第47話
ブレイクが起きた頃には夜も更けて
ヴィクトリアがブレイクの側でウトウトしていた
「...ん?あ、起きたか息子
体調はどうだ?」
ブレイクは肩と首を回し
「大丈夫です
喉が少し腫れてるくらいですね」
ブレイクの扁桃腺が腫れており
ヴィクトリアは氷袋を持ってきて
ブレイクはそれを喉に当てまた寝始め
ヴィクトリアも椅子に座りながら寝始めた
ローグは迷いの森で1人佇んでいた
「これでやっと終わる...長かったな
邪神を倒す為に色々な事をしたが
今回のように上手くいってるのは初めてだ」
するとそこにバハムートがやってきて
「ローグ、本当はどうなんだ?
お前が居れば邪神にも勝てそうなものだが
お前が戦う事はあるのか?」
バハムートの問いにローグは答える
「俺は...戦わない
いや正確には戦えない
俺の世界の話ではないからな
それにもう身体が保たん
老いたこの身体では精霊融合すら
もう出来ない、オリハルコンの大剣を打った時に
使った龍人化と
俺に教えた時ノ精霊龍神王が最後だ」
「そうなのか...
気になったんだがお前は何故まだ
精霊融合や龍人化が出来る?
契約精霊や龍王や龍神が居ないのに
未来には居たのかもしれんが
邪神により全滅し今は居ないだろう?」
バハムートは疑問をローグにぶつける
「確かに全滅した
だが、まだ皆と繋がっている
その残りカスだ
もう俺には何も残ってない
あとは俺に託した」
そう言うローグはバハムートを残して
ヴィクトリア邸に戻る
迷いの森に残されたバハムートは
未来の自身の不甲斐無さに苛立っていた
「...邪神を倒せず何が龍神だ」
バハムートは、翌朝
ブレイクを叩き起こし能力を解放した
能力を解放したブレイクは
以前とは比べ物にならない程に
魔力で満たされていてバハムートは
コレでも負けるのかと疑問を持つ
「でも、いきなりどうしたの?なにかあった?」
ブレイクはいきなりの事で混乱したが
バハムートが昨夜の事を説明した
「そっかローグさんがそんな事を
確かにローグさんが手伝ってくれたら
良かったんだけどそうもいかないよなぁ」
バハムートは再度ブレイクの能力を封印し
ブレイクも魔力量を上げる為に訓練を再開した
邪神は新たな手駒を増やしていき
ブレイク達を倒す算段を立てていた
「...ふむ、オークが2000に
ワーウルフが1500か
その中でも進化したのが6割程いる
どれだけやられても
ラストワンにしてしまえばいい」
と、邪神は着々と準備を進める
邪神軍は冒険者などに悟られないよう
装備を殺して奪っていく
ゴブリンの時と同じようルア王国を攻め落とす為に
更に3ヶ月経つ頃には
ブレイクは時ノ精霊龍神王を使いこなしていた
「この状態でオリハルコンの大剣を使うと
1〜3秒じゃなくて好きな時間止められるな」
迷いの森で実験し始めるブレイクにノワが
「凄いねぇ...これなら邪神にも負けないね」
ノワにブレイクは
「...うん、大丈夫な筈」
「ブレイク?何か不安?」
ローグが言っていた
ノワがブレイク自身の目の前で死んだ事実を
思い出し不安がよぎる
「ブレイク、話しておけ
不安はそのうち自身を蝕むぞ」
バハムートはブレイクにそう助言する
ブレイクはローグの未来を説明した
「そっか...じゃあ
ブレイクが私を護ってね」
「うん、護るよ絶対に」
ブレイクはローグの自身の未来を否定する
その為にローグはブレイクに協力した
「主〜ヴィクトリアがご飯だって」
スゥが迷いの森にいる2人に声をかけて
「今行くよ、ありがとうスゥ」
「えへへ褒められた〜」
とスゥの頭を撫でるブレイクの腕をとるノワは
「行こう!スゥも早く!」
なんだが嫉妬した様子だった
ヴィクトリア邸に戻りブレイク達は昼食を摂る
ローグは自室で昼食を摂ると言い
食事を持っていこうとしたが
ヴィクトリアに止められ
「一緒に食べるぞ息子」
「...わかったから、そんな顔をするな」
ヴィクトリアは寂しそうな顔をして
下唇を突き出しローグを止めていた
するとローグがブレイクに話しかける
「お前は良いのか?
俺とお前は同一人物だ
それがヴィクトリア...母さんに
影響しているようにしか見えんが...」
「良いんじゃないですか?
母さんがそうしたいならそうすれば」
ブレイクはローグを自身とは
あまり考えてない様子で話をする
「ローグさんの未来を...
その世界を否定しなきゃいけない
だから僕とローグさんは
別の人物だと勝手に思ってます」
「そうか...俺とは別の人物か...」
どこか嬉しそうなローグ
それを見たヴィクトリアは
「やっぱり息子は笑った方がいいな!
いつも暗い顔をしているから
笑えないのかと思ったぞ」
ヴィクトリアの言葉に、失敬な...とローグは
そんなに表情が暗いのだろうか?と考えていた
「そんな事より
お前は今のままだと邪神に負けるぞ」
「え?」
ブレイクがローグに言われて
「どういう事ですか?」
「まだ同衾していないな?
ヴィクトリア...母さんが反対するだろうが」
「当然だ!」
ヴィクトリアのカットインが入るがローグは続ける
「別に揶揄ってる訳じゃない
それが時ノ精霊龍神王をもう1段階進化させる筈だ
他ではダメだノワと同衾しろ」
するとカルラが
「それはなんでだい?理由があるんだろう?」
「...あぁ、俺は光の勇者だったが
それでも負けたそれを超えるには
俺を更に強くし英雄にする必要がある
その為にはわかりやすい繋がりが必要だ
それが家族を作る事...子供だな」
そこまで聞いていたブレイクとノワは
顔を段々と赤くしていき
ヴィクトリアがローグを叱る
「まだ早いと言っているだろう!」
だがローグは反論する
「このままでは皆、全滅する!
それと比べれば些細な問題だ!」
それは...とヴィクトリアが考え込む
「だがブレイクとノワの意思を尊重してだな...」
とヴィクトリアがブレイクとノワを見ると
「私は...いいよ」
「え!?ノワ!?」
「必要なんでしょ!
恥ずかしいから何度も言わせないで!
ブレイク!同衾するよ!」
そこまで言われてブレイクは覚悟を決めて
その夜、ブレイクはノワと2人きりになった
翌日
ブレイクとノワは同じベットで目覚め服を着る
「よし、俺
時ノ精霊龍神王になってみろ」
わかりました、とブレイクが
時ノ精霊龍神王になるが
そこに変化は無かった
次にローグはノワに向き直り
「そうか...こうなったか」
「え?なんですか?」
ローグはノワに龍神化をさせる
「これは...」
ノワは龍神化ではなく新たな力を手に入れた
龍神王化この状態のノワは
ブレイクの時ノ精霊龍神王と同等の力を
発揮する事が出来る
「そうか...やはり2人で強くなるか」
ローグはノワにある事を耳打ちする
「え!?そうなんですか?...わかりました」
ノワはなんだが照れくさそうにそして嬉しそうに
ブレイクに近付き耳打ちする
「私のお腹の中に
赤ちゃんがいるんだって」
「え!?本当!そっかぁ...」
妊婦に戦わせるのはどうかと思うが
ローグが言うにはこの龍神王化は
妊娠中など条件が揃わないとなれない状態らしい
ヴィクトリアとスゥが聞き耳を立てていたので
「孫か!楽しみだな!」
「いいなぁ、スゥも赤ちゃん欲しい!」
あっという間に話は広まり
「こうならない為に耳打ちしたんだが...
もう、仕方ないな」
ローグが諦めた様子で皆を見ている
「坊やがパパかぁ」
とカルラの言葉でブレイクは思い出した
「そういえばローグさんは
時間魔法が父親譲りだって言ってましたよね?
僕の父親を知ってるって事ですか?」
ローグはカルラを見て
「それは自身の母親に聞けばいいと思うが」
とカルラに説明させようとするが
「悪いね、坊やあの時の事は
あまり思い出したくないんだ」
奴隷が妊娠すると言う事は弄ばれたと言う事だ
するとローグが代わりに話し始める
「...アーガルド王国
ローレル・クロノ伯爵、それがお前の父親だ
悪どい事を随分とやってきたらしく
既にこの時代でも死んでいる筈だ」
ブレイクがローグからその事を聞き
「そうですか...僕はその人の子供なのか」
カルラがブレイクを抱きしめ
「坊やが気にする事はないよ」
(そういえばカルラは片目を潰されて
まともに歩けなかった...)
ブレイクの怒りはもうすでに沸点を迎えていた
「大丈夫もう終わった事だよ」
とカルラが宥めるが
ブレイクの怒りは収まらない
「カルラが良くても俺は嫌だ
ローグ、ローレル・クロノは
家族を残して死んだのか?」
「今はアーガルド王国の隅に住んでいる筈だ
妻のナーラが娘のトラリと一緒にな」
そうか、とブレイクはカルラに向かい
「ちょっと文句言ってくる」
「坊や、やめな
わざわざ関わらなくてもいい人間だ
行っても坊やが傷付くだけだ」
それでもブレイクの怒りは収まらず
グレイシアに乗りブレイクは
アーガルド王国の隅に住んでる
ナーラとトラリの元に向かった
アーガルド王国の隅に慎ましく暮らしている
ナーラとトラリは没落貴族として
周りから後ろ指を刺されてここ数年生きてきた
「母様、いつまで私達は
こんな暮らしを続けなくちゃいけないの?」
トラリは今年で20歳になるが
没落貴族というだけで相手も見つからない
ナーラがそんな娘に
いつも謝っている生活を続けていたが
その日とある人物が訪れた
2人ともボロ屋に住んで
そのボロ屋にブレイクはノックする
コンコン
「はーい、どちら様...ローレル?」
「違います僕は貴方の旦那じゃない
貴方の旦那の悪行の結果、出来た子供です」
その言葉にナーラは全てを悟り
「私はどうなってもいいですから
娘はどうかご容赦ください...お願いします」
「坊や...やっぱり帰ろう
こんな事したって意味がないよ」
「僕はカルラがされた事に怒りが収まらない
片目を潰されて犯されたんだ
...そんなのカルラが不憫すぎる」
その言葉に後ろで聞いていたトラリは
「私の父親が勝手にした事で私達は関係ない!」
「トラリ!貴女は黙ってなさい!」
娘を叱りブレイクに向き直り謝罪をする
「すみません
この子も大変な思いはしてきているんです
全て夫を止められなかった私の責任です」
「2人はアーガルド王国に未練はある?」
「そんなのある訳ない!」
トラリが叫ぶ
「こんな事になるなんて思ってもなかった!
父親が勝手にやって勝手に死んだら
私達は国の隅に追いやられ後ろ指を刺され
ここ数年、蔑まれて生きてきた!」
「じゃあ、行こう
こんな国捨ててルア王国に」
「「え?」」
「いいよね?カルラ」
「坊やがそうしたいならそうしな」
改めてブレイクはカルラに許可を得て
2人を連れヴィクトリア邸に向かった
ヴィクトリア邸に戻ると
ローグがため息を吐いてブレイクに話しかける
「やはり俺の時もそうしたが
お前もそうしたのか
確かにアーガルド王国に居るよりは
ルア王国に居た方がいいだろうな」
「あの...ここは?」
ナーラが怯えながらブレイクを見る
「僕の家です
母さんに説明してくるので少し待っててください」
ブレイクはヴィクトリアの元に向かい
ヴィクトリアは猛反対したがブレイクが
「僕の父親の失態です僕が尻拭いをします」
「本当にいいのか?
息子にとって辛い事もあると思うぞ?」
わかってますとブレイクは答え
ナーラとトラリの元に戻り改めて自己紹介をした
「僕は
ブレイク・クロノ・シルヴァ・ハート
改めてよろしくお願いします」
2人は驚いた表情をし
「やっぱり貴方は...」
「ご想像通りですが
今はヴィクトリア公爵の息子です
もう貴女達には関係のない話ですけど
僕の父親はローレル・クロノです
だから...」
「ごめんなさい貴方の事は
薄々気付いていたけど
やはりローレルの子なのね」
ナーラがブレイクを抱きしめるが
ブレイクはそれを振り払う
「やめてください!
僕は貴女に慰められる謂れはないです」
するとトラリが
「じゃあなんでここに連れてきたの?」
「それは...
ローレル・クロノが許せないから
でもそれに貴女達が巻き込まれるのは
筋違いだからです
母さんに滞在を許してもらったのは1ヶ月です
それまでに仕事を探して出て行ってください
アーガルドより働きやすい筈です」
「わかりました、ありがとうございます
ほら、トラリも」
「...ありがとうございます」
仏頂面でお礼を言うトラリにスイレンが水をかける
「何すんのよ!?」
「アンタね、御主人様とお母様の温情で
して貰った事にケチつけるんじゃないわよ!
御主人様は優しいからよかったけど
普通なら殺されてもおかしくないんだからね」
すみませんと娘の事を謝るナーラにブレイクは
「貴女は娘さんみたくは思わないんですか?
旦那がやった事だから
貴女には関係ない話じゃないですか」
「それでも私が止められなかったことですから
カルラさんにもブレイクさんにも迷惑をかけて」
ブレイクはナーラに対して
やはり親なんだなぁと思い
トラリは兎も角ナーラは好印象だった
そしてナーラ達が住み始めて
1週間が経った頃
「なんで!?こんな事が出来るの!?」
トラリはブレイクに訴えかける
「こんな事?何がですか?」
ナーラ、トラリ達
親子は差別される事も後ろ指刺される事も
陰口を叩かれる事も無かった
「私達は余所者なのに!
ここの人達は変よ!
使用人もそうだけど住んでる人も!」
「そうですか...それで話は終わりましたか?」
ブレイクは淡々と話を聞き
トラリの気持ちを逆撫でするような態度に
トラリは逆ギレするがナーラに取り押さえられ
「すみませんブレイクさん
私もこの子も環境の変化に慣れてないので」
「じゃあ、慣れてください」
「さっきから聞いてれば何よ!その態度!」
貴女は黙ってなさい!とナーラが
トラリを黙らせる
「じゃあ僕は忙しいので」
と、ブレイクはその場を後にした




