第2話 いろどりいいとこどり結成(1)
GWが明け、まりなもたまきも、楽しそうにハイスクールライフを謳歌していた。
1-B組の教室、絵を描いてるまりなに、女子達が駆け寄ってくる。
「まりちゃんって、小さい子から好かれそうだよね」
「絵もかわいく描けているしね」
「ありがとう。この前、近所の小学生の子達とシャボン玉で遊んだの」
やさしい性格が物語ることから、まりなはクラスメイト達から声をかけられやすい。まりな達の楽しそうな談笑が続く傍らで、久哉は薄ら寝ている。男子達が久哉に駆け寄り、声をかける。
「あのさ久哉」
「俺、どうやったら彼女できる?」
若干気怠そうに目を覚ます久哉。
「それ俺に聞いてどうするの?」
「いや。結構女好きだから、知ってると思ってさ」
「俺も知りたい」
「いや、特別やっていることなんかないし。てか、俺が女好きってどこ情報だよ?」
「玄斗と昂汰から」
「あいつらってことは、間違いなくすみれがバラしたな」
久哉は、他の男子から話しかけられて会話はするものの、彼から絡んだり群れたりすることはない。まりなやみつばと話すことが多いせいか、軽い雰囲気があるのでナンパ師のような印象を抱かれている。
みつばが、まりなのそばまで機嫌悪そうにやってくる。
「ねぇちょっと、まりちゃん聞いて」
「どうしたの、みっちゃんそんな顔して」
「D組のあの2人。今度は私のことを"みつばち"って呼んでからかってくるんだけど」
久哉と男子達、思わず笑う。
「みつばちね。みっちゃんの第2のニックネーム」
「俺、みつばちって呼ぶわ」
「俺も」
「なんでそうなるの!?」
あの2人とは玄斗と昂汰。相変わらず、人をからかうところは顕在。とはいえ、いじめられているというよりは、遊ばれているみたい。
まりなと女子達、くすりと笑う。
「かわいいじゃん」
「そう思うかもしれないけど、なんでそう呼んできたかって言うと」
久哉、からかい気味に
「ブンブンブンって、うるさいから。だろ」
「うるさいキャラはかえでちゃんだけで十分」
「別に、大人しくてもうるさくても、みっちゃんなのには変わりないでしょ」
「もう、まりちゃんまで…」
みつばは、普通でおっとりタイプを自称しているが、実際はいじられキャラに近い。本人は内心不服。
みつばが語るのは、数分前に起きた1-D組の廊下での出来事。たまき、みつば、かえでの3人で中学の頃の部活を話題にしてお喋りをしていた。かえでは、まりなとたまきが中学時代に合唱部だったことを話してから始まる。
「たまちゃんとまりちゃんって合唱部だったみたいだよ」
「知ってる。まりちゃんから聞いた。パートは?」
「ぼくはメゾ。まりちゃんはソプラノ」
すみれがさり気なく、会話に入る。
「しっくり来るかも」
「かえでちゃんと、すみれちゃんはアルトっぽいね」
「ピンポーン」
「まぁ正しいけど。みつばは」
「さて、中学時代のみつばちゃんのパートは何でしょうか?」
玄斗と昂汰が会話に入ってくる、
「みつばだからね。みつばちみたいにうるさそう」
「飛んでる時の音が、低いからなぁ」
みつば、動揺する。
「ちょっと何? 急に入ってきて」
「じゃ、テノールってことで」
「滝川の相方は『みつばち』ってことか。お互いうるさいからな」
「じゃ、みっちゃん。かえでちゃんとコンビ結成だね」
たまき、ついつい笑ってしまう。
「ポップなコンビみたいでぼくはいいと思う」
「たまちゃん、ノリいいじゃん」
玄斗と昂汰も好機嫌な様子。たまき自身が明るい性格ということもあり、もクラスに馴染めてきていることがうかがえる。とはいえ、みつばは軽くショックを受けている。
「たまちゃんまで、乗らないでよ~」
「あなた達(玄斗と昂汰)にしては、なかなかセンスあるんじゃない」
すみれ、玄斗と昂汰のことを褒める。というよりも、みつばを弄んでいる。
「だろ?」
「意外と褒めるんだ」
「ぼく、褒めてるすみれちゃんは初めて見たかも」
「かえでちゃんも」
すみれ、軽く、鼻息で薄ら笑いする。冷たさや不機嫌な印象を持たれていたすみれの以外な一面が、たまき達の目に映った。
まりな、みつばを気の毒に思い、慰めようとした。
「まりな、注意したほうがいい?」
「いやいや、返り討ちに遭っちゃうからそこまでしなくても大丈夫だって」
みつばは以前のように、まりなが玄斗と昂汰にからかわれて泣きわめくシーンを想像していた。
「みっちゃんは大げさなんだよな」
久哉は、若干みつばに呆れ気味。
「大げさって。私は普通の女の子だと思ってたのに」
「玄斗と昂汰は、会話を盛り上げようとしただけだぜ」
「あの2人のせいで、話題がずれちゃった。かえでちゃんはともかく、たまちゃんも乗っちゃうし」
「たまちゃんが乗るってことは、クラスでも上手く馴染んでいるってことかな」
たまきに茶目っ気が出ていることは、まりなにとっては安心する材料でもあるのだ。
「それにさ、すみれちゃんなんて、鼻で笑ってきたんだよ」
「すみれ、笑う時は鼻しか使わないんだよな」
久哉とみつばは、すみれの話題をし始める。その傍らでまりなが目を丸くする。
「鼻でしか笑わなくて、悪かったわね」
神出鬼没に現れるすみれに、軽く動揺する久哉と、大げさにビビるみつば。
「すみれ!? いきなりでビビるだろ!」
「心臓に悪いって」
「余裕そうな久哉と、大人しそうなみつばだから、これくらいやってみたかった」
「たち悪いな」
「かえでちゃんと同じくらい面倒臭いかも」
まりな、笑いながら3人(すみれ、久哉、みつば)を眺めている。たまきとかえでが、まりなのそばまでやってくる。
たまきからすると、みつばが久哉とすみれと3人でじゃれている光景が新鮮に見えた。
「なんか、あの3人で賑やかになるのって珍しいよね」
かえでが楽しそうに見ながら言う。
「まりちゃんとたまちゃんと一緒の時は、和やかムード」
まりなも、楽しそうに言う。
「かえでちゃんと一緒だと、賑やかムードに」
みつばが、助けを求めるかのように言う。
「すみれちゃんと久哉くんだと、いじられムードになるってこと?」
みつば、まりなに抱きつく。
「まりちゃん、たまちゃん助けて」
まりな、すみれと久哉にお願いポーズをしながら、一旦止めようとする。
「2人とも、一旦ここまでにしてあげて」
たまきも言う。
「別の楽しい話題に切り替えないとね」
かえでが、突如ひらめきポーズをしはじめた。
誰もいない多目的教室に移動する6人。
「ねね、この際だから、グループ作ろうよ」
「グループ?」
まりな、たまき、みつばとしては、自然とグループが出来ているものだと思っていたので、かえでの言葉に少し疑問を抱いた。
「何のグループ?」
馴れ合いを好まないすみれとしては、意図がわからず疑問を抱いていた。唯一、肯定的に受け止めたのが久哉である。
「いいじゃん。変わり者達プラス俺のグループ」
「ちょっと、私も変わり者ってこと?」
みつばとしては、変わり者扱いされて困惑している。
「まず、同好会作ってみない?」
かえでとしては、同じ目的を持つために、同好会を作ることを提案した。
「何の同好会?」
まりなも、肯定的だが目的が不明なため、具体的な答えを知りたいようだ。
「まだ決めてません」
かえでの回答に、他の5人がずっこける。
「普通のグループじゃなくて、同好会を作ってどうするの?」
たまきもまりなと同様、具体的な答えを知りたい。
「みんなで、高校生活をエンジョイするの」
「それが理由って」
かえでのリアクションに対して、相変わらず呆れているみつば。
「かえでちゃんは、料理かスポーツかな」
「それ、バレーボールと食べることが好きだからでしょ」
すみれの言う通り、かえでの趣味はバレーボールと料理と食べること。因みに、かえでは中学時代にバレーボール部に所属していた。
「サッカーは俺以外、素人っぽいから却下になるな」
久哉は、中学までサッカーをやっていた。
「みんな、趣味がバラバラ。無難なのはダンスとか音楽」
収拾がつかない状況に、みつばは混乱している。シンプルな回答を出せば、みんなOKを出すと思っていた。
「無難というか、ベタ過ぎて面白くないかも」
「すみれ、否定しかしてないけど」
久哉の言う通り、すみれは否定ばかりで、意見を出していない。
「シャボン玉はまりなとたまちゃんだけだし」
「絵を描くとかは?」
まりなとたまきの趣味は、シャボン玉やお絵描き、絵本づくりといった幼児や小学生向けのものが多い。
「図工や美術苦手だし」
久哉としては、まりたまの趣味を自分もすることを想像して若干面倒臭そうに感じている。
「なんか、まとまらない」
すみれ、自分がまとめないといけないような雰囲気を悟る。
「考える時間が欲しい」
たまきは素直に、まだ決められれないこと旨を伝える。
「来週の金曜日までに、みんなで決めるのはどう?」
まりなは、提案する。
「それでいくか」
久哉も前向きに考えている。
「異論なし」
当然。言い出しっぺのかえでは前向きに考えている。
「何か共通点があればいいけど、難しそう」
みつばは相変わらず、頭がカオスな状態になっている。
「私も考えるから。みんな何か最低1つは決めておいて」
この件に関しては、言い出しっぺはかえで、期限を提案したのはまりなであるものの、すみれが主体で動いていたようなものだった。




