第36話
そしてゴブリンキングは
ゴブリンの軍勢を隠すのをやめて
ルア王国に進軍して来た
「ゴブリン達よ!
我々ゴブリンは今まで人間達に
殺され虐げられて来た!
今までのゴブリン達の怨みをぶつけろ!!!!」
ゴブリンキングの鼓舞にゴブリン達は
咆哮をあげながらルア王国へと進軍する
勢いよくギルドの扉が開かれる!
「ゴブリン!ゴブリンだぁぁあ!!!」
焦った門番がギルドと更には王城に駆け込み
状況を説明した
「なんだよ、ゴブリンか大した事ねぇじゃねぇか」
と冒険者が言うが
「その数!目視で約50万!」
その言葉に皆、息を呑み
ギルマスが緊急クエストを実施し
国王ミランドもゴブリンの事を聞き
近衛騎士団並びに魔法師団に
前線に出るよう指示を出す
「あと...確実ではないですが
ゴブリンキングが数体もしくは
ゴブリンエンペラーの存在が考えられます!」
確かに50万のゴブリンを統率する為には
複数のゴブリンキング又はゴブリンエンペラーの
存在が無いと説明がつかない
だがゴブリンエンペラーは
危険度Sランクのモンスター
数100年に一度生まれる
伝説のモンスターだった
ゴブリンキングでさえ
危険度Aランクの厄介なモンスターなので
今回の事態は緊急を要する
事態という事は容易に想像がつく
急いでギルマスは冒険者を集めて街の外に出た
そこには...
「これは...50万じゃないな
100万くらいか?」
門番が見ていた時は50万ほどいたゴブリン達は
全軍がその場にいる事態となっていた
「今こそ!
我々がこの世界を支配する時!
ゴブリン達よ!進めぇぇぇえ!!!!」
ゴブリンキングはいつの間にか
ゴブリンエンペラーに進化しており
5体のゴブリンナイトは
ゴブリンキングへと進化していた
「ん?外が騒がしいな...」
ヴィクトリアが休日を過ごしていた所に
ヴィクトリア邸の扉が勢いよく開かれ
事の事態を説明され
「わかった、すぐ行く」
ヴィクトリア達は準備をしてすぐに前線に向かう
「これは...すごい量だな」
ヴィクトリアは近衛騎士団に合流し
魔法師団の方はユージーンが指示を出して
既に戦闘が始まっていた
「遅ぇぞ!ヴィクトリア!」
と大剣を振り回す団長レインにヴィクトリアが
「すまんな、レイン!今から巻き返す!」
ヴィクトリアがゴブリン軍の合間を縫うように
移動しゴブリンを切り刻んでいく
ゴブリンナイトやゴブリンジェネラルが
混ざっていたが難なくヴィクトリアは倒していく
夜明けの旅人は手分けして各門を担当して行く
メイベルとアークは
精霊融合し
ノワはバハムートと龍人化して
ブレイクは精霊龍王になり
ゴブリンを倒していく
北門にはメイベルとアークとブレイク
東門には近衛騎士団と魔法師団
西門にノワとスゥ
南門に冒険者が向かって行った
ゴブリンエンペラーは
危険な人物を目視して
そこには有象無象を当て
冒険者の手薄な場所に
ゴブリンキングを派遣する
「奴らは強い!だが攻め手が無い訳ではない!
街に侵入して女子供を人質に取れ!」
ゴブリンエンペラーの指示で
ゴブリンキング達は雪崩れ込むように
手薄な冒険者の所へと向かった
ゴブリンキングが街に入ってしまった
「まずい!
南門からゴブリン達が街に!」
いち早く反応したのはブレイクだった
「ここはお願いします!僕は街の方に!」
ゴブリンキングが2体街に入り
他のゴブリンも侵入して来た
それをブレイクが加速しながら街の外へ吹き飛ばす
「悪いな!ボウズ!
今のでたぶん大丈夫だ
お前はゴブリンエンペラーを倒して来てくれ!」
ギルマスのベルズの指示で
ブレイクはゴブリンエンペラーがいる北門へと
再度向かう
西門ではバハムートが
主導権を握って暴れ回っており
大丈夫そうだなとブレイクは安心していた
(西門はノワとバハムートとスゥが居るし
東門には母さん達がいるから大丈夫だろうけど
やっぱり南門が心配だな誰か頼れる人...)
とそこでたまたま通りかかった
バーンズと鉢合わせた
「あ!バーンズさん!
南門をお願い出来ますか?
冒険者が手薄になっているので
心配なのでバーンズさんがいれば安心できます」
「なんで俺なんだ...
Sランクになれない落ちこぼれが
なんの役に立つ?」
卑屈になっているバーンズにブレイクは
「貴方にしか出来ないから頼んでるんです
僕は確かにSランク冒険者ですが
僕1人で成れたとは思ってない
貴方は1人でAランクまで登り詰めた
しかもSランクに手をかけている
貴方しか居ないんだお願いします」
そこまで言いブレイクは急いで北門へ向かった
バーンズはブレイクの言葉を思い返し
(なんでアイツはそんなに強くいられる?
俺は...)
トコトコと南門に向かうバーンズだったが
「おい!バーンズ!早く手伝え!
お前がいればゴブリンキングも
そこらの雑魚と変わんねぇからな!」
ギルマスの一言が背中を押し
バーンズは剣をとった
「姉さんとアークは
このままゴブリン達を倒してください
僕はゴブリンエンペラーの所に向かいます!」
バーンズは大丈夫だろうかと心配していたが
それどころではないブレイクは
急いで大空を舞いゴブリンエンペラーを探す
「いた!あれか!」
ブレイクが気付いた事に
ゴブリンエンペラーも気付き
身を迷いの森へと隠す
「逃すか!」
ゴブリンキング3体が行手を阻むが
炎、水、氷ブレスで吹き飛ばす
「アレはまずい
もう一度、機会を伺うべきだな!」
「逃がさない!」
行手を今度はブレイクが阻んだ
拳に魔力を込めてゴブリンエンペラーを殴る
腹部にある魔石を破壊しゴブリンエンペラーは
瀕死で放っておいても死ぬだろうと
ブレイクは止めを刺さなかった
だが、それが仇となる
「まだ...死ぬわけには...」
(力が欲しいか?ゴブリンよ)
ゴブリンエンペラーが頷くと
ゴブリンエンペラーは黒い霧に包まれ
ゴブリンエンペラーを超えた
アナザー・ゴブリンになった
アナザー・ゴブリンはまず手薄になっている
南門に向かった
バーンズの活躍により
あらかたゴブリンは片付いており
一安心のはずだった
「ここもだいぶ片付いたな
バーンズのおかげだな!」
ギルマスの言葉にバーンズは
今までの事を後悔していた
ギルマスにもキツくあたったりもしていたのに
ギルマスは態度を変える事なく接して来た
「他の所は...」
そう言いかけたギルマスが
次の瞬間には壁にめり込んでいた
「ここから入る
他のゴブリンを連れてこい!」
とアナザー・ゴブリンが
ゴブリンキングに指示を出し
他のゴブリンが南門に集まって行く
「なんだ?ゴブリン達が南門に!?
まさか!」
ヴィクトリアがいち早く事態を察知し
南門へと向かった
他のゴブリンを南門には集め
一気に攻め込んでいく
「まずい!この数は倒し漏らしが起きる!」
バーンズの予想通り
街にゴブリン達が雪崩れ込んで来る
街の宿や家々に侵入し
女子供の髪を掴み外へ引っ張り出す
「痛い!嫌!」
女の子の悲鳴にバーンズは
(また...ダメなのか?
俺は...俺はこんなものじゃない!)
纏わりつくゴブリンを薙ぎ倒し
女の子の髪を掴んでいるゴブリンの腕を切り落とし
そのゴブリンに止めを刺し
バーンズ傷だらけになりながら
街の住人を守った
アナザー・ゴブリンはそれを見て
バーンズの懐へ潜り込み
左足を掴み引き裂いた
「あぁぁぁぁぁ!!!」
裂けた足にアナザー・ゴブリンは更に
炎魔法で患部を焼いていく
あぁぁぁぁ!!!!とバーンズの悲鳴が響くが
他の冒険者も手一杯でバーンズの所へ
助けに行けない
「あはは、コレはな
仲間のゴブリンが
昔やられた事なんだよ痛いだろう?
どうだ?やる側からやられる側になった気分は?」
アナザー・ゴブリンは更にバーンズを攻撃する
(クソッ
痛みで意識が飛んでいきそうだ
やっぱりダメなのか?
俺じゃアイツらのようには
成れないのか?
俺はあの人のようには...)
次の瞬間アナザー・ゴブリンは吹き飛ばされる
「大丈夫か、バーンズ!!」
ヴィクトリアがその場に現れ
アナザー・ゴブリンを切り裂いていく
ヴィクトリアの剣戟に
手も足も出ないアナザー・ゴブリンだったが
ヴィクトリアの剣戟に隙が生じたその時
「やはりツメ甘いな人間!」
炎魔法を宿した拳をヴィクトリアに向け
ヴィクトリアは上空に吹き飛ばされる
「舞姫!」
バーンズが這いながらヴィクトリアの方を見る
どうにか着地はしたものの腹部を抱えて
ヴィクトリアは膝をついた
(もうダメだ舞姫があれじゃ俺達は)
「私もバーンズもまだ終わっちゃいない!」
その言葉にバーンズはハッとして
再び剣を握る
裂かれた足を引きずり
バーンズは剣を振るう
街の住人を守る為に
ヴィクトリアはアナザー・ゴブリンに
先程より多くの剣戟を浴びせており
アナザー・ゴブリンは防御に徹し
機会を伺っていた
だが隙が生じる事もなく
アナザー・ゴブリンは傷だらけになり
もう少しで倒せそうだった
(コレではさっきと変わらんぞ力を貸してやろう)
アナザー・ゴブリンの身体を黒い霧が包み
黒い霧のまま他のゴブリンを喰らい始め
ゴブリン、ゴブリンナイト、ゴブリンジェネラル
ゴブリンキングと一匹残らず喰らい尽くした
そして皆が南門に揃う頃
アナザー・ゴブリンは更なる進化を遂げる
「アレはゴブリン・ラストワン!?
普通のゴブリンは緑色だが
ゴブリンが最後の1匹になるまで
共食いをした結果皮膚は赤く染まる」
ユージーンがご丁寧に説明してくれたが
ラストワンとはその種族が危機に瀕した時
特別な個体が現れる事で
それは魔王や龍王、神すら喰らう
その種族が安定して繁栄するまで
絶対に敗れぬ盾となり矛にもなる
「まずはお前だ」
ブレイクを指差しゴブリン・ラストワンは
魔力を込めた蹴りを喰らわす
ドン!
南門から王城を貫通し北門へとブレイクは
吹き飛ばされる
「息子!?貴様!!!」
「安心しろ次はお前を殺す」
ヴィクトリアの目の前まで来て拳を振るう
そこへ龍人化した
バハムートが蹴りを合わせてぶつかり合う
「お前らは下がれ!
コイツは今の俺でも勝てるかわからん!」
バハムートとの攻防は一進一退で
ヴィクトリアは急いでブレイクの所へ向かう
「はぁはぁ...息子お前が頼りだ
無事でいてくれ!」
ブレイクはゴブリン・ラストワンにやられた傷を
カルラに治療されどうにか歩けるくらいまで
回復していた
(...どうする?
アレは今の僕じゃ倒せるかわからない
バハムートが言っていた通りになってしまった)
ヴィクトリアと合流しブレイクは
バハムートとゴブリン・ラストワンの所へ向かった
「コレで終わりだ」
バハムートは首根っこを掴まれ
一方的に攻撃されていた
そこに精霊龍王したブレイクが
ゴブリン・ラストワンに蹴りを喰らわす
「帰って来たか」
ブレイクはバハムートとノワを治療するように頼み
ゴブリン・ラストワンと対峙する
(今回の敵は僕より格上...なら!)
氷炎の結晶を複数放ち
ゴブリン・ラストワンはコレを避ける
(避けた?効果があるから避けたんじゃ?)
ブレイクは氷炎の結晶を使っているうちに
ある事を思い付いていたこの魔力を自身に使う事
確かに危険だとは思うが爆発的な力は出せる筈だと
(やるしかない!
もってくれ!僕の身体!)
氷炎の結晶と同じように
相反する氷と炎の属性を右拳に集め
ブレイクはゴブリン・ラストワンを殴る
威力は凄まじくゴブリン・ラストワンに
当たった箇所は吹き飛び
ブレイクの右拳も吹き飛んだ
肉が弾け骨は飛び出し神経は爆ぜ
痛みと熱が直接脳内に伝達され
ブレイクは意識を失いかけるが
すぐさま治癒魔法をかけて今度は
左拳を使いゴブリン・ラストワンを殴った
(拳が壊れる...なら!
壊れたそばから治す!
ゴブリン・ラストワンを倒すまで!)
ゴブリン・ラストワンは見様見真似で
治癒魔法を習得し傷を治していく
ブレイクはそれを更に超える量の打撃を繰り出し
ゴブリン・ラストワンの魔力も
ブレイクの魔力もほぼ無くなって来ると
「コレではまだ足りないな」
黒い霧がゴブリン・ラストワンを包み
邪神がゴブリン・ラストワンを依代として
ブレイクの前に現れた
「やはりゴブリンではあまり役に立たんな
まだ足りないとなると他のモンスターで
実験するしかない」
そこへバハムートが邪神に向けブレスを放つ
「貴様は封印したはずだ!何故ここにいる!?」
邪神は片手でブレスを受け止め
バハムートの腹部に拳をめり込ませる
その反動かゴブリン・ラストワンの身体が
だんだんと崩れていく
「やはり脆いなこの身体は...?」
するとゴブリン・ラストワンが意識を取り戻す
「...俺達ゴブリンは操り人形じゃない!」
ゴブリン・ラストワンは最後の力を振り絞って
自身の魔石を身体から取り出した
更に身体の崩壊は進んでいき
ブレイクがゴブリン・ラストワンの最後を見守る
ゴブリン・ラストワンはブレイクに
「...俺の弱さが招いた事だ
そんな顔をするな
俺は他のゴブリン達と
飯を食うのが好きだ
皆で囲む食卓はいいモノだった
それは人も同じか?」
「...うん」
「そうか同じか...
俺は頼る相手を間違えたみたいだ
お前に頼れば別の未来もあっただろうな」
ゴブリン・ラストワンの身体は塵となり
消えていきそこには黒い霧が佇んでいた
「やはりダメだったな
ブレイクお前が1番嫌がる事を考えていた
お前は自身が傷付くより他が傷付いた方が
絶望するだろう!」
邪神がそう言うと魔力が集中し始めて
1つの魔力による球体が出来た
「お前に1番効くのは
仲間の死か?...違うな
1番は母の死、しかも2度目はどうだ!」
その球体はヴィクトリアに向かい発射された
次の瞬間
地面は血で染まった
ヴィクトリアの心臓を狙った球体は
庇ったバーンズを貫通し
ヴィクトリアの左胸も少し抉っていた
「大丈夫か?舞姫?」
バーンズは血を吐きながらヴィクトリアの
状態を確認していた
「バーンズ!お前!その足!」
バーンズはヴィクトリアの盾になるために
自ら左足を切りまだ使える右足で踏み出していた
「アンタを守れるなら安いもんだ
でも怪我させちまったな」
邪魔が入ったか、と邪神は捨てゼリフを吐いて
消えてしまった
「バーンズさん!治癒魔法を!」
「ブレイク!聞け!
俺は...お前に嫉妬していたんだ
舞姫のすぐ近くにいて
あっという間にSランクになって
なんでも出来るお前が...羨ましかった
でも、さっき言われた事
頼りにされたのは嬉しかった
それに悪かったな
以前、俺の嫉妬が
お前の過去を抉るような事をしてしまった
ちゃんと謝りたかったんだ
すまなかった」
バーンズが段々と呼吸が浅くなっていく
「カルラ!バーンズさんが!」
カルラの治癒魔法でも
バーンズの傷は治せなかった
「いいんだブレイク
最後に舞姫...ヴィクトリアを
惚れた女を守れた
それにヴィクトリアの
腕の中で死ねるんだ
俺は幸せだ」
カルラの治癒魔法も虚しく
バーンズは満足そうな表情で
ヴィクトリアの腕の中でバーンズは息を引きとった




