↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無敵陰陽士Dタイザン  作者: 岸辺 嗣雄@IKフィルコム
PR
42/43

第21話 逆襲のハロウィン!? 幽霊を驚かせ!①

 街行く少年少女たちの仮装姿を見て季節柄を感じる今日この頃。その愛くるしい姿が心をほっこりさせる一方、やはり今年も場所によっては大人が《《大人げなく》》乱痴気騒ぎを起こしているようだ。


「いい大人が、全く恥ずかしくはないのかしらね〜」


 テレビを観ながらぼやく母親を尻目に、晴明はソファにねっころびながらスマホで動画を流し観ていた。

 ハロウィン特集で、キワドイ格好をした美女たちが流れてくるのをただひたすら静かに眺めることが、彼のもっぱらの趣味だ。

 素敵な光景に鼻の下を伸ばしつつ心のエネルギーを回復していると、玄関のチャイムが鳴る。


「晴明、アンタ出て」

「……はいはい。よっと」


 母の命令に素直に従わなければあとで嫌味を何百倍にも返されてくるので、仕方なく上体を起こして玄関に向かう。

 つっかけを履いて、ガラガラと引き戸を開けると、


「「「|トリック・オア・トリート《お菓子をくれなきゃ、イタズラするぞ》!!」」」


 ちびっ子仮装軍団が数人、晴明の前に|ジャック・オ・ランタン《かぼちゃ提灯》型のバスケットを突き出す。その可愛らしくほほえましい姿に先ほどまで見ていた動画とのギャップに晴明は、ほっこりと後ろめたいという二律背反の気持ちに襲われる。


「てか、カケル。ハロウィンってオバケの仮装するんだろ? なーんで退治する側のDタイザンの仮装なんかしてんだよ」

「細かい事はいーのいーの! で、にーちゃんお菓子はあるの? 無かったらイタズラだよ。Dタイザンがみんなからキラキラのシールでデコられちゃうよ?」


 ボール紙で作ったDタイザンに身を包むカケルがお菓子をねだってくる。世にも恐ろしい脅しとともに。


「また地味な嫌がらせを思いつくな、お前ら……。ちょっと待ってろ」


 そう言うと一度奥へ引っ込み、キッチンの戸棚を漁る。奥の方に見覚えのないちょっとお高めのクッキーの入った缶を見つけたので取り出す。缶を裏返して確認すると賞味期限もギリギリなので、食べずに取っておくのは勿体無い。子供たちの手……いや、胃袋で供養してもらおうと考える。

 再び玄関へ向かい、楽しそうにキャッキャとおしゃべりするオバケたちに「じゃーん」と、缶を見せつける。


「ほらよ」

「えー! いいの!? すごい高そうだけど……」

「どんなに高くても食わなきゃコイツも浮かばれないからな。持ってけ泥棒!」

「「「ワーイ」」」


 子供たちはおよそオバケとは思えない生き生きとした目で喜ぶ。

 晴明は腕組みをしながら、いい事をしたとウンウン頷く。


「じゃあね〜、にーちゃん! お菓子ありがとー!!」

「「ありがとうございましたー!!」」

「おう、ガッポガッポ稼いでこいよ〜。気をつけてなー」


 テケテケ走り去っていく子供たちを見送って、晴明は再びリビングに戻る。


「誰だった?」

「あぁ、近所の小学生軍団。カケルが男女数人連れてお菓子ハンターやってた」


 母の問いかけに晴明は答えながらソファに寝転ぶ。


「あら、ウチに配れるようなお菓子なんてあったっけ?」

「戸棚の奥のクッキー缶あったろ? あれあげといた」

「なにぃ!?」


 テレビしか注視していなかった母がバッと、勢いよく起き上がり、晴明の方をものすごい形相で睨む。

 その代わり身に晴明は驚いて顔面にスマホを落とす。


「アンタ、あれあげたの!?」

「いてて……、えっ!? やったらまずかったか……? 賞味期限は大丈夫そうだったけど……」


「ちがう!」と、叫ぶ母。


「あれは私が大事に大事に楽しみにとっておいた物なのよ……。それをアンタ……、ううっ」


 ヨヨヨ……、と出てもない涙を演技臭く袖で拭き取る。


「いや、もうかなり賞味期限切れそうだったから……。どうせ食べんだろうと思って」

「お黙りっ! しばらくおやつ抜き……はアンタには効かないだろうから、おかずの量を減らすわッ!」

「そんなっ! 横暴な! あそこまで置いてたら忘れて捨ててたろ!?」


 母は急にスン……と、能面のような表情になり晴明の方へ向き直し、静かに語る。


「晴明さん……。親不孝発言一回ごとに刑期が一日延びます」

「……謹んで謝罪申し上げますお母様。食べ盛りな愚息にどうか寛大なご処置を……」

「ふむ……、ではここに今日のお夕飯の買い物リストがあります。行ってくれますね?」

「よろこんで!」

「スーパーの近くに最近出来た洋菓子屋さんもあります。こちらで何かケーキを買って来てください、あなたのお小遣いで」

「うっ、ぐっ……、よろこんで……」


 ていよくおつかいを任された晴明は、釈然としないものの自由と平和、そして今日のおかずのためダッシュでスーパーへ向かった。



 ☆☆☆☆☆



 仮装する少年少女たちを横目に榎戸が町中を歩いていると、その様子を不思議そうに水晶の中から観察するジャシーンが訊ねる。


『水鏡よ、今日はやたら奇天烈な格好をした子供を見かけるが、奴らはなぜヘルガイストのような姿に扮している?』

「……あぁ、あれは今日がハロウィンだからだよ」

『はろうぃん……? それはいったい……』

「西洋のお祭り、日本でいうところのお盆みたいなものさ。十月末に死者が帰ってくる際、彼らにとりつく悪霊から身を守るためにああやってお化けの仮装をするんだ。それで子供たちは各家庭を回って『ご馳走かイタズラか』と、迫りお菓子をたかる。今の日本じゃただのコスプレ大会だけどね……」

『ほう……、悪霊から身を守るとな……。おもしろい』


 ニヤリと目元を歪ませながら笑うジャシーンに榎戸は声を張り上げる。


「面白いもんか! 僕だって子供のころ仮装をしてお菓子をもらいに回ろうとしたが誰も相手になんかしてくれなかったんだ……! 連中のあの時の顔、今でも覚えて――いや、いい。この話はよそう……」

『貴公の過去も気になるところではあるが……、この祭り大いに利用できそうだ』

「ハロウィンを利用?」

『これだけ町に幽霊があふれかえっているのだ。ヘルガイストを紛れ込ませるには都合が良かろう?』

「……なるほど。楽しそうにしているガキどもが気に入らないと思っていたところだったんだ。この機に乗じて混乱を招こうってことか」


 一転榎戸はジャシーンの提案に乗っかり、ヘルガイストを生成する。白い布切れを纏《まと》った子供サイズのヘルガイストは彼の命令通りに駆け出し、近くを通た子供たちの集団……カケルら一団の中にスッと混ざり込む。



 ☆☆☆☆☆



「いやぁ、大漁大漁!」


 ヘルガイストが紛れ込んでいるとは夢にも思わないカケルたちは、公園のテーブルの上に戦利品であるお菓子を並べる。その壮観さと言ったら夢のようだ。

 中でもひときわ輝いて見えるのは晴明からもらった高級クッキー缶。普段駄菓子で満足している彼らにとってそれは一流の宝石にも負けずとも劣らないゴージャスな逸品だ。


「さてと……、みんなで分けますか。今日いるのはええと、いーち、にぃ……」


 カケルは人数ごとに均等に分けようとその場にいる友人たちを数えだす。


「ろーく、なーな……。あれ? 一人多いなぁ……」

「ほんとだ、今日六人で集まるって話だったよな」

「ハロウィンだもん。……こん中にホンモノのユーレーが混じってたりして〜」

「ちょっと男子! 怖いこと言うのやめてよー!」


 ドラキュラに扮した少年が、魔女っ子少女の後ろを指差しておどけるように言う。


「あ〜ッ! お前の後ろにオバケがぁ〜!!」

「きゃーっ!」

「アハハハ!」


 魔女っ子が意地悪してくるドラキュラをポカポカと叩くと言うシュールな光景の隣でDタイザン(カケル)があごを撫でる。


(さては本当にヘルガイストの仕業《しわざ》だったりして……?)


 カケルはその瞬間、不敵な笑顔を浮かべてとある企みを思いつく。


(……そうだ! ハロウィンなんだから逆に脅かしちゃえ、ニヒヒ……)

「実は俺さ。本当にDタイザンのワザ、出せるんだぜ」


 あまりにも突拍子もないことを言い出すカケルにその場にいたほぼ全員が彼に「ハァ?」と、小馬鹿にしたような顔を向ける。だがカケルは意に介さず、ポケットから手書きの自作お札を取り出して「むにゃむにゃむにゃ……」と何かを唱えるフリをする。

 カッと目を見開いたかと思うと、


「どーまんせーまん! この世の恨みをなんたらかんたら! 必殺、エクスペル・バーン!!」


 と叫んで、お札を天高くかざす。

 辺りはシーン……と静まり返り、無論何も起こらない。

 女子たちが「なにそれ」とクスクス笑うが、それに対してもカケルはあくまでもしてやったりの表情を向ける。


「ふふふ……、みんながその反応になるのは分かっていたよ。でも一人だけ、いたんだよね。大げさに反応したのが!」

『……っ!?』


 カケルの視線の先にいる一人を全員が一斉に見る。

 白い布を被ったオバケはさも自分ではないとでも言いたげに必死に首(?)を左右にぶんぶんと振って否定する。だがそれが逆効果になったようで、カケルたち小学生軍団の目の色が変わる。獲物を狙い定める眼差しに怯えて、オバケはその場から逃げ出す。


「あっ! 逃げた!」

「やっぱりあいつが七人目、ヘルガイスト(ユーレー)だ! みんな追いかけるぞ!」

「「オーッ!」」


 カケルの号令とともに一心不乱に逃亡するオバケとの追いかけっこが始まる。



 ☆☆☆☆☆



 スーパーでの買い物を終えた晴明が両脇に買い物袋を抱えながら歩いていると、先ほど家に来た小さな仮装集団の百鬼夜行を見かける。

 複数人で嫌がる一人を追い回している姿ははたからみるとイジメのようなので、慌てて晴明が止めに入る。


「おいっ! お前ら何やってんだ」

「あっ、にーちゃん! 何ってヘルガイストを追い詰めたんだよ!」


 晴明の呼びかけに気が付いたカケルはブレーキをかけて止まり、逃げるオバケを指さして答える。理解に苦しむ晴明は「ヘルガイストぉ? 何言ってんだ?」と、聞き返すとカケルは身振り手振りと使って精一杯に説明する。


「集まった人数から急に一人増えてたんだ! これはヘルガイストに違いないって思って、逆に驚かせようって!」


 そんな訴えに晴明は逃げていたオバケを含めじろりと小学生たちを見回し問いかける。


「一人増えたって……お前ら最初何人いたんだ?」

「六人だよ!」

「……じゃ、改めて数えてみな」

「にーちゃん何を言って……」

「いーから、いーから」


 晴明に促されたカケルは、再び自分もひっくるめて人数を数えだす。


「えーと……。いーち、にぃ……、あれ?」


 やっと違和感に気づいたのか、晴明が答え合わせをするように言う。


「お前ら六人しかいねぇじゃねえか」

「そ、そんなはずは……!」


 その瞬間、「ぷはッ!」と言いながらドラキュラに扮した男の子が白い布を脱ぎ取りながらプンプンと怒る。


「カケル! 俺じゃないって何度も言ってるのに何で追いかけて来るんだよ! この布もいつも間にかかぶせられたし……!」

「……えっ? でも」


 状況が呑み込めず狼狽するカケルに晴明は告げる。


「そもそもヘルガイストの気配すら無いぞ」

「でもカケルくんの言う通り、さっきは確かに七人いたんです!」


 それに対して女の子がオロオロとしながらかばう。

 晴明はそれに関しては承知しているようで大きく頷く。


「いや、もちろんお前らの言うことを疑ってるワケじゃねぇよ。ただ、この場にはいないってだけだ。ヘルガイストは危険を察知して逃げたんだよ」

「「「逃げた?」」」


 子供たちは一様に小首をかしげて声をそろえる。


「そうだ。お前らは奴を驚かせようとしたんだろうが、奴は気が付いたんだろうな。それでとっさにコイツを身代わりにして……、布っきれをかぶせて逃亡したんだ。結果、逆にお前らの方がハメられたってワケだ」

「そ、そんなぁ……。それじゃああいつはどこに……?」

「分からん。もしかしたら今頃、他のグループに紛れ込んでいるかも知れん。面倒が起こる前に探してとっ捕まえるぞ!」



 ☆☆☆☆☆



 晴明の予想通り、ヘルガイストは様々な場所で子供たちに紛れてはあまつさえお菓子を横取りするなどと言うイタズラを繰り返していた。

 せっかく手に入れたお菓子を奪われた子供らは深く悲しみ、その悲しみを糧にヘルガイストは徐々に力を蓄え成長し続けていった。

 食い荒らしては別のグループを狙ってついて行くため、晴明たちが現場に着いた時にはもう既にヘルガイストの姿はない。


「遅かった……、もう被害が広がってたか」

「お、俺たちもあんな風にお菓子を取られてたんだ…」

「危うくな」


 カケルは両手のひらで自身のほっぺたを押さえながら「ヒィィ……」と声を漏らす。

「だが……」と晴明は少し思考を巡らせてから続ける。


「……まだ奴をおびき出すチャンスは大いにある」

「チャンスって?」


 カケルの問いに晴明は子供たちが手に持つバスケットから個包装されたキャンディーを取り上げてかざす。


「――コイツ(お菓子)を使うのさ」


 晴明はキャンディーの包装を破りそれを口に運ぶと、胸ポケットにしまってあった形代《かたしろ》を数枚パッと投げ広げる。

 宙に舞った紙はボワンと煙を上げてハロウィン衣装に身を包む子供に変身する。彼らは晴明の指示を受け、ホンモノの子供たちからお菓子の入ったバスケットを拝借すると仮装行列を作り、町へと繰り出す。


「にーちゃん、なにするつもりなの?」

「カケル。お前の立てた作戦使わせてもらうんだ。今度こそ奴を脅かしてやろうぜ」

引き続き第 話後半もお楽しみに!!


感想、レビュー、ブクマ、評価、是非お待ちしております!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。