7.先々の不安よりも、アルデンテについて考えよう
ディナーのおすすめメニューはオムライスだけではなく、ナポリタンなどのパスタにも重きを置いている。ランチと違って仕事終わりにご飯を食べる人に需要があるため腹持ちが良いメニューも入れているのだ。
「ナポリタン1、ミートソース1はいりまーす!」
かなえちゃんのオーダーが厨房にしっかりと伝わり西郷が麺を茹で始める。
パスタを放射線状に広げて茹でるのは、パスタ同士のくっつくのを防ぎ均一に火を通すため、という理由があるが、本当はかっこよさ特化の入れ方であると考えている。
塩とオリーブオイルの入ったお湯に入ったパスタは心なしかお湯の中ではしゃいでいるように感じる。
坂森がパスタのセットドリンクを用意している際にとある疑問を問いかけた。
「アルデンテってさ、元は人命?それとも道具とかの名前がつけられてるの?」
西郷は無視してパスタをゆがいていく。
「確かに、アルデンテってどっちの名前にもありそうですよねー…」
かなえちゃんも共有して疑問が深まっていく。
「そーそー、アルデンテって、なんかアニメの技名とかにも出てきそうなんだよねー…
こう、腕を伸ばして、アルデンテ!ってな感じで火が出たりとか」
「めっちゃかっこいいですね!
でも私、アルデンテの名前であれば味方のバフ的な
魔法の類だと思うんですよねー…」
「あー、それもあるな…
攻撃力アップな感じもする」
確かに確かにー!!、とはしゃぐかなえちゃんの横から西郷が口を出す。
「アルデンテって、イタリア語が日本で訛った言葉で、意味的には歯のように、て意味合いだった気がする」
「知ってんならスッと言えや」
むっとしながら坂森が言い返してから彼らの小学生レベルの喧嘩にゴングが鳴る。
「ここの前にもイタリアン経験してんだろーが。
なんでそんなことも知らねえんだよ」
「知らないことを知ったかしてんのが1番の罪だぜ。
そしてその罪の上が知ってるのに教えてくれなかっ
たお前の行動だよ」
「ええ!?ゴブリンが人の言葉を喋ってる!?
こりゃあ見せ物小屋に売り払わなきゃなあ!!」
「西郷隆盛ならもうお亡くなりだぜ?
お前も早く成仏しろや」
ひとしきりのラリーが終わったところでかなえちゃんが西郷に
「西郷さんさすがですね!やはりそういう知識も知ってるとは恐れ入ります」
西郷の気持ちがかなり高揚したところでこの喧嘩は終戦していく。
と同時にパスタも茹で上がり、2つのパスタを仕上げていく。
「はーい、パスタ二つお待たせー」
かなえちゃんとホールで接客していた森さんが一つずつご主人様へとサーブしていく。
「お待たせいたしましたー!♡
お先に、メイドの魂を込めた情熱ナポリタンと、
ご主人様とメイド、2人っきりの無人島を想像した
ミートソースでーす!」
お分かりだと思うが、この名前をつけたのはふわふわメニューの名前を考えた人物とは違う。
つまり西郷である。
「パスタが伸びる前に美味しくなる呪文をかけますねー!♡
…ボラーレ•ヴィーア(飛んでいけ)」
イタリアのギャングの呪文を唱えたことで、このパスタは完成した。




