第38話
シルヴァ領の特産物を使った朝食を食べ
ヴィクトリア達は別邸にある
ヴィクトリアの夫レオンの墓に墓参りをする
「父上、お久しぶりです
私もうすぐ14歳になります
以前、紹介しましたけど私の弟ブレイク
それに友達もいっぱい連れてきました」
メイベルが父レオンに皆を紹介し花を手向ける
ヴィクトリアがウェルンドという香木を持ってきて
それをブレイクに燃やしてもらう
ウェルンドを燃やすという作法や慣わしはなく
ヴィクトリアがレオンとの思い出の香りである事と
レオンが香りを好んでいた為
その香りを手向けにしたいと始めた事だった
灰になったウェルンドを片付け
その日から4日間ブレイク達は
シルヴァ領で休みを満喫し過ごし
その翌日ヴィクトリア達は馬車に乗り
ルア王国の城下町にあるヴィクトリア邸に帰り
ブレイクはクレアとメルを送り
「クレアもメルもまたね!
ミューラさんもありがとうございました!」
「こっちこそお土産ありがとね
2人のリフレッシュにもなっただろうし
たまには2人を誘ってあげて」
クレアもメルも手を振りブレイクを見送ると
2人にミューラが
「で?2人は告白できたの?」
「「え!?」」
とミューラにはブレイクへの好意がバレバレ過ぎて
いつ告白するの?と揶揄われている2人だった
それから数日後のヴィクトリア邸にて
「母さんは精霊と契約はしないんですか?」
私か!?とヴィクトリアが
急にブレイクがそんな事を言い驚いていたが
「出来る事ならしたいが
そう簡単なものでは無いと思うのだが
いきなりどうした?」
ヴィクトリアはブレイクの言葉に期待していた
「ギルドから指名依頼が来ていて
銀翼と夜明けの旅人の両方になんですけど
それが精霊の聖域で
風の精霊王の調査なんですよね
だから僕もそうですけど母さんも
契約出来るならしといた方がいいのかなぁって」
こんな時期に指名依頼?とヴィクトリアは
依頼者を確認すると納得がいったのか
そこにはミランドの署名があった
国王としてもヴィクトリア達やブレイク達の
戦力増強が必要というのは明確な事だった
そうして銀翼と夜明けの旅人で
依頼を受ける事にした
精霊の聖域
その場所は人間が立ち入るには過酷な場所で
気温は50度を超えたり−15度を下回ったりする
天気も最悪で落雷や嵐、豪雨など視界も最悪だった
そんな場所に精霊王は複数存在していた
炎の精霊王の元は灼熱の大地
水の精霊王の元は豪雨が降り注ぎ
風の精霊王の元は嵐が吹き荒れ
雷の精霊王の元は落雷が止まず
土の精霊王の元では砂嵐が起きる
そんな中、風の精霊王の元に
調査に出たブレイク達、銀翼と夜明けの旅人
「依頼内容の確認ですけど
風の精霊王シルフィードの調査並びに
邪神討伐の助力の依頼ですよね」
ブレイクがヴィクトリア達に確認をとる
「そうだな風の精霊王が
人に力を貸した事がある
唯一の精霊王という事もあり
今回、助力の依頼がメインだろうな」
いつも通りブレイクが
時間魔法で荒れ狂う嵐を
ただの突風に変え
足元に木々が落ちていく
「にしても、ブレイクが居なかったら
どうやって此処まで辿り着くんだろうな?
俺も無理だしメイベルも無理だろ?
てか普通は無理なのか」
アークがそんな事を言いながら
ブレイクの後ろを歩いていると
嵐が止み、ブレイク達は精霊の聖域にたどり着いた
そこは風の精霊王の領域で
そこら中に魔力が溢れており
その中心に風の精霊王はいた
彼女は緑の髪に青い瞳
髪は足元まで伸びっぱなしで
大きな葉が股間や胸を覆い
以前見たグレイシアの水着のような姿で
羽衣を纏い背後には光輪がある
20代前半に見える若さをしていた
「アレが...風の精霊王シルフィード」
風の精霊王を見てブレイクは武者震いをしていた
(御主人様?変な事考えない方がいいわ
今の御主人様じゃ勝てないわよ)
確かにその場を覆い尽くす魔力量に
ブレイクも歩みを止める
すると風の精霊王シルフィードが
ブレイク達に気が付き、近寄って来た
「試練を乗り越え、よくぞここまで辿り着いた
外は嵐が吹き荒れて視界も悪かったろう」
風の精霊王の領域まで辿り着くには本来
嵐を乗り越え魔力を辿って来る必要があったが
ブレイクが居た為、難なく辿り着いてしまった
そしてブレイク達は風の精霊王シルフィードに
早速、邪神討伐の助力を依頼するが
「...そうか残念だが協力できない」
精霊王には精霊王のやる事があるようで
「そうですか...どうしようかなぁ
此処まで来たんだから
契約出来そうな精霊を探したいけど」
ブレイクは辺りを確認するが
辺りに精霊は居なかったが
突然
「そこの髪が白い少年、君だ
君に手伝ってほしい事がある」
シルフィードがブレイクを呼び
何やら手伝いというのは出産の事らしく
「僕の魔力ですか?いいですけど」
「それと、そこの銀髪の...少女じゃない方」
じゃない方とは失礼な!とヴィクトリアが
ブレイクと共にシルフィードの元に行くと
「この出産が終わったら
先程の助力の件、受けてもいい
ただ我も初の出産だ
正直どうなるかわからん」
ヴィクトリアとブレイクにもその緊張は伝わり
「シルフィードだったか?...長いな!
シル!大丈夫だ私も娘を産む前は緊張した!」
妙な自信で励ますヴィクトリアに
なんだこの女は?という顔をするシルフィード
「少年、魔力を私に流せ」
わかりました、とブレイクが魔力を流すと
そこに産まれたのは双子のしかも男女の精霊だ
「私は必要だったか?」
ヴィクトリアが特に何もしないまま
双子が誕生したので
シルフィードに聞くと
「必要に決まってるだろう
お前が契約するのだから
さっき言った助力の件は
この子達にやらせる」
「産まれたてでか!?
それは流石に酷いんじゃないか?」
ヴィクトリアがシルフィードに
産まれたての双子に
酷な事をさせる事になるのを
心配したが
「じゃあ、わかった
ヴィクトリアと言ったか?
我がお前と契約してやろう」
「何故だ!?意味がわからんぞ?」
「単純な話だお前が気に入っただけだ
我にシルと言う名を付けただろう?
我の名前を長いと言ったのは初めてだ
それが可笑しくてな、それに
お前も緊張したんだろう?
よくわからん励ましだったが
不思議と緊張しなくなった、ありがとう」
シルフィードは感謝を伝え
ヴィクトリアと契約の儀式を始めた
「「今此処に魂の契約を!」」
するとヴィクトリアの口を
シルフィードが手で塞ぎ
「我、汝の翼となり空を駆け
汝の敵を吹き飛ばす事をここに誓う」
ヴィクトリアは改めてシルフィードを
シルと名付け双子をコレットが預かる事に
「なんで私!?」
「「面倒見が1番いいだろう?」」
とシルとヴィクトリアがハモる
「それに大きくなったら契約すればいい」
ヴィクトリアが呑気にそんな事を言うが
シルはと言うと
「大丈夫だ世話せずとも勝手に育つ
そして成長も早い明日には歩けるようになってる」
とヴィクトリアと馬が合うのか
2人してコレットが面倒を見ればいいと考え
ブレイク達は話についていけず
「結局、母さんは精霊王と契約したんですよね?
しかも魂の契約だから上位の」
「そうだな!コレでもっと強くなったと言う事だな
なぁシル!私は精霊融合できるのか?」
出来るぞ、と言われヴィクトリアの
精霊融合のお披露目になった
風が吹き荒れてヴィクトリアを包み込み
銀髪の髪に緑のメッシュが入り金色の瞳に
羽衣を纏い緑色の風で出来ているドレスを着ていて
背後には光輪があった
「普通の精霊融合とは違うかしら?
精霊王と契約なんて聞いた事ないし
精霊王特有の後ろの光輪があるってことは
成功してるんだろうけど」
スイレンがヴィクトリアの精霊融合を見て
分析しているとバハムートが
「これで1番強いのが誰か
わからなくなったな
ブレイクか主か公爵か
戦力の増強にはいいのだろうな」
ヴィクトリアがシルに
「私はそこまで強くなったのか?
息子やノワの様に?」
シルがヴィクトリアに説明してくれる
「我と契約した時点で
魔力量が跳ね上がり
そこの少年と変わらない位には増えている」
ブレイクと同等の魔力量と言うと
化け物クラスの魔力量と言う事になる
本来の精霊王シルフィードの魔力量は
ブレイクの魔力量を超えるが
ヴィクトリアが魔力をほぼ有してないのに
ブレイクと同等の魔力量になったと言う事
それほどやはり契約と言うのは特別なモノだった
そしてヴィクトリアの精霊融合は
そのまま1時間経っても魔力切れを起こす事なく
「イマイチわからんな
息子!相手をしてくれ!あとノワも!」
なんと2人がかりでヴィクトリアは
模擬戦を行うと言う
「精霊王と契約した母さんかぁ
どこまで通用するかわかんないなぁ」
ブレイクが本気でやっても大丈夫だろうと
精霊龍王になり
「バハムート大丈夫かな?」
「精霊王の強さもそうだが相手は公爵だ
戦闘センスがずば抜けてる事と
今回精霊王との契約、しかも上位ともなれば
主が心配する事にはならん」
それを聞いたノワも
龍人化を発動して
2対1での模擬戦は始まった
「じゃあ、いきます!」
ブレイクが先制攻撃を仕掛ける
炎属性のブレスをヴィクトリアに向かって放つ
それをヴィクトリアは空中に回避する
そこにノワが爪を使って攻撃をするが
風魔法を使いヴィクトリアは空中で回避する
「ええ!?そんなのアリですか!?」
シルと契約した事で
ヴィクトリアは空中戦が可能になった
自由自在に空を駆けまわるヴィクトリア
それをさせない様に攻撃を続けるが
どれも当たらない
ブレイクが時間魔法での拘束を試みるが
それに気付いたヴィクトリアが
ブレイクにも捕えられない速度で移動し
ブレイクの背後に移動し
「此処までにするか
この先は私も息子達も怪我しそうだからな」
とブレイクを抱き上げ模擬戦が終了した
「母さん凄いですね...
全然攻撃が当たらなかった」
ヴィクトリアを見つめながらブレイクは
そんな事を話すノワはと言うと
「私の攻撃も全部避けてた
ドレスにかすりもしなかった」
ヴィクトリアの精霊融合時のドレスは
特別性なのか着ているだけで高速の飛行ができる
「シル!このドレスは良いな身体が軽くなる
精霊王特有のモノか?」
「どうだかな?
アレは精霊融合が出来る者の中でも
精霊王と契約しないと出来ないみたいだ
そこの少年は出来んのだろう?
なら、そう言う事だろう」
風のドレスに似たものならブレイクは知っていた
水の鎧だアレも精霊融合時には要らなくなる
本来、精霊融合はそれだけで
性能が高いモノでヴィクトリアがした精霊融合は
普通のものではない
「言うなれば...精霊王化ですよね
...母さんは凄いなぁ」
ブレイクの言う精霊王化とは
一体、何なのだろうか
答えは誰にもシルですら知らない事だった
「まぁ何でもいいじゃないか!
これで息子達の力になれるんだから!」
ヴィクトリアは嬉しそうに
ブレイクとノワを抱き上げ
クルクル空を舞いながら皆の元に降りてくる
戦いを見ていたメイベルが
(やっぱり母上は凄いなぁ
精霊王と契約なんて普通じゃないもんなぁ)
地上で精霊王化を解除して
シルがヴィクトリアから離れ
何故かメイベルの元に行く
「炎帝の聖女...か」
ボソッとシルがそんな事を言ったのを
メイベルは聞き逃さなかった
「あの、炎帝の聖女って?」
シルが少し困った様な表情になり
「いや、何でもない気にするな
問題ない...今のところは」
かなり気になる言葉を残し
シルはヴィクトリアの元に戻る
(炎帝の聖女って何?炎帝?聖女?
以前、アーガルド王国で聖女扱いされたのが
関係してるのかな?)
(そうかもなぁ、お嬢が聖女かぁ
じゃあオイラは炎帝でも目指すか!)
念話でそんな事を話していると
コレットが騒ぎ出した
「皆!?忘れてるかもしれないけど
双子居るんだけどどうしたら良いの!?
人の子供なら世話の仕方はわかるけど
産まれたての精霊はわかんないわよ!?」
双子を抱き抱えながら
コレットがあたふたしていると
「だから大丈夫だと言ってるだろう
ほら片方貸してみろ
あやし方は人間と何ら変わらん」
シルが男の子を抱えて
背中を軽くトントンと叩いて寝かせる
「...そっか、赤ちゃんのあやし方なら
わかるから大丈夫?かな?」
女の子をコレットがあやして寝かせる
その日はその日はテントを張り
精霊の聖域で一晩過ごした
翌朝になると...
「「ママ〜」」
双子がもう喋りだし
コレットにしがみ付いて立っていた
困っているコレットにシルが
「ほらな?もう歩けると思うぞ
コイツらと契約しておけばいい」
「えぇ?簡単に言うけどまだ小ちゃいのよ?」
コレットが心配するが
「「ママ〜?」」
双子はコレットにベッタリだった
双子を抱き抱えながら
コレットは契約の事を考えていた
(確かに精霊と契約出来るのは
ありがたいけど、まだ子供だしなぁ)
双子を見ると2人してニパァと笑顔になる
(くぅ...これが親の気持ちかぁ?
確かにヴィクトリアが暴走するのもわかる
可愛いもんなぁ...)
コレットが双子を下ろして
真剣な面持ちで
「ねぇ、私はアンタ達のママじゃない」
双子はそれを聞きシュンとする
「ママは私達嫌い?」
「ママは僕達が邪魔?」
「アンタ達は一緒に居たいの?」
「「うん」」
そして双子の頭を撫で
「家族になるのに
理由なんていらないか
しょーがない
アンタ達のママになってやろーじゃない!」
「「ママ?」」
コレットが双子を抱きしめ
親になる決意を固め
契約を始めた
「「「今此処に魂の契約を
切っても切れぬ繋がりを命尽きるまで!」」」
その言葉にシルも驚いていた
「良いのか?ママが死んだ時
お前らも消滅するぞ」
「「ママと一緒がいい!」」
双子は笑顔でコレットにしがみ付いて
顔をコレットにうずめて甘えていた
「頭に浮かんだからそのまま言っちゃったけど
この子達に悪い事しちゃったよね...どうしよう」
「「ママ〜」」
ん?なに?とコレットが双子の話を聞く
「私の名前は〜?」
「僕の名前は〜?」
そうか、決めなきゃとコレットが考え込む
コレットは、男の子を“ベル”女の子を“アン”
と名付けた次の瞬間
契約が完了し双子を光が包む
双子は10歳位に大きくなり大精霊になっていた
「え!?アンタらいきなり
大きくなりすぎじゃない?」
「「えへへ」」
褒められたと勘違いしている双子に
コレットは驚いているが
シルも驚いていた
「こんなすぐに大きくなるとは思ってなかった
繋がりが強いと言うことか
ベル、アン2人とも良いんだな?」
「「うん」」
「私はママの盾に」
「僕はママの矛に」
双子がそんな事を言うがコレットは
(我が子かぁ
でもいきなり大きくなって実感ないなぁ)
(それでもママの子だよ?)
(そうそう、僕らママの力になれる)
え!?何コレ!?と初の念話に戸惑うコレット
念話についてスイレンが説明して
「ブレイク、アンタこんなのいつもなの?
ってか精霊と契約してる皆そうなのか...」
そうですね、とブレイクが答え
そんな騒がしい朝でも
食事にしようとお腹が空いたスゥに話を折られ
朝食にする事にした
ブレイク達は朝食を食べ終え
雑談をしていた
「今回の戦力増加は大収穫だったな
シルにベル、アン銀翼の強化になったな
息子達はどうする?
今回の依頼だと息子達の戦力増加も
依頼の真意だとは思うが
他の精霊王の所に行ってみるか?」
ヴィクトリアがブレイクに話を振るが
「いえ僕はこのまま
まだ改良の余地は有りそうなので
そこが終わったら考えてみようと思います
皆はどうする?」
夜明けの旅人に聞くが
皆、思うところがあるのか
今回はこのまま帰る事にし
帰り道ブレイクがまた時間魔法を展開して
荒れ狂う嵐を止めていた
「なるほどな
コレで誰も消耗していなかったのか
正規のルートではないが
コレはコレでアリか...」
と、シルがブレイクを見る
「やっぱりズルイですかね?」
気まずそうなブレイクにシルは
「いや、使えるモノは使った方がいいだろう
魔法でも武器でも何であろうと」
そっかぁ、良かったぁと一息ついた所で
シルがメイベルに話しかけられる
「やっぱり気になる!
炎帝の聖女ってなに!?」
昨日はボソッとシルが言っただけで
他の皆は聞いてなかった事を
メイベルがバラしてしまった
「だから気にするなと言ったろう?
将来そうなるだけだ」
将来!?何の話だ!?と
ヴィクトリアが話に食い付く
「炎帝の聖女だろう?
まぁなんだか光の勇者みたいなモノだ
アレも特別なモノだからな」
とシルがヴィクトリアに話していると
「あ、因みにソレ僕です」
「は?」
それを聞いたシルは、ふとそんな声を出した




