第8話
魔王城にて魔王ワイトは悩む
ノワの事で部下から危険ではないかと
そんな声が上がっている
確かに魔力を使うとノワは
狂乱状態になり我を忘れる
そんなノワだがワイトにとっては
可愛い娘なのだから仕方がない
「さて、どうしたものか」
ノワはワイトの膝元で寝息をたてている
そんなワイトに良い案が浮かんだ
魔力制御装置を作れば良いのだと
その後ワイトは3日3晩、寝ずに
装置を作ったペンダント型の装置を
ノワに渡しいつも付けておくようにと
念を押しノワに付けさせた
「えへへ、似合うかな?」
「あぁ、よく似合っている」
ペンダント型の装置は
魔力を吸って貯めておく事が出来る
「時々私が点検するから
その時は外しても大丈夫だ」
うん!わかった!とノワが返事をし
「抱っこ!」
と赤ん坊の様に甘えるノワを見て
ワイトは微笑み返しノワを抱き抱えた
チュン、チュン
小鳥のさえずりでメイベルは目を覚ます
夜が明け朝を迎える
そんな当たり前の日々が
新たな刺激によって変わっていく
母ヴィクトリアにブレイクごと抱きつかれており
抜け出すのに苦労しメイベルは洗面所に向かう
温かいお湯が用意され顔を洗い
そこにメイドがタオルを持ってきており
それを使用して顔を拭く
「メイベルお嬢様
本日はどの様に致しましょう」
いつもならメイベルの日課である
ランニングや剣の打ち込みがあるのだが
いつもなら居ない母ヴィクトリアと
新たな家族のブレイクがいる為
メイベルは2人を起こしに行く事にした
ギィと扉を開けると
ブレイクは既に起きており
「おはようございます」
と挨拶をされ、それにメイベルが
「おはよう」
と返し、母ヴィクトリアからブレイクを引き剥がす
「母上!起きてください!
もう日は登ってますよ!」
目を擦りながら
ふぁぁあ、と欠伸をするヴィクトリアを
メイドに任せてブレイクと洗面所に向かう
「こっちを捻るとお湯が出て
こっちを捻ると水が出るから
温度を調節しながら使ってね
タオルはあっちで
服はここに置いておくから
終わったら広間に来てね」
ブレイクにそう説明し
メイベルは事務室に向かった
「アンタ...しっかりしてるわね」
一連の流れを見て
そんな事を言われたメイベルは
スイレンに苦笑を返し書類に目を通す
「あんまり母上は家に居ないので
私がしっかりしないと家が成り立たないから
自然とこんな感じになったんです」
へぇ、とさらに感心するスイレン
そこに執事が事務室の扉をノックする
メイベルが返事をして用件を聞くと
「お嬢様、朝食の準備が出来たのですが
奥様がブレイク様とお嬢様に関して
駄々を捏ねているようで...」
ヴィクトリアの言い分は
「起きたら息子もメイベルも居なかった!
2人とも何故、私の側にいない!?」
なんとも幼稚な我儘で広間に来たと言う報告が
執事から無いブレイクは
既にヴィクトリアに捕まっており
メイベルの自室に陣取るヴィクトリアを迎えに
メイベルが部屋に入った途端
「母上!?」
メイベルもあっという間にヴィクトリアに捕まり
2人を抱き抱えてヴィクトリアはご機嫌になり
ようやくヴィクトリアが準備を始めた
広間に3人が着くとメイド達が朝食を出し始める
次々に料理が運ばれてくる
「本日の朝食は
ベーコンエッグ、春野菜のサラダ
カボチャのポタージュ
ラズベリージャムのヨーグルト
ライ麦パンでございます」
朝にしては量があり
食べ切れるかなぁ?と不安そうなブレイクだったが
メイベルに無理に全部食べなくて大丈夫と
ブレイクに気を利かせ
食べれないなら私が食べるぞ!と
ヴィクトリアは朝から食欲旺盛だった
朝食が始まり
途中ヴィクトリアがおかわりをし
何だかんだで朝食を食べ切ったブレイク達
貴族的には少し残した方がいいのだが
ヴィクトリアが残すのは勿体無いと
全部食べる習慣がメイベルにも自然とついた
それについてメイベルは頭を悩ませる事になる
何故駄目なのかとブレイクが聞くと
「貴族からしたら全部食べるのは
意地汚いって思われるからね
本当は私の年くらいになると
婚約者が居てもいいんだけど
そのせいか相手が居ないのよね
まぁ...いいのよ」
どこか貴族社会に馴染めていないメイベルだが
ヴィクトリアに言わせれば
そんな事を気にする奴は大した事はないから
気にする必要はないとの事で
ヴィクトリアの考えはどこまでも大胆と言うか
鈍感と言うかなんとも言えない事を言っていた
その話を聞いてスイレンが話に入ってきた
「それについてはヴィクトリアの考えの方が
私は好きね、貴族だかなんだが知らないけど
自然から奪っておいて無駄にするのは
自然を軽視してるわよ」
と、少し怒っていた
水も司る精霊だからか自然との繋がりが深い
そんなスイレンならではの怒りだった
するとヴィクトリアが
「朝食も済んだ事だし!
息子の冒険者登録をしに
冒険者ギルドに向かうぞ!
ついでに買い物もいいな!
スイレンも付いてくるだろう?」
冒険者ギルドとはルア王国発祥の
世界各地に支店がある巨大組織である
知性のある者であればどんな人物でも
登録可能で中には群から
はぐれたモンスターだった者も居たりする
ブレイクの戦闘力を測るのには良い場所だと
ヴィクトリアは最高難易度の試験を
受けさせようと考えていた
ヴィクトリアもこの試験は受けており
ヴィクトリアがギリギリラインでの合格だったが
ブレイクの剣の才能と時間魔法そして
契約したスイレンの事を考えれば
余裕だとヴィクトリアは予想していた
そして皆に出掛ける準備をする様に言うと
皆、せっせと準備を始めた
冒険者ギルドに行く為にブレイクの装備を
メイベルが見繕うとした時に
必要ないわよ、とスイレンに遮られる
「御主人様にとって鎧や武器は
正直、邪魔になるわ
これから教えるのをやれば
鎧や武器の代わりになるから
とても便利だと思うわ」
スイレン曰く、大精霊と契約した人物でも
ブレイクは特別で精霊融合が可能だと
精霊融合とはスイレンとブレイクが
文字通り1つとなる事でスイレンが
ブレイクの魔力と繋がり魔力の鎧となり
相手の物理攻撃を無効化し魔法攻撃を
属性に応じて吸収したり利用したりする
ブレイクの魔法攻撃を補助する
魔法の鎧と言えば想像し易いだろうと
スイレンがブレイク達に説明する
精霊融合そのものが精霊界でも
人族界でも特別な事だとスイレンが教えてくれた
そしてすぐに実践する事になった
「「精霊融合!」」
2人の身体が重なり光に包まれて
白髪に青いメッシュの入った
瞳の周り本来の白目の所は黒く
瞳は金色に輝き瞳の中心は赤く輝いていて
水色の鎧と羽衣を纏った
ブレイクと思われる少年がそこに現れた
ユージーンが急いで家に帰ったはいいものの
日が暮れ夜になりライコと帰ってきた事で
とある女性にいきなり正座!と言われ
素直に正座をするユージーン
「で?そちらの女性は?」
そう言ったのはマリア・レムロン
ユージーン・レムロンの妻である
こんな事になった訳は
ユージーンがいきなり王命で出ていき
1週間程で帰ると言っていたのに
2週間以上家を空けていた事と
ライコ、彼女の存在である
「彼女はライコ私と契約した精霊だよ
マリア2週間も家を空けたのは謝るよ
でも手紙を送っておいただろう?」
「でも銀翼のメンバーは貴方以外女性よね?」
と、夫婦喧嘩と言うより
マリアの質問責めが始まった
「あれ?親父帰ってきてんじゃん!」
そんな中、ふら〜っと帰ってきたアークに
泣きつく様にマリアが擦り寄り
「また、母さんに心配かけたのか
母さんも泣くなよ2週間ぶりに親父が居るんだ
皆で飯にしよーぜ」
アークの言葉でその場はどうにかなった
「おい、孫」
え?俺?とアークが聞き返すが
小僧の小僧だから孫だろうと
よくわからない理屈で
何故か孫呼びになったアーク
「じゃあ、ばあちゃん呼びになっちまうぜ?」
ライコの理屈で言うとそう言うふうになる
「ん?まぁ、良いだろう」
えぇ?いいんだとアークは納得し
「ばあちゃんは変だから
ライコ姉さんって呼ぶよ」
ライコ姉さんと呼ばれて満更でもないライコが
マリアに呼ばれて近くまで行くと
何だかんだで面倒見が良いライコが
マリアと仲良くなり
それを見たユージーンが何だか
自分より家族に馴染んでいるのに
複雑な感じだった
その夜は皆で食事を摂り
ライコは夜のうちは出掛けてくると
何処かへ行ってしまった
翌朝になって帰ってきたライコを
マリアが泣きながら探しており
一体なんなんだこの娘はと
マリアの頭を撫でながら思うライコだった
朝食を食べている時に
魔力の反応を感知したユージーンとアーク
「ライコ!これは?」
十中八九ブレイクだろうとの事
「え?ブレイクって誰?」
アークのは話をちゃんと聞いてなかった為
ブレイクの事を初めて知った
そんなアークにユージーンが
昨日話しただろう?と
「あ、そんな事言ってたなぁ」
ライコ曰く、おそらく精霊融合だろうと
精霊界でも珍しい事象で
下手をすれば伝説級の出来事だ
とライコは説明した
「凄い魔力の波だね、私にも出来るかな?」
「出来ない」
キッパリ言われたユージーンだったが
内心は諦められない様子だった
「まぁ諦めない事は良いことだ」
と、ライコも少しだけ期待していた
「にしても精霊融合なんて聞いた事ないよ
大精霊と契約するとそんな事も出来るんだね」
「いや、普通は出来る訳がないんだ
ブレイクが特別なだけで
契約者の魔力量が一定以上無いと
精霊融合は出来ないし
魔力量が一定以上無い場合
契約者の生命力を使うんだ
そして生命力が足らず
人族側は弾け飛ぶ」
えぇ、弾け飛ぶんだと苦笑を返す
ユージーンとアークだった
精霊融合を初めてしたブレイクとスイレンに
「息子?なのか?」
ヴィクトリアが驚くのも無理はない
人とも精霊とも言えない神々しさがそこにはあった
「恐らくですけど、僕ですね
スイレンも喋れるみたいです」
「初めてで上手くいくとは正直思ってなかったわ
今の御主人様は精霊より全然強いわよ
複数の精霊とも渡り合えるんじゃないかしら」
とスイレンが言ったところで
「でもコレは魔力消費激しいね
この感じだと全然持たない」
ブレイクの今の魔力量でも
長期戦に向かない事がわかり
常時使う事は出来ない事を聞き
メイベルが装備を取りに行こうとすると
やはりスイレンに止められる
「魔法で鎧や武器を作り出せばいいのよ
そうすれば持ち運ぶ必要も無いし
そっちの方が御主人様には向いてるわ」
と、スイレンが水の鎧を作り出し
ブレイクがそれを着る
「これは私が考えて
精霊融合を元にした水の鎧」
ヴィクトリアが水だと防御面は大丈夫なのか?と
スイレンに聞くが
なら、試してみる?とヴィクトリアに
撃ち込みをさせる事になった
「いくぞ?」
ヴィクトリアが剣を構えブレイクに攻撃を仕掛ける
ヴィクトリアの剣が鎧に当たった瞬間
剣先が地面に叩きつけられていた
鎧をよく見ると水が止めどなく流れており
まるで滝の様に地面に向かっていた
足元に押し寄せる水を足元から魔力に変換して
ブレイクの体内に戻っていく
「この水の鎧なら魔力効率も良いし
御主人様の魔力切れが起きるまで
って言っても、まぁ無いだろうけど
それまでの物理攻撃は全部下に押し流されるわ
ある程度水を吸い上げて魔力に変換出来るから
かなり便利なはずよ?
精霊融合の時の様にとはいかないけど
試行錯誤の結果このやり方が1番良さそうなのよ」
水の鎧の性能がかなり良い
そんなモノを見せられたメイベルは呆気にとられ
ヴィクトリアが凄いなぁと感心していた
攻撃面はどうなの?とブレイクがスイレンに聞くが
スイレンは不思議そうに
「御主人様が思いつく攻撃は
なんでも出来るわよ?
水はほぼ無限に出せるし
国の1つや2つ簡単に滅ぼせるくらいにね」
思いつく限りの攻撃が実際に出来る
簡単に言うが普通の事では無い
更に国を滅ぼせるくらいの戦闘力を有していると
スイレンのお墨付きをもらったブレイクの実力は
段々と化け物じみてきた
「そんなに凄いの?僕?」
そうよ、とスイレンがブレイクの頭を撫でる
それを見たヴィクトリアがヤキモチを焼き
ブレイクを抱き抱えて
「もう行くぞ!」
とメイベルの手を引き街に向かった
ヴィクトリア邸から冒険者ギルドは
結構、近く歩いて5分程で到着する
ギィとギルドの扉を開け中に入ると
「お!舞姫じゃねぇか
珍しいな、依頼でも受けていくのか?」
と話しかけてきたなは
身長2メートル余りの左頬に傷がある強面の男
ギルドマスターのベルズだった
「ベルズか!
ちょうど良かった
息子の冒険者登録に来てな!」
「ん?お前に息子なんかいたか?」
とベルズは不思議そうにしていたが
まあいいかと登録の準備を始めた
そんな中ヴィクトリアが
“アレ”をやると言い出しベルズが
「本気か?」
当然の疑問である
ヴィクトリアの時同様にブレイクに
最高難易度の試験を受けさせるとなると
下手をすれば死人がでる代物で
内容的には3対1でしかも
実戦で使う武器を使用する
魔法もありでほぼリンチだった
当時のヴィクトリアの反応速度でも
3人相手はギリギリの難易度で
それが故にヴィクトリアは近衛騎士団の
副団長まで登り詰めたとも言える
「あぁ、息子は私より強いからな!」
ベルズはヴィクトリアの言葉を
ただの親バカ発言だと思った
「なぁ、本当にやるのか?
そこまで難易度を上げなくても
冒険者登録は出来るし
正直言ってランクが高い状態で
スタート出来る以外メリットないぞ?」
それでもするぞ!とヴィクトリアが話を押し切り
ベルズは渋々了承した
ベルズが冒険者3名を集める間に
ヴィクトリアがブレイクに説明する
「今言った通り試験を息子が受ける
だがあまり無茶はしないでくれ」
わかりました!と張り切るブレイクに
「いやそうじゃなくて
簡単に言えば手加減をしてくれ
相手が3人と多いが息子が本気になれば
相手が致命傷になりかねん
特に精霊融合は禁止だ」
そうですか...わかりました!とブレイクは
そんなに手加減が必要なのかな?
と不思議がっていたが
スイレンにも念押しされていた
ベルズが急遽冒険者を3名集めて
ギルドの試験場に皆で移動する
やはりと言うか野次馬も話を聞きつけ
段々とお祭り騒ぎになってきていた




