13話 先立つモノを得る為に①
えっちらおっちら、震える脚をずりずりとひきずりながら、路地裏を進み、人通りの多い場所へと出て、「ふぃぃぃっ」と建物に寄りかかり、腰を下ろす。
「すんすんっ。人が沢山いるのっ」
「ここなら早々、見つからんだろ」
「そうなの?」
木を隠すなら、森の中だと言うし、おっさんを隠すなら、人混みの中だろう。但しっ、体力が限界で、マジでそろそろ体を休めないと、幾度目かの気絶体験になる。
「……宿って、あるのかねぇ」
「おやど?」
「お金を払って、寝る所の事だぞ」
「それは知ってますっ。お金はあるの?」
「……」
ミルンの指摘が、懐に刺さる。
問題は、それなんだよなぁ……異世界に来たのは良いものの、ずっと無職で無一文。
予定だと、聖女様に色々と世話になり、金は無くても楽しく旅行だったのに、正門のあの一件で、逸れちゃったからなぁ。
「どうするかぁぁぁっ」
頭を掻いて、横にいるミルンを見る。
人が多いのが珍しいのか、鼻をひくひくとさせて、そわそわと落ち着きがない。
「そういえば……前にミルン、魔石が売れるとかって、言ってなかったか?」
「うん。んしょっ、コレは売れるのっ」
「出た、ゴブの魔石……」
ちゃんと持ってたのね。それなら、確か俺も、あの魔石を持っていたよな。
「えっと、ステータス開いて、空間収納の一覧を確認っと……」
====================
(一覧)
ハイオークの魔石
ミルンの尻尾の毛玉
ミルンの耳毛
ミルンの髪の毛
肉屋の在庫▼
花屋の在庫▼
農作物▼
資材▼
汚れた村人A装備セット
門兵Dの"不倫相手"の家の鍵
門兵Fの"不倫相手"の家の鍵
門兵Hの"不倫相手"の家の鍵
門兵Eの"貞操帯"の鍵
====================
「貞操帯の鍵……どうしよっか」
この鍵って、確実にあの人のだよね。
「ていそうたい?」
「っ、なんでもない。あった、コレか」
ハイオークの魔石。
あの豚野郎、やけにデカいと思ったら、オークの上位種っぽい、ハイオークだったのよ。
これを換金すれば、金になる筈だよな。
「異世界のお約束だと……冒険者ギルドかっ!」
「ギルドで売れる?」
「いやっ、まだ分からんぞ」
あくまでこれは、日本で読んだり見たりしていた、小説やアニメの知識だからな。
「ギルドでも探してみるか?」
「ギルドを探すのっ!」
どうにかして金を得ないと、ローマ風衣装のままだど、地味に目立つんだよなぁ。
脱いだらパンイチだし。
通報レベルの変態加減だぞ。
ミルンの姿も、ザッ、野生児っ! と言わんばかりの姿だし、靴も履いていない。
「どっこいせっ……風呂入りてぇ、火傷が痛てぇ、お酒が呑みてぇ……」
「欲望がお口に出てるのっ」
「そりゃあねぇ、口にも出ますわ」
立ち上がって腰を伸ばし、目を細めながら、周囲をくまなく観察する。
地面は石畳み。
建物は、木造と石造りの二種類。
歩いている人達の服装は、男性はスーツっぽい紳士服か、シャツに紺色のズボン。女性は町娘風ドレスか、シャツにスカート。
「ふむ……建物の扉の上に、看板があるか……」
「あの絵は、薬草屋さんですっ」
「んっ? ミルンもしかして、あの看板を見れば、なんのお店か分かる感じ?」
「村長の村にもあったよ?」
おぉぅ……俺が見逃してただけなのね。
とすれば、ミルンを肩車して歩けば、冒険者ギルドを見つけられるかもだな。多少は休めたし、ゆっくり歩けば大丈夫だろう。
「そんじゃあっ、どっせいっ」
うしろから脇に手を入れて、「ぬぁっ!」と驚くミルンを肩車をしたら、ゆっくりと歩く。
火傷に擦れて痛いけど、そこは我慢だ。
「良く見えるのっ……体は大丈夫?」
「大丈夫だぞ。知らない土地だから、ミルンの目と鼻に頼るしかないんだ」
「頑張りますっ!」
そうして、歩き始めて何分だろうか。
肩の上のミルンは、一生懸命冒険者ギルドを探しているが、まだ発見出来ていない。
「今後の事を、考えないとだなぁ……」
本当なら今すぐにでも、この王都から脱出して、余計なトラブルに遭わないようにしたい。
しかし、牢から逃げた事はバレてるし、間違いなく検問は、厳しくなっているだろう。
「逃げたくても、逃げれない状況か。ふむぅ……手配書とか、出回ってないだろうな」
一番の問題はそこだ。
この王都を見る限り、文明レベルはさほど高くはないが、それを補って余りあるモノ・魔法が存在するからなぁ。
「ギルドや宿屋に、手配書があったら……」
即捕まってあの世行き。
なーんて事になりそうだったら、被害を覚悟であの意味分からん魔法を、全力ブッパするしかないか。
「人殺しには……なりたくないなぁっ」
「お父さんのお顔が、くしゃってなってるよっ」
「……すまん。不安が顔に、出ちゃってたわ」
肩の上から、俺の顔を覗き込むようにして、ミルンがジッと見つめてくる。
「お父さんは、ミルンが護りますっ」
「……あぁ」
ケモ耳幼女に護られる中年……大人としては恥ずかしいけど、気持ち的には嬉しいな。
「落ち込んでばかりも、いられないか」
「そうなの。先ずはお金を手に入れて、お宿でゆっくり休んだら、ミルンのお家の材料を買って、こっそりと魔龍の川へ帰るっ」
「そりゃあ……完璧な予定だわ」
ミルンを肩車しているからか、周囲から奇異の目を向けらているが、それを無視しながら、前へと進んで行く。
遠くには、立派なお城が"二つ"建っており、あれが俗に言う、王城なのだろうか。
ボーッと歩いていると、パシパシ──と、ミルンが俺の脳天を、叩いてきた。
「どうした?」
「あそこっ。冒険者っぽい人が、沢山出入りしてるのっ。冒険者ギルド発見?」
「ほうほう、行ってみますかねっ」
次回は5/14更新予定っ!!




