第58話
カーラの聞いた噂の内容はこうだった
日暮になると子供が居なくなり
翌日になっても帰ってこない
翌日の夜から居なくなった子供の親の元で
子供の啜り泣く声が聞こえてくる
その様なものだった
「なんか、不気味というか嫌な噂だな」
「そうなんだよ
まあ、俺達はまだ子供が居ないから
心配する様な事は無いんだけど
抱っこしてるライトとか心配になるからな」
とカーラはヴィクトリアにライトを返す
「孫達は私が護る!
それにしても子供が居なくなるか...」
ヴィクトリアは昔に起きた事件を思い出していた
とあるカルト集団が子供を攫い
悪魔召喚の生贄にしていた話だ
「大丈夫っすか?顔色悪いっすけど」
とロアがヴィクトリアを心配するが
「大丈夫だ
日も暮れ始めた事だし帰るとするか...」
とヴィクトリアは自身の腕の中に
ライトが居ない事に気付いた
そして周りに人が居ないという事にも
「孫!?何処だ!?」
30分程3人はライトを探し回ったが見つからず
「人通りも無くなってる
おかしいそれになんでこんなに
夕暮れが続いてるんだ!?」
ロアが気にしていたのは
いつもなら日が暮れるのは15分もかからないが
ライトを探している間
夕暮れは続いていて現在も続いていた
「...此処はなんだ?
おかしいのは確かだが
私の知るルア王国の街並みとも少し違う」
周りの景色が段々と変わっていっているのを
ヴィクトリアは薄々感じ取っていた
そしてカーラが
「本当に此処は何処なんだ?
俺達は何処に迷い込んだ?
...わかんねぇな」
「此処は結界の中だな」
「シル、結界ってなんだ?」
結界とは魔法とは違い
魔力が無くても使えるもので
悪魔召喚や天使召喚の儀式において
使われるの場合が殆どで今回の結界は
人避けの結界だそうで
使用者の目的は人目につかない事だった
「じゃあ、何処かに孫はいるんだな?」
「そうだろうな、だがあまり時間がない
夕暮れが続いてる間しかこの結界は保てない筈だ
しかし時間すら歪めているこの結界は
使用者が時間と空間を操る魔力を
有している可能性がある
ブレイクとノワを同時に
相手にする様なものだ
正直ライトの身の安全は保証出来ん」
それを聞いたヴィクトリアは激昂する
「シル!この結界の主は何処だ!
そこに孫はいるんだろう!?」
シルの案内でヴィクトリアは
カーラ達と共に結界の主のところに向かった
ライトは気を失っており
とある女の腕の中で目が覚める
特徴的なオレンジの髪を腰まで伸ばしており
額には独特の瞳の形の白い刺青がある20代の女
「...だれ?」
「...私の事はいい
お前はライト・クロノ・シルヴァ・ハートか?」
「うん!ぼくはライトだよ?
ぼくね、ばあちゃのところにかえりたい!」
「それは無理だな
お前の中に邪神がいるだろう」
「じゃーくん?うん、いるよ?」
邪神をじゃーくん呼びしているのに
女は驚くがライトの能天気な雰囲気に
流されそうになるが
「ライト、お前は危険だ」
「きけん?」
「危ないって事だ」
「あぶないの?」
「こんな事はないか?
モンスターがお前を助けたり
襲われなかったり
人から恐れられたり」
「おそれ?」
「怖がられる事だ」
「う〜ん、ゴブゴブさんとは
たぶんなかよくできてるのかなぁ?
こわがられることはない?とおもうけど...」
ライトは以前ノワに言われた事を思い出していた
邪神との関係を考えないといけない
確かに一般的に邪神は危険な存在だ
だがライトにとっては
自分に何もしてこないし
遊び相手になってくれている存在だ
「邪神は消さなければならない
確実なのはライトお前の死だ」
「ふざけるなぁぁぁあ!!!!!」
そこにヴィクトリアが駆け込んで来た
「何が孫の死だ!!!
孫を攫っておいて
ふざけるのも大概にしろ!!!」
とヴィクトリアが女に蹴りを喰らわせ
ライトを奪い返す
「ばあちゃ!」
「すまない、孫遅くなった」
ヴィクトリアはライトを抱きしめた
「くっ...銀翼のリーダー
銀の舞姫ヴィクトリア・シルヴァ・ハートだな
それにロード・メソポリアのカーラとロアか
結界は発動している筈だが?何故此処に居る?」
「そんなのはどうでも良い!!!
日暮に子供が行方不明になっている事件は
お前が原因か!」
「...ちょっと待てなんの話だ?」
「とぼけるな!!!
孫を攫っておいて
しらばっくれる気か!!!」
ヴィクトリアがライトを片腕に抱き
剣を女に構え攻撃を仕掛ける
女はヴィクトリアの攻撃をなんとか避けながら
ヴィクトリアに意思疎通を試みる
「ヴィクトリア公爵
子供が行方不明になっているというのは本当か?」
「何を惚けてるんだ!
お前が犯人だろう!」
ヴィクトリアが熱くなって話を聞こうとしない
そんなヴィクトリアの顔に覆い被さる様にライトが
「ばあちゃ!まずはおはなし!
あのひとこまってるよ?」
「孫!?
コイツはお前を攫って殺そうとしたんだぞ!?
お前に何かあれば私は...」
「だいじょうぶだよ、ばあちゃ
あのひとはさっきもぼくと
おはなししてくれたもん」
ライトの言葉に冷静になるヴィクトリア
そして女に向き直ると女がヴィクトリアに謝罪する
「すまなかった
だが邪神の事はいずれ
どうにかしないといけない事だ」
と女はヴィクトリアに説明する
女はメーアと名乗り
メーアはガルベルン民族という
結界術や封印術を得意とする民族で
メーアはその生き残りだった
「ライトの中に邪神がいるのは
ヴィクトリア公爵も知ってる筈だ
危険だということもな
先程はライトの死が確実とは言ったが
我々ガルベルン民族は結界術以外にも
封印術も得意とする
ライトの中の邪神を封印する事で
ライトにも危険は及ぶ事はない筈だ」
メーアはライトの事を心配して
邪神を封印する事を提案してくれた
「そうか...でもそうなると
子供達が行方不明になっているのは
いったいどういう事だ?」
「私もそれが引っかかる
しかも日暮限定なのが気になるな」
「はなしむずかしくてわかんない!」
とライトが駄々を捏ね
ヴィクトリアが一から説明していると
周りを怪しい集団に囲まれた
「メーアの仲間...じゃないな?」
「私に仲間はいない
悪魔召喚の儀式をするカルト集団だろうな」
その集団の目的はライトで
ライトを抱えているヴィクトリアを攻撃し始め
ヴィクトリアは精霊王化をし
空中でライトを抱えて攻撃を回避する
「アレが銀の舞姫か...
よく私は死なずに済んだな」
とメーアがカーラとロアと共に
カルト集団であろう輩を次々に倒していった
ヴィクトリアが空中から降りてきて
「メーアは時間魔法と空間魔法が使えるのか?
シルがそんな事を言っていたが」
「少しだけだ
そもそもガルベルン民族は
魔力を有するものは殆ど居ない」
ガルベルン民族は魔力を有さない
メソポリア族と似た特徴を持つが
メーアは魔力を有する
珍しいタイプのガルベルン民族だった
「結界もそろそろ解けるだろう
その前にライトの中の邪神を封印しておきたい」
メーアはライトに近付く
するとヴィクトリアがライトを抱いて
メーアから離れる
「ヴィクトリア公爵!
危険なのは貴女もわかっている筈だ!」
「まずは孫に確認する!
話はそれからだ!」
ヴィクトリアはライトに
邪神の封印について説明するが
ライトは...
「やだ!じゃーくんはともだちだもん!
じゃーくんはなにもわるいことしてない!」
「孫、大事な話だ
邪神はお前が産まれる前に
このルア王国を襲った
その時に私達は邪神相手に戦った
そして一度負けている
息子という人物が助けてくれなければ
今頃、私達はいなかった筈だ孫もな
それを考えた上で邪神を封印せずにいるのか?」
ライトはヴィクトリアの言葉に考え込む
「うん!ぼくがじゃーくんもみんなもまもる!」
とヴィクトリアに対してライトは言い切った
「そうか、わかった」
「ヴィクトリア公爵!?」
「メーア、この話は無かった事にしてくれ
孫が私の前で言い切ったんだ
何かあれば私が責任をとる」
メーアは納得できない様子だったが
結界の効果が切れ周りに人が現れ始める
「メーア、一旦私の家に来い話はそこで聞く
息子達にも話しておきたいしな」
ヴィクトリアはロアとカーラ夫妻と別れ
ライトとメーアを連れてヴィクトリア邸に戻った
「母上、こちらは?」
ヴィクトリアがまた知らない人を連れてきたと
メイベルが心配するが
「メーアだ...えっと
ガルベルン民族で...
メーアお前はなんだ?」
「私は邪神の被害を抑える為に旅をしている者だ
白炎帝の大聖母かそれに光の勇者に闇の巫女と
これだけ揃っているのか
邪神はライトの中だけじゃないな?」
「僕が1/4封印しています
創造神と破壊神も同じで
闇の巫女で妻のノワもそうだったんですが
今はライトが邪神を宿しています」
「そうか、光の勇者ブレイクだったな
お前は大丈夫なのか?
その身に邪神を宿していて」
邪神の影響はブレイクには無かったが
これからも無いとは限らない
それを説明するメーアだった
「ライトもそうだが
ブレイクお前も邪神に対しては
特に危険はないのか?」
「メーアさんが思ってる様な事は無いと思います
邪神は僕とノワで一度倒してますし
邪神自体1/4になってるので
それに残りは創造神と破壊神が管理しているので
余程の事がない限り大丈夫です」
ライトが話に飽きてスゥとルナを誘い
追いかけっこをしていた
「メーア、孫の事だが私に任せてくれ
何かあれば私が責任をとる」
「具体的にはどうするつもりなんだ?」
「そうだな...」
とヴィクトリアは考え込んでいるとブレイクが
「母さんも強いですから
1/4の邪神なら母さん1人で倒せる筈ですけど」
と邪神が暴走しても
ブレイクやノワ、ヴィクトリアなど
抑止力は多いから大丈夫だろうと
ブレイクがメーアを説得する
「そうか...ならライトとブレイクに
封印術を教えておこう
何かあった時に使える筈だ」
とメーアがブレイクに封印術を教え
ライトにも教えようとしたが
ライトは既に遊び疲れて寝ていた
「メーア、孫には明日教えてやってくれ」
わかった...とメーアはその日
ヴィクトリア邸に泊まる事になった
翌日メーアが起きる前に
ライトがメーアを起こしにベットにいる
メーアに馬乗りになる
「おはよう、あさだよ!
ふういんじゅつおしえてくれるんでしょ?」
「...んっ...まだ日も登ってないじゃないか...
子供は起きるのが早いな...
そうだな封印術を教えないと...」
メーアはライトを床に移動させ自身も起きた
「ヴィクトリア公爵やブレイクはどうした?」
「ばあちゃとパパ?まだねてるんじゃない?」
は?とメーアはそんなに早い時間に
ライトは起こしに来たのかと呆れていたが
ライトと共に庭に出て封印術に関して教える
「邪神の事はライトが
どうにかするとの話だったな
それに伴い封印術は役立つだろう」
封印術は対象を封印するのに手順があり
魔力がなくても使える術と言うのが特徴で
周りにいる自然の精霊の力を借りるそうで
「例えば邪神の力を封印したい場合は
我、謂れなき彼の者の力を封印せし者
精霊よ我が声に我が意志に応え
彼の者の力を我が手中に止めよ
と言うふうになるな」
「いわれなき?か...かのもの?むずかしい...」
そうかとメーアはライトの悩む姿が
可愛いのか笑みが溢れる
「あとは何処に封印するかだな
それについてだが...」
メーアが説明を続けようとした時だった
ライトが既に封印術を始めていた
「われ!え〜っと...
じゃーくんのともだちライト!
せいれいさん!われのこえに
われのいしにこたえ
じゃーくんともっとなかよくなれるよう
よろしくおねがいします!」
『は?』
「は?」
とライトの中で見ていた邪神にしろ
その場で見ていたメーアにしろ
ライトの言葉に呆気に取られ
ライトの右腕に邪神の力が集まり
それをライトは自分のお腹に押し当てた
「...バカ!何してるんだ!?」
「え?だってふういんするんでしょ?」
「自分に封印してどうする!?
それなら今となんら変わらんだろう!?」
とライトのお腹をみると
お腹に二重丸の白い刺青が入っていた
『バカかお前は!
前からおかしいとは思っていたが
ここまでとは思って無かった
もっと考えて行動しろ!』
ライトはじゃーくんと会話できるのが嬉しいのか
「えーでも、じゃーくんともっといっしょに
いたいからしかたないよねぇ〜」
その言葉にメーアは更に頭を抱えた
力を失った邪神はライトの影となり
ライトから出てくるが繋がっている為
一定の距離以上は離れられなかった
『いったいどうするつもりだコレ!
お前のせいでこんなになってしまった...』
そうこんなにと言うのは
今の邪神はただの影
それだけの無害な存在だった
「じゃーくん!
コレでゆめのなかじゃなくてもあそべるね!」
「...本当にこの子はなんなんだ?
邪神を封印するのは例え1/4だとしても
準備が必要な筈なんだが
それを1人でやってしまった」
メーアがじゃーくんと遊ぶライトを見て
この状況が1番解せん!と頭を抱えてしまった
そして夜が明け日が昇り始めた




