第13話
無かった事にするとスイレンが考え
手を前に翳し黒炎をパッと消し去ってしまった
「は!?」
グレンが驚くのも無理はない
これは以前ブレイクがユージーンにやった
“魔法に干渉する魔法”を使ったからだ
炎魔法は時間魔法に干渉されると
燃え尽きるのが当然の事で
それを見たグレンが
「マジか...やべぇな」
最大火力を防がれたどころか
無かった事にされたグレンは
自身とスイレンの実力の差を明確に感じる事になり
そんなグレンにスイレンは
「アンタ黒炎だったかしら
アレ人に使わない様にしなさい死人がでるわよ
でも御主人様は凄いわね
こんなの一回やるだけでかなり消耗するわよ」
と、視線をブレイクに移すと
ブレイクはそうかなぁ、と照れていた
自身より強いスイレンを
グレンは目標にすると密かに決めた
そして近くにある木々が
黒炎の影響を受けて燃えており
スイレンとブレイクが消火活動を始め
グレンは申し訳なさそうにしていた
そんな時にバタバタと風呂上がりで
髪も乾いてないメイベル達が走ってきて
「「「どうなった!?」」」
結果はスイレンの圧勝だった事を
メイベル達に説明して
「そっかグレンの放つ魔力が思ったより大きくて
それがパッと消えたからどうしたのかと思って」
メイベルは契約した事で魔力の
感知能力も上がっており
勝負の結果が気になった様だった
消火活動も落ち着いたところで
メイド達が朝食の準備が出来たと来たので
皆で朝食を摂り
その後冒険者ギルドに向かった
朝から仕事に追われていた
ギルドマスターのベルズが
ヴィクトリアに呼び出され
仕方なく仕事を切り上げ執務室から
受付に降りてきた
「昨日に引き続き今日はどうした?」
スゥとメイベルに試験を受けさせたいと
ベルズにヴィクトリアが説明し
今回は普通のやつかとベルズは一安心した
「えっと、まず午前中に座学
モンスターや冒険に役立つ知識を叩き込む
昼食を食べたのち午後から実戦だ
俺と1対1で戦ってもらう」
スゥとメイベル、そこにブレイクが混ざるが
「ボウズ...お前は必要ないだろ?」
とベルズが言うが
ブレイクは知識はないから座学は参加したいとの事
1人増えるくらいまあいいかと
ベルズは参加を許可した
座学用の部屋にブレイク達は通され
「席に着けー!
まずは冒険者について教えるぞ
冒険者はどこの国にも
創設国であるルア王国にも属さない
それはなぜか、冒険者とは
どこまでも自由であるからだ
その分、責任もある
例えばだが
依頼失敗には罰則がある
そうならない様にランク制度を設けている
自分に合った依頼を受ける事が基本だな
依頼をこなしていけば指名依頼も来る
受けるかどうかは本人次第だがな
と、ここまででわからない事はあるか?」
なるほど、とブレイクが頷いていて
スゥはよくわかっていないのか瞬きが多く
メイベルは質問があるのか手を挙げ
ベルズが質問を聞く
「あの...ランクはどうやって上げるんですか?」
ベルズが言うには基本は依頼を受けていけば
Dランクまでは上がるがそれより上を目指すなら
昇級試験を受ける他ない
とベルズが答える
ヴィクトリアやブレイクがした試験は
その過程を吹っ飛ばし無茶な試練を組んで
本来であれば合格不可能の代物だが
おかしいのは2人とも合格しているという事
「スゥも主と同じが良かったなぁ〜」
「無茶言うな、あぁそれとな
冒険者のランクだがGランクが1番下で
基本Aランクが1番上なんだが
稀にAランクを超える実力がある奴がいる
そういう奴は特別枠のSランクに上がる
Sランクは正真正銘の化け物達だ
まぁ俺も元Sランク冒険者なんだがな」
それを聞かされたメイベルが萎縮し始め
ブレイクは自分は結構な過程を飛ばして
Bランクになったんだなぁと考えていた
ベルズはメイベルの側に居るグレンを見て
「おいおい、また精霊か?
最近は皆、契約してるのが当たり前なのか?」
あはは、とブレイクが苦笑いを返すが
ベルズはブレイクにメイベルそしてスゥを見て
困惑と共に期待をしていた
その後も座学は続き
最後にテストを受ける事に
「今までの話を聞いていれば
答えられる問題しか出してねぇから
...てかボウズはやる必要ないだろ?」
やりたいのでやります!と
ブレイクは参加すると言い
3人ともテスト用紙を貰い
20分程で書き終わりベルズが回収する
「結果は午後の実戦前に発表するから
一旦、昼休憩だ!」
講義室から出てきた3人に
ヴィクトリアがやっとか終わったか!と
3人を連れてレストランに入る
「いっぱい食べろ!
この後はきっと体力を使う
...でも食べ過ぎたらお腹痛くなるか?
まあ、考えて食べろ!」
メイベルは胃が受け付けないのかスープを頼み
対照的にスゥは肉やパンなどガッツリ食べていた
食事を終え、ギルドに戻る
修練場に集められたメイベル達
「引き続き俺が試験を執り行う
先程のテストの結果だが
全員合格だ
ブレイクは満点
メイベルは1つミスだな
スゥは半分点を取れている
スゥはギリギリだったな」
テストで半分以上点を取らないと
実戦試験には参加出来ない為
本当にギリギリだった
え〜、とスゥはもっと点を取れていると
思っていたのかブータレていた
メイベルは1つのミスを気にして悔しがって
ブレイクはやった!と喜んでいた
「この後は俺と1対1だな
まずスゥ!お前からだ」
わかった!と返事をしてスゥはベルズに対峙した
スゥには今朝の事が経験となり
しっかりと準備をしてきていた
ヴィクトリアが審判となり
「背中が地面に着くか
行動不能又は気絶など続行不能を
決着とする!では、始め!」
ベルズに対峙し
まずは背後に回れる様に
砂埃をおこし視界を悪くする
スゥの位置をベルズは把握出来ていない
だが足音を消せていないスゥにベルズは
狙いは背後に回る事だと理解して
わざと背中を許し隙を与えた
スゥはベルズの誘いだとは気付かず
そのまま突進していくと
そこにあるはずの背中がない!
ヒョイと首根っこを掴まれ
スゥは地面に叩きつけられるが
前回と違うところがあるとすれば
それはスゥは地面に叩きつけられる前に
身体を捻りうつ伏せに着地した事
スゥはポケットから瓶を取り出して
ベルズに投げた!
ベルズはそれを拳で破壊して
瓶が割れて中身が飛び出した
中身はメイベル特製の火薬で
煙幕の代わりになる代物だった
「煙たい...目に染みるな」
視界が奪われたベルズにスゥは
腕を取り肩に足を絡めて身体を捻る
そしてベルズの巨体はバランスを崩して
ベルズの背中が地面に着く
「勝者!スゥ!」
ここでヴィクトリアが決着の合図を送り
スゥの試験は終了した
「スゥ!勝った!」
スゥはブレイクの元まで走ってきて
褒めて!褒めて!と頭を差し出す
「凄かったねスゥ!
最後のアレは僕の真似?」
と頭を撫でながらブレイクがスゥに聞く
うん!主の技を真似した!と
褒められたのを喜んでいた
ベルズが起き上がり頭を掻きながら
「スゲェな、メソポリアの血なのか
スゥ自体が凄いのかわからねぇけど
それでも十分な実力だった
...でも背中を許した事、気付いたか?」
それに対してスゥは
そうなのか!?と少し忖度はあったものの
スゥの戦闘能力には光るものがあった
それを見逃さない為にベルズは
今回わざと背中を許して実力を測ったのだ
そんなスゥの姿をメイベルは
少し羨ましそうに見ていた
「よし!次はお前だ!メイベル!」
ベルズの声にビクッとしていたメイベルだったが
ヴィクトリアが側に来て
緊張しているメイベルに
「大丈夫だ!
今朝の“アレ”をベルズにも喰らわせてやれ!」
母ヴィクトリアの激励で緊張も解け
焦りや不安は自信に変わっていった
「精霊も居るから少し本気でいくぞ」
先程と違いベルズは真剣な顔になり
グレンも最初から飛ばす気でいた
ヴィクトリアが再度審判を務め
「先程とルールは同じだ
背中を地面につける又は戦闘不能等
それにて決着とする
それでは、始め!」
開始の合図と共にメイベルとグレンは
「「精霊融合!!!」」
なんだよ、いきなりかとベルズが内心焦っていた
今回の精霊融合は今朝より上手くいっており
今朝は籠手、肘までの精霊融合だったが
今回は肩まで精霊融合出来ていた
ベルズの経験上、未完成の精霊融合をした
メイベルに勝てるかは生死を問わなければ
勝てるがそれでは意味がない
ベルズは普段使わない魔力を解放して
身体強化でメイベルの目の前まで距離を詰め
土魔法で覆った拳で腹部に一撃を入れた
そのまま壁まで吹き飛ばされ
砂埃が舞う、これは戦闘不能か?と思われたが
「負けるな!メイベル!」
スゥがメイベルに叫ぶ
その声は確かに届いている
火柱が上がりそこからメイベルが現れる
「ケホケホ...速い
速さでは勝てないでも魔力なら」
メイベルは左右を炎で覆い尽くし
直線上に対峙する様にした
ベルズも次の一撃で決める気なのか
魔力を右拳に集中させる
(お嬢!勝負は一瞬だ!
勝機はある!本気でいくぜ!)
メイベルもベルズ同様
右拳に魔力を集中させ精霊融合の強化を図る
ベルズの一撃がほんの少し先に放たれるが
それに合わせてメイベルも一撃を放つ
決着までは一瞬だった
修練場に残ったのは魔力切れで
精霊融合を強制解除されたメイベルが
膝を着き今にも倒れてしまいそうだったが
ベルズの姿が無い
メイベルの目にはハッキリ映っていた
壁にめり込むベルズの姿が
「勝者!メイベル!」
やった...とメイベルは意識を失った
次にメイベルが意識を取り戻した時には
医務室の天井を見ていた
「...ここは?」
側にはヴィクトリアとブレイクにスゥがいて
メイベルが起きたのに気付くとヴィクトリアが
「よくやった」
と頭を撫でて
ブレイクとスゥは大丈夫?と心配していた
それにメイベルは大丈夫と返す
ガラガラ!
そこにベルズが入ってきた
「お!起きたか!
流石、舞姫の娘だな
右拳が逝っちまったぜ
仕事が休めて助かるけどな」
え!?すみません!とメイベルがベルズに謝るが
いいんだ、いいんだ!と
実際、激務だったから休息が取れていいとの事
試験の結果を言いにきたベルズ
「試験の結果だが
スゥはFランクで合格!
そしてメイベルは
Eランクで合格だ!
新人にしては快挙だぞ!」
「えぇ!?
スゥ頑張ったのにメイベルに負けたぁ!」
納得いかないスゥを横目にメイベルは
(やった!Eランクからだ!)
「スゥはもう少し経験が欲しいな
メイベル単体ならFでも良かったんだが
精霊がいるのと精霊融合?だったか?
アレが出来るから底上げってところだな」
「オイラのおかげか!」
そっか、とメイベルは納得した様で
ブレイクは僕もそうなんだろうか?と聞くが
「いやボウズは違う
ボウズの場合“アレ”を
大精霊の援護なしで合格してっからな
でもギルマスの権限的にBランクが限界なんだ」
確かにブレイクの試験の時は
スイレンは参加していなかった
「じゃあ御主人様はもっとランクが上でも
良かったって事ね」
スイレンの指摘に
そうだな、とベルズが気まずそうに答える
「また試験を受ければすぐにでも
ランクは上がるが、舞姫...説明してやれ」
わかった、とヴィクトリアが話し始める
「ランクが上がれば上がるほど
指名依頼だらけになってしまう
午前の座学でベルズから聞いたと思うが
冒険者は自由なのが本来の姿だ
指名依頼で冒険者活動が窮屈になる
そんなの面白くないだろう」
Aランクからは指名依頼が異様に増えるという
それが嫌なヴィクトリアは
自由がきくBランクに留まっていた
「Aランクからは依頼内容の難易度も
報酬も格段に跳ね上がる
その分、失敗は許されない
だから俺の権限で与えられるのがBランクまで
と言うわけだが納得してもらえたか?」
ベルズが不服そうなスイレンに説明し
そう、とスイレンも渋々了承した
メイベルとスゥの試験も終わり
スゥはすぐにでも依頼を受けたい様子だった
仕方なくヴィクトリアが初心者講座を請け負って
一同は薬草採取の依頼を受け
迷いの森に向かった
日暮ということもあり早めに行って
早めに帰って来ようと考えたメイベルにスゥが
「モンスター出ないかなぁ」
とスゥの身体能力等を考えると
討伐依頼の方が合っていたが
コレも経験だとヴィクトリアが依頼を受けさせ
スゥは退屈そうに薬草を採取していた
モンスターが出ないのもブレイクが先導している為
索敵魔法でモンスターの位置がわかり
避けて道を通ってきたからで
その事を知らないスゥは
それを知らされたスゥは、なんだそれ!?
と、驚愕と共にまたつまらなそうな顔をし
そんなスゥの機嫌をとりながらギルドに戻る
ギルドで依頼達成と初心者講座の完了を報告をし
ヴィクトリア達は家路に着く
翌朝ヴィクトリアがブレイクを起こしに来た
ブレイクは寝ぼけていたが
ヴィクトリアの慌て様に目を覚まし
「どうしたんですか?」
ヴィクトリアが慌ててブレイクに
「急いでパーティを作った方がいい!
今日...いや今行こう!息子は特に!
他のパーティにスカウトされる可能性が高い!
そうだな...メイベルとスゥをメンバーにして
パーティを作りにいくぞ!」
なぜか焦っているヴィクトリアが
ブレイクとメイベルにスゥを抱えて
パジャマのまま急いでギルドに向かった
パジャマのまま来たことに
受付がザワザワし始め
ベルズが対応することに
「なんだなんだ3日連続だぞ?
今度はなんだ!?しかもパジャマのままか?
一旦、着替えてこい」
急いでギルドを出てヴィクトリア邸に戻り
着替えを済ませてヴィクトリアが3人を抱え
走ってギルドに到着する
「はぁ...はぁ...ベルズ
まずは...ブレイク達のパーティ申請だ
このままじゃ他にスカウトされてしまう」
「ん?あぁ、スカウトされるだろうよ
別に良いんじゃねぇか?」
「良くない!他のパーティにスカウトされたら
家に居なくなってしまうだろう!」
パーティが大きければ共同の家を買うことが多く
それでブレイク達が帰ってこないのではないかと
そんな不安を抱えるヴィクトリアだった
「だったらよぉ
銀翼で囲っちまった方が良くないか?」
ヴィクトリアもそれは考えたが
「銀翼は普段活動してないパーティだ
これから冒険する息子達に
パーティを作ってもらった方がいい!」
と呼吸を忘れ息切れを起こしながら
ヴィクトリアがベルズに
パーティ申請の手続きをするよう言った




