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第29話

王城の中に入るとポツポツと雨が降ってきた


「何だ公爵が説明したんじゃないのか?」


バハムートがヴィクトリアに声をかけるが


国王ミランドは未だバハムートを警戒しており


「バハムートよ

闇の巫女の力となったと言うが

余は正直、疑っているのだ

味方になった証拠を見せて欲しい」


はぁ?とバハムートはグレイシアの方を向くが


「それがアナタがやってきた事の

ケジメみたいなものです

やるしかないでしょうね」


グレイシアの言葉に


はぁ...めんどくさい、とバハムートが溜息をつく


バハムートがノワにとある説明をし始めた


「これからやるのは

精霊でいう精霊融合《ソウル・ユニオン》だ

普通は出来るものではない」


ん?何だか聞いた事あるな、と


ブレイクが思っていると


(坊や、たぶん同化の事よね?)


とカルラと目が合いながら


スイレンも会話に参加して来た


(少し黙ってましょう

同化の正式名称が聞けるかも知れない)


スイレンの言葉にブレイクはノワの事を凝視する


「どうした?息子《ブレイク》?ノワが気になるのか?」


ヴィクトリアがブレイクの視線に気付き


話しかけて来た


「いえ、もしかしたら同化の正式名称が

バハムートから聞けるかもしれないので

黙って聞いておこうと思いまして」


小声でヴィクトリアに耳打ちし


そうか!と納得したようで


ヴィクトリアも静かに


バハムートの説明を聞いていた


「俺はコレを龍人化《ドラゴン・リンカー》と名付けた

龍人化《ドラゴン・リンカー》は契約した龍と

人が一つになり驚異的な力を発揮する

この状態になった者は龍の咆哮や爪や牙を使える」


龍人化《ドラゴン・リンカー》初めて聞く単語に


ブレイクは何だかワクワクしていた


それはヴィクトリアも同じだったようで


「その龍人化《ドラゴン・リンカー》を今からノワがやるのか?」


そうだ、とバハムートが説明して


ノワがバハムートと息を合わせて


「「龍人化《ドラゴン・リンカー》」」


ノワの身体に鱗と尻尾、爪や牙まで出て来た


「こっ...コレが

闇の巫女の力となったバハムートの力か

コレは凄い威圧感だな」


ミランドはノワに中庭に出てもらい


上空にバハムートの咆哮を撃つよう言った


「わかった、上でいい?」


と中庭に出て上空に咆哮を放ち


先程まで雨が降っていた空が


雲一つない晴れ間に変わった


「コレでいい?」


あ...あぁ、と情けない声でミランドは返事をし


凄いね!とブレイクがノワの所へ近付き


ノワは龍人化《ドラゴン・リンカー》を解きブレイクとはしゃいで


ヴィクトリアが2人を抱き抱え


「そろそろ帰るか」


とミランドに帰ると言い放ち帰路に着く


帰り道バハムートは


「主の当面の目標はブレイクとの戦闘で

魔力切れを起こさない事だな」


龍神と龍王では強さに差がある為


ブレイクとノワの龍人化《ドラゴン・リンカー》の強度は


雲泥の差がありブレイクはそれに加えて


精霊融合《ソウル・ユニオン》をすればいい勝負になるが


互いに魔力不足になる


それを踏まえて2人は


切磋琢磨するしかないのだった


ギルドに戻りはぐれの火龍の角や牙を提出して


晴れてブレイクはSランク冒険者になり


それに伴い夜明けの旅人達もランクが上がった




あれから3年の月日が経った


「坊ちゃま、奥様が広間でお待ちです」


メイド長がブレイクの部屋に入り


ブレイクの身だしなみを整え


準備ができたブレイクは


「うん、わかった」


ブレイクは11歳になっていた


邪神の襲撃は未だない


ブレイクは広間まで歩いて行き


ガチャ


広間の扉を開きブレイクは中へと入る


「主!おはよう!

スゥは依頼を受けに行きたい!」


2年前にスゥがいきなり帰って来た


ギデンの提案でブレイク達の鍛錬に混ざった方が


スゥは強くなると思ってのことらしい


「おはようブレイク

珍しく遅かったわね」


メイベルはブレイクが


皆より遅く起きてきたのを見て話しかける


「昨日夜遅くまでギルドで予定がありましたから」


とメイベルに説明した後


ブレイクはヴィクトリアの所へ向かう


「おはようございます

母さんが呼んでたらしいですけど

今日って何かありましたっけ?」


ヴィクトリアが本を読んでいたが


視線をブレイクに向ける


「あぁ、今日は姪であるティラ王女の生誕祭で

息子《ブレイク》達も招待されている

私とメイベルと一緒に行くぞ」


えぇ...わかりました、とブレイクは


あまり乗り気では無かった


理由はティラ王女の事である


彼女は龍の涙を使った薬で無事病気が治り


王城でリハビリをしていた際に


ヴィクトリアと用事で来ていた


ブレイクに一目惚れする


それからと言うものあれこれ理由を付けて


ブレイクを呼び出している


そんなティラ王女の生誕祭で


ブレイクに何も要求してこない訳がなく


「いったい、なに言われるんだろう?」


ブレイクは途方に暮れていた


生誕祭は昼から夜まで続き


城下町でも祭りが開かれていた




街がティラ王女の生誕祭の準備で騒がしい中


王城行きの馬車がヴィクトリア邸の前に着き


憂鬱なブレイクとは裏腹にヴィクトリアは


ティラ王女を気に入っており


メイベルもティラ王女とは仲が良く


ブレイクが荷物持ちで買い物に行くのも珍しくない


「もぅ、そんなむくれたって

仕方ないじゃないブレイク行くわよ」


...はーいと気の抜けた返事をして


ブレイクはメイベルに付いて行き馬車に乗る


馬車は真っ直ぐ王城へ向かう


王城に着くとそこにいたのは


「お!ブレイクにメイベル

それにヴィクトリアさん」


アーク達レムロン一家だった


「おはようブレイク君

あれ?何だか、もう疲れてないかい?」


ブレイクが向けられているティラ王女の求愛は


色男のユージーンにもわかる悩みだった


「ブレイクはもう誰かと

婚約した方が良さそうだよな」


とその一言にユージーンがアークの口を塞ぐ


「アーク、それを言ってはいけないよ

他の貴族もいるんだ

シルヴァ家に関係を持ちたい

貴族は山ほどいるんだから」


そ...そっか、と軽はずみな言動にアークは反省し


「でもその方がいいのかなぁ

ティラ王女...悪い人では無いんだけど

圧というか勢いが凄くて」


ブレイクは結婚相手かぁと考え


(誰と一緒にいたいかだよなぁ

ティラ王女は疲れるし

他の貴族だと気も使うしなぁ

知り合いの冒険者とか?

....あ!)


馬車からダークエルフの少女ノワと


魔王ワイトが降りてくる


「ノワ!元気だった?

ワイトさんも魔王領の復興どうですか?」


私は...元気だよ?とノワは恥ずかしそうに返事をし


ブレイクとノワの2人の間に


気まずい雰囲気が流れる


「ゔ...ゔん!ノワも私も元気だよブレイク君」


とノワとの間に入ってきたワイトが更に


「魔王領の復興は半分くらい進んだかな

ミランドの支援もあったし助かってるよ」


ルア王国の支援はヴィクトリア経由で


ブレイクが頼んだもので


支援物資や人材などを派遣している


「そうですかよかったです!

結構進んだんですね

あとは魔族が戻ってくればって感じですか?」


そうだね、一度離れた領民を


再度受け入れてはいるものの


戻りたく無いという者も一定数いるのも確かな事で


ワイトも頭を悩ませていた


そんな中


バサバザと羽ばたく音が聞こえ


今度は龍王国からやってきた


フィートとロストがブレイクの元にやってきた


「やあ、ブレイク元気かい?

母上もたまには帰ってきたらどうです?

龍王国の国民も兄上寂しがってますよ」


フィートがそんな事を言うと


ロストが恥ずかしそうに


「俺はそんな事ねぇ!

国民は確かに寂しそうだけどな!

俺様は将軍だからそんなに寂しがってない!

...ってかブレイクどうした?

なんか疲れてないか?」


「2人とも聞いてよ

ティラ王女に何言われるかと思って

僕は気が気じゃないんだ」


そんな話をしているブレイク達を見て


グレイシアが3人の息子の頭を撫で


「そんな事言っても仕方ないじゃない

フィートもロストも元気そうね

たまには坊やと一緒に帰ろうかしら」


と、そんな話をしていた時だった


バタン!


勢いよく王城の窓が開き


「ブレイクー!!!!!」


ある少女が飛び降りて来た


「えぇぇぇ!!!???」


落ちる直前にブレイクが時間魔法で


彼女を停止させ抱き抱える


魔法を解きブレイクの腕の中にいたのは


「あのー、毎回毎回

この登場の仕方はやめませんか?王女様」


ティラ王女だった


「でも、貴方なら必ず受け止めてくれるでしょ?」


はぁ、と溜息を吐いたブレイクに


不敬よ不敬!と駄々をこねるティラ王女


「おぉ、良かったブレイク殿

姫様、貴女は本日の主役なのですから

怪我でもされたら大変なことになりかねます

戻りますよ!」


嫌!とティラ王女が駄々をこねるが


「もう15にもなったんですから

聞き分け良くなってください

お父上からもお願いされているのですから」


とティラ王女の専属執事が王女を引っ張っていった


「ブレイクー後でねー」


あはは、と苦笑いをしながらブレイクは手を振る




「本日はミランド陛下の愛娘

ティラ王女の生誕祭にご参加いただき

誠にありがとうございます

ティラ王女も15歳になり成人の仲間入りです

温かい目でお迎え入れください」


宰相がティラ王女の生誕祭の謝辞を述べる


ティラ王女はというと


先ほどまでのお転婆娘の印象とは打って変わって


「おお!ティラ王女誕生日おめでとうございます」


「誠に恐縮です」


そこに居たのは淑女そのものだった


(さっきとは打って変わっての対応力だ

僕にもあんな風に接してくれたらなぁ)


ブレイクがそう願っても叶わぬ事だったが


ティラ王女に挨拶しにいかないといけないので


シルヴァ家の3人で挨拶しに向かった


「ご機嫌麗しゅうございます

ティラ王女様

娘、息子共にご挨拶に参りました」


ティラ王女の変貌にもびっくりだが


ヴィクトリアの言葉遣いにも


あまり慣れないブレイクだった


バハムートが緊張しているノワの事を気にして


飲み物をとって来た


「主、少しは場に慣れたか?」


うーん、と首を傾げるノワにバハムートは


「こんなので緊張してたら身が保たんぞ

お前は魔王の娘なんだから堂々としてればいい」


そうかなぁ?と悩むノワにブレイクが話しかける


「やぁ、ノワにバハムート

さっきはバハムートは

居なかったけど何処に居たの?」


俺は先に王城に来てたからな、と


ブレイクと近くにいたメイベルに


アークを呼び話を始めた


「国王の奴が情報を掴んでな

王女が狙われているらしく

その護衛に俺を選んだようだ

だが俺は攻撃力は高くても

誰かを守るのは苦手でなお前達に頼みたい」


わかった、とブレイク達は警戒をし始めて


すぐの事だった


コツコツコツ


とハイヒールの音が辺りに響く


そこに居た人々は誰も彼女を気にしていない


「ねぇ、あの人...」


ブレイクにノワはその存在に気付いたようだが


ヴィクトリアやメイベル、そしてアーク達も


そこに誰も居ないように振る舞っている


「変だよブレイク

あの人、存在感がないのか誰も気付いてない」


女は折り畳み式の大鎌を背中から出し


ティラ王女の横に移動し始める


(マズい!たぶんアレが王女を狙ってる奴だ!)


ブレイクが急いでティラ王女の所へ向かう


(間に合ってくれ!)


次の瞬間大鎌は完成し大きく振りかぶって


ティラ王女の首元へと大鎌は振るわれた


カァン!


間一髪のタイミングでブレイクの魔法剣が


その大鎌を防いだ


「姫様をお守りしろ!」


護衛がティラ王女を囲むように配備され


女に注目がいくが


「...居ない?」


コツコツコツコツ


ハイヒールの音が響く


またティラ王女の横に移動し


その首に大鎌を向けるが


それをまたブレイクが阻む


「ミランド陛下!後で弁償します!」


とブレイクは女の腕を掴み窓へと投げ


ブレイクもそのまま外に出た


 


「...邪魔」


女が初めて喋った


「貴女の目的はティラ王女ですか...

腕や足の1、2本は覚悟してください」


大鎌と魔法剣のぶつかり合いは激しく


ブレイクに劣らない女の攻撃も凄かった


だが、ブレイクはその上をいく剣戟で


女の大鎌を弾き飛ばした


「...厄介」


女はその場から逃げ出した


ブレイクはそれを追うが


曲がり角で見失ってしまった


「クソッ!ティラ王女の所は大丈夫かな?」




「全然見えなかったわね」


あぁ、確かになとメイベルとアークの話に


「アレは隠密系の魔法を使っている俺でも見えん」


バハムートがノワの指示でティラ王女の側に行く


「ブレイク相手だからすぐ捕まるだろう

ん?どうした?メイベル?」


うーんとメイベルが思考を巡らせている


「ブレイクと戦ってたあの女の人、何処かで

見た事ある気がするんだよね」


うーんとメイベルは思い出そうと


考え込んでいた


「なんか思い出したか?」


アークがメイベルに聞くが


「どこで見たんだろう?

う〜ん、また調べてみないとわかんないなぁ」


後でギルドで情報収集をしようと考えて


メイベルは一旦ブレイクが帰ってくるのを待って


ティラ王女の所へ向かう


「大丈夫ですか?ティラ王女

すみません陛下

侵入者は残念なら逃げられました」


ブレイクがティラ王女と国王ミランドに説明し


騒動はあったが生誕祭は続ける事になった


ブレイクとノワが中心となり


城内の見回りを強化し侵入者が入らないよう


ブレイク達は警戒体制に入って


ティラ王女を護衛していた


「先ほどの刺客はブレイクと主しか気付かった

俺も警戒はしているがあまり効果はなさそうだな」


バハムートがブレイクとノワを交代で護衛するよう


提案してその日は交代しながら生誕祭は終了した




翌日、ブレイク達は王城に呼び出されていた


「あの後は襲撃も無く娘も無事だった

光の勇者に闇の巫女よ感謝する」


国王ミランドがブレイク達に感謝し


ティラ王女はというとブレイクにベッタリで


「あの...ティラ王女?

陛下の御前ですのであまりそういうのは」


何よ!不敬よ不敬!と相変わらず


ブレイクへの求愛は止まらず


ブレイクは国王ミランドに助けを求めるが


娘に甘い国王ミランドは何も言えず


「ティラ、一旦離れなさい」


ティラ王女を止められるのは1人しか居なかった


うっ...お母様、とティラ王女は


自身の母であるローラ王妃に引っ張られ


玉座の隣にローラ王妃とティラ王女は移動し


「今回のティラへの襲撃は何が目的だ?」


とヴィクトリアが国王ミランドに聞く


おそらくガバ帝国の刺客だろうと


国王ミランドは考えており


ティラ王女を亡き者にすれば


世継ぎが居なくなる


その前に婿をとってしまえば良いのだが


ティラはブレイクにしか興味が無い


ブレイクはブレイクでティラ王女との


縁談は既に断っており


それでもティラ王女の熱烈な求愛は止まらず


国王ミランドもブレイクがいつ折れてくれるか


それを待っている様子だった


そんな中ローラ王妃が口を開く


「ティラはこの後

洗礼の儀を受ける予定です

それによっては期間限定でいいから

夜明けの旅人に入れてもらえないかしら

自身を守れるだけの力が有れば

私達も安心できるの」


ブレイクは内心、焦っていたが


渋々その提案を受け入れ


ティラ王女の洗礼の儀が始まった


結果は...



ティラ・ルア・ダイヤ・ハート


職業

ルア王国の王女


適正

武術・杖術(上級)

魔術・土魔法(極級)




「土魔法が極級だって! 

ブレイクこれなら文句ないでしょ?」


と嬉しそうにティラ王女はブレイクの手を取る


「あのー僕、教えるの苦手なんで

母さんや他の人から教えてもらう方が

良いと思いますけど」


私はブレイクがいいの!とティラ王女の意思は固く


国王ミランドと王妃ローラに頼まれ


ブレイクは断れず夜明けの旅人の仮メンバーとして


ティラ王女を加入させる事になった

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