「やっぱり。クールで余裕そうな感じだもん」
たまき、誇らしげに安心した表情をする。
「ぼく、考えていたんだ。みんなの共通点から出来ること」
5人が真剣に見つめる。たまきは緊張している。
「多目的でいいかな? 色々やってみたくて…」
たまき、緊張して声が出なくなる。まりながたまきを励ます。
「いいと思うよ。いろどりと、いいとこどりだから」
「かえでちゃんも、賛成!」
「私も」
すみれとみつばも声を揃えた。
「俺も。内容によるけど」
「やったー!」
たまき、嬉しさのあまり子どものようにはしゃいだ。そんなたまきを見て、5人も楽しそうな気分だった。
「もうたまちゃんったら」
まりな、頬に嬉しさが溢れてしまい、涙を流す。4人は、まりなの嬉し涙が、たまきへの励ましであることはわかっていたので、そのまま見守った。
「まりちゃんやみんなの助けがなかったら、ぼく何も出来なかった。本当にありがとう!」
たまきもまりなに連れれて、もらい泣きしてしまう。
「2人とも、ただのメルヘンチックなコンビじゃないってことだな」
久哉、軽くドヤ顔をする。すみれ、久哉の耳元でホラーチックに詰める。
「たまちゃんに私と2人きりで帰るように仕向けたでしょ?」
久哉、背筋が凍るように冷や汗をかく。たまきから誘われた時点ですみれは既に感づいていた。
「たまちゃんに免じて見逃してあげる。そのかわり、しっかり働いてね」
「ねぇ、みんなで写真撮ろうよ」
たまきが言い出すと、6人で順番に集合写真を撮影していく。まずは、たまきの番。
「次は久哉くんね」
久哉の番が来て、ナンパ気取りをする。
「俺、高校初だわ。美少女に囲まれて写真撮るの」
すみれの番が来て、久哉を軽やかにあしらう。
「みんな、煽てに乗らなくていいから。でも久哉、夢が叶ってよかっじゃん」
かえでの番が来て、相変わらずテンションMAXで撮影。
「ほら、もっと満面のスマイルしないと」
すみれは軽く口角を上げる程度、他の5人はいつも以上にスマイルを意識する。みつばの番が来て、写真撮影の楽しさを感じるよう物語る。
「写真同好会の要素もありかも。撮影代行的な感じでね」
みつばが意見を言い出して、まりなの順番が来る。手が少し震える。
「まりな、最後だからちょっと緊張しちゃう」
と言いつつ、思い切って撮影。写真はブレること無く、綺麗に収まった。
「良かった!」
まりな、嬉しさのあまり声が大きくなる。たまきもまりなが撮った写真を眺めながら褒める。
「大事にしようね」
まりたま揃って、教卓で楽しそうに会話が続く。4人は少し離れた位置から眺めている。
「まりちゃんとたまちゃんって、常にシンクロしているよね。面白い」
かえで、シンクロしている2人を羨ましく思いつつも感激している。
「幼稚園から仲良ければ、そりゃそうなるよな」
久哉も、2人を子どもががじゃれ合っているように感じながら、あっさりとコメントした。
「妖精のじゃれ合いみたいで、かわいい」
みつば、見ながらうっとりする。
「多分、大人になっても変わらないかも」
すみれとしては褒めているつもりの回答。他の3人としては中立的な感想に聴こえたが、悪口ではないので各々気にしていない。まりたま、4人から見つめられて、顔を赤らめてしまう。
「やだ…恥ずかしい」
思わず、2人でハモってしまった。4人とも微笑ましかった。
「とりあえず、今日はみんなでどこか遊びに行こう!」
かえでが、先陣を切るが、久哉がツッコミを入れる。
「遊びたいけど、テスト近いんだよな」
すみれ以外の4人少しがっかり気味。
「活動はテストが終わってから。それでいい?」
すみれが、提案すると5人は賛成するように首を縦に振る。少し時間が経過して、まりたま以外の4人が横に並びながら歩き出す。後ろにまりなとたまきは立ち止まって4人の姿を眺める。たまきには4人が魅力的に見えた。
(みんな素敵に見える、憧れちゃう)
まりな、たまきの姿を見て、微笑ましさと少し動揺した感情が混ざっている。
(たまちゃん、4人の中で誰か好きな子がいるのかな… やっぱりすみれちゃん?)
「まりちゃん、たまちゃん、早くー」
2人とも、みつばの声に笑顔反応しながら4人に追いつき、6人で会話しながら下校する。




