第55話
国王ミランドは今回の要求を断れば
ルア王国とアーガルド法王国の間で
戦争になると考えており
そうなるとアーガルド法王国に
勝ち目は無いはずだが
それでも要求をしてくる
アーガルド法王国の意図が掴めない
今回、アーガルド法王国になったのは
前国王が死去して政権がアーガルドの王族から
教皇に移った為だった
アーガルドの王族、王太子はまだ3歳で
15歳の成人までの間は
聖女教の教皇達が管理する事になっていた
「教皇は何故この様なことを?」
考えても埒が明かない為
ヴィクトリアに使いの者を送り
メイベルと共に来てもらう事にした
「ああ!聖女様!
いや、今は聖母様であられるメイベル様が
我々を導いてくださる!」
と教皇は相変わらずメイベルが
自国を導いてくれると信じて疑わず
ルア王国にメイベルを
アーガルド法王国に寄越すように要求した
「...だが面倒なのは特級Sランクの2人が
メイベルの身内にいるという事だろ?」
と教会の粛清組織のトップ
アプーが教皇に説明するが
「そんな事はお前達がどうにかしろ!
その為の粛清組織だろうが!」
とメイベルがルア王国から
アーガルド法王国に来てくれると
信じて疑わない教皇の頭の中はお花畑で
アプーは呆れていたが仕事だからな、と割り切り
「じゃあ俺は好きな様にやらせてもらうよ」
とアプーは教皇の部屋から出て行った
「どうでした?教皇のクソ野郎は」
と粛清組織の女がアプーに聞き
「オイオイ
あれでも雇い主なんだ
クソ野郎とか言うんじゃねぇよ
まぁ...間違ってはいねぇか」
と粛清組織はルア王国に向かった
ルア王国にて
ヴィクトリア達シルヴァ家は王城に呼ばれていた
「すまんな
忙しい時に面倒な事になってな」
「そうか!じゃあ帰る!」
ヴィクトリアが国王ミランドの言葉を聞くや否や
帰ろうとするが慌てて国王ミランドがそれを止める
「なんだミランド面倒な事なんだろ?
私はそういうのは嫌いなのを知ってるだろ?」
と妹のヴィクトリアの性格を考えれば
兄の国王ミランドもそれはわかって呼んでおり
「お前の娘、メイベルの事で
問題になっているんだ、少しは話を聞け!」
と娘の名前が出た途端に
「先に言え、娘がなんだって?」
とヴィクトリアはやっと
国王ミランドの話を聞く気になり
アーガルド法王国の件を説明した
「炎帝の聖母?聖女?なんだソレ?」
とヴィクトリアは憶えてないのか
シルが説明してくれる
「炎帝の聖女は聖女の中でも
炎帝、炎の精霊王と契約した聖女を言う
聖母になったと言う事は
メイベルが妊娠している事も知られているし
何故だか知らんが産まれる子供が娘だと
断定されているな」
「それって勝手な憶測じゃねぇか
そんな勝手なこと言われても
俺の妻も子供も絶対やらねぇよ」
とアークが珍しく怒っていて
メイベルは少し嬉しそうだった
「お父様、メイベルが炎帝の聖母だとしても
公爵家の娘ですよ?
それこそ国際問題になりませんか?」
とティラが父ミランドにそう話すが
「そうなのだ、そこが問題でな
一体どうしたら良いものか
あちら側は戦争を仕掛けてもいいと言っていて
和平を結んでたのは前国王だと言い張っておる
それに粛清組織も使うと言っていてな」
粛清組織の名を聞いたヴィクトリアが
苦虫を噛み潰したような顔をし
「どれだけ斬っても復活する
あのゾンビ集団か?
私、あの連中嫌いなんだよ
以前戦った事はあるが
復活する姿が気持ち悪いんだアレは」
とヴィクトリアが珍しく気持ち悪いと言っていて
「そんな気持ち悪いんですか?
母さんがそんなに言うなら
そうなんでしょうけど」
「ゾンビ集団って言うくらいだから
そうなんだろうけどお義母様が
そこまで気持ち悪がるのも珍しいもんね」
とブレイクとノワが話していると
スゥとメルが子供達5人と遊んで...
ノエルは相変わらず寝ていたが
そんなノエルをクレアが面倒を見ており
スゥとメルがライト、ティア、ルベル、ディルと
追いかけっこをして周りはバタバタしていた
「あらあら、今日も子供達は元気ねぇ」
とローラ王妃はライト達を見て癒されていた
「アーガルド法王国に改名され
いきなりそんな事になるとは...
メイベルが炎帝の聖母と言われてもなぁ
正直困る、しかし戦争となると
一般市民に被害が出ても困る」
と悩む国王ミランドを見てメイベルが
「じゃあ私が行くしかないですね」
「娘ダメだ
お前はまだ動ける状態じゃない
娘の今後を考えるから
時間を稼いでくれミランド」
とヴィクトリアが国王ミランドに圧をかけ
その日はヴィクトリア邸に帰り
国王ミランドもアーガルド法王国に
使いの者を送り時間を稼ぐ
「...」
メイベルは夜遅く1人部屋の小窓の側に座っていた
アークがそれに気付きそっと布団を持って
「どうしたメイベル?寝れないのか?」
「うん、ちょっとね
炎帝の聖母かぁ...
そんなの柄じゃないのにね」
そうだな、とアークが言うと
メイベルに頭を叩かれる
「痛っ...
メイベルが自分で言ったんだろ?
俺はメイベルが俺の妻ってだけで良い」
「アーク...ありがとう
でも少し残念だなぁ男の子か女の子か
どっちだろうなぁって楽しみだったのに」
「それも勝手な憶測だろ?まだわかんないって
男でも女でもどっちでもメイベルの子供だったら
可愛いだろうから良いけどな」
とアークは自身とメイベルの子供を
楽しみにしていた
「...そろそろ寝るか」
「うん」
と2人はベットに入りくっ付いて寝た
翌日メイベルが消えていた
「姉さんが攫われた!ノワお願い!」
「うん、わかった!」
とノワはログスの魔法、探知魔法を使い
メイベルの場所を確認する
「いた!
...移動してる?
迷いの森にいる!」
子供を見る為ティラとクレアそれにメルが残り
一同は行こうとした時に
「ぼくもいく!」
とライトが騒ぎ出し
スゥが面倒を見る事にして
ライトも付いていく事に
「スゥ!孫がいるから
ゆっくり行動してくれ!
私達は先に行く!」
とヴィクトリアに言われスゥはわかった!と
ライトを丁寧に抱え
迷いの森に向かった
一同は妊婦に何してくれてんだ!?とキレていた
アークとヴィクトリアと
ブレイクの3名は特にだった
「見つけた!」
とノワの先導で攫われた
メイベルを抱き抱えてる粛清組織であろう
男達を見つけた
メイベルは気を失っている様で
ピクリとも動かない
「俺の妻に何しやがる!」
とアークがブチ切れで魔法を展開する
茨棘魔法が相手を縛っていく
そしてブレイクが時間魔法で粛清組織の男達を
完全に固定しヴィクトリアがその合間を縫って
メイベルを奪い返した
「コレで1日は動かないだろうから
大丈夫だよアーク兄、そんな顔しないで
姉さんは気を失ってるだけだから、帰ろう」
とその時だった
「コレが時間魔法かスゲぇな」
と男が喋り出しブレイクは驚いて振り向いた
そしたら男が爆散し肉片が飛び散った
「な!?今の何!?」
「息子言ったろう!ゾンビ集団だと
一度爆散して肉片が集まって復活するんだ」
確かに気持ち悪いとブレイクが
ヴィクトリアと同じ苦虫を噛み潰した顔をしていた
「なんだよそれ!気持ち悪い!
魔法の干渉を受けても尚、爆散するとなると
あんまり時間魔法も意味ないじゃないか!」
「お前が炎帝の聖母メイベル様の弟で
特級Sランクの光の勇者ブレイクだろう?
そしてそっちが母親の同じく
特級Sランクの銀の舞姫ヴィクトリアだな?
俺はアプーって言うんだ
にしても面倒だなぁ特級2人を相手に
聖母様を攫うのは疲れる」
「なら、娘をとっとと諦めろ!」
とヴィクトリアがアプーに斬りかかり
斬り刻まれるアプーだったが
数秒後には肉塊が集まり元の姿に戻る
「服も刻んだ筈だが何故元に戻る?
それも身体の一部なのか?」
アプーの戻る姿を見て
ヴィクトリア達は気持ち悪がり
「そんな気持ち悪がるなよ
予想通りだ身体の一部としてな
まあ髪の毛みたいなもんだ」
アプー達、粛清組織のメンバーは
メイベルを諦める様子はなく
どうにかしてメイベルを攫い
アーガルド法王国に連れ去ろうとしている
そんな時だった
「...」
ブレイクの腕の中で目が覚めたメイベル
「姉さん!大丈夫?」
「...貴方は誰?此処は?」
その様子にブレイクは言葉を失う
「娘!どうしたんだ?
お前の弟だわからないのか?」
「えっと...貴女もどちら様ですか?」
ヴィクトリアも忘れられていた
「メイベル?こんな時に変な冗談はやめろよ
どうしたんだ?」
「本当に...貴方達は誰なんですか?」
皆が愕然としたその隙に
アプー達、粛清組織のメンバーは
メイベルを攫い迷いの森を駆けて行った
「薬が効きすぎたか?
聖母様が記憶喪失か?まあ都合がいい」
アプーはそんな事を言いながらメイベルを抱え
迷いの森森を抜ける
メイベルが攫われて数分後
「坊や!しっかりしな!」
カルラがブレイクにビンタし正気に戻す
「...うん、でも姉さんが
僕の事を憶えてないなんて」
「...娘は皆を忘れていた様子だったな」
「俺は1人でも行きます
メイベルが俺を憶えてなくても
アイツは俺の妻です」
とアークが焦り混じりの言葉を吐くと
ヴィクトリアとブレイクに頭を叩かれる
「誰が娘を助けに行かないなんて言った!
作戦を考えるぞ」
「そうだよアーク兄、姉さんは
アーガルド法王国にとって特別な筈だから
変な事はされない筈だ
その間に奪い返す、その為にはグレン!」
「なんだ?オイラか?」
グレンにメイベルとの繋がりがまだあるかを聞くと
メイベルとの繋がりは微かになっており
それを辿るのは難しいのではないかと
グレンが言うがそこはノワが
「やってみせる」
と言っており魔法を更に強化して
メイベルがどこに攫われたのかを確認する
やはりアーガルド法王国に向かっている様で
迷いの森森を抜けた先の街道沿いに
移動しているのをノワは見つけた
「このままだと国際問題になるけどいいの?」
とノワが確認するが誰もそんな事を気にしていない
自身の娘を、姉を、妻を奪い返すのに
誰も反対などしなかった
「じゃあ行くよ!バハムート!」
「グレイシアさん!お願いします!」
とノワとブレイクが2頭の龍神に乗り
そこにヴィクトリアとアークが一緒に乗る
「...メイベル絶対、連れ戻してみせる」
とアークが覚悟混じりの言葉を呟く
「そうだよアーク兄
必ず姉さんを連れ戻すんだ!」
ブレイクはアークにそう言うと
グレイシアに頼み急いで
アーガルド法王国に向かった
「主達、スゥ達の事忘れてないか?」
とスゥはライトを抱えグレイシアとバハムートが
羽ばたく音を聴き置いて行かれたと落ち込んでいた
「パパもママもばあちゃもぼくたちのこと
わすれてるねぇ、どうするの?」
「う〜ん、どうしたら良いかなぁ
ライトが大丈夫なら走れば間に合うかも」
「ぼくはだいじょうぶだよ!」
そうかなぁ?とスゥは悩んだ末に
ライトに負担がかからない体制で
抱っこして走る事にした
「はやいねぇ、すごい!」
ライトはスゥの腕の中で
まるでジェットコースターの様に
安全バーの中で縦横無尽に移動する
スゥというアトラクションを楽しんでいた
「大丈夫か?ライト」
「うん!たのしい!」
そっか、とスゥはライトを抱え
ブレイク達を追いかけた
アプー達、粛清組織がアーガルド法王国に着くと
「聖母様、着きましたよ」
アプーがメイベルを降ろすと
「あの...聖母様ってなんですか?
それに貴方達は?」
組織のメンバーの女が答える
「私達は貴女に仕える者...とだけ言っておきます
貴女が困った時に呼んでください
必ず助けに参ります」
とアプーを残し粛清組織のメンバーは
街に消えていった
「あの...貴方は?」
「俺はアプー、聖母様
アンタは何にも気にする事ない
自由に暮らせるんだ
さっきの奴も言ってたけど
助けを呼べば俺達が駆けつける
この後、クソ野郎のところに行くが
あんまり真面目に聞くこたぁねぇ」
「そうなんですか...アプーさん?であってます?」
「あってますよ聖母様
てかアンタ妊娠中だったな
あんまり歩かせるのも悪いか」
とアプーはメイベルを抱え教皇の元に向かった
「おお!聖母様!
よくぞお越しくださいました!
これから何にも心配する事はございませんぞ!」
教皇がメイベルが辛くない様
ベットを用意して待っていた
「あの...クソ野郎さん?」
「クッ...クソ!?」
「プッ...悪い
そのまま言うとは思わなくてな」
教皇が剣を出しアプーを切り裂くが
「俺じゃあ、ストレス発散にならねぇだろ」
と肉片が集まり元に戻っていく
「あの...すみませんでした」
「いえいえ!聖母様は何も悪くないですから
此奴が聖母様に変な事を吹き込んだから
そんな事を言っただけですよね?」
と教皇はメイベルに取り入ろうとするが
「別に間違っちゃいねぇだろ?
お前はクソ野郎の他の何者でもないだろ?」
クソ野郎がアプーを無理矢理押し出し
部屋を出ていく
取り残されたメイベルは
(此処はどこなんだろう?
それに...目覚めた時のあの人達に
なんだが悪い事をした気がする
驚いていたもんなぁ
そういえば妊娠中?
私、妊娠中なの!?)
とメイベルがお腹を見ると確かにお腹は膨れている
「えぇ、どうしよう
私、自分の事もわからないのに
子供なんてもっとわからないよぉぉぉお!」
と悩むメイベルだった




