第40話
「これが...
御主人様私とお母様は精霊王になったみたい」
スイレンがカルラと自身を見比べて
以前の服装と打って変わって
青いドレスと赤いドレスに身を包み
精霊王特有の光輪が背中にある事から
精霊王になったのは明確だった
「坊やコレは凄いね、魔力が溢れてくる」
スイレンとカルラが精霊王になった事で
ブレイクの魔力量も跳ね上がり
それに影響されてスゥが完全に大人になった
服が弾けたのは言うまでもなく
ブレイク、アーク、ユージーン、バハムートが
それぞれノワ、メイベル、コレット、グレイシアに
目隠しをされて
テントにヴィクトリアが服を用意しており
スゥは着替えた
「主!スゥ大きくなった!」
大人のスゥがブレイクには新鮮で
「凄いねスゥ!あっという間に
背も抜かされちゃった!」
えへへと褒められたと
スゥは上機嫌になり
シルがスゥを見て
「アレはメソポリアだったか
でも知ってるメソポリアとは違うな
なんで魔力を有してるんだ?」
ブレイクがシルにスゥの事を説明して
ブレイクと契約しているから
スゥは時間魔法も使えると言う事を伝えた
「...魔力持ちのメソポリアか
しかも時間魔法付き
だからよくわからんのか...変な奴だな」
シルが言うのも無理はない
戦闘民族メソポリアは魔力を有しない
故に肉体が異常に強いと言うのが共通認識だった
それが肉体も魔力もとなると
変としか言いようがない
「でもこれでスゥは強くなったのか?」
不安そうなスゥにブレイクが
「それはわからないけど
スゥはまだ強くなれるから大丈夫だよ」
ブレイクが強くなれば自然とスゥも強くなる
魔力を有したメソポリアは未だかつていない
それにこれからもいないだろう
「主!スゥは強くなる!相手して!」
えぇ!?今から?とブレイクは仕方なく
スゥに付き合い模擬戦をする事にした
シルは模擬戦そっちのけで
ノワとバハムートに話しかける
「それでお前らはどうするんだ?」
「私達ですか?どうするって言われても...」
「バハムートはもっと能力を使いこなせ
それにノワは魔力量を上げ他の召喚獣を使役して
戦力を増やすしかない」
バハムートの魔法は封印魔法
相手の使う魔法などを文字通り
封印することが出来る
それをノワはあまり使っていない事も指摘され
ノワはノワで魔法の訓練をする事にし
バハムートがそれに付いていく
そんな中メイベルがシルの元に行き話しかける
「結局、炎帝の聖女が
なんなのかよくわかんないんだけど」
「そうか、ちゃんと説明してなかったな」
そう言うとシルは炎帝の聖女について教えてくれた
炎帝の聖女とは6属性
火、水、風、雷、土、癒の6種の属性の
火属性が更に高純度の魔力で発動されたり
火属性に適性のある人物が
火の精霊と契約する事で炎属性に変わる
炎の精霊など数多に存在する中で
炎帝の称号は炎の精霊王ガイアが有する称号であり
アーガルド王国に伝わる聖女伝説によれば
聖女は多数おりその内の1つが
炎帝の聖女というらしい
聖女の才があるものが身を焦がすほどの
炎に呑まれる試練がある
その試練を達成出来れば晴れて
炎帝の聖女と言う称号が貰える
「...って言われても
試練がある事くらいしかわかんないんだけど」
メイベルのぼやきにシルが話を続けた
炎帝の聖女になるにはグレンを
精霊王にする必要があり
それもメイベルの意識次第だとシルは言う
「そんなポンポン精霊王が誕生していいの?
炎の精霊王って2人いたら
今いる炎の精霊王ガイアが怒らない?
カルラさんは癒属性が入ってるから
別なのかもよくわかんないし」
シル曰く大丈夫だろうとの事で
シルとガイアは親交があり
ガイアの性格を考えると
“面白いから良い”と言うはずらしい
「じゃあ、オイラは
炎帝目指して頑張るか!な!お嬢!」
そんな単純なのかなぁ?とメイベルは考え込んで
シルがそんな事より、と
ヴィクトリア、ユージーン対メイベル、アークで
親子で訓練した方が良いと言い始め
「シャルネ達はまだ何も
アドバイス貰ってないのです!」
「それに、よりによって
精霊王と大精霊対精霊って
無理があんだろ!」
アークとシャルネが抗議するが
シルは気にせずヴィクトリアの元に戻り
ユージーンも大精霊になったライコとの
初戦に胸を躍らせていた
「メイベルとアークには
戦いながら教えてやれその方が早い」
とシルが言いヴィクトリアは精霊王化を発動し
ユージーンも精霊融合を発動し
それを見てメイベル達、子供組は
スパルタだなぁと思いながら
それぞれ精霊融合を発動した
「一撃だ好きに攻撃してみろ」
シルがヴィクトリアの口を使い説明し始める
確かに精霊王と大精霊に勝てる見込みはないが
渾身の一撃を見てみたいとの事で
ヴィクトリアとユージーンは防御に徹するらしく
メイベルとアークは自身の渾身の一撃を考える
「私の」
「俺の」
「「渾身の一撃...」」
メイベルは右拳に全ての魔力を集め始め
炎の拳がヴィクトリアに放たれる
アークは手を前に翳し魔力を集め
特大の茨を鞭のようにしならせ
ユージーンにぶつける
ヴィクトリアはソレを自身の剣に風魔法を乗せ
斬撃として放ち相殺する
ユージーンの嵐魔法が展開された時
雷鳴が響き渡り轟雷魔法に変わった
その轟雷を魔力で誘導し
茨を相殺した
「やっぱりダメじゃねぇか...
どうするシャルネ?」
「...」
シャルネの進化条件はもう揃っており
あとはアーク次第だった
すると今度はライコが話し出す
「孫!そんな卑屈になるな!
お前もメイベルもちゃんと強い!
自分の力を信じろ!」
んな事言われてもなぁ...とアークは
精霊融合を解きシャルネに
「なぁ、どうすれば良いと思う?」
シャルネの答えは1つだった
「お兄様次第なのです!
お兄様がシャルネの事を信じれば大丈夫なのです!
シャルネはもう早く大精霊になりたいのです!」
「信じる...か
そっか俺、勝てないと思い込んでるもんな
俺達の方が弱いから?
親父達が強いから?
関係ねぇ!俺は!
俺達はもう1人で戦ってるんじゃねぇ!
シャルネ!もう一度だ!
俺達は親父達を超えるぞ!」
自信、信じる心、言い方は色々あるが
ソレを掴んだアークはもう離さない
するとシャルネが茨に包まれ
アークとの繋がりが強く太くなる
そこには成長した10代後半のシャルネが居た
髪は深緑に変わり
緑のドレスを着て羽衣を纏っている
「「精霊融合!」」
大精霊に参加したシャルネがアークと
精霊融合し光の茨魔法が茨棘魔法に変わった
ソレを見たライコは
「やればできるじゃないか
攻守交代だ!いくぞ孫!」
今度は轟雷魔法を複数展開してアークを襲うが
アークは冷静だった
茨棘魔法をドーム状に展開して轟雷を受け切った
「お母さんはいきなりすぎなのですよ!
もう少しで当たるところだったのですよ!」
轟雷魔法は展開から落雷と同じく
光の速さで落ちてくる為
アークがあとコンマ1秒
茨棘魔法の展開が遅ければ感電していただろう
「勝負というのはそんなものだ
でもよかったじゃないか
孫が間に合わせたんだから」
上機嫌のライコが勝手に精霊融合を解除して
アークとシャルネの元に向かい
2人を褒めていたそれを見たユージーンは
「先を越された...
あとから行くのもなぁ」
するとアークが近付いてきて
「親父は褒めてくれねぇのか?
これでも俺、結構頑張ったぜ?」
そうだね、よくやったとアークを抱き上げ
褒めるユージーン
その頃メイベルはというと
「母様にはやっぱり通じないなぁ
グレン?どうしようか...って
グレン!?」
こちらも精霊融合を解除していたところ
グレンが急に輝き出し大精霊へと進化していた
「お嬢!オイラは炎帝になりたい!
だけどこれじゃまだ足りない!だから!」
本当にいいの?とメイベルが言うが
グレンも本気で
再契約が始まった
「「今ここに魂の契約を
切っても切れぬ繋がりを
どちらかの命尽きるまで!」」
するとシルがほぅ...とこの展開は面白いと
ヴィクトリアに先程とは違い本気でやらないと
怪我をすると忠告した
その日、新たな炎帝が誕生した
「これが炎帝、そして炎の精霊王かぁ
オイラ、カッコよくなったか?お嬢」
うん、カッコいいよとメイベルが答える
そしてメイベルとヴィクトリアは互いに精霊王化し
互いの魔力をぶつけ合う
それを見ていたコレットはアンとベルの目を塞ぎ
「「ママ?」」
「教育に悪い気がする」
とコレットはテントに我が子達と入っていった
ぶつかり合った炎と風は熱風となり
空に熱気が上がっていく
「これは相性の問題もあるな」
とヴィクトリアが精霊王化を解除し
メイベルの勝利で決着となった
メイベルも精霊王化を解除し
ヴィクトリアの元に向かった
ヴィクトリアがメイベルに
「やはり私の娘だな!
しっかり強くなった
これならもっともっと強くなれるな!」
はい!とメイベルが返事をするとシルがグレンに
「お前は炎帝になった
それは良い事かもしれないが
メイベルが居てのモノだ
精霊の中では短命だ
瞬き程の時間でしかないがよかったのか?」
そんな事を聞くシルにグレンは
「オイラはお嬢の契約精霊だからな
お嬢の為なら消えるのも怖くないんだ
それが精霊の中では短い時間だとしても」
グレンは覚悟の上でシルにそう話す
そうか...とシルはどこか寂しそうだった
そんな中ヴィクトリアが
「人が精霊になる事もあるのか?
前にスイレンに聞こうと
思ったんだが忘れていたんだ」
シルが話してくれた
「ない訳ではないが
どうだろうな例えばグレンが
メイベルの中から産まれた
精霊とかだったとすれば
メイベル自体が精霊になる素質はあるな」
シルはグレンが何処から産まれたのか知らない
ヴィクトリアがシルにグレンが何処から
産まれたのかを説明するとシルがメイベルに
「そうか...メイベル
自身の中に精霊が居るのが
分かったのはいつ頃だ?」
「えっと5歳くらい?」
「話によれば10歳でグレンが
産まれている事を考えると
おそらくだがまだ増えるぞお前の精霊は
5年で生成し5年熟成する
10年で1体のペースで誕生するんだろう
少年もなかなかだがメイベルも異常だな
あと何枠あるか見てやろう」
するとシルがメイベルをジッと見つめる
「...なんて事だ、残り0だ」
それを聞いたヴィクトリアが
「そんな!?娘はこれ以上契約出来ないのか?」
当の本人はへぇ〜そうなんだくらいにしか
思っていなかったが
「このままだと精霊を産み出しても
勿体無い事になるな
近しい人間に枠が空いてるといいが」
ふとヴィクトリアが以前のブレイクの枠の事を
思い出してシルに説明する
「100以上!?多いな...そうか少年が出来るのなら
その方が良いなメイベルは大丈夫か?」
「え?何が?」
シル的には残念ではあるものの
メイベル的には弟ブレイクが強くなるなら
なんの問題もないとの事で
20代になれば自ずと
精霊が産まれるメイベル
「それにおそらく
炎帝の聖女にはなってるだろうな」
とシルがボソッと言うと
「精霊が産まれるより
そっちの方が気になるわよ
聖女...ってそんな柄じゃないって!」
そんな話をアークも聞いていたのか
「や〜い聖女様〜」
と揶揄うと怒ったメイベルに追いかけ回され
アークは必死に逃げた
その頃ブレイクとスゥは
お互いに力試しの模擬戦の準備をしていた
「主〜、こんなもんでいいかな〜?」
木々をバキバキと薙ぎ倒し大きな広場を作った
「良いんじゃないかな?
スゥはどこまでやるつもり?
肩慣らしとか、寸止めとか」
「本気!」
そうかぁ...と苦笑いのブレイクとは裏腹に
スゥはニコニコでワクワクしていた
「でも、アンタ御主人様に攻撃する術が
無いんじゃない?」
スゥがVサインをブレイクに向け
「大丈夫!どうにかする!」
スゥにも何か考えがあるようで
模擬戦は始まった
すぐさま精霊龍王したブレイク
以前の精霊龍王とは違い魔力が段違いで
スゥにもそれは分かっていたが
スゥは地面を蹴り
ブレイクの懐まで一直線に潜り込む
ブレイクは反応できず目の前のスゥは
いきなりブレイクの腹に蹴りを入れた!
「えっ!?なんで!?凄いなスゥ」
ダメージはそこまででもないが
物理攻撃が当たらなくなる筈の精霊融合
と物理にも強くなる龍人化を合わせた
精霊龍王はスゥには本来触れもしない筈
だが実際に攻撃が当たっている
するとスゥが
「やっぱり当たった!
魔法を使いながらの蹴りなら当たると思った!」
予想外の発見にブレイクも興奮し始め
「そういえば以前暴走したノワにも
掴まれた事あったけどそれが原因なのか!
でも魔力消費は激しそうだね」
「うん!長くは持たない!」
スゥがブレイクに事実をそのまま喋る
魔力の回復を待つのに
一旦休憩にする事にして
スゥはブレイクに甘えて膝枕をしてもらっていた
そんな中グレイシアが考え込む
(龍神と龍王の違いは大した事ない...か
坊やと契約している時点で私は強くなっている筈
じゃあ足りないのはなんだろう?
覚悟?違う、それならもうとっくにしてる
魔力?そうだバハムートはそれで進化してる)
「坊や、ちょっといいかしら?」




