第9話
「あのー」
ブレイクがベルズに声をかける
「なんだ!?辞める気になったか!?」
と言った反応だったがブレイクは
「いえ、精霊と契約しているんですけど
精霊が戦闘に参加しても大丈夫ですか?」
精霊か、とヴィクトリアの言葉が
ただの親バカ発言では無い事を
理解したベルズだったが
「ボウズ、嘘はいけねぇ
精霊じゃないな大精霊だろ?
まあ、戦闘に参加するかってのは
契約してんなら当然アリだ」
どうすっかなぁ、とベルズは頭を抱え
3人の冒険者の元に向かう
「なぁ、ギルマス?
マジであのガキに倒すだけで
Bランクにしてくれんのか?」
と狼人の男性冒険者が聞く
他の2人も同様の意見な様で
「そう...だったんだが予定変更だ
倒せればAランクになれる様に上に掛け合う」
は?何言ってんだ?と3人は
説明を求めたがその内の1人の
エルフの女冒険者が
大精霊の存在に気付くと
「えー無理じゃない?アレ大精霊でしょ?
しかも何あの魔力量ヤバ
まぁ経験になるから参加はしておこうかなぁ...」
大精霊?ともう1人の男性冒険者は
あまり精霊の知識が無いのか
「大丈夫だろ相手は子供1人じゃねーか」
自信ありげに言っていたが
彼はその言葉を後悔する事になるのは
説明するまでも無い
「じゃあ、始めるか」
ベルズが3人の冒険者とブレイクを
中央に集めた
それを見ていた野次馬達が
「本当に“アレ”をやるのか?」
「見ろよ金狼のバランに
エルフの最高傑作ミューラ
怪力無双のドラムだぜ」
「あんな小さい子がねぇ」
野次馬達はブレイクがなんだか可哀想だと
心配する声がチラホラ聞こえてきた
(御主人様の実力がわからないとか
本当に見る目が無い連中ね
こんな試験さっさと終わらせましょう)
とスイレンが野次馬にイライラしていたが
(ちょっと待ってスイレン
実戦はあんまり経験ないから
色々と試したい事があるから
それをやってからでもいいかな?)
スイレンとブレイクが念話をしていると
そんな事お構いなしにベルズが試験の説明を始めた
「これから試験を始める!
冒険者3人は10分以内に
このボウズを倒すせば勝ち
ボウズは3人を倒す又は10分間
攻撃を避け続け立っていれば勝ちだ
お互いに真剣に取り組む様に
よし!始め!」
開始の合図と同時に
金狼のバランがブレイクの背後に回り込み
自身の爪を使って一撃を入れる
しかし、既に展開されていた水の鎧が
それを許さなかった
バランの腕ごと地面にめり込み
「びっくりしたぁ
お兄さん速いんだね
それじゃあ今度は僕の番だね」
ブレイクは水の刃を無数に作り出し
バラン目掛けて放つ
片腕が地面に埋まったバランが
無理矢理腕を引き抜く
その勢いで肩の関節が脱臼したが
バランはどうにか水の刃を避け
ミューラの居る後方へと下がる
今度はそれを見た怪力無双のドラムが
ブレイクの元に走る
ドラムが大剣を片手で持ち
横に薙ぎ払うがそれも水の鎧によって
地面に突き刺さる
「うお!マジかよ」
ドラムが大剣を引き抜き改めてブレイクに対峙する
(いいなぁ、大剣かぁ僕も使えるかなぁ?)
と水の大剣を作り出す
(御主人様そのままだと
水の塊だから時間魔法で固定した方が良いわ)
スイレンのアドバイスで時間魔法で固定する
それを両手で持ちドラムに撃ち込む
「おお!大剣も使うのか!
試験関係なく仲良くしような!」
はい!とブレイクが返事をし
ドラムとブレイクが撃ち合いをしている間に
エルフの最高傑作ミューラが
バランの脱臼を治癒魔法で治していた
「はい、これで殆ど治ったわよ
あの子凄いわねドラムと撃ち合ってる
力だけならAランクと並ぶドラムと」
「しかもあの反応速度
俺の事、速ぇとか言ってやがったが
ちゃんと目で追って対処しやがる」
開始からまだ2分しか経っていないが
ブレイクの実力に3人も野次馬も気付き始め
「あの子凄いわね」
「3人とも手加減してんのか?」
「バカ、3人は昇級がかかってんだぞ」
ドラムが水の大剣を空へ払い飛ばし
自身の大剣を両手で握り振りかぶり振り下ろす
ブレイクは時間魔法を使い自身の速度を上げ
振り下ろされる大剣を避け
ドラムの大剣を足場にして
水の大剣を空中に取りに行き
空中でドラムと大剣で撃ち合う
スピードでは勝っていたブレイクだったが
ドラムの筋力はそれに勝る
ブレイクはその筋力に合わせて
自身の腕の筋力に負荷をかけ高速の剣戟を加える
ドラムとブレイクの一進一退の攻防は
突然、終わりを告げる
ドラムの大剣が折れたのだ
「嘘だろ...
ヤベェなぁボウズ
今までヒビや傷一つ入った事なかったんだぜ」
ドラムは今度は肉弾戦でブレイクに迫るが
(うーん、流石にさっきの僕の仕掛けた攻撃で
腕がプルプルする、ドラムさんには悪いけど
魔法で押し流させてもらおうかな)
(無茶な戦い方ね
わざわざ御主人様が力で
勝負する事ないでしょうに)
スイレンがドラムの前に割って入り
濁流で押し流しドラムは溺れて意識を失った
それを見たミューラはドラムを介抱しながら
「ギルマス、私は降参よ」
「そうか、まだお前だけ
まともに戦っていないがいいのか?」
無理無理と首を横に振るミューラ
「私はあの魔力量を前にして勝てる気しないわよ
しかも大精霊相手でしょ?
私にはどうにも出来ないわよ」
ミューラとは逆にバランは燃えていた
「さて、どうすっかなぁ」
腕や肩を伸ばしブレイクの方に向いていたが
「ベルズさん、倒すって事ですけど
無力化は倒すに入りますか?」
さっきまで中央に居たはずのブレイクが
ギルマスの隣に移動していた
(なんだよ、俺より速ぇじゃねぇか)
ベルズがブレイクの質問に答える
「そうだな無力化も倒すと言う事になるな」
そっかぁ、とブレイクがドラムは戦闘不能
ミューラはリタイア
あとはバランだけとなった事を考えていると
そこにバランが突っ込んでくる
飛び上がり踵落としをしようとするバランを
ブレイクは時間魔法を使って空中で止めた
「は!?なんで空中で止まって!?」
バランが混乱するがブレイクは
再びギルマスに確認する
「えっとバランさんを空中で無効化
ミューラさんは降参でしたし
ドラムさんは意識がまだ戻ってない
これで倒した事になりますよね?」
文句なしのブレイクの完勝だった
「そこまで!ボウズの勝ちだ!」
うぉー!!!と野次馬達が歓声を上げ
ブレイクはその歓声に驚いていたが
試験が終わった途端にヴィクトリアが
ブレイクを抱き上げる
試験を見ていたメイベルは
自信を失っていた
(私じゃ3人相手は出来ない
ブレイク君は凄いなぁ...)
ブレイクは空中に放置されている
バランに気付き魔法を解いた
「...おっと、空中で止まんのは初めてだ
スゲェなボウズ、お前の名前は?」
「ブレイクです」
とブレイクがバランと話していると
バランがブレイクを抱き上げている女性に気付く
「ん?ってか、銀の舞姫じゃねぇか!」
とヴィクトリアに気付いたバランに
今更気付いたの?とミューラが呆れていた
ヴィクトリアはバラン達に
「私の子、息子は私より強いから
大変だっただろう?」
とヴィクトリアの言葉に
「銀の舞姫より強いって
俺たちじゃ無理じゃねぇか
ギルマスの野郎に嵌められたな、こりゃあ」
バランの言葉にミューラが
「そうね、まあいい経験になったんじゃない?」
とその場で話し合っていると
「よし!終わったな!
皆、解散だ解散!バランとドラムは
ギルドで休んでいけ治療してやるから」
肩の脱臼は完全には治っていない為
治療費が浮いたとバランが喜び
その時にようやくドラムは目を覚ました
「終わったのか?
スゲェ強かったなぁ
そっか、ブレイクって言うのか
俺はドラムよろしくな」
と、笑顔で握手を求め
ブレイクはよろしくお願いします、と
握手を返した
その後、3人とブレイク達が
ギルドの二階にある
ギルドマスターの職務室に呼ばれた
「今回のボウズの試験は当然...合格だ
Cランクの冒険者3人を相手に勝っているから
Bランクからスタートだな」
ギルドマスターの言葉に
バランとドラムが
「「まぁ、当然だな」」
それに同調するようにミューラが
「私もそう思う」
結果を聞いたヴィクトリアが
ブレイクを抱き上げ嬉しそうに
「やったなぁ、息子!
Bランクだから、お揃いだ!」
そうなんですね!とブレイクも
お揃いで嬉しそうだった
そしてギルドマスターが口を開く
「で、3人だがミューラ以外Bランクに昇格だ」
それを聞いたミューラが
「まぁ、私だけ戦ってないしねぇ」
その時、ブレイクが話し始める
「あの、冒険者に必要なものって
強さだけじゃないですよね?
危機察知能力も評価されるべきだと思うんです
たぶん、ですけどミューラさんは
大精霊のスイレンを見て
降参を選んだだけなので
ミューラさんの実力を
自身でわかっている事になりませんか?
危険を避けるのは必要な事だと思います」
そこまで聞いていたギルドマスターのベルズが
笑い出したミューラを含めた冒険者3人は
よくわからない顔をしていたが
「そうだなボウズだからミューラは
Aランクになるよう会議を行う事にした
ボウズの言う通り危機察知能力は
冒険者にとって命綱だからな
どんだけ強かろうが死ぬ時は死ぬ
危険を避けるのは当然、必要な事だ
それを踏まえてミューラは恐らくだから
Aランクに上がるだろう」
実はミューラは3人の中で1番強い
それでも自身の実力を過信せず
状況判断出来る人物だった
するとスイレンが
「まぁ、そうよね
御主人様に対して初めから
油断してなかったのは評価出来るところだし」
スイレンが珍しく人を褒めたのを見て
ブレイクは少し嬉しそうだった
結果を聞き3人は執務室を出て
各々やる事がある為、解散した
ブレイクも職務室から出て下に降りて
ギルドカードの作成の案内を受けていた
受付嬢に説明を受けギルドカードを受け取る
「再発行には1週間かかり
銀貨1枚の手数料を頂きます
無くさないようにご注意ください」
銀貨?とお金の価値がまだわからない
ブレイクだったが
無くさなければ問題ないと
ヴィクトリアが言っていたので
そうなんだと納得した
ブレイクはギルドの壁にある依頼書に目がいく
「ん?依頼を受けたいのか?」
と、ヴィクトリアが
ブレイクと出掛けたいのか
ルンルンで聞いてきた
そうですね?とまだ何も知らないブレイクは
受付に行って
「すみません、初めての依頼だと
何がおすすめですか?」
受付嬢が説明の為に受付から出てきて
依頼書が貼ってある壁を見ながら
「初めての依頼ですね
初めは薬草採取や家事代行などがありますね
今ですと...薬草採取の依頼がありますが
如何でしょうか?」
ブレイクは薬草採取の資料を見せてもらい
ギルドの壁から薬草採取の依頼の紙を
壁から剥がし受付に出した
「じゃあ、この依頼をお願いします」
受付嬢は資料を確認しながら
「ではギルドカードの提示をお願いします」
ブレイクはギルドカードを提示し
「え!?Bランクで初めての依頼が
薬草採取ですか?本当に宜しいんですか?」
はい大丈夫です、とブレイクが答えると
「息子の強さだと討伐依頼でもいいんだが
初めてだしな!私も一緒に受けるぞ!」
とヴィクトリアが会話に割り込んでくる
「ヴィクトリア様!?
ご子息様でしたか失礼致しました
では依頼内容を確認をお願い致します」
受付で話を聞いてから薬草採取に向かった
既にブレイクはギルドで噂になっていた
「聞いた?銀の舞姫の息子だって」
「聞いた聞いた!
いきなりBランクでしょ?凄いわよね」
その噂に聞き耳を立てている男がいた
彼はバーンズAランクの冒険者だ
「なぁ、本当に舞姫の息子なのか?」
噂されているブレイクの事に
関しての真偽のほどはわからずじまいだった
「仕方ない、実際に確認するしかねぇか」
バーンズはAランクの中でも
Sランクに1番近い男として
ルア王国で知らない者は居ないほどの有名人だった
ブレイクはそんな人物に目を付けられたようで
バーンズはこっそりブレイク達の跡を付ける事に
薬草採取の為ブレイク達は
ルア王国の西側の外壁を出て
迷いの森に入って行った
バーンズはブレイク達に気付かれないように
離れた位置から跡を付けブレイクを観察していた
迷いの森は初心者冒険者が
依頼で行く事になる場所であり
名の通り迷いやすいのが特徴で
一度、中に入ると右を見ても左を見ても
木々に覆われており
木の葉が太陽の光を遮る為
景色があまり変わらない
そんな場所であるからか
月に一度は行方不明者が出るほどであり
探索が得意な斥候だったり
探索魔法が使える魔法使いによって
行方不明者を探すなんて事もよくある
「あのボウズどんどん奥に向かって行くが
大丈夫か?舞姫がいるから遭難する事は
ないだろうが、一人娘のメイベルもいるし
子供2人のお守りか...」
とヴィクトリアの心配をしていたが
そんなに時間も経たないうちに異変に気付く
ここ数分というより迷いの森に入ってから
“たった一度もモンスターと遭遇していない”
(おかしい、そんな訳ねぇだろ?
いやでも実際モンスターと遭遇してねぇ
どうなってやがる?)
「やはり探索魔法とは凄いな!
薬草採取がこんなに楽に出来るなんて
私は初めてだぞ!」
ヴィクトリアがブレイクの探索魔法で
薬草の位置、モンスターの位置などを
把握している為
先頭を切って前に進んでいた
スイレンが魔法の練習になるからと
迷いの森に入る時から常時発動させていた
大体の薬草採取しに来る初心者冒険者は
モンスターと遭遇して依頼を失敗するか
そもそも薬草の位置がわからないから
その日のうちに帰って来れなくなり
ギルドが捜索を開始し翌日には保護される
そんな中、初心者ではよくある事だが
探索魔法が使えるブレイクは
薬草の位置まで難なくたどり着いたのだった




