第27話
(メソポリアが4人もいると
あんなに鱗を割れるものなのか
...それでも龍神バハムートはそれ以上に強かった)
ブレイクが一連の事態を見ていて
龍神バハムートの強さに改めて驚いていて
(本当に話に来ただけだったんだ
バハムートの攻撃を僕は受け切れるだろうか?
...皆を守れるかな)
「主〜!」
とスゥがブレイクに飛び込んで来た
「久しぶりだねスゥ!」
うん!とスゥはブレイクに抱きつき
それをカーラに引き剥がされ
「久しぶりだな
...ってかよく厄災と
接触したのに生きてるよなぁ」
話に来ただけだとバハムートは言っていた
戦う気はさらさら無かった様子だった
「スゥは...
あんまり戦えなかった」
しょんぼりしたスゥの頭を撫でてブレイクが言う
「大丈夫だよこれから強くなろう
カーラと...そちらの2人は?」
スゥがボスとロア!と説明する
「ボスさんにロアさんですか」
「いや、ボスじゃなくてギデンだ」
ギデンはメソポリアの中でボスなだけで
他からはボスと呼ばれるのはちょっと違うらしい
「俺達は厄災の討伐に来たんだがこのザマだ」
悔しそうなギデンにブレイクが
「ギデンさんはバハムートと因縁があるんですね」
ああ、とギデンがブレイク達に
バハムートが両親を殺した仇だと言う事を説明し
仇を討つ為、メソポリアの誇りを取り戻す為
バハムートを討伐する為に
今回スゥを入れた4人で来たのだが
まさかの返り討ちに遭ってしまった
「バハムートは
闇の巫女ノワの所へ向かって
移動を開始しました
先程の戦闘を見て龍神の名の通り
凄い力を感じました
ノワが殺される事はおそらく無いはずですけど
やはり心配ですね...」
闇の巫女ならもしかしたらという可能性はあるが
それも龍神バハムートの気分次第だろう
バハムートが呼ばれた時代それは
戦乱の時代だった
ガバ帝国が1000人の奴隷を生贄に
召喚したのがバハムートだった
「ここは...」
『殺せ!』
頭に響く命令がバハムートを悩ませる
その悩みが痛みとなり全身を巡る
「なっ...なんだ、この痛みは!?」
バハムートは痛みに耐えながら
その場を離れようとしたが
ガバ帝国の召喚士がそれを許さず
魔力で包もうとした
「俺の力になれバハムート!」
『殺せ!』
「なんなんだ
さっきからいったい
俺は何の為に呼ばれた?」
『殺せ!』
「何故だ!?
魔力量は足りている筈だ!?」
『殺せ!』
「うるさい!静かにしろ!」
グチャ
バハムートは召喚士を踏み潰し
魔力が身体中を巡る
そして痛みも殺せ!と言う声も消えていた
「いったい、なんだったんだ」
バハムートが召喚されてから
1週間が経過し
バハムートはガバ帝国領地の端に
自分の巣を作った
(あれから結構時間は経過した
だが何故俺は消えない?
魔力のせいか?)
バハムートの疑問は未だブレイク達がいる
400年経った今も解決しない問題だった
バハムートが召喚された事の詳細は
当時は確認する術が無く
ガバ帝国でさえバハムートの暴走だと判断した
そんな時にこんな噂が立つ
バハムートは100年に一度食事をし
1000人の人を喰らう
そうすれば無闇に人を襲わないらしい
それはバハムートが現れてから
100年が経つ頃だった
(...ってオイ誰だそんなバカな噂を流したのは)
とバハムートが考えていると
メソポリア族の精鋭が現れる事態となった
族長アリアとその夫ガルーが来た理由は
ガバ帝国の依頼で
バハムートの討伐を目的としたものだった
「一応聞くが
本当に戦うのか?」
「もちろんだ
私達、夫婦2人で戦って敗けた事がない
どんな相手でも倒してきた
今回はお前だバハムート!」
アリアがバハムートにそう言うと
「でも、バハムートは
話が出来そうだけどな」
ガルーがそう言うが
「何言っているんだ!?
倒さなかったら1000人も人が喰われるんだぞ?」
(またその話か...
別に喰わんがなぁ
俺が死ねばいいのか?
まあよくわからんな
コイツらはなかなか強そうだ
殺されるのなら願ったりだ)
「そうだな俺は生きている限り
人間を喰らい続けるだろうな」
バハムートは一芝居、打つ事にし
アリアとガルーと戦い
それなりの強さをしていた2人に
バハムートは少し楽しくなってきたのだったが
そんな時間が続くのをガバ帝国が許さず
「バハムート!
その2人と1000人の奴隷を生贄にする!
だから暴れるのをやめてくれ!」
その提案をした時にアリア達の動きが止まった
バハムートはその隙だらけの2人を
丸呑みした2人が何故動かなくなったのか
バハムートはガバ帝国の方を見ると
小さなメソポリアの少年が縛られ
刃を向けられていた
(もしやあの2人の子供か?
ここは2人を飲み込んで亜空間で封印したように
誘いに乗っておくべきか?
しかしあの2人より
あの子供...潜在能力がありそうだ
あの子供に殺してもらうとするか)
「我が名は龍神バハムート
ガバ帝国と言ったか?ここに我の根城を構える
嫌とは言わせん、そしてその子供を寄越せ」
ギデンがバハムートの所に運ばれた
ガバ帝国の連中は自国へと戻っていき
「よくも父さんと母さんを!」
(まぁ、そうなるか)
「そんなに悔しいか小僧
なら今回は見逃してやる
強くなったら相手をしてやる」
バハムートはギデンの復讐心を煽りながら
その場にいた1000人の奴隷を呑み込み
ギデンの縄をブレスで焼き
その場から飛び去った
その場に残ったのは幼いギデンだけ
それからギデンは50年周期で
バハムートに挑み続けた
しかし今に至るまで敗戦が続いていた
(あの時の魔力もそろそろ尽きるか
亜空間の封印を維持する為に
魔力は節約してきたが
本当にそろそろギデンには
俺を殺してもらわなければ困るな)
バハムートが上空を飛んでいた時
そんな事を考えていた
(にしても4000と2人を匿う亜空間の維持は辛い
闇の巫女の魔力を奪って維持するしか方法がない
闇の巫女には悪いがそうするしかないな)
この400年誰1人として
殺していないバハムートだった
自身を殺してもらえば亜空間の封印も解けて
全て解決するだろう
その為にギデンにはもっと
強くなって貰う必要があった
「ん?」
大きな魔力を感じ取ったノワが
急速に近付くその魔力の方へと向かった
ノワが迷いの森に着くと
バハムートと鉢合わせた
「お前が闇の巫女だな?
かなりの潜在能力を秘めているな
だが今のお前では吸い尽くしてしまうな」
バハムートがため息を吐くと
「そう言うな、バハムート
これでも我々を今の時代に召喚出来る
唯一の存在だ」
召喚魔法を使ったわけではないのに
人化の術を使ったベヒーモスが現れて
ノワが困惑する
「牛さん!?しかも喋ってる!?」
そこにフェニックス、ヨルムンガンド
フェンリルと4体出てきた
皆、人化の術を使って人に姿を変え
「そうですよ我々が集まるのも数百年ぶり」
フェニックスがそう言うと
バハムートは確かになと苦笑を返して
「確かにお前が我々より
上位の存在になったのは認めるが」
「我々と同じ召喚獣という事は変わりない」
ヨルムンガンドとフェンリルも会話に参加し
「でも、どうする?
この娘は自分の力に
気付いてもいない
そんな状態で我と契約は出来んだろう」
「「「「なら、我々の魔力を使えばいい」」」」
4体が同時に話し
ノワは何が何だかわからなくなったが
バハムートはそんな4体を見て
「そんなにこの娘に尽くす理由はなんだ?
我々の契約者を介さない魔力は
人間の生命力そのものだ
それが尽きれば我々は消滅する
それを忘れたわけではないだろう?」
バハムートを魔力で包むには
4体の魔力を全部使う必要があった
それを聞いたノワが
「それはダメだよ!」
フェニックスがノワの頭を撫で
「貴女はそれをされるだけの価値がある
バハムートが貴女の力となれば
光の勇者とも並んで戦えるだろう」
でも!とノワの言葉を遮るように
「我々はそれでいいと思っただけだった
お前が付けたあだ名は滑稽だったがな」
ベヒーモスの話に
「確かに」
ヨルムンガンドは頷く
「最後にちゃんと召喚獣として呼んでくれ」
フェンリルがノワの涙を拭く
「わかった
ベヒーモス
フェニックス
ヨルムンガンド
フェンリル」
「「「「我ら貴女といつまでも共に」」」」
4体は魔力の粒となってノワの身体に入っていく
「ありがとう、みんな」
4体の魔力を受け取りノワはバハムートに向き直る
「本当に逝ってしまうとはな」
バハムートはどこか悲しそうな表情だった
ノワの魔力がバハムートを包む
「龍神バハムート!
私と契約して力になって!」
(ギデンの復讐心を煽り殺してもらう
そんな可能性を今、超えて
全てを背負う覚悟が試される
...と言ったところか)
「いいだろう
龍神バハムート、主の力となろう」
契約が成立し
バハムートは今まで勝手に消費していた
亜空間の封印の魔力を完全に支配出来ていた
「ほぅ...ここまでの魔力量になるとは
流石、闇の巫女と言ったところか
早速だが主よ、付いてきて貰えるか?」
うん、とノワは頷きバハムートの背中へ乗り
ブレイク達の所へ向かった
ブレイク達が野営の準備をし始めた頃
ギデンはスゥといつものように
訓練に励んでいた
「ボスはやっぱり強い!
スゥもすぐ追いつく!」
あぁ、そうだなとギデンはスゥの成長を
楽しみにしていた、そこへ
バサッ!バサッ!
と羽ばたく音と共に大きな魔力が近付く
「まさか!?」
ギデンがバハムートが来る事を察知し
ブレイク達に告げる
「ヤツが戻ってきた!
全員散り散りに逃げろ!今度は殺されるぞ!」
そんな緊張状態が周りに伝染していき
皆逃げる用意をしていたが
「おーい!
みんなー!大丈夫だよー!」
ノワの声にブレイク達は拍子抜けし
ブレイク達の所にノワとバハムートが降りてきた
そしてバハムートが一言目に発したのは
「ギデン、すまなかった」
謝罪だった
「何を今更言っている!
お前は俺の親を
これまでの数々の人を殺してきた!」
バハムートは口を大きく開け
封印魔法を解除した
一斉に人々が出てくる
「ここは?」
「俺は...死んだんじゃ?」
「私...生きてる!」
と4000と2人がその場に現れた
「なっ!?」
ギデンがバハムートを見る
「今まで人々を封印魔法で隠してきた
お前に殺されれば封印も解けて
メソポリアの誇りも取り戻せると
考えていたんだがそうもいかなくなった
闇の巫女ノワと契約が出来てしまった」
すると...
「ギデンか?」
ギデンの後ろに2人の影が迫る
アリアとガルーだった
「でっかくなったなぁ」
「母さん、父さん...」
2人は大きくなった我が子を抱き寄せ
家族の再会を喜んだ
「ギデン
改めて、すまなかった
許してもらう気はないが
お前に殺されるわけにもいかなくなった」
ギデンは今までの事を考え直し
バハムートに言葉を返す
「俺はお前が許せん
だがそれも筋違いだった
これまでの事がチャラになるわけではないが
これからを見て前に進む事にする」
それでいい、とバハムートが頷き
和解という形でこの因縁は収束していった
「こうなるとはな...」
邪神は事態の全貌を観察しながら呟いた
邪神の考えではバハムートと
ブレイクを戦わせる事でどちらかに
甚大な被害を出そうと考えていたが
まさかバハムートがノワの召喚獣になるとは
思いもよらない出来事だった
「まぁ、まだ策はある」
邪神はニヤリと笑った
「じゃあ私は先に帰るね
何の説明もなく出てきちゃったから
それにブレイクの要件も
ヴィクトリアさんに伝えてくる」
と、ノワがバハムートに乗り
ヴィクトリア邸へと向かった
ブレイク1人で4000人あまりをまとめるのは
難しい事でヴィクトリアを頼った
「一旦、ルア王国のヴィクトリア公爵に
連絡をとるという事はわかったが
私達は過去の人間だ
今に生きていけるのだろうか?
しかも4000人の奴隷だろう?」
アリアとガルーが他の奴隷達をまとめ
その場に待機させていた
「母さんならどうにかしてくれると思います
奴隷かどうかは僕には関係ないです
今を生きるのは簡単な事じゃないですけど
でもやっぱり生きるしかないんだと思います」
ブレイクの言葉に意義を唱える者はいなかった
「それにバハムートのおかげか
それともバハムートのせいなのか
奴隷紋も無くなってるから
もう奴隷じゃないです」
ブレイクの言葉の意味としては
バハムートへの生贄の為に
奴隷紋は消してからバハムートの前に
元奴隷達は放り出され
それを誰1人逃さずバハムートは
呑み込んだ事を物語っている
バハムートの封印魔法は
本来のバハムートの魔力で
召喚士が魔力で包めていたなら
また違った未来もあり得ただろう
「御主人様
この人数の食事をまずは用意しないと
ヴィクトリアが来る前に皆、動けなくなるわ」
そうか、とブレイクは4000人に向けて
狩りが出来る者は居るか聞き
200名ほど狩りが出来る人物が集まった
「僕達も補助はしますが
各々で獲物を獲れるなら獲って来てください」
予備の弓や水魔法で作り時間魔法で固めた
弓矢や短剣を貸して獲物を探しに行く事になった
「坊やメイベルかアークを
残した方がいいわ
ヴィクトリア達が来たら混乱するから」
カルラの言葉にどっちを残すか
迷うブレイクだったが
「私が残る、母上が来たら
状況説明すればいいんだよね?」
メイベルがグレンと残り後は
食料を探しに狩りへと出かけた
「主よ
私が居なくなったガバ帝国は
私の根城に財宝があると踏んで
進軍してきて光の勇者達と
鉢合わせる可能性があるぞ」
それもあるがバハムートの根城の近くには
鉱山など素材の宝庫になっており
ガバ帝国はバハムートのせいで手を出せずにいた
が、今回の一件が知れ渡ればあっという間に
部隊を編成して進軍してくるだろう
「えぇ!?バハムート...どうしよう」
「急いでヴィクトリア公爵に話をして
戻れば間に合うかもしれん」
じゃあ急がなきゃ!とノワの指示で
バハムートの飛行速度は加速していった




