第11話
「そうか...やはり足らんか」
ヴィクトリアは予想してたのか
実際問題、孤児院に子供が増えていて
資金が足りない状況だった
「それでもやっぱり公爵様のお陰で
やりくりできていますから」
その言葉を聞いてヴィクトリアが
「子供も増えたから資金も増やすのは
当然の事だ実際の数を見ないとなんとも言えんが
次から更に増やすから少し辛抱してくれ」
ありがとうございます!とシスターメリアは
ヴィクトリアにお辞儀した後
ブレイクの存在に気付く
「...この子は?」
ヴィクトリアが説明する
「あぁ、紹介が遅れたな
この子は息子私の子で
メイベルの弟だ」
こんにちは、とブレイクが挨拶すると
シスターメリアがコレットが言っていた
男の子がこの子だという事に気付き
「貴方がブレイク君ねコレットから聞いてるわ」
シスターメリアが子供達と会わせたいと
ブレイクの手を引き中に入り
中庭で遊ぶ子供達の所へ連れて行く
ヴィクトリアとメイベルはお茶菓子を貰いながら
ブレイクの方を見ていると
背後から声をかけられた
「なんだヴィクトリア来てたんだ
メイベルも元気?」
コレットがシスターの格好をして現れ
ヴィクトリア達と話をしていた
子供達がコレットに気がつくと
「コレット姉ちゃん!」
と、子供達がコレットの周りに集まる
孤児院の子供達はコレットにべったりだった
それを見たブレイクが
(コレットさんが言ってた弟達って
孤児院の子供達の事だったのか)
そんな事を考えているブレイクは
ふと子供達とは離れた位置にいる
木陰の側に立つ少女に目がいく
褐色の肌に赤い髪が目立つショートヘアーの女の子
誰とも話さず1人孤立している彼女が
ブレイクは気になった
「コレットさん、あの子は?」
ブレイクの指差す方をコレットが視線をやる
「最近入ってきた子ね
戦闘民族メソポリアの生き残りで
名前は確か...スゥって言ったかな」
戦闘民族メソポリアとは
片腕で獅子を殺し
踵落としで龍の鱗を粉砕する
体術に優れた一族で
一部では蛮族呼ばわりされる
人口は少なくその代わり寿命が長い
そんなメソポリアの少女に
ブレイクが話しかける
「こんにち、僕はブレイク」
「スゥはスゥ
なんで話かけてきた?
お前はスゥより強いのか?」
どうだろう?とブレイクの返事に
スゥはいきなり蹴りをかます
だがそれを水の鎧が阻み
スゥは空中に吹き飛ばされ
孤児院の中庭の壁に張り付く
「なんだお前、変
蹴ったのになんでスゥが吹き飛ぶ?」
ブレイクの水の鎧は下に流れている為
スゥが吹き飛ぶのはおかしいのだが
今回の水の鎧は時間魔法との複合魔法で
物理干渉を受けつかない簡易版の精霊融合で
ブレイクに攻撃は通らない
続け様、同じ場所に
スゥが蹴りを喰らわすが全て弾かれる
しかし水の鎧が蹴りを受けた場所が薄くなり
そのに向かってスゥは蹴り続けた
「そこだ!」
水の鎧の極薄い所に狙いを定め
ブレイクに勢いをつけ蹴りを喰らわす
そして蹴りを喰らいブレイクは吹き飛ぶ
それを見たヴィクトリアが
「息子!」
と駆け寄ろうとしたがコレットに止められた
メソポリアの最上位の挨拶に決闘があり
ブレイクはその相手に相応しいと思われたのだと
決闘である以上、他からの加勢や救助は
火に油を注ぐ事になる
「そうよ、邪魔は悪いわよ
...御主人様に」
と、スイレンがヴィクトリア達に言った
スゥの一撃を受けて吹き飛んだブレイクだったが
特に傷を負う事はなかった
何故ならワザと水の鎧が薄くなるように
調整していたからだった
ブレイクがスイレンの方を見て
(やっぱりあの子強いね)
(そうね、メソポリアって言う
戦闘民族だったかしら体術による
物理攻撃が基本みたいね
魔法で手数を増やしたら
対処出来ないんじゃないかしら
でも、それじゃあその娘は
納得しないんじゃないかしら)
うーん、そっかぁとブレイクが頭を悩ませていると
確実に仕留めたと思っていた
スゥがブレイクに気付く
「なっ...なんで!?
さっきは確実に入れた!」
スゥが地団駄を踏みながら納得出来ないでいると
「さっきの水の鎧の中に
空気の鎧を魔法で作ったんだ
スゥの蹴りはそれに当たって
僕が吹き飛んだんだね」
そ...そんなぁとスゥが悔しがる
「でも!まだ負けてない!」
ブレイクは攻撃をしたくないのか
どうしたものかと考え
スゥに提案を持ちかける
「じゃあ、スゥ
今から1から10をどっちが
速く言えるか勝負しよう
3秒経ったらもう
僕は数え始めるから
スゥに有利だよ」
わかった!とスゥは大きく息を吸い込み
一気に言って仕舞おうとした所で
ブレイクが水魔法を使い
スゥの顔面を水の球で覆ってしまった
「...!!」
と、水の中では声を出せない
スゥは水を避けようと動き回るが
この水魔法は時間魔法との複合した特別性で
頭に固定されスゥの頭から離れない
「1..2..3...」
「!?」
バン!バン!と水を叩くが無意味だった
順調にブレイクが数え続けて
「8...9...10!」
と、ブレイクが数え終わった時に
ブレイクは魔法を解いた
水が顔から外れたスゥは
「ぷはぁ!...ずるいぞ!
なんでスゥと戦わない!?」
スイレンも不思議に思っていたのか
ブレイクにその理由を聞く
するとブレイクは
「僕はスゥと友達になりたいんだよ
友達に攻撃はできないよ」
と、笑って答えた
「やっぱり変!
スゥは友達にならない!」
えぇ!?とブレイクが残念そうにするが
スゥは話を続ける
「スゥは友達にはならない!
主の方が強いから従者になる!
よろしくな!主!」
えぇ!!と今度は驚いているブレイクと
従者になったスゥの所に
コレットが近付き
「戦闘民族メソポリアが従者にねぇ
凄い事になったわね、ブレイク」
と、2人の頭を撫でる
メソポリアの古い慣わしとして
主と認めた人に一生を捧げる
「契約するぞ!主!」
「えぇ!?するものなの?」
うん!とスゥは頭を縦に振る
そうなのかとブレイクがスゥに
真似するよう言い契約を始めた
「「今ここに魂の契約を!
切っても切れぬ繋がりを!
“どちらかの命尽きるまでまで!”」」
その言葉に皆がギョッとした
特にスイレンはというと
(何してんのよ!御主人様!!!)
(えぇ!?だってコレしか契約やった事ないし)
と、ブレイクがどんどんスイレンに詰められ
ヴィクトリアは、またかぁと呆れ
メイベルは何が何だかとあたふたし
そんな中コレットが場を納め
「契約しちゃったものは仕方がないから
ブレイクあんたスゥの事
しっかり面倒みるのよ?
重ねがけまでしちゃったんだから」
そういえばスゥは魔力が無いが
どうしたんだろう?とブレイクがスゥに聞くと
「ん?魔力が無いから
生命力を使ったに決まってるだろ?」
メソポリアの寿命は長い
それを半分使って契約をしたらしいが
そこにブレイクの時の魔力が注がれ
生命力が本来の5倍以上になり
寿命は本来1000年だが
それの半分を使ったと言う事は
500年の寿命という事になり
500年の寿命が5倍だから
2500年は生きれる計算になる
そして本来使えない魔法
珍しい時間魔法が使えるようになった
そしてブレイクはスゥを自身の従者にし
家に連れ帰る事になった
「ありがとうございました」
とシスターメリアにお礼をし
コレット達が見送ってくれて
ブレイク達はヴィクトリア邸に向かって歩き出す
(スイレン良い加減、機嫌なおしてよぉ)
フン!とそっぽを向いてスイレンは怒っていた
しかしスイレンの反応は
精霊からすれば当然の事で
スイレンが認めた契約なら問題なかった
しかしブレイクにはそんな事はわからないし
既に契約済みなので解除も出来ない
スイレンはスゥを邪険にするつもりはないが
ブレイクに対してどう接して良いのか
わからない様子だった
そんな中ヴィクトリアが
「スゥはブレイクの従者になると言っていたが
具体的にどうするつもりなんだ?」
ヴィクトリアがメイドになるのか護衛になるのか
どうするのだろうという疑問をスゥに聞いてみた
「スゥは護衛になる!
主は強いが人間だ!必ず危なくなる時がくる!
そんな時に助けられるようにスゥは強くなる!」
と、スゥは魔力が増えた事で
本来のメソポリアより伸び代があった
「まぁ、これからよろしくね!スゥ!」
うん!とスゥがブレイクに笑顔を返す
すると話に入りたいメイベルが
「そういえばスゥって年はいくつなの?」
6!とメイベルは自身に妹が出来た!と喜んだ
「妹違う!主の従者!」
まあまあ、いいじゃないとメイベルに抱きつかれ
スゥも満更でも無い様子でいた
ヴィクトリアがスゥに
「スゥはブレイクのことが好きなのか?」
あぁ!好きだぞ!と即答のスゥの事を気に入り
3人まとめて抱き抱え
ヴィクトリア邸に向かって走り出した
屋敷に到着するとヴィクトリアが
メイドや執事達に出迎えられ
「ただいま!」
「おかえりなさませ、奥様」
そしてブレイクの隣にいるスゥに視線が集まる
「彼女はブレイクの従者になったスゥ
まぁ、娘みたいなものだ
メイベルも弟と妹が出来たと喜んでいるから
特に意見は受け付けん!」
かしこまりました、とメイド長と執事長が
ヴィクトリアに返事をし
屋敷にあるメイベルの部屋の隣にブレイクの部屋
その更に隣の部屋がスゥの部屋になった
夕飯に皆が席に着くとヴィクトリアが話し始める
「明日はスゥの冒険者登録に行かないとか?
スゥが合格したらすぐパーティを組んだ方が良い
スゥとブレイクのパーティだったら
どんな依頼でも大丈夫だろうからな
メイベルはどうする?」
「私は...遠慮しておきます」
何故か断るメイベルにブレイクが
どうしたのか聞くと
冒険者と騎士は余程の事がない限りは
両立が出来ない事を教えてもらい
メイベルは近衛騎士になりたいが為
冒険者を諦めていた
騎士になれるのも成人した後の15歳以降
5年は時間はあるがメイベルは冒険者になるか
騎士になるかで悩んでいた
それを聞いたブレイクがメイベルに
「じゃあ15歳になるまでの期間限定で
やればいいんじゃないですか?」
と、話を投げかけた
それを聞いたヴィクトリアが話に食いつき
「そうだな!それがいい!
あと5年もあるんだ15になった時に
騎士になるか冒険者になるか決めればいい!」
「え?...でも」
とメイベルは自信がないのか
挙動不審になっていると
「大丈夫ですよ姉さん
スゥも受けるし僕もいるんで」
ブレイクの試験は参考にならないが
それでもブレイクの心配する気持ちに
メイベルは答えたいと思った
スゥと一緒に試験を受ける決意を固め
メイベルはその夜、準備を始めた
日課のランニングもいつもより走り
素振りや筋トレの回数も増えた
武器の手入れもいつもより念入りにし
それを見ていたスゥが
「なぁ、メイベル
スゥはなんの準備をすればいい?」
と、メイベルに装備や戦術など
冒険者に必要なものを色々教わっていた
スゥの身体能力を考えると
動きずらい鉄製の鎧より
伸縮性のある革製の防具の方が良いだろうと
メイベルのお下がりをスゥは貰ったが
「コレ、どう着るんだ?」
装備の付け方がわからないスゥは
メイベルの助けを借り
革製の上着に短パンと腕当て
膝当てと靴にグローブを装着した
頭以外、全て覆われた装備だった
肌感も良くて身体にも馴染む
スゥは身体を動かしたくてウズウズしていた
「メイベル!戦おう!」
ちょっと、待ってとメイベルも
自身の装備を装着して模擬戦の準備を始めた
「スゥ、武器は何を使うの?」
武器庫にスゥを連れて行き
武器を選ばせスゥは短剣を2本選び
コレ!たメイベルに見せ
メイベルはロングソードとバックラーを手に取り
他にも色々準備をしていた
「まだぁ?」
急かすスゥにメイベルは
「ちょっと待って色々準備が
必要なんだよ冒険者には」
そうしてスゥとメイベルは裏庭に向かった
ブレイクと不機嫌なスイレンが付いていき
「じゃあ僕が審判をしますね
じゃあ模擬戦を始めます
先に背中が地面についた方の負け
危なくなったら僕が止めます
それでは!始め!」
開始の合図と同時に
スゥが時間魔法を使い加速し
メイベルに突っ込み短剣を投げる
メイベルはそれをバックラーで短剣を弾き
スゥは弾かれた短剣を空中で掴み
上から短剣を振り下ろす
2つの短剣はまるで牙のように
バックラーを貫通した
メイベルは腰巾着から小瓶をスゥに投げる
スゥはそれを短剣で受けて中身が飛び出す
スゥはその中身を勢いよく吸い込んでしまい
「クシュン!なんだ!?コレ!?」
中身はコショウの粉末で
目にも入ったのか涙も止まらず
スゥの視界は最悪だった
その隙を逃さずメイベルはスゥを背負い投げし
スゥの背中が地面について決着となった
ブレイクが水魔法でスゥの顔を洗わせ
コショウがとれるまで何回もスゥは顔を洗う
そして洗い終わるとメイベルを指差し
「ずるい!スゥは負けてない!」
スゥは全然納得していない様子で
メイベルに近付き駄々を捏ねる
ずるいと言ってもメイベルは事前に
準備が必要だとスゥに説明していた
準備が必要なら警戒もするのが冒険者だと
メイベルはコショウ以外にも唐辛子の粉末や
刺激物の粉末は幾つも用意していたし
なんなら火薬や煙幕の類いも用意していた
「奇襲や揺動にも使えるし
料理にも使えるから大体の冒険者は
持っているものよ今回はスゥの準備不足が
勝敗を分けたわね」
スイレンがスゥの準備不足を指摘していると
ブレイクが機嫌なおったかな?と
スイレンに近付くと頭を叩かれ
これからは勝手に契約しない事を
約束させられた




