第28話
ガバ帝国にて暗殺兼情報収集部隊が
バハムートの脅威がなくなった事を
帝国の国王ボア・ゲヌマ・ガバに報告していた
「なに!?龍神バハムートが消えただと?
とうとう魔力が尽きたのか?
それとも死んだのか!?」
「事実を確認中ですが
バハムートは今現在
ガバ帝国領内には確認できません」
国王は持っていたワインを一気に飲み干し
上機嫌になっていた
「これで奴隷共を
労働力としてつかえるなぁ
他の国も攻め落とそう!
手始めにルア王国から攻めるか!」
とアホな考えで帝国の政治を行なってきた
税金は脅威の1000%
誰が好き好んで11倍する物を買うのだろうか?
あまりにバカすぎて冒険者も街の人も
ルア王国に移住を考え実行する手前にいる
マヌケな事に帝国騎士団も同じ考えである
喜んでいるのは国王そして宰相の
メタ・ガロオという男の2人だけだった
この宰相も大した頭は持っておらず
オロカな政策しか出さず
何なら他の臣下からダメ出しを受ける始末だった
ヴィクトリア邸に着くと
ヴィクトリアの部屋に駆け込むノワだった
「ブレイクからヴィクトリアさんに
言伝を預かってきた」
その言葉に息子からか!
「バハムートがノワの力になった事で
封印していた4000人の元奴隷が出て来たんですけど
ルア王国に連れて行きたいんですけど
どうすればいいですか?
って事なんですけど
私はすぐ戻らないと行けないから」
「私も付いていく」
「え!?迎え入れはどうするんですか?」
そんなの後でいいとヴィクトリアが支度をして
ノワと共にバハムートに乗った
バハムートが羽ばたきブレイク達の所へと向かう
その移動中ヴィクトリアは
通信用の水晶を取り出し
ギルマスのベルズにユージーンとコレットに繋げた
「...という訳で私は今
ガバに向かっている
ユージーンはミランドに説明しておいてくれ
コレットは孤児院に子供を迎え入れる準備を
ベルズは冒険者登録の準備を頼む」
おいおい、いきなりだなとギルマスは頭を掻き
わかった、とユージーンとコレットが頷き
各々準備に取り掛かる
ユージーンとコレットの迅速な対応は
ヴィクトリアの無茶振りがこれが初では無く
いつもの事だと伺える
「ノワあとどれくらいで着く?」
「うーん、急げば1時間くらい?」
それじゃあ急いでくれと
ヴィクトリアがノワに頼んで速度が上がっていく
「結構あるから手分けして調理していこう」
狩りを終えブレイク達は放り出された元奴隷達の
食事の準備をし始めた
「皆さんは出来る事をやってください
元奴隷だからといって何も出来ない訳じゃない
魔法が使える人は積極的に参加して下さい
それ以外にも出来る事はいっぱいあります」
その言葉に元奴隷達は次々と動き出した
調理を手伝う者、解体を手伝う者
その場に座るのに石ころを片付ける者など
各々が考えて働き出した
ブレイク達が食事を終えようとした頃
カチャカチャと鎧が擦れる音と共に
ガバ帝国の紋様の騎士団が現れた
「何だこの人数は!?
ザッと1000人以上いるぞ!?」
騎士団の団長がバハムートの生存確認をしに
やって来たはいいもののこの人数の元奴隷を見て
どうしたものかと固まっていた
そこへ
バサ!バサ!
「俺の根城に何かようか?」
「うわぁぁぁあ!!!!
龍神バハムートだぁぁぁぁあ!!!!」
バハムートの威圧によって
ガバ帝国の騎士団は
散り散りになって自国へと戻って行った
そして...
「息子!!!
やっぱりお前が居ないと寂しいぞ!!!」
いきなりバハムートから飛び降り
ブレイクに抱きつくヴィクトリア
すぐさまスイレンとカルラに引き剥がされ
「母さん!?
えっと...言伝を頼んだんですけど?」
あぁ、聞いた!とヴィクトリアは
通信用の水晶を見せて
ユージーン達に手配を頼んだ事を説明した
「な!大丈夫だろう?」
とヴィクトリアはブレイクの前で屈んだ
ん?とブレイクが困惑していると
「母上ブレイクは言わないとわからないですよ」
頭を撫でるようにメイベルがジェスチャーして
ブレイクは恥ずかしそうに
ヴィクトリアの頭を撫でた
えへへと嬉しそうにヴィクトリアは笑う
そんなヴィクトリアを見て
アリアがギデンに私も撫でろ!と無茶振りをして
気まずいギデンだったが観念したのか
アリアの頭を撫でる
「これは...いいな!」
とアリアが言うとガルーも俺も俺も!と
結局両親の頭を撫でる事になるギデンだった
「母さんこの4000人の人達をルア王国に
移送するのにどうしたらいいと思いますか?」
ん?徒歩でいいだろう?と
ヴィクトリアの考えでは
怪我人以外は歩けるから
バハムートが先導し迷いの森を抜けて
王国に向かうと言う単純なモノだった
「道中のモンスターはどうしますか?
あと怪我人や病気の人は?」
「そこだな...」
ならいい方法があると
バハムートが話に割り込んできた
「俺の中にもう一度4000人を入れて仕舞えばいい」
確かに元々バハムートの中に居たのだから
それが1番手っ取り早いが
戻る事に抵抗がないならの話だが
「皆さんはどうしたいですか?
ここからルア王国はかなり遠い
歩き続けるのはかなり辛いはずです
バハムートにまた喰われるのは
抵抗がある人がほとんどだと思います
でもバハムートが居たおかげで
皆さんが生きているのも事実
彼にもう一度
命を預けてみるのもアリだと思います」
ブレイクの言葉を元奴隷達は受け止め
4000人の殆どが呑み込まれて行った
残った数名を護衛しながらブレイク達は
ルア王国に向かう
「主と俺は先に帰るぞ
それに公爵、お前もだ」
えぇ!?なんでだ!?と猛抗議する
ヴィクトリアだったが
お前が居ないと受け入れが出来んだろうと
その言葉に観念し
ヴィクトリアはブレイクを抱きしめ
「また後で逢おう」
と名残惜しそうにバハムートに乗って行った
バハムートに乗ったヴィクトリア達を見送り
残った数人の元奴隷達はブレイクと共に
ルア王国へと向かう
ギデン達メソポリアは
アリアとガルーが加わり4名から6名に増え
ブレイク達とは別行動をとる事にして
一旦の別れを告げた
アジトに戻る道中
「にしても我が子に歳を越されるとは
思わなかったな」
アリアがギデンに近付き、背も伸びたと
ギデンの頭に手を伸ばす
「まぁ、あれから400年だ
母さんと父さんが200歳代だった時の
出来事だしな2人より倍は生きてる」
そうかそんなに時間が経ったかと
ガルーも感慨深いらしく
腕を組んで頷いて2人の話を聞いていた
「スゥはボスの親をなんて呼べばいい?」
スゥの質問に
「何だギデンお前
ボスって呼ばれてるのか、そうかそうか
じゃあこれからよろしくな“ボス”!!」
そうだなよろしくな“ボス”!とガルーまでも
ギデンをからかい
「呼ぶ時は名前でいいよ
えっとスゥとカーラそれにロアか
よろしくな」
とスゥの頭を撫で
「わかった!
アリアとガルー!」
スゥとカーラはすぐにその呼び方に適応したが
ロアが凄くぎこちなくなっていた
ブレイク達はギデン達と別れ
野営の準備をしていた時に
バハムートの中に入らなかった
1人の少年がブレイクに話しかけてきた
「あの、僕も貴方みたいに
強くなれるでしょうか?」
突拍子もない話にブレイクはポカンとしてしまい
「あ、ごめんなさい
...なんでもないです」
「えっと...いきなりだったから
反応に困っただけなんだ
それで、なんで強くなりたいの?」
少年は目を輝かせ言う
「そんなに強ければ自由に
好きな事が出来るじゃないですか
俺は今まで奴隷だったし特別なモノも持ってない
貴方と俺じゃそもそもが
違うのかもしれないですけど」
そんな少年にカルラが
ブレイクの代わりに説明し出した
ブレイク自身奴隷の子供だった事
ブレイクの強さは戦闘力も確かにあるが
心が付いてこないとそれはただの暴力になる
傷付けるだけの力になってしまう
「坊やの強さは皆を守りたいという
優しさから来るものだ
坊やの様に強くなりたいならまずは
出来る事をやっていくしかない
そしたら徐々に強さは付いてくる」
そう...ですか...と、少年が想像していた
助言ではなかったようで
少年は考え込む
「よくわからないけど
言われた通り今は出来る事を
やっていこうと思います」
僕もそれでいいと思う、とブレイクも言い
野営の準備が進んでいき
火の番を交代で夜明けの旅人のメンバーが
やっていたがブレイクはやはり眠らず
火の番をしていた
ブレイク達は
迷いの森を抜けてルア王国に着き
ヴィクトリアが出迎えていた
「よし、これで全員だな!」
ヴィクトリアの提案で
成人以上の元奴隷は冒険者として登録させ
仕事をして生活をしてもらい
成人していない14歳以下の子供は
孤児院で世話をする事になった
ブレイクに質問をした少年はアデルという名前で
10歳だったが本人の希望で冒険者になる事になった
「ブレイクさん!俺、頑張るよ!」
「アデル君、僕の方が年下なんだから
呼び捨てでいいのに、でもそうだね
お互いに頑張ろう!」
そっと手を出してアデルと握手を交わすブレイク
アデルは照れくさそうに握手を返した
そこでギルマスのベルズが話しかけて来た
「で、どうするんだ?
はぐれの龍は討伐できてないんだろう?」
ブレイクは今度は1人で向かうと言い
アークとメイベルがそれを止めるが
ブレイクの意思は固かった
そこにバハムートが話に割り込んで来た
「大丈夫だと思うぞ
前に俺に放った結晶を他の龍に撃つなら即死だ
鱗と身体を貫通し息の根を止めるだろう
あとは移動手段だろう?
俺に乗っていけば今日中には帰ってこれる
それと主も連れていけ
闇の巫女の実力がどのくらいのモノなのか
見ておきたい」
すると...
「移動手段なら私が坊やを乗せて行きます」
とグレイシアがバハムートの前に立ち塞がり
付いてこれるか?とバハムートはグレイシアを煽る
「私は天空の覇者の異名を持った龍王ですよ?
その意味がわからない貴方ではないでしょう?」
天空の覇者とは龍の中でも
高速で大空を舞うことが出来る者しか
名乗ることは許されず
しかも自称ではなく他称という事は
周りが認めた速さで飛べるという事だった
それを聞いたバハムートは少し驚いたあと
「天空の覇者か、どれ程のものか楽しみだ
主!我らが行く必要は無くなったが別の用事で
ガバ帝国には行かなくてはならん、準備しろ」
ブレイクがグレイシアに乗り
ノワはバハムートに乗って
ガバ帝国領地へと向かった
「主よ別の用事と言うのは俺の根城の事だ
あの場所は封印する人の手には余るからな」
わかったとノワが返事をし
ブレイクはというと索敵魔法を使い
はぐれの龍を探していた
「坊や見つかりそう?」
ブレイクの魔法でも直ぐには見つからない
バハムートとグレイシアのスピードは音速を超える
その速さについていけている
ブレイクの探索魔法の精度を
バハムートが見て
この速さならすぐに見つかると言って
数分もしないうちに
はぐれの火龍を見つけた
「何だ!?バハムートにグレイシアだと!?」
はぐれの火龍は二頭の龍に驚いていたが
そこからブレイクが出てくると
「何だ...唯の人間の子供か、何の用だ」
「貴方を討伐しに来た」
「はあ?何を言っているんだ
グレイシアから降りて来たと思ったら
変な事を言うガキだ
ん?そっちは大精霊か
俺を殺す為に誰かから借りたのか?」
目の前で起こった光景が
火龍には信じられないモノだった
氷炎の結晶を放ちそれを避けず
受け止めようとした腕が無くなった
ありえない事だ
火龍は初めての現象に驚きを隠せなかった
「貴方になんの恨みもないけど...失礼します!」
2発3発と連続で氷炎の結晶を
繰り出し火龍は力尽きた
ブレイクは頭部だけを残して
氷炎の結晶で全て削って牙や角を持ち帰る
帰る前にバハムートが寄る所があると言い
ブレイク達もそれに付いて行く事にし
その場を後にした
「今の見たか!?」
ガバ帝国の騎士団が偵察に来ていた
「あの子供はなんなんだ!?
火龍をあっさりと殺してしまったぞ!?」
「それもそうだがバハムートがまだ生きていた
それも報告しなくては」
「隣の龍は氷龍王グレイシアじゃなかったか!?」
バハムートの懸念は当たっており
ガバ帝国はバハムートの根城に
金銀財宝が眠っていると踏んで
懲りずに進軍して来たのだったが
今の光景を目の当たりにして撤退を余儀なくされる
ここは?とノワが疑問をバハムートにぶつける
「俺の寝床だ、ここを封印する」
バハムートは人間が近付けぬよう封印魔法を使う
「よし、これなら暫く大丈夫だろう」
バハムートの根城はバハムートの手により封印され
そしてバハムートとグレイシアは
ノワとブレイクを乗せルア王国に帰る
ヴィクトリアは国王ミランドに呼び出され
事の顛末を話し出した
「....と、まあバハムートも味方になった事だ
あと脅威は邪神くらいか」
そこに40代くらいの男性
近衛騎士団団長レインが話に割り込む
「相変わらずヴィクトリアの話は
突拍子もない話ばかりだ
でもヴィクトリアが嘘を吐くとは思えんしな」
「何だレインそろそろ世代交代か?」
バカ言えあと30年は現役だぞ、と
レインは言うがあながち本当に30年は
現役なのではないかと思うくらい
筋骨隆々で豪快な人柄で彼を慕う者も多い
「そうかバハムートが味方になったのは吉報だ
ヴィクトリアよ、して当のバハムートの
契約者ノワとブレイクは今は?」
と、ミランドが言ったところで
バサッ!バサッ!、と
王城の広間に大型の龍が二頭現れ
城内はパニックになったが
龍神バハムートと龍王グレイシアだとわかると
城内も落ち着きを取り戻した
「母さん!
ただいま戻りました!」
ブレイクがグレイシアから降りて
ヴィクトリアの所へ走って来たのが
嬉しかったのかヴィクトリアは
反射的にブレイクを抱っこした
「あの...母さん?」
あぁ、とブレイクを下ろして
バハムートとグレイシアも人の姿となり
ミランドの所へ案内された




