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第74話 ハロウィンパーティー2日目 その1


目が覚めると昨日の疲れが残っているのかいつもより体が重く感じるが、朝からそんなゆっくりしている時間などない。

急いで支度をして学校に向かうと忙しなく動いている生徒が多く、朝から賑やかだと思いながら暢気に通り過ぎた。

教室に行くとみんなは物販の準備やビラを配る場所など色々と話し合いをしていた。

アイドルの5人もリハをするために体育館に行ってしまったと聞き、私はバッグをロッカーにしまい、体育館へと向かった。


体育館につくと、5人はステージの上で練習をしていた。

誰か見ている人がいると思ったら、ヨルくんだった。


「おはよう、ヒマちゃん」


「おはよう、ヨルくん。みんなことを見てくれていたの?」


「そうだよ。昨日頼まれたんだ。明日の朝練を見て欲しいってね」


「そっか!ありがとう」


「俺は何にもしてないよ」


「それでもありがとう」


ヨルくんは「大したことしてないのに」と優しく笑った。


「ヒマリ、おはよう」


練習を終えたシュウヤくんたちがこちらにやってきていた。


「おはよう!みんな!朝から早いね!」


「今日は昨日より1時間早く始まるから、早めに集まって練習していたんだ」


「そっか。でも無理はよくないから、やりすぎに注意してね」


「わかっている」


「そうそう!昨日よりもよくなってるから、大丈夫!

もう俺が伝えることは無さそうだ」


「本当か?」


「うん。そのぐらい仕上がってきてるよ」


「私も少し見たけど、昨日よりもここでパフォーマンスすることに慣れたのか、落ち着いているというか余裕が出来たように見えたよ」


「ヒマちゃん、俺もそれが言いたかった!」


「そうだよね!だから、今日はこの調子でいけば昨日よりもよりよいパフォーマンスが出来ると思う!!」


「キミたち僕たちのことを褒めすぎじゃない?」


ミズキくんは照れくさそうに言っていた。


「そういうのはライブが終わってから聞きたいな?」


イブキくんはアイドルモードに入っているのか甘い顔をして言っていた。そんなイブキくんに一瞬見惚れるが、時計を見るとまだ9時にもなっておらず、リハまで時間があった。

今日は12時と14時の2公演の後にプロムがあるので、みんなには少しでもまったりする時間を作って欲しいと思った。


「11時のリハーサルまではみんなはゆっくり過ごしていてね」


みんなは頷いた。


「俺も自分のクラスのところに戻るよ」


「ヨルくんもありがとね」


「また何かあったら呼んでね?いつでも力になるから」


ヨルくんは甘いことを言い満足そうにクラスに戻っていった。


「私たちも一旦教室に戻ろうか?」


「そうだな」


みんなで教室に戻ると、教室が賑わっていた。

物販が始まったばっかりなのか、昨日よりもグッズを買う人が並んでいた。そこにタイミング良く、メンバーが来たとなれば盛り上がる。

廊下で歓声が上がっていて、本物のアイドルのように出迎えられていて感心してしまう。

急いで教室に入ると、グッズ販売の子たちが忙しそうに動いていた。


「俺たちに何か手伝えることはあるか?」


物販を仕切っていたユアさんにシュウヤくんが声をかけていた。


「そうですわね?ヒマリさん、彼らに何が出来ますか?」


まさかの私に振られて驚くが、これをやったら盛り上がることはわかっている。


「15分限定でメンバーから直接グッズが買えるイベントを始めましょう!

今は9時05分なので、10分後の15分〜30分の間にグッズを買いに来てくれたら、メンバーから直接渡して貰えるイベントの宣伝を今すぐしてきましょう!」


「ナイスアイデアですわ!流石はヒマリさん!

今からみんなに伝えますね」


クラスチャットに私の提案した緊急イベントを宣伝するようにとビラ配りをしている人たちにお願いしていた。

5人はグッズの渡し方を考えるために私たちから離れてグッズを見に行っていた。


「私もせっかくだし、ビラ配りに行ってくるね?」


「ヒマリさんは行かなくても大丈夫なんですよ?」


「今日は一般のお客さんもいる訳だし、もっとライブが盛り上がって欲しいので、私もビラ配りしてきます!」


「気合いは素晴らしいですが、あまり無理はしないでくださいね?」


「ありがとうございます!行ってきます」


私は教室に置いてあったビラ配りを数十枚持ち、人が多くいそうな外に出ていった。

学校までの道のりも装飾や屋台が出ており、外も賑わっていた。

とりあえず道行く人に声をかけようと試みるもなかなかビラを受け取って貰えず、惨敗する。

人に声を掛けることも恥ずかしいのに、ビラも1枚もはけないなんて自分の力不足を痛感させられた。

一旦気分を変えるために、噴水広場の近くのベンチに座った。

なんとなく空を眺めていると、ずっと忙しかったためか気が抜けて眠くなってきた。

だがこんなところで寝てしまったらダメな気がして、寝ないように太ももをつねった。


「ヒマリ?疲れた顔をしてどうしたんだい?」


ダンボールの箱を持ったチアキくんがそこにいた。

1度箱を置いて、私の隣に座った。


「チアキくん?お疲れ様!何か運んでるの?」


「お疲れ様。今日のハロウィンパーティーで使うものを体育館に運んでるんだ。

君たちのクラスがライブをやるから邪魔にならないところに置かせて貰う予定だよ」


「そうなんだ。大変だね」


「ヒマリの方こそ、悩んでいそうな顔をしていたけど大丈夫?」


チアキくんには嘘をつけないようだ。ここは正直に吐露する。


「実はさ、さっきビラ配りしてみたんだけど、誰にも受け取って貰えなくて落ち込んでたんだ。

ーーどうすれば受け取って貰えるのかな?」


「なるほど。俺なら、まずこのライブに興味ありそうな人に声をかけるよ。例えば女性を中心に声をかけるとか。

あとは自分自身がこのライブに来て欲しいっていう熱意を持って接することが大事なんじゃないかな?

ビラ配りをするのって初めてだと緊張するからそれが相手にも伝わって、本来伝えたいことがしっかりと理解されていないと思うんだ。

だから、笑顔でこのライブが素敵だから来て欲しいって素直に伝えたら受け取って貰えるんじゃないかな?」


しっかりとしたアドバイスを貰えて、とても納得出来た。流石はチアキくんである。とても分かりやすい。


「チアキくんありがとう!

そうしてみるよ!!なんだかやる気出てきた!!」


「よかった。ヒマリが珍しく暗い顔してたから心配で来てみたけど、また笑顔が見れて安心したよ」


「そんなどん底にいるような顔してた?」


「うん。結構失望してた顔をしていたよ」


チアキくんはクスッと笑いながら言った。


「そっか!でもチアキくんのおかげで問題は解決しそうなので、実践してくる!

チアキくんも頑張ってね!!」


「ヒマリも頑張ってね!」


チアキくんは再びダンボールを持って体育館へ行った。

私もビラ配りリベンジをするべく、人の多い通りへと向かった。


同い年ぐらいの同性のゾンビ族っぽい子たちにまずはアタックをしてみる。


「お2人はアイドルに興味ありませんか?」


「アイドル?」


「アイドルとは歌とパフォーマンスで私たちの心を震わせてくれる最高のエンターテインメント。

それが体育館で行われるので、是非足を運んで貰えるとうれしいです。

また1-Bクラスの教室でグッズも売ってるので、買ってからライブを見るとより一層楽しめますよ?

このビラを見て、気になる人いますか?」


2人にビラを受け取って貰い、推しを決めてもらう。


右にいたロングヘアの子はイブキくんを指を差して、左にいたショートヘアの子はヒナタくんを差していた。


「イブキくんとヒナタくんですか!いいですね!!この2人写真で見るより生で見る方がカッコイイので是非体育館に来てください!」


「ありがとうございます!お姉さんの言葉で気になったので、体育館行きますね!」


「本当ですか!?ありがとうございます!!」


2人に感謝を言って別れると、さっきの私の言葉が聞こえていたのか、ビラくださいと声を掛けられて、あっという間にはけていった。


時計を見るともう11時をすぎており、リハーサルが始まっていた。急いで体育館へと向かう。


体育館はステージ以外は暗くなっており、スマホのライトで足元を照らしながら、後ろの席に座り、途中になってしまったが彼らのパフォーマンスを見守った。


「ヒマリ、どこに行っていたの?」


心配そうにイブキくんから話しかけてきた。


「ビラ配りに行っていたんだけど、夢中になっていたら、リハの時間過ぎてて急いでやってきたの」


「そうなんだ」


イブキくんは理解したようだが、あまり納得していなさそうだった。


「俺たちのためにありがとう」


シュウヤくんはまっすぐにお礼を言ってくれた。


「いえいえ!無事にビラもはけたので、その人たちが来てくれるといいなと思っているし、さっきのパフォーマンスも凄く良かったからその調子でまずは12時の公演頑張ろう!!」


すると、朝から何にも食べていないせいか盛大にお腹の音が鳴った。

恥ずかしくてお腹を押さえるが、再び同じように鳴る。


「ごめん、ご飯食べられてなくて」


みんなは私の軽快なお腹の音で先程までの真面目な空気が一変し、笑いに包まれた。


「そういえば控え室におにぎり置いてあったから、それ食べなよ〜!あとお菓子も僕が教室から持ってきたからそれも食べていいよ」


流石はヒナタくん準備がいいし、食べ物の把握をしていてくれて助かった。


「ありがとう。いただきます」


みんなで控え室に戻り、私はおにぎりとヒナタくんが持ってきていたクッキーと屋台で出ていたわたあめをくれた。


「このわたあめってやつ凄いよね?白くてふわふわしてて可愛いし、味も甘くて美味しいんだ!

これ人間界の食べものらしいよ?ヒマリちゃんは知ってた?」


もちろん知っているなんてことは言えず、とりあえず1回は食べたことあるという絶妙な嘘をつく。


「1回だけ食べたことあるよ!その時もこんな感じだった」


「そうなんだ!!流石はヒマリちゃんだね!」


「みんなも食べてみない?」


「僕はパス。甘すぎるから苦手なんだ」


ミズキくんはこの流れを一刀両断した。


「そっか。ミズキくんも食べたことあるもんね〜!

3人はいらない?」


3人とも同時にいらないと言い、ハモっていた。


「そんな息ぴったりに拒否されたら逆に面白いね」


「確かに。アイドル活動しているから、阿吽の呼吸で意思疎通出来ているのかもね」


まったりした時間はあっという間に過ぎて、12時のライブの時間になっていた。


6人で円陣を組む。


「今日の1本目のライブ。昨日とは違って一般の人も来てるから空気感はまた違うと思うけど、リハみたいなパフォーマンスが出来れば問題ないと思う!

このライブを成功させよう!」


私たちの気持ちは1つになり、みんなをステージに送り出す。

今回はスタッフサイドからステージを見てみようと思い、邪魔にならない隅っこで見ている。


暗転していたステージがアイドルと照明で一気に明るくなり、ライブが始まった。

順調に1曲目が終わり、お客さんの歓声も良い状態でミニコーナーが始まった。


「ここからは俺たちの質問コーナーだ。


ここにいるファンのみんなが気になることを気軽に質問して欲しい」


「シュウヤくん、そんな堅い言い方だと質問しにくいよ?

何でもいいから、僕たちに聞きたいことある人いますか〜?手を挙げてくれたら、僕たちがそっちまで行くよ〜?」


すると、先程私がビラを渡したヒナタくんが気になっていた女の子が手を挙げてくれた。


「僕のファンの子だね?ありがとう。

それで、僕たちに聞きたいことって何かな?」


マイクを向けると、女の子は緊張しているのかなかなか声を出せていなかった。


「急に注目されると緊張しちゃうよね!わかる!

ゆっくりで大丈夫だから、声を聞かせてくれると嬉しいな〜?」


ヒナタくんのフォローもあり、ようやく喋れるようになっていた。


「みなさんの好きな物はなんですか?」


「良い質問だね!ありがとう」


ヒナタくんはその子に投げキッスしてステージに戻った。投げキッスされた子は口元を押さえて、胸が打たれたように座っていた。

あの子はヒナタくん沼に落ちていったようだ。


「まずは僕から答えるね!

僕の好きな物は、甘い食べ物!毎日お菓子を食べちゃうよ!次、ミズキくん!」


「僕かい?そうだな、しいて挙げるなら、お蕎麦が好きかな。次はタクトさん」


ミズキくんの好きな食べ物は結構渋くてギャップが凄いなと思った。


「俺はここの食堂の日替わり定食の唐揚げかな。

次はユイト」


タクトくんは学内アイドルならではみんなが知っている食べ物をあげるのはポイントが高い。


「俺が好きな物はグラタンかな。最後はシュウヤ」


イブキくんは前にも言っていたグラタン。お母さんが手作りしていたものを挙げているのが、イブキくんらしい。


「俺の好きな物はみんなの笑顔だ」


「最後ズルくない!?」


ヒナタくんの鋭いツッコミに困惑するシュウヤくん。


「そうか?本心を言ったまでだが?」


「そうだ。1人だけ良いとこ取りしているぞ?」


タクトくんにも責められて反省していた。


「それはすまない。でも、このステージに立ってみんなの笑顔が素敵だと知ったんだ。だから、好きな物で言いたいと思った」


「シュウヤさん良い人すぎません?

僕だったら、そんな綺麗なこと言えないよ」


ミズキくんはまるで自分の性格が綺麗ではないような言い草だった。


「ミズキだって、そう思っただろ?」


するとイブキくんがステージの端にやってきた。

何かトラブルか?


「ごめん、マイクの電池が入らなくて。予備のマイクとかない?


近くにいるスタッフの子に聞くが、マイクを管理している箱に入っていなければないと言っていた。

確か、予備のマイクを用意していた気がする。


「イブキくんは一旦ステージに戻って!それでこのミニコーナーを長引かせて欲しい。

私はその間に教室にマイクの予備がないか探してくる」


「何分あれば戻ってこれる?」


単純に考えても体育館から教室まで歩いて約5分。走ったら3分程になるだろうが、あの人混みでそんなに早く行けるのかと思うが、変に長引かせるのも何かあったかと感じさせてしまうかもしれず、いけても6分だと判断する。


「6分で戻ってくるよ」


イブキくんは不安そうな顔をしていた。


「本当に?」


「うん。それ以上だとファンの人に心配されちゃうでしょ」


「確かにそうかもしれないけど、ヒマリがそれでいいの?」


「どうにかしてみせるよ。

だから、イブキくんはステージに戻って」


「わかった。無茶だけはしないで」


彼は急いでステージに戻った。私も今からリアルタイムアタックに挑戦することになった。スマホのタイマーを6分にアラームがなるように設定をして、まずは教室に急いで向かおうと走る。

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