4.メイドオムライスはメイドが愛、夢、希望を込めて作る、メイドの必殺技である
前日の飲み会の二日酔いが残った状態でランチタイムが始まった。二日酔いはもう、インフルと同等に休まなければならないと政府は定めるべきである。確実に風邪より軽い訳がない。飲み会の前に回復瓶は飲んだが、それでも27の体には3軒というハシゴ酒はなかなか厳しいものだ。
そんな弱音をひとしきり吐いたが、ご主人様のオーダーは止まらない。ふわふわメロンソーダ、ふわふわパンケーキ、ふわふわオムライス、ふわふわ…
どんだけふわふわ料理を出しているんだ?ふわふわ=かわいいじゃねえからな。次々とくるオーダーにイライラする西郷を横目に遠藤くんはマニュアル通り、またスピーディーに業務をこなしていく。
「はい!ふわふわメロンソーダにふわふわパンケーキ。ふわふわオムライスはあと5分、ふわふわふわふわはあと10分ほどで出ます!!」
ガチ即戦力やないかいと驚く西郷。それを完璧にサーブするみーちゃん。ふわふわパンケーキが自身に備え付けた爆弾と共にポヨンポヨンパンケーキとなる森さん。それぞれに目が釘付けである。
「ご主人様のために、私がハートと猫ちゃんをお描きしますね♡
カキカキカキカキ…ハァイ、デーキマシタァ!♡
それではご主人様にもーっとおいしくなってもらうために魔法を込めていきます☆
ご主人様もご一緒にぃぃぃ…!
ハァイ!美味しくなあれ!萌え萌えキューーーン!♡」
西郷が描いたハートと猫ちゃんはまさに芸術級の出来栄えであった。メイドはホールに2から3人のため、厨房の人がこのようにご主人様にご奉仕するのは珍しくない。
厨房に戻ると目を丸くした遠藤くんが口を開いた。
「田中さん、流石です…!あんな芸術的なケチャップ捌き、ホテルでも見たことがありません…。
…やはりここに来れて良かった。」
「おいおい、ここはただのメイド喫茶だぜ?」
「そんなことありません!僕はあなたの技術を学びたくてここに入社してきたんです!お客様に完璧にサーブする姿、オムライスのあの感動的な形…私にはまだこんなサービスはできません…とても悔しいです…」
「…昔の俺も君みたいに憧れた人がいたんだ。全くできなく、悔しかったものさ…。
でもな、そんな熱意をずっと持って料理をしていけば君は俺を超えられるさ。絶対にね。
だから、焦らなくていい、自分のペースでやっていくんだ。わからないことは絶対教えてやるから、自分のものにしていけ。」
「西…田中さん…、…はい!」
西郷と発言しそうになったことはさておき、熱意がある新人が入りやがって…。自分の若き頃を思い出し、いつのまにか二日酔いは冷め、2人は料理に熱中していく。
その日のSNSは
「西郷隆盛がメイドオムライス作ってるの草すぎるwww」
「西郷隆盛なんだから猫じゃなくて犬描けよ」
とのコメントで少々荒れた。




