第3話
「死ぬって...えっと、どういった?」
ブレイクが疑問をぶつける
「このままいくと
アナタの魔力に身体が耐えられなくなって弾け飛ぶ
でもそれをアナタ自身の魔力が修復して
何度も何度も弾け飛び続ける」
「ふざけるな!」
ヴィクトリアが剣に手をかけた所で
顔に水をかけられヴィクトリアは冷静になる
「...何か方法は無いのか?」
「あるわよ
私みたいな精霊と契約する事ね
アナタなら良いわ魔力量は
弾け飛ぶくらいだから申し分ないし
珍しい時の魔力だもの」
時の魔力?とブレイクが聞くと
「あら自覚なかったの?
でも心当たりあるんじゃ無い?
例えば成長が遅いとか
傷の進行が遅いとか
逆に傷の治りが早いとかは?」
確かにブレイクに当てはまる事だった
「時の魔力を持つ者は少ないのよ?
その魔力量の多さならやがて精霊になる筈だわ
時の精霊は今までに3体しか居ない
それにアナタの魔力量なら大精霊か
精霊王になるだろうしどちらにせよ
これだけの逸材なら私も契約してみたいから
契約するわよね?それじゃあいい?真似してね」
そこまで精霊がブレイクに説明し
ブレイクは精霊の言う通りに真似をした
「「ここに魂の契約を!
切っても切れぬ繋がりを!
どちらかの命尽きるまで!」」
そこまで聞いてヴィクトリアがギョッとした
精霊との契約には種類があり
最上位の“どちらかの命尽きるまでの契約”
上位の“魂の契約”
中位の“血の契約”
下位の“名の契約”
さらに今回は重ねがけという反則を使っている
“重ねがけ”そのもの自体かなり特別な事で
普通は上位の契約が出来ない場合に対して
下位と中位の契約をするなど色んな事例があるが
今回の契約は今までの契約の歴史が変わる程の
契約内容だった
「簡単でしょ?
あとは私に名前をつけて御主人様」
ブレイクの事を御主人様と呼ぶ
この精霊の名前を決めなくてはいけない
「うーん名前かぁ
...あの花」
湖に浮かんでいた花をブレイクが見つける
「どうした?アレは
睡蓮...だな
あの花は朝から昼頃まで咲いて
夜には眠る様に閉じる
とある古代の王が気に入り
それから人々に広まって今も尚、皆に愛される花だ
確か花言葉に“清純な心”や“信頼”などがあったな
安直だが、そのままスイレン...はどうだ?」
「スイレンですか...
うん、今日から
君の名前はスイレンだ」
「...そう、スイレンね」
と、ここで契約が完了したのか
ブレイクの魔力とスイレンの魔力が交わり
強く太いパイプで繋がった感覚があった
スイレンが段々と人の姿へと変化していく
水色の髪に青い瞳、透き通る様な肌
羽衣と羽織を身に着けていた
「これは...やっぱりこうなるわよね」
「どうしたの?スイレン」
(私が精霊から大精霊になったって事ね)
目の前のスイレンは喋ってないが
ブレイクはスイレンと会話が出来る事に驚いていた
(これは何?)
(これは念話ね
精霊と人間が契約すると
出来る様になる事で
他にも記憶の共有とかもあるわね)
「へぇ〜そうなんだ」
と口に出ていたブレイクにヴィクトリアが
「なんだ?何を話しているんだ?」
ブレイクとスイレンが仲良く念話しているのを見て
ヴィクトリアがヤキモチを焼き
ブレイクを抱えて野営地に戻る
「大精霊!?
それに魂の契約に
命尽きるまでの契約の重ねがけ!?
本当にそう言ったのかい!?」
ユージーンが驚くのも無理はない
ユージーンと団長の差は精霊がいるかいないか
それに団長の精霊との契約は下位の名の契約だった
「それを考えるともうブレイク君は私とは
比較にならないくらい強くなっている筈だ
それに時の魔力?初めて聞いたな
それの影響で小さいのかな?」
ブレイクがスイレンに聞くとそうらしい
「御主人様次第で年齢は変えられるわよ?
でもまだ魔力の使い方が解ってない感じね
そうしたら私が身体の中に入って...」
するとスイレンがブレイクと重なり
ブレイクの魔力を上手く循環させる
そしてブレイクは年相応の背丈になった
「おぉ!ちょうど良い感じだな!
でも前の方が抱き抱えるにはちょうどよかったな
ブレイクをさっきみたいに小さく出来ないのか?」
「出来るわよ?御主人様の属性を忘れたの?
時間魔法で戻すのも簡単に出来るわよ」
それを聞いたヴィクトリアが
「そうか!じゃあブレイク!小さくなれ!」
すると...
ゴン!
コレットの鉄拳制裁がヴィクトリアを直撃する
「あのねヴィクトリア!
アンタいきなり小さくなれ!って
馬鹿じゃないの!?
スイレンもスイレンよ!
ブレイクとは契約して家族になったんでしょ?
ブレイクが断れない性格なのは
わかってるんじゃないの?
少しは考えてあげなさいよ!」
そんなぁ、とヴィクトリアが落胆し
...家族ね、とスイレンは何かを思い出していた
それでもブレイクはヴィクトリアが喜ぶならと
結局、魔法を使う事にした
スイレンから魔法を教わり
ブレイクは自分の身体を3年戻し
5歳のサイズになった
「おぉ!小さくなったぞ!凄いなぁ!」
ヴィクトリアが喜びブレイクを抱き抱える
凄いね、とユージーンが観察し
はぁ、とコレットが呆れていた
「そういえばスイレン
息子と契約した内容が命尽きるまでだったが
よかったのか?精霊からしたら人の寿命なんて
一瞬だろう?」
とヴィクトリアがブレイクを降ろし
スイレンに話しかける
「ん?御主人様の寿命の話?
大丈夫よ時の魔力を持つ者は長寿だし
御主人様の魔力量を考えると
寿命が尽きた後は精霊になるわ
でもただの精霊じゃないわよ
さっきも説明したけど
時の精霊王になるんじゃないかしら
未だ時の精霊王は不在だし」
精霊が意図的に大量の魔力を溜め大精霊に進化し
大精霊が意図的に大量の魔力を溜めると
精霊王に進化する
今いる精霊王は炎、水、風、雷、土、癒の
6体だけだと言う
時の精霊はその数が少なく
ブレイクが寿命が尽き精霊になる頃には
精霊王になるだろうとスイレンは言っていた
「精霊王かぁ...」
ブレイクは話にあまりついていけず
なんだか凄い事はわかるが
なんだかよくわからない状況に頭を悩ませていた
「息子はあまり考えなくて良いと思うぞ
私達、大人がどうにかする
自分が何をしたいかだけ考えてれば良い」
そうなんだぁ、とブレイクが
ヴィクトリアの言葉を鵜呑みにし
それを聞いたスイレンが
「そうよ御主人様はなんだって出来る
好きな奴は近くに置けばいいし
嫌いな奴は消し去るのだって造作もない事よ」
スイレンの不敵な笑みに
ヴィクトリア達が反応するが
それより速くスイレンはブレイクと
ヴィクトリア達を水魔法で分断した
ブレイクとスイレンを中心に
回転する半球型の水のドームが広がっていき
外からヴィクトリアが斬り込むが弾き返され
ユージーンの魔法も効かなかった
「...スイレン?」
スイレンはブレイクの記憶を見て怒っていた
ブレイクが奴隷と同じ扱いをされていた事と
逃げた先の村の奴らに門を閉められ
モンスターに襲われそうになった事を
スイレンは怒り仕返ししない事に腹が立っていた
「なんで御主人様は
そんなに穏やかでいられるの!?
奴隷と同じぞんざいな扱いをされて
助けを求めた村の奴らには見放された
でも、御主人様は!
貴方はそんな扱いを受ける存在じゃない!
それに人は100年もすれば死ぬ
貴方は独りになってしまう!」
スイレンはブレイクの記憶を遡った時に
昔を思い出していた
迫害された少年と少しの時を過ごし
いつの間にか死んでしまったその少年と
ブレイクを重ねていた
「うん、そうだね
痛い思いもしたし酷い事もあった
確かに人は100年も経てばいなくなる
それでも、彼も僕も独りじゃなかったよ」
彼の側にもブレイクの側にもスイレンがいた
「そうじゃなくて!私は...」
スイレンがまだスイレンと名付けられる
随分と前の時代、とある少年と記憶
その少年は生まれた村で迫害されていた
そんな村を出て彼は独りで旅をして
そこで昔のスイレンと出逢い
湖の近くに住む事にした
少年が青年になった頃
青年も相手を見つけ子供を授かった
スイレンは子供が子供を産んだと不思議そうに
青年の家族を見守っていた
青年の家族も大きくなり
青年は老人にまで年老いてしまっていた
「最後くらい願いを聞いてあげるわよ」
「そうだな家族を見守ってくれればいいかな」
最後くらい自分の事を願えばいいのにと
スイレンは思ったが彼らしいとも思った
「それより私はアナタが心配だよ」
何を心配しているのかスイレンにはわからなかった
「あ!そうだ
生まれ変わったら私は貴女と...」
スイレンの記憶がブレイクに流れてくる
彼もそれからすぐに天国に旅立ってしまった
「彼もそう言っていたけど僕もスイレンと」
彼の姿がブレイクと重なる
「「家族になりたい」」
彼とは似ていないはずのブレイクの姿だったが
眼差しだけは少し似ていたかもしれないと思った
そしてスイレンは魔法を解き
ヴィクトリア達が中に入ってきた
「悪かったわね
御主人様の事を私なりに
どうにかしようと思ったのよ」
スイレンとの会話を聞いていたヴィクトリア達は
それぞれ別の反応をとっていた
ヴィクトリアはブレイクとスイレンを抱き抱え
私は200年は生きてみせる!と
訳の分からない事を言い始め
コレットは話を聞いて涙ぐんでおり
ユージーンはブレイク達を温かい目で見守っていた
スイレンの事で色々あった間に昼を過ぎており
昼食を摂り一行は龍王国に向かって歩き出した
「そういえば御主人様は
なんの魔法が使えるの?」
「えぇ?使った事ないから
わからないけど何が使えるんだろう?」
ブレイクがスイレンに
魔法を教わらながら歩いていると
スイレンがブレイクを独占している!と
ヴィクトリアがヤキモチを焼き
ブレイクを抱き抱え走り出してしまう
「あーあ、ブレイクの事になると
ヴィクトリアはすぐこうなるわね」
「私、何か悪いことしたかしら?」
とヴィクトリアのヤキモチに
コレットとスイレンが振り回され
ユージーンが皆がはぐれない様に
中間地点に陣取っておりヴィクトリアも
それを見てあまり前に出過ぎないようしていた
「あのヴィクトリアさん?」
ヴィクトリアは下唇を突き出し拗ねていた
「...息子は私の子になるのは嫌なのか?」
ヴィクトリアの質問にブレイクは苦笑を返す
「...そう言う訳ではないんですけど
僕にはカルラという母が居たんです」
それは聞いたが...とヴィクトリアがシュンとする
「僕はカルラを忘れられない
...でもヴィクトリアさんが良いなら
僕は貴女の息子になりたい」
ヴィクトリアがブレイクを抱きしめる
「カルラという実母には敵わないかもしれないが
私は息子の母親になるぞ!」
ヴィクトリアとブレイクの間に血の繋がりは無い
貴族のヴィクトリアが養子に迎え入れる
それは大変な事だ
だが家族になるのに血の繋がりなどは関係ない
当人同士が決める事で他の意見など
無視してしまえばいいのだから
「息子!
帰ったらメイベルと3人で出掛けるぞ!
今から楽しみだなぁ!」
ブレイクはその言葉にハッとして
(そうだヴィクトリアさんには娘がいるって
メイベルさんか...仲良くなれるかな?)
ブレイクはヴィクトリアに
合わせて小さくなったまま
運ばれていった
ヴィクトリア達は
妖精の園と呼ばれる樹海へと入っていく
妖精は精霊の下位互換だと
人族の中で広まっている認識ではあるが
実際には人族やモンスターよりも強く
精霊と違う点は群を作るという事
集団で行動している
小妖精、中妖精、大妖精
と他にも細かく分類されるが
共通する事は自然と共に暮らしている
樹海に入ったその時、少し遠くにエルフが居た
エルフは此方を見るなり興味が無いのか
樹海の奥へと消えていってしまった
少し進んだところで休憩をしようと
辺りを警戒し鞄の中から
魔除けのお香を取り出そうとしている
コレットをよそに
スイレンが索敵魔法を使用して辺りを確認する
辺りは小型のモンスターだけで
特に警戒するようなモンスターはいないと
ヴィクトリア達に説明して
ヴィクトリアはわかった!と相も変わらず
ブレイクと戯れており
その魔法、私にも使えるかい?とユージーンが聞き
スイレンに索敵魔法を教わる
コレットはヴィクトリアからブレイクを引っ剥がし
ヴィクトリアを連れ薪や枝を集めに移動していた
水分補給や装備の点検など各々の時間を過ごし
スイレンとユージーンの会話を聞き
ブレイクも索敵魔法を使ってみる
「なんで言えばいいのかしらね
魔力を広げるのよ、こう
身体の神経が飛び出る...感覚なのよね」
独特の表現にユージーンが
ヒェッと声を漏らし
へぇ〜そんな感じかぁ、とブレイクは納得したのか
魔力を広げていく一気に広がり始め
土や草、木の感触まで感じたブレイクが
遠くの気配に気付いた
(スイレン、この反応って...)
(え?...凄いわね御主人様
私は気が付かなかったわ)
スイレンの索敵魔法は
半径50メートルほどのドーム状に広がる魔法で
ブレイクが使った索敵魔法は
半径200メートルほどのドーム状に広がる魔法で
反応があったのは100メートルほどの後方の
木々の上に2つの反応があった
此方の様子を伺っている様で
そこまで敵意は感じない
(私が行ってくるわ御主人様
要件だけ聞いてくればいいかしら?)
(無理はしないでね)
ええ、とスイレンはブレイクと感覚をリンクさせ
索敵魔法の範囲を広げて後方にいる
2人に近付いていく
息を潜め2人の人影がヴィクトリア達を監視する
その後ろにスイレンはいきなり現れた
「アンタ達、何の用?」
いきなり声をかけられて2人は驚き
戦闘体制をとり片方が魔法の詠唱を始めたが
スイレンがそれを許さない
口に水の塊を押し付け
詠唱できない様にし
それを見たもう片方が弓矢を構えて放つが
そもそも精霊であるスイレンに物理攻撃は効かない
「無駄よ魔法は使わせないし
物理攻撃も私には効かない、大人しくしなさい」
2人は諦めたのか抵抗をやめた
「付いてきなさい」
スイレンが2人を連れてヴィクトリア達の所へ戻る
「お!ハーフエルフじゃないか!」
ヴィクトリアの反応に不思議そうな2人の
ハーフエルフの姉妹
「御主人様彼女達はハーフエルフ
半妖精とも呼ばれる存在、人とエルフが交わると
こういうのがたまに出来るのよ
ヴィクトリアみたいな反応はまず無いわね
大体不吉な存在として扱われるのが殆ど
特徴は霧化かしら何処へでも行けるし
隠れるとなるとこの上ないくらい厄介よ」
スイレンの説明にへぇ〜とブレイクも
特に差別する様な性格でもないので
それを見たハーフエルフの2人が更に不思議がった




