第2話 いろどりいいとこどり結成(2)
放課後、6人は裏庭でバレーボールをしながら、ボールが来た人が回答するというルールを設けて案を出し合っていた。
「かえでちゃんの考えはね、スポーツ+料理」
かえでが、久哉に向けてボールをレシーブする。
「スポーツといってもどうせバレーだろ?」
ひさや、すみれにトスする。
「料理とセットにする理由ある?」
すみれとしては、かえでが深く考えていないということはわかっていたので、かえでにトスする。
「動いたらお腹が空く。まさに一朝一夕」
かえで、たまきにトスする。
「料理は誰が作るの?」
たまき、みつばにトスする。
「それな」
みつば、久哉にトスする。
「動いた後に料理するのは結構疲れるぜ」
久哉、まりなにトスする。
「そっか。じゃ他に何かアイデアある人いる~?」
かえでが喋りだしたことに、気を取られ、まりな、ボールをトスできずに、落としてしまう。
「かえで、まりちゃんボール落としちゃったじゃん」
「ごめん、ごめん。何かある?」
「みんなが、楽しめるものならまりなはなんでもいいと思うよ」
「その楽しめるものっていうのが、みんなバラバラだから決めているんでしょ」
すみれがまりなの意見に突っ込む。まりな、以降言葉がなかなか出てこない。
「とりあえず。今日はここまでにして、みんな宿題で考えてきて」
久哉が、上手い具合にその場を収めた。
大堀川に沿った遊歩道まで自転車で走っていたすみれと久哉の2人は、自転車から降りて、ベンチで隣り合って座りながら、お喋りをする。
「俺的には、何をやるか決まらない気がする」
調整役が合っていると自覚している久哉だからこその悩みが出てきた。
「まりなはあまり意見言わなそうだし、みつばはベタな回答をただ言うだけ。たまちゃんは空回りしそう」
「すみれさ、他の4人のことディスってるっしょ?」
「別に。タイプが違うだけ。私と違ってのほほんとしている子達だから」
やはり、第三者から見たすみれの印象は、周りの同級生達を下に見ているように映っているという誤解が生じている。久哉としては遠回しに、「そのように見えちゃうけど、どう?」という問いをすみれに投げかけているのだ。
「俺の周りには変わり者ばかり集まる。共通点があればいいけどな」
「相変わらず呑気ね」
「俺らは冷めた者同士、みつばとかえではユニーク、まりちゃんとたまはちゃんはメルヘン。どれもバラバラだからなぁ」
「案外頭がキレる久哉でも、悩むことってあるんだ」
「そりゃそうだって。デフォルトでの知り合いが限られている訳だし」
「3年経てば、みんなバラバラになるのに。友達づくりに一生懸命になるのも」
「そう、暗く考えるなって。ここは前向きに捉えようぜ」
久哉としては悩むことは、決してマイナスではないと考えており、彼の冷静沈着さがはっきりとわかる。
「別に、後ろ向きじゃないから」
すみれも、決してネガティブ思考ではない。ただ、ありのまま感じたことを伝えたいだけなのだ。といっても口下手で感情表現も不得手が故、相手に理解してもらい辛い欠点がある。
みつばとかえでは、ショッピングセンターを歩き回っていた。みつばはどこか、モヤモヤと何か頭を悩ましてるようだ。
「ねぇ」
「何かあった~?」
「なんか、私とすみれちゃんって上手く噛み合わない気がするんだけど」
「かえでちゃんには、そう見えないけど」
「かえでちゃんは誰とでも仲良くなれるからでしょ。相変わらずとっつきにくいし」
「確かに普段クラスで見てても、自分から他の子に声をかけることは少ないかなぁ」
「やっぱり、見た目のまま」
「でもさ、他の子から声をかけられたら案外普通に話してくれるんだよね」
小学校からの付き合いの久哉は別として、まりなとたまきも、多少の戸惑いはあったが意外と普通に会話が出来ていた。どちらかとえいば、みつばが自らすみれとの壁を作っているようである。
「あの第一印象の悪さが損している気がする」
「そう? 第一印象は別に悪くないと思うよ」
「かえでちゃんと久哉くんみたいなタイプからすればどうってことないと思うけど」
「みっちゃん、気にしすぎだよん」
「でも、まりちゃんとたまちゃんは何とも思わないのかな。あの2人繊細な感じだし」
みつばの心配性な一面はまりな、気持ちが表に出やすい面はたまきと類似している。加えて引っ込み思案なのが欠点であった。
まりなとたまきは、地元の公園でシャボン玉を吹きながら、クラスや他の4人(すみれ、久哉、みつば、かえで)のことを話していた。
「まりちゃんって、今のクラスって楽しい?」
「楽しいよ。最近よくみっちゃん以外の子から話しかけられるようになって」
「ぼくも。最初は女子と話すことが多かったけど、最近は男子からも話しかけられるようになったかな」
「いじめられたりしてない?」
「大丈夫。まりちゃん心配しすぎ」
「まりな、他の子と会話しているときも、『気にし過ぎ』とか『わざわざ泣かなくても』って言われるんだよね」
「泣くって、何かあったの?」
「彼氏と別れて泣いていた子がいたんだけど、話を聞いたらまりなも」
「まりちゃんって、昔から人のために泣いちゃうところあるよね」
「やっぱり、まりなって変わっているのかな。他の子に比べて泣きやすいし」
「泣きやすいっていったらぼくも。怒られたり、責められたりすると、目が潤んじゃうし。でも、逆に嬉しいと興奮しちゃうから」
「たまちゃんって、気持ちの波が大きくてびっくりしちゃうもん」
「そういうところ、なかなか直そうと思っても直せなくて」
「たまちゃんのそういうところを見ちゃうと、まりなも、自分のことみたいに思っちゃうんだよね」
「それより、ちょっとあの4人が気になっているんだけど」
「まりなも。みっちゃん大丈夫かな? 天然で控えめな子だから、他の3人に若干振り回されていてちょっと心配」
まりなもたまきも、4人について考えている。とくにまりなは心配性なので、すみれのとっつきにくさと、みつばの引っ込み思案な部分を気にしていた。
「久哉くんとかえでちゃんは、さっぱりしているからいいけど」
久哉とかえでは、コミュニケーション能力は割と高く、比較的物事を前向きに捉えようとする傾向が共通している。
「すみれちゃんだよね。まりな、なんだか対等って感じがしなくて」
「ぼくも。憧れるタイプだからなのかな」
やはりこの時点で、まりたまに映っているすみれの印象は、憧れが強くて親近感がないことだった。
「なんとなく、すみれちゃんと、久哉くんと、かえでちゃんって役割決まっているよね」
「すみれちゃんはまとめ役、久哉くんは分析が得意そうだし。かえでちゃんはムードメーカー」
孤高なすみれは、口下手でも、まとめる力を持っているため、どこか惹かれる。といった印象を2人は抱いていた。
冷静な久哉は、ブレーンのような役割なので、「参謀」や「戦略家」といったタイプのイメージがある。
かえでは、細かいことは考えず、明るく元気が第一。場を盛り上げるムードメーカーが自他ともに認める適した役割。あと、比較的面倒見も良い。
「まりなと、たまちゃんと、みっちゃんってどんな役割になるのかな」
まりなもたまきも他の4人も、頭の中は「同好会を作って何をやるか?」という考えではなく、「6人でどうやって関わっていくのか?」という考えでいっぱいだった。




