表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界(胸糞控えめver.)  作者: かみのみさき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/30

7話 魔王? 違いますニートです②


 次の日も、俺はミルンを肩車しながら、村長宅モーニングを楽しんだ後、健康の為の散……巡回に勤しんでいた。

 昨日の夜は、大変だった。

 ミルンが本当に、離れないんだ。

 いや、良いんだよ。良いんだけども、流石にお風呂は、一人で入って欲しいんだ。


「像が怖いっ」


 斧を持った、ミルンさんよりも? 

 じゃあトイレは? 俺の臭いよ? 


「鼻を摘むから大丈夫っ」


 あっ、大丈夫ですか、そうですか。

 寝る時はちゃんと、一人で寝ようね?


「一人は嫌っ」


 こんな感じで、延々諤々と押し問答を繰り返し、なんとかトイレだけは、死守したんだ。

 流石にあの空間で、ジッと見られていると、落ち着いて出す事が、出来ないからね。

 それ以外は、追々だなぁ。


「それじゃあミルン、朝の体操をします。俺の後に続いて、体を捻る様に向くんだぞ」


「分かりましたっ!」


 腰を痛めない様、柔軟は完了済みだ。


「右見て──っ、誰も居ない道」


「誰も居ないの!」


「左見て──っ、誰も居ない家」


「音聞こえないの!」


「上見て──っ、ミルンの可愛いお顔」


「綺麗なお空っ!」


「下見て──っ、舗装されてない道」


「流さんの頭っ!」


「前見て──っ、"何か光ってる人"……?」


「ぴかぴか──っ!!」


 ふぅ……一度空を見てっと。良しっ!


「前見て──っ、"何か光ってる集団"……?」


「ぴかぴか光ってる!」


「……うん?」


 ミルンの言う、ピカピカ光ってる、装備を付けまくった集団が、こっちを……見つめてくるんだけど、何あの集団?


「ぴかぴかっ」


 ミルンの尻尾が、凄い振れているのが分かるよ。そうだね、ぴかぴか光ってるね。太陽の光が反射して、目が痛くなってくるぞ。


「凄げぇ眩しいな……」


 光ってる集団と見つめ合う事、数分。

 こいつら……何っ!?

 目を離さず見てきて何なの恐いっ!?


「あの、お間違いなければで、宜しいのですが」


 先頭に立っている、頭も身体も一番光ってる男が、恭しく話しかけてきた。


「貴方様は魔────」


「違います唯のニートです」


 絶対に最後まで、言わせない。

 灯りに夢中な虫を、誘い込める程、光輝く豪奢な装備に身を包んだ、光るおっさん共。そんな奴等が、往来で腰を低くして、魔王がどうのこうのと言って来るとかっ。

 誰も居ないから、良いんだけど。

 取り敢えず住居と称して、村長宅へ御案内。

 因みに、村長は留守だ。

 許可? そんなの要らないよ? 俺と村長の仲だもの。優しい村長なら、許してくれるさ。

 

 そうして、村長宅に到着してすぐ、ミルンが俺の膝を枕に、スヤスヤと気持ちよく寝た。ミルンを起こすのは悪いから、何となしに無言で、光るおっさん共を見ていたんだ。

 そしたらさ、なんにもね、話もしてないのにね、豪奢な装備に身を包んだ男共が、唐突に、見事としか言い様のない──『ジャパニーズ・DOGEZA!!』を、披露してきたんだ。

 土下座……あるんだ。

 土下座。

 ドン引きだよ。


「魔王様っ! どうかっ、どうか哀れな私共にっ、魔王様の御慈悲を頂きたく存じますっ!」


 んでまた唐突に、変な事を言ってきたぞ。

 何だよ御慈悲って。

 頭が痛くなってくるわ。


「えっと、あんた達は誰? 違うな、何者? これも違うか。ああ、何をしに来たんだ。こんな誰も居ない村なのにさ」


 聞きたくない。物凄く聞きたくないけど、話を聞かないと、お帰り頂けなさそうな感じなので、聞いてみる事にする。


「はい。私共は、唯一神っ、アルテラ様を信仰する教会の者で、私は神官のザルッ、ザルブと申します。ここ、ラクッレル村にて、神が奇跡をお示しになられた事を知り、急遽っ、この村を、魔王様より返して頂く為の、ご相談に来た次第で御座いましてっ……」


「うん、話が長いっ!」


「もっ、申し訳御座いませぬっ」


 めっさ震えてるよ、このおっさん達。

 あと、何か失礼だな。俺がこの村を、占領したみたいに言ってくるとか。どちからと言うと、助けた側なんですけど。


「返還を了承して頂きましたらっ、おおお礼といっては何ですがっ、魔王様の望まれる物をとっ、大司教様より申しつかってっ、おりっ、おりおりますっ!」


「んな事言われてもな……」


「あとっ、先にこちらをっ、献上したくっ」


 震える手で差し出してきたのは、華美な装飾の入った、すげぇ趣味の悪い宝石箱。これは、ミルンが見たら、欲しがりそうだな。


「どうぞ……お納め下さい」


 一切顔を上げず、土下座の姿勢のままだ。

 開けろって事か?

 凄い怪しい……けど、土下座だもんなぁ。


「中身見るぞ?」


「どうぞっ……」


 えいっと、躊躇い無く箱を開けた瞬間──この世の全てを包み込む様な、真っ白な光と音が溢れ出し、俺に降り注いだ。


「あっ……やっぱり罠なのかっ!?」


 眩しっと思いながらも、眼を閉じでしまった。光の中、土下座の光るおっさん共が、ガチャガチャと、立ち上がる音がする。


「ふっふはははっ、馬鹿めっ! この邪悪な魔王めが! その箱には我の為にと、大司教様の固有魔法、"神の審判"を込めて頂いたのだっ!邪を滅する事に特化したこの魔法、いかな魔王でも耐えきれまいっ! 滅ぶが良いっ! 悪しき魔王よっ!」


 何か言ってる?

 耳がキーンって痛いな。

 ゆっくりと、光が消えてく。

 ん? 何も起きてない?

 目をゆっくりと開けて、身体を確認。

 ミルンも確認。

 尻尾も確認モフモフ。

 箱の中を見る。

 箱の中には……ボロボロの……石?


「ふはははっ! 魔王は滅んだっ! 聖地を魔王から取り戻したぞっ! ふはははははっ!」


「やりましたぞっ!」


「これでこの地は、我ら教会の物っ!」


「あの──っ」


「これで私もっ、司教に成れるであろうっ! いやっ、これならば大司教も夢ではないっ!」


「おぉっ、おめでとう御座います、ザルブ様っ」


「我等は一生、貴方様に着いていきますぞっ」

 

「聴こえてるか──っ」


 めっちゃ騒いでいるなぁ……あっ、ミルンの耳がペタンってなってて、物凄く可愛いぞ。


「早急に王都へ戻り、報告せねばなっ!」


「凱旋ですぞっ!」


「やりましたなっ!」


「「「あっはっはっはっはっ‼︎」」」

 


『人の家で何騒いでおるのだああああああっ!』



 勢い良く扉が開いたと思ったら、白い歯を見せながらの鬼の形相で、村長が入って来た。

 シーンと鎮まる歓喜の声。

 そりゃあ、筋肉隆々の、クソでかいおっさんが、白い歯を見せて、血管切れそうな顔で現れたら、誰も騒げないわな。


「お帰り──っ、村長」


「「「えっ?」」」


 光るおっさん共が、俺を凝視した。


「むっ?」


 村長が、光るおっさん共を見る。


「おっ?」


 んで俺は、そんな村長を見る。


「くわぁあああむにゃむゅ、何してるのぉ」


 ミルンが可愛い欠伸をした。

 物凄く可愛いんです。


「くっ、何だ此奴はっ!?」


 光るおっさんの一人が、馬鹿な事に、腰にぶら下げた剣を抜き、村長に向けて走り出した。

 自ら一線を、超えてしまった訳である。


「んしょっ、んしょっ、何してるの?」


「うん? 俺にも良く分からん」


 起きたミルンが、俺をよじ登ってきたので、肩車して、淹れたお茶を啜りながら、俺は目の前の光景を見ている。


 さあさあ今回の試合は、村長VS光るおっさん共の、異色のエキシビジョンマッチっ!

 その夢の闘いが今あああ──っ、始まった! 

 試合開始だあああ──っ!


 村長が一瞬で移動して、強烈なボディブローが、おっさんBの鳩尾に突き刺さるぅ!

 速いっ! 速いぞ村長っ!

 後ろから、おっさんAが襲いかかるが、屈んで避けたああああああからの脚払いっ!

 すかさず空中で一回転っ!

 踵落としだああああああっ、脳天直撃っ!

 これは一発でノックアウトオオオ──っ!

 若干頭が陥没したかあああああっ!?


 さあさあ、おっさんCが、距離を計りながらああっと、凶器を取り出したあああああっ!

 これは卑怯! 卑怯者だあああああっ!

 それでも村長は怯まない!

 おっさんCの、凶器を振り回しながらのヤケ糞の攻撃を避わしつつ、右!右!左!左!右!左!の顔面サンドバッグだあああ──っ!

 前歯が飛んでいくううう──っ!

 これは堪らずっ、膝から崩れ落ちたぞおっ!


 おっと、おっさんBが、腹を押さえながら立ち上がりいいいっ、拳を振りかぶるがあああああ残念っ! 空振ったああああああっ‼︎

 それを逃さず、村長のカウンターが──入ったああああああああ──っ! 試合終了おおおおおおおおおおっ!!


 カンッカンッカーンッ。

 お茶請けの食べ欠けパンを片手に、村長の口元に向けて、にこやかに聞いてみる。


「今のお気持ちをどうぞ、村長」


「流くん。君は何をやっておるのだ……」


 額の汗を拭い、村長が睨んできた。

 俺に言われても、どうしようもない。


「んしょっ、ぴかぴかぁーっ」


 光るおっさん共を縛り上げる村長だが、ほんの少し前まで、肘から先がなかったのに、今の村長には何故か、肘から先がある。


「えっ……村長の腕って、生えるのか?」


 ミルンが笑顔で、光る装備を剥いでいる。


「流君……腕が生える訳がなかろう」


 呆れた声で言われたよ。

 冗談の通じない筋肉だなぁ。


「腕、どっかに在庫があるのか、村長?」


 ミルンが笑顔で、光る装備を剥いでいる。


「在庫が有れば、直ぐに付けるであろう」


 突っ込みがヌルいぜ、村長。


「聖女様に、治して頂いたのだ」


「んっ、今何て?」


「この腕は、聖女様に治して頂いたのだ」


 異世界あるあるの聖女キターっ!


「聖女とか居るのかよっ!」


「此奴らは、その聖女様のお連れの者達だ。私が聖女様と面会をしている間に、いつの間にか消えていたがね」


「えっ……何それ」


 ミルンが笑顔で、光る装備を剥いでいる。

 尻尾をフリフリさせて、可愛いなぁ。


「それじゃあ……俺に何かしようとしてきたのは、聖女なのか? こいつら、大司教がどうのこうのって、言ってたんだけど」


「いや、聖女様は関係無いであろうな」


 疲れた顔をしながら、ハッキリ言う村長。


「何でそんな事分かるんだ?」


「会えば理解するのである」


 村長が、光るおっさん共を縛り上げ終わる頃には、おっさん共は、その輝きの丸ごと全てを、失っていた。


「ぴかぴか光ってるっ!」


 傍のミルンの手によって。

 素材の剥取りだな。

 弱肉強食、狩のマナーなのかも。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ