第19話 にせDタイザンにご用心!②
バオォォォォンーッ!
ジャシーンの生み出したオートバイ型のヘルガイストが夕柳町中を暴走していた。その両側には鎌状の刃物を張り出させ、建物や塀、道路などをスピードに乗せて切り刻んでいく。視界からフッと消えたかと思うと、次の瞬間――、目の前の建物は真っ二つに裂ける。
何もかもをいとも簡単にスパスパと細断していくヘルガイストに町の人々も恐れおののき、物陰に隠れて様子をうかがうしかなかった。
その時――、
「まてぇッ!」
晴明を乗せたDタイザンがヘルガイストの前に立ち塞がる。
依然として速度を緩めないヘルガイストを受け止めようと、両腕両脚を大の字に広げて構える。だが、ギラリと鈍く光る切先を見て、晴明は咄嗟の判断でジャンプして避ける。
「来たな、Dタイザン。やれ! ヘルガイスト!!」
榎戸の声に応えて、ヘルガイストはその場で急停車して引き返してくる。
着地の隙を狙われ、背後から猛スピードで突進攻撃をモロに受ける。さしものDタイザンでもその重みに耐えかねてバランスを崩し、仰向けに倒れた。晴明も呼吸のタイミングをズラされ、思い切りむせる。一瞬Dタイザンに流し込む霊力に淀みを生じさせてしまうほど軽やかかつ重みのある一撃だった。
速攻攻撃に効果があると榎戸は狂喜した。
「ぐぁっ!」
倒れたDタイザンを踏みつけるヘルガイストが二本の鎌をシャリシャリ……、と品定めでもするように擦り合わせる。狙いをつけて背中の装甲に向けて勢いよく振り下ろそうとした時、別方向からひゅるるるる〜と、何かが頼りなく飛んできた。それはヘルガイストに直撃するとポンッと破裂し煙を上げる。
不意打ちに驚いたヘルガイストは、狙いが外れて地面に鎌が突き刺さる。
獲物を逃した怒りが如実に現れた悪霊は攻撃してきた相手の方に向き、キッと睨みつける。
その目線の先には晴明に追いついたにせDタイザンがガニ股姿で立っていた。
「ふ、お手製のランバス・ミサイルっスよ!」
「チェッ! 助けられちまったな!」
言葉の割に晴明は嬉しそうに口角を上げる。
機体を起こして、身動きの取れないヘルガイストに向かって蹴り技をくらわす。
「でぃ、Dタイザンが二機いるだと!? げ、幻術か!?」
榎戸は目を疑った。
ジャシーンはため息混じりに答えようとする。
『水鏡……。あやつは……』
だが言葉を飲み込み、彼に指示する。
『……いや、水鏡。当初の作戦どおりヘルガイストを縦横無尽に走らせ、奴らの体力を奪うように仕向けるのだ』
「……くっ、了解だ。ヘルガイスト、目眩しをしつつ奴らから離れる! 貴様のスピードでぶっちぎってやるんだ!」
榎戸の命令どおり、ヘルガイストはマフラーから黒煙を吹かせて、瞬く間に辺りを何も見えない暗闇へと変えてしまう。煙幕を張り終わると、Dタイザンたちに背を向け、再び邪魔な建物をかまいたちの如く切り裂きながら、その場に音だけを残し走り去っていった。
「煙幕かっ! 小癪な……。おいミツル追いかけるぞ!」
「了解っス! ……ありゃ? ありゃりゃりゃ?」
晴明の掛け声に応えて、足を一歩踏み出した瞬間、ぷすんぷすんと音をたてて膝をつくにせDタイザン。
四つん這いになった情けないその姿に晴明が声を荒げる。
「何遊んでんだお前! 見失うぞ」
「申し訳ないっス! む、無念のガス欠っス〜!」
ミツルが泣きそうな声で謝る。
にせDタイザンは燃料切れを起こし、うんともすんともいわなくなってしまった。
「お、お前な〜……」
晴明は、
『これじゃ、手を貸しに来たのか足引っ張りに来たのかわかんねぇだろ……』
と文句の一つもつけたかったが、先ほどピンチを助けられた手前強くは言えない。
煙が晴れたときにはすでにヘルガイストの姿はなかった。
仕方なく動かなくなったガラクタ同然のにせDタイザンを担ぎ上げた晴明は彼の祖父、晴臣へ連絡を入れる。
☆☆☆☆☆
「こいつか〜、世間を騒がせとる怪しげなDタイザンちゅうのは」
康作の祖父、邦作はにせDタイザンを見上げながら感心するように顎をさすっていた。
晴明は晴臣に指定されたまま古めかしい倉庫に足を運んでいた。
以前邦作から聞かされていたDタイザンを作り上げた場所である。
晴明たちのほかにすでに数人、若い衆も駆けつけていた。ヘルガイストと戦うにあたり稼働時間の短いにせDタイザンを突貫で改造しようというのである。
「見てくれはどうかと思うが、設計思想は悪くないのぉ」
「昔、おもちゃ会社が作って持ってきたダイカスト玩具のDタイザンみてぇだ」
晴臣の言葉に邦作は子供のような笑顔で口元を緩ませる。
二人は当時を懐かしむように語らい出す。
「あったな! 胸のところに『D-TAIZAN』って書かれたやつじゃろ? 変形は再現されとったが、ホンモノには少し見劣りする出来じゃったなぁ〜。ボタン押すとパンチが飛ぶやつ謎の仕様もあったのう」
「あれでお前、ホンモノにもロケットパンチつけようとしてたもんな。全力で止めたけど」
「そんな呑気に話している場合じゃないっス!」
「コイツの言うとおりだ。ヘルガイストを早く追わなきゃどこで暴れるか分かったもんじゃねぇ」
昔話に花を咲かそうとする老人たちに両手をじたばたとさせながら怒るミツル。晴明も水を差す。
「おう、すまんかったな……、芦屋さんだっけか。……しかしこのにせDタイザンだが、『ノーマルエンジン』だけでこれだけ派手に動かしてりゃすぐにガス欠にならぁな」
「そうじゃなぁ、逆に言えば『燃焼型霊力エンジン』がないのによくここまで戦ってこれたってもんよ」
「のーまる……? れーりょく……? 何の話っスか?」
二人の会話の内容に対して頭上に大量のクエスチョンマークを浮かべるミツルに、晴明が説明してやる。
「ノーマルエンジンってのは、簡単に言えば通常の自動車や飛行機が積んでるような燃料をもとにしたものだ。それに対して燃焼型霊力エンジンってのは、俺たち陰陽師が持つ力をエネルギーに変換させてDタイザンを動かす動力のことだ」
「はぇ~、そんなもので動かしてたんスねぇ……」
「そう、一般人は扱えん特殊な燃料ってとこだな。要するにこれからやる改造ってのは嬢ちゃんのにせDタイザンにそれを積もうって魂胆よ」
「そ、それってそんなにすぐできるものなんスか?」
こわごわと訊ねるミツルに白く輝く歯を見せつけながら邦作は答える。
「変形機構がオミットされておるから、Dタイザンよりよっぽど楽じゃて。さしずめ廉価版Dタイザンってとこじゃな! ガッハッハッ!」
「それ、ミツルもおんなじこと言ってやがったぞ……。……っと、こうしちゃいられねぇ! 俺は先に出撃してヘルガイストを追ってくる!」
急ぎ支度をしようとする晴明を邦作が止める。
「待て、晴明くん。相手は超高速で逃げ回り寄るんじゃろう? いくらDタイザンとはいえ今のままじゃ取り逃すかもしれん」
「じゃあどうするってんですか?」
「本物のDタイザンにもちょいと改造を加える。緊急加速装置、名付けて『ニトロブースター』を載せるんじゃ。康作! 準備はできとるな?」
「じいちゃん! 今持ってきたところじゃ~」
大扉の向こうから康作が何やら物々しい機械を積んだ荷車を引いてやってくる。小型のジェットエンジンのようなそれは以前から邦作が開発していたDタイザンのパワーアップメカだった。
「あれが、ニトロブースター?」
「そうじゃ、しかし点火して少しの間しか燃料はもたん。じゃから『ここぞ!』という時まで使っちゃならんぞ。まぁお前さんなら大丈夫じゃろ」
「……分かった。ありがとうございます!」
邦作は満足そうに親指を突き出す。晴臣は晴明の尻を叩いて、せかす。
「ほら、ぐずぐずするなよ。ヘルガイストが暴れてる今、一刻の猶予を争う。さっさとアレをドッキングさせて戦ってこい」
「了解!」
全員それぞれの配置について一斉に作業に取り掛かる。
その間もヘルガイストが町中をめちゃめちゃにしているかもしれない。焦りはありつつも、晴明は真剣にブースターをDタイザンに接続させる作業に集中した。
☆☆☆☆☆
榎戸はかつてない愉悦感に浸り、勝利を確信していた。
Dタイザンが二機現れた時はさすがに焦ったが、そのどちらもこのヘルガイストに追いつくことはできず、その上一機は明らかに調子が悪そうに思えたからであった。
自身の作戦がこうも上手く事を運ぶとは思えなかった彼自身の心境は計り知れないだろう。
一方のジャシーンは心中穏やかではなかった。
⦅あの引き際……⦆
いつもならばDタイザンが食らいついてきそうな場面であったにもかかわらず、早々に撤退したこと。またポンコツそうなにせもののDタイザンがまだ何か隠し持っていそうなこと。
ただしっぽを撒いて逃げたとは思えないその不穏さが彼の胸騒ぎを止められないでいた。
その予感は早くも的中することとなる。
「このまま町中を斬って斬って斬りまくり、やがては何もないまっ平らな大地に変えてやる。……こんな無価値な町なんて、思い出も何もかもを踏み消してやるんだ……」
榎戸が卑屈に笑うその時、アスファルトが砕かれる音が耳を打つ。
彼らの前に再びDタイザンが姿を現したのだ。
しかも背中に何やら見知らぬ大きな背負いものをして。
「見つけたァ! もうさっきみてぇには逃しゃしねえぞ! 町中を破壊し、人々の生活を脅かすヘルガイストめ、このDタイザンが胸の五芒星に代わって成仏させてくれる!」
⦅ムゥ、まずいな……。今の増長している水鏡ではDタイザンに対し真っ向勝負を挑みかねん……。に、加えてあの兵装……。やはり早くも手を打ってきたか。一体奴はアレで何をしようというのだ⦆
ジャシーンが榎戸をちらりと見るが、彼は全くDタイザンの武装に気にかけていない様子だった。自信の表れか、はたまた慢心の極みか……。
背負いものをじっと観察すると、巨大な箱状の機器から配管が伸び、その先端にはラッパのように広がる噴射口を有している。
⦅あの形状。なるほど、加速装置……⦆
ピンと来たジャシーンはかくはずもない汗をぬぐうようにして決断を下す。
⦅……奴め、動きの速いヘルガイストに対して瞬間的な速度で決着をつけようという魂胆か。わが理想実現のためには、さすがにここで《《いとも簡単にやられたのでは意味がない》》。我が助言をしておくか⦆
『水鏡、貴公まさかあのヘルガイストで真正面から攻撃しようというのではあるまいな?』
ジャシーンの質問に見せかけた糾問に、榎戸はビクッと肩を震わせる。
「だ、ダメだろうか……?」
水晶の中のジャシーンは『ハァ……』とため息をついて諭すように話す。
『……貴公、よもや最初に打ち立てた作戦を忘れたわけではあるまいな』
「……こ、攻撃をかわし、奴を翻弄。霊力も体力も消耗しきった時にとどめを刺す」
『で、あったな。しかし現状はどうであろうか。あのDタイザンが一度退き、なのに性懲りもなく戻ってきたのだぞ』
「普通に考えれば作戦を立ててきたか……」
『それにあのにせもののDタイザン。奴がいまだに姿を現さないのも引っかかる……』
「にせもの!? どちらかが!?」
榎戸はいまだ片方がにせものだということに気づいていないようだったが、ジャシーンはあえてそれに突っ込まなかった。
『……まあ、よい。にせものの方はただ引っ込んだだけとは思えん。対策を打っていると考えるべきか。兎角今すぐにでも元の計画を実行すべきだ。ねらい目はそこしかない』
「けどッ……!」
榎戸は『チャンスじゃないか!』と、のどまで出かかったが、ジャシーンの眼をみて、制止する。
「りょ、了解だ! ヘルガイスト、地の果てまで逃げ続けてDタイザンを消耗しきれ!」
ヘルガイストはまた黒煙を吐き出して、Dタイザンを文字通り煙に巻こうとする。
しかし二度も同じ手は食うものか、とDタイザンはチェーン・シャクジョウを取り出し、全身を使って大きく円を描くように振り回す。
煙幕が意味をなさないと悟ったのかヘルガイストは反転し、車輪を回転させて全力で逃げおおせようとする。晴明も負けじと、機体をDフライヤーに変形させて追いかける。
さすがにスピードを誇るヘルガイストの速度にDフライヤーは追いつけない。だが、追い込むことだけはできた。
建物や塀が何にも意味をなさない今、仕掛けてあったもう一つの壁がヘルガイストの前に立ち塞がる。
「任せたぞ、ミツルッ!」
「よし来た! お任せあれっス!!」
ヘルガイストの鎌攻撃を受けない為、低い姿勢で繰り出されるにせDタイザンのスライディング。見事敵のどてっぱらに突き刺さり、バランスを崩して横転する。
「よくやった! ショルダ・ブラスター!!」
Dフライヤーのキャノンから放たれた砲弾がヘルガイストを狙う。しかしヘルガイストに直撃させることはかなわなかった。着弾寸前に鎌を備えた両腕を駆使し、地面を蹴って大きく飛躍。そのまま体勢を立て直して、再び滑るように走る。
「逃がすかッ!」
晴明が咆哮しながらボタンを押す。背中のニトロブースターのタンクから燃料が霧のように吐き出され、空気とともに圧縮される。刹那、内部で生じた爆発が燃料に点火し、配管を伝って噴射口から勢いよく放出される。
ボフゥゥゥゥッ!
急加速によるGが、晴明の内臓までもを押し出そうといわんばかりの重みで押し寄せる。だが、これ以上の好機はまたとない。Dタイザンにあっという間に変形し、ヘルガイストのボディを掴もうとする。ミツルもにせDタイザンを起こしながら見つめる。
だが、
――パシッ!
ほんの少し。
あとわずかばかり――、あと数ミリ届かない。だが、そのわずかな差は決定的に大きなものだった。
おまけに一瞬噴かしただけのはずなのにブースターの燃料は半分までに減っていた。
「……くっ! 使えてあと一回か……ッ!! ミツル」
「はいっス!」
「奇襲は失敗した。だがもう一度だ! もう一度だけアイツの動きを止めろ!」
次の失敗が町全体の、いやひいては世界中の壊滅につながるかもしれない。
晴明の言葉に、ミツルは先ほど倉庫で晴臣から聞かされていたことを思い出していた。
『この霊力エンジンにはマシンの稼働時間の延長だけではない、君自身の能力を引き上げるという性質がある。つまり乗り手のポテンシャルにも左右されるというワケだ。今回は訓練もないぶっつけ本番だが、晴明のエクスペル・バーン同様、君の技もにせDタイザンを通して大きく増幅されるはずだ』
ミツルは呼吸を整える。そのわずかな間にもヘルガイストは遠くへ逃げていた。
だが、研ぎ澄まされた彼女の集中力によって、まるで目の前に敵がいるかの如くハッキリと見えていた。
その集中力が頂点に達したとき、にせDタイザンの手元には眩く光る短剣が姿を現す。ミツルは吸い込んだ息を大きく吐き出すように声を張り上げる。
「真・雷鳥電影波!」
全ての力を注ぎこんだ光の短剣から放たれるエネルギー波はヘルガイストを捉えた。だが、ダメージは与えられていない。その場にとどめておくのが精いっぱいだった。
「師匠! 止めたっスよ!」
「ありがとよ!」
(これで外しちまえば、一貫の終わりってとこだな)
晴明は自信を鼓舞するように脳内で舌打ちする。そしてボタンに指をあてがい、強く押し込む。
「ニトロブースター点火ッ!」
背中のマシンが火を噴き、晴明の視界は真っ白にぼやける。一瞬音を失うほどの超加速が機体をがくがくと揺らす。あとはデッドウェイトとなるため緊急パージし、身軽になった機体はヘルガイストにさらなる猛スピードで突っ込んでいく。
ミツルの体力消耗に伴い徐々に弱まっていくエネルギー波がブチッ……、ブチッ……と音を立てて千切れかけていく。
にせDタイザンの指のブリキの装甲もミシミシと音を立て、配線をむき出しにしながらもがれていく。
(だ、ダメっスか……)
ギリギリの状態にめまいが起きる。だが、離すわけにはいかなかった。この一度きりにすべてを掛ける必要があった
バチイィンッ!
完全に術を破り切ったヘルガイストは再び車輪の回転数を上げて全速力で逃走を図る。
「――今度は、ちいと遅かったようだな……」
横に並んだDタイザンが睨みを利かすようにカメラアイを光らせる。僅かな時間、世界が止まったように思えた。
「斬りたがりの末路にゃ真っ二つがお似合いだ!」
Dタイザンが取り出したる鎌の武器をヒュウッと風切りながら横一文字に振りかざし、ヘルガイストを上下に裂く。
自身に何が起こったのか分からないヘルガイストは離れていく地面を目にして絶叫する。
『ギェェェェェッ!』
「あばよ!」
ザザザと、地面を削りながら停止する。Dタイザンはアミュレットを取り出し高らかに掲げる。
「ドーマンセーマン、現世の恨みごとヘルガイストを燃やし尽くしてしまえ! 必殺、エクスペル・バーン!」
ヘルガイストの悲鳴は爆焔にかき消され、燃え尽きたその身はチラチラと灰のように舞う。
水晶を通して結末を見ていた榎戸は「やはりあの時叩いていれば……。何が足りないッ」と、ぶつぶつと文句を並べたてる。
しかしジャシーンは口には出さぬが、二機のDタイザンが現れた時点で結果は同じだろうと考えていた。
散り行く灰を水晶へと受け、それを自らに吸収させながら……。
☆☆☆☆☆
「いやぁ、感動っス! まさか、自分のDタイザンであんな大技が放てるなんて!」
「調子に乗るなよ、あくまでもお前のは《《にせ》》Dタイザンだからな?」
感動に打ち震えるミツルに晴明は苦言を呈する。だが、それも聞こえていないようで彼女はその場で小躍りしていた。
「ったく……。今日の出来栄えで満足せずにきちんと鍛錬を積んで、今度こそちゃんと相手にダメージを与えられるようにするんだぞ!」
「なんだかんだ言ってアドバイスをだすあたり、アンタもそうとう乗り気ね。お・し・しょ・う」
めぐるのからかうような言い草に晴明は怒りをあらわにするが、嬉しそうにするミツルに目をやり、フッと破顔する。
そんな中康作が、
「そういえば、晴明。お前がDタイザンに乗ったばかりの頃って――」
と言いかけたところ、ミツルの身体がぴくりと痙攣した。
「……えっ? ――いだっ! いだだだだっ!」
急に悶え始める彼女に、めぐるは何事かと焦るが、晴明は悪魔のような顔でニコリと笑う。
「あー、そうそう。俺ってばドジで言い忘れていたが、霊力エンジンは使いこなすまでちょーーーーっとだけ大変でな。お前自身が鍛えない限りエンジンと霊力の歩調が合わず、全身筋肉痛のような痛みがずーーーーっと続くんだよなぁ……」
康作もめぐるも鬼を目の当たりにしたように顔を引きつらせながら晴明を凝視する。
ミツルは晴明の話にギョッとしながら、地面をのたうち回る。
「いででっ! そんな、師匠! なんでそんなこと早く言ってくれなかったんスか」
「すまんすまん、急いでいたからつい忘れてた。修行しろよ、ミツルさんっ」
「そんな、ご無体なっス~!!」
「ハハハハハ!」
夕柳に晴明の無慈悲な乾いた笑い声が響き渡る。
痛みに悶絶するミツルは、にせDタイザンを今後も活用すべきかと躊躇する。
(でも……)
ミツルはにせDタイザンを見上げる。
(でも、また師匠と肩を並べて戦うために……やるっス! 特訓! 痛いのは嫌っスけど……)
後日、彼女のために地元商工会が秘密裏に特訓施設の建設を進めていたことが発覚するのは、また別の話……。
第20話もお楽しみに!!
次回更新は2026年10月24日(土)17時30分を予定しております。
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