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想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―  作者: ベルナルド
一章 緑等級編

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第13話 繋がる「想い」

 ――逃げていた。


 花崎快斗は、闇から背を向けて走っていた。


 無理だ。

 あんな化け物と戦ったら、絶対に死ぬ。


 頭の中で、何度も同じ言葉が回る。


 瑠偉には悪いけど、

 監督を呼んで助けてもらうのが一番正しい。


 それが分かっている。

 それなのに――。


「……なんでだよ……」


 歯を食いしばる。


 なんで、近藤君は立ち向かうんだ。


 彼は緑等級だ。

 自分と同じ、新人だ。


 だから、同じだと思っていた。


 怖くて、震えて、

 それでも前に出なきゃいけない側だと。


 ――違った。


 彼は、立ち向かった。


 僕は……。


 今まで、ずっと逃げてきた。


 想界師の世界から。

 死が、あまりにも近い世界から。


 同期は、もっといた。

 でも、消えていった。


 逃げ続けた僕だけが、生き残った。


 瑠偉は強い。

 最初から、別の場所にいる人間だ。


 でも、近藤君は――。


「……このまま逃げたら」


 呟きが、震える。


「……僕は、もう戦わないだろうな……」


 それでいいのか?


 逃げればいい。

 逃げ続ければ、生き残れる。


 なのに。


「……馬鹿だ……」


 足が、止まる。


 胸の奥が、熱い。


 怖い。

 どうしようもなく怖い。


 それでも。


 みんなの“熱”が、

 胸の中に、残っている。


 向きが、逆になる。


 足は――

 闇へと、向かった。


 獅子の咆哮が、空気を裂く。


 瑠偉と近藤は、すでに限界だった。


 攻撃は通らない。

 防御は、崩される。


「……っ!」


 瑠偉の足が、わずかに止まる。


 ――隙。


 獅子が、嗤った。


 その一撃を。


「――っ!」


 近藤が、割り込む。


 鈍い音。


 体が、吹き飛ぶ。


「近藤っ!!」


「……ぐはっ……」


 地面を転がり、血を吐く。


「……馬鹿……なんで、庇うのよ……!」


 瑠偉の声が、震える。


 近藤は、笑おうとして、咳き込んだ。


「……体が……勝手に……」


 獅子が、鼻を鳴らす。


「もう終わりかよ」


 失望が、声になる。


「……つまらん」


 そのとき。


「――オーバーチャージ(グリーン)!」


 草が、地面を割った。


 蔦が、獅子の脚に絡みつく。


「……なに?」


 獅子が、目を細める。


「……くそ……」


 花崎快斗が、そこに立っていた。


「僕は……馬鹿だ……」


 震える声。


「逃げればいいのに……戻ってきちゃった……」


 瑠偉が、叫ぶ。


「なんで戻ってきたのよ、馬鹿!」


「うるさい!」


 花崎が、叫び返す。


「みんなが……戦ったせいで……」


 歯を食いしばる。


「……僕まで、浮かされちゃったんだ!」


 花崎は、両手を広げる。


「オーバーチャージ(ホワイト)!」

 快斗の鼻からツーと血が垂れる。その細い腕の血管が浮き上がり、彼の「想い」を二人へ流し込むためのパイプとなって、焼き切れる寸前の悲鳴を上げていた。


 白い光が、彼の手を通じて広がる。


 近藤の体を、

 瑠偉の傷を、

 包み込む。


「……?」


 近藤が、目を見開く。


「……体が……」


「嘘……」


 瑠偉が、息を呑む。


「……力が、湧いてくる……」


 獅子が、腹を抱えて笑った。


「ハハハ!」


 低く、楽しそうな笑い。


「壊れたおもちゃが戻るなんて、最高じゃないか!」


 蔦が締める。

 拳が叩き込まれる。

 剣が、舞う。


 三人の攻撃が、重なる。


 獅子が、吠える。


「いいぞ、ガキども!」


 血を吐きながら、笑う。


「期待以上だ!」


 近藤が、一歩前に出る。


 拳に、想力を集める。


 今度は、飛ばさない。


 ――溜める。


 拳が、肥大化していく。

 まるで、大砲の弾。


「……これで……」


 息を吸う。


「……終わりだ……全部……!」


「フィストキャノン!」


 衝撃の反動で、大地の右腕の骨が嫌な音を立てて軋み、肩の関節が外れかかる。 

 それでも俺は腕を振る。


 拳の形をした巨大な塊が、

 蔦に縛られた獅子へと放たれる。


 ――爆音。


 視界が、白く染まる。


 地面が、抉れる。


「……やった……?」


 花崎が、呟く。


 だが。


 煙の奥から。


 ――違う。


 先ほどよりも、

 さらに獣じみた咆哮。


「……これを……使わされるとはな……」


 獅子の声。


 影が、立ち上がる。


 より禍々しく、より“獅子”に近い姿で。

 獅子が息を吐くだけで、周囲の酸素が燃え尽きたかのように熱くなる。その咆哮はもはや「音」ではなく、内臓を直接握り潰すような「振動」となって三人の感覚を奪っていった。


 闇が、再び、動き出した。




あとがき

花崎 快斗の式想 過剰 特徴 エネルギーを過剰に送り、成長を促進させる能力 例えば 地面の草などを急成長させてまとわせたり、腐食を進めるなど。

便利である反面、使い手の感情に左右されやすい。

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