第73話 ハロウィンパーティー 1日目 その2
控え室に向かう道中、教室の物販コーナーを寄ってみたが、人はまちまちでライブをしてから人が増えるだろうなと思いながら横目で通りすぎた。
控え室に向かうと、みんな緊張しているのか、顔が強ばっていたり、空気がいつもより重く感じた。
ここで口を開いたのはヒナタくんだった。
「せっかくのハロウィンパーティーだし、一旦気分転換をかねて他のクラスの出し物見に行かない?」
「いいね!それあり!」
私はヒナタくんの意見に賛同した。実のところ他クラスの催し物も気になっていたため、ここで回れるのはありがたい提案である。
ミズキくんは自主練がしたいと言ってパスをし、シュウヤくんも一人の時間が欲しいとどこかへ行ってしまい、タクトくんとイブキくんは私たちと同行してくれることになった。
「2人はちょっと真面目すぎるよね?」
ヒナタくんは少し呆れたように言った。
「そうだな。でも、それだけこれに本気ってことだろうし、俺たちは俺たちで楽しもう」
流石はタクトくん。ヒナタくんのフォローが上手である。
「確かに!それが2人っぽいし、僕たちで楽しめばいいっか!
ーーそれじゃあ、早速出発!」
ヒナタくんを先頭に、私たちは他クラスの出し物を見て回ったり、ヨルくんのクラスの喫茶店でお茶をして、なんだかんだライブまで30分をきっていた。
体育館の裏口から入り、アイドルをする3人は準備のために一旦別れた。
表の方を見ると、早い子たちは前の席で待っていた。クラスのファンの子たちも前方に座っていて、少しずつライブの実感が湧いたと同時に演者でもないのに緊張もしてきた。
残り10分をきっていた。みんなは着替え終わり、ライブ衣装を身にまとった彼は本当にアイドルのように見えた。
思わず見惚れてしまう。
「どうしたの?」
イブキくんは心配そうに私を見た。
「ううん!みんなカッコイイなって思ってた!」
「当然でしょ。僕たちアイドルをやるんだし、ビジュの良さが売りのグループなんだから」
ミズキくんにマジレスされて、ぐうの音も出ない。
彼は緊張していないのかいつも通りすぎて逆に凄いと感心する。
「そうでした!
ゴホン、気を取り直して、最初の公演だから気負いすぎずに、ライブを完走しましょう!」
みんなとエールのグータッチをして、私は観客席で応援グッズを握りしめて、彼らを見守る。
心臓はバクバクと鳴り響き、私の緊張は最高潮の中、幕が上がった。
彼らがフォーメーションにつくと、照明がつき、音楽が流れる。そのリズムに合わせて、私はペンライトを振る。
彼らはステージの上で歌い踊っていた。その様子は本物のアイドルとまではいかないが、この世界ではアイドルがないのに、ここまで表現出来るのは凄いと彼らの努力と想像力に感動する。
先程指摘を受けた、メンバーとのアイコンタクトやコミュニケーションも取っており、臨時グループとは思えないグルーヴ感もあり、あっという間に1曲目が終わってしまい、MCコーナーとなった。
そういえば、MCで話す内容を聞くのを忘れてしまっていたが、彼らはどんなことを話すのかとドキドキしながら待っていると、自己紹介をするのはよかったが、話す内容が真面目すぎて正直面白みがなく、ファンとのコミュニケーションを取ることもなく、ミニコーナーのファンのみんなに送る愛の言葉となってしまった。これは私が考案したものである。
アイドルはファンがいてこそ成り立つ。そこで、ファンに向かって愛の言葉を送り、胸キュンさせた人が勝利という、彼らは恥ずかしいだろうけど、こちらは大盛り上がりする企画である。
くじの結果、まずはトップバッターはヒナタくんである。
「僕たちに会いに来てくれてありがとう!!
これは僕のキモチだよ」
観客に向けて投げキッスをし、ファンを沸かせていた。流石はヒナタくんだった。
次はタクトくん。
「俺たちのパフォーマンスはどうだったか?」
「よかったよ〜」 「カッコイイ」
「ありがとう。もっとカッコよくなるから、また見に来てくれるか?」
「もちろん」 「次も行くね」
タクトくんはファンと交流しながら、最後に私たちに選ぶ権利をくれる彼氏のようなアイドルでリア恋みを感じてとても素晴らしかった。
3番目はミズキくん。
「僕たちのパフォーマンス最高だったでしょ?
でもこれ以上に君たちの応援があったから、輝けたんだと思う。ありがとね」
最後のありがとねの言い方がミズキくんの口から出るなんてギャップだし、素直に感謝してくれるのが良すぎる。
4番目はイブキくんだ。
「君の応援があったから、ここに立てた。
ありがとう」
イブキくんらしいまっすぐな感謝だった。オタクはこういうのも好きである。しかも、こちらを見ていったような気もしてより胸キュンした。
そして最後はシュウヤくん。
「愛してる」
シンプルイズベスト。これが正直優勝だ。そんなまっすぐこちらを向いてこの一言。破壊力抜群である。
そして、ファンを1番胸キュンさせたのは拍手の1番大きかったシュウヤくんだった。
みんなよかったが、愛してるを持ってくるシュウヤくんは大変見事であった。
最後の校歌を歌いながら観客席に降りて、胸ポケットに入れていたメンカラのバラを客席のファンに渡しながらメンバーが近くで歌ってくれる嬉しさとメンバーからバラが貰えるかもしれないというドキドキを体験出来て、あっという間にライブが終わった。
帰っていくファンの子たちの笑顔を見て、私はこの企画を考えてよかったと思った。
それと同時に彼らならもっとやれるという希望も見えた。
彼らのいる着替え部屋に向かうと、みんなは上裸で汗を拭いているところだった。
ライブの興奮のあまりノックをするのを忘れていた。みんなはタオルで上半身を隠した。
「ヒマリ、すまないが一旦出ていってくれ」
「すみません」
頭を下げたままドアを閉めて、みんなはすぐに着替えて部屋に入れてくれた。気を取り直して、みんなと向かい合う。
「みんなお疲れ様!初めての公演とは思えないぐらい最後までしっかりとやれていたと思う!」
「そうだな。初めてにしてはよかったかもな」
シュウヤくんはその言葉に納得しておらず、曇った顔だった。
「1つ思ったのが、フリートークするところあるじゃない?そこをファンからその場で質問を返すコーナーにするのはどうかな?
自分たちのトークするのもいいんだけど、それだけだとネタ切れだったり、トークのテンポが落ちてたから、どうかな?」
「ヒマリさんの意見に賛同するよ。僕もフリートークのところが引っかかっていて、そこ以外は盛り上がっていたからよかったが、僕たちにトークスキルがないことが露呈していたね。
だから、そこを補うための質疑応答は良いアイデアだと思う」
ミズキくんが珍しく私の意見を反対せずにむしろ褒めてくれて、慣れていないせいかくすぐったく感じた。
「俺もヒマリの意見に賛成。特に話すことがなくて困っていたから、その方がいい」
フリートークで1番口数が少なかったイブキくんも私の意見を肯定してくれた。
多数決の結果、質問コーナーに変更となった。
「ファンの子からの質問は基本的には答えるべきだけど、変な質問だったり、されて嫌だと感じたら上手く回避してね!」
そしてミーティングは終わり、第2回目の公演は先程よりも見に来たお客さんは増えており、1回目よりもはるかにライブの精度が上がっていて、大盛り上がりの中、ライブは終了した。
1回目に来てくれた子が先導してくれるおかげでファンの中の結束力も高まっていてより良いものであった。
この調子で明日の公演も成功するといいなと願いながら、1日目は大成功で幕を閉じた。




