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CASE5.「古本の中のメモ─②」



【10月17日 7:26──

 バレシロ高校 通学路】



 僕の家からは、学校までそこそこ距離がある方だと思う。

 それでも、朝早くから準備して、毎朝同じ道を通る人に向かってぎこちのない挨拶を交わす。

 そんな僕は、緊張をほぐす意味もかねてゆっくり歩いて登校してる。


 でも、そんな平凡な毎日から、一気に人生の難易度が膨れ上がった気がする……。


 なんでって?

 昨日コレレスさんが言っていた……


 僕と同じ高校に通っている金髪の女子生徒を探さなきゃいけないからだ。



「そんなこといったって〜〜

 ほとんどの生徒が金髪や茶髪が多いし……。」


「無理だよ〜〜コレレスさぁ〜ん!!」


バレシロ高校1年[トラル・エンコ(15)]

        [性別:男]




「コレレスさんって誰よ?」


バレシロ高校1年[アメ・リサール(15)]

        [性別:男]



「うわぁぁあっ!!!」


 後ろからいきなり聞こえた声は、聞き覚えしかない声だったけど。

 あまりにもびっくりし過ぎて、僕は腰が抜けながら前へと倒れ込んだ。



「よっ!」

「相変わらず反応がいいな!ハハハッ!」



「……ッテテ。」

「やめろって言ってんじゃんか!!」


「まぁまぁ〜、いつものことだろっ?」

「んで、コレレスさんって誰よー?」


「はぁ……。」

(僕は、静かに出来ればそれでいいのに。)



「実は───」



─────────────────────────

─────────────────────────



「はぇ〜〜

 それで探偵に依頼してるってわけね〜」


「しかも、お目当てはパッキンの美女か〜〜

 フムフム。」


 僕の隣でアメは、生えていないヒゲを擦るように顎を触っていた。



「誰も美女とは言ってないだろ…。」


「金髪の生徒なんてたくさんいるし

 どうやって見つけようかなぁ…」



「ならさ、まずは図書室に来る生徒に

 聞き込みとかしたらいんじゃね?」


「ソイツ、本好きかもしんないじゃん!

 通ってるかもよ?」



「おお〜!それいいかも!」

「アメにしたら珍しくまともな意見だね!」


 珍しく褒める僕に、アメに腕をおもいっきり首に回されて絞められたのは痛かった。



「ふざけんなっ!!

 オレはバカだけど、いつもまともだっつーの!!」



─────────────────────────



【13:01 バレシロ高校 図書室】



『ガラガラッ─。』と、扉を開けると、たくさんの本が棚に並んであるのが視界に入った。

 入り口を入ってすぐ左側に、本の貸し出しをする為の受付があるみたいだった。


 僕は、そこに立っている生徒に声をかけようとしたけど、なかなか前に進めなかった。



「……女子かぁ…。」



『バシィッ!!』と、勢いよく背中を叩かれた僕が後ろを振り返ると、アメが「なにやってんの?行こうぜ!」と声をかけてきた。



「う…うん。」


 僕たちがそばまで来ると、受付にいる茶色い髪をしたショートカットの女子生徒と目があっていた。



「あ、あの……その…」



 情けない口調の僕を見かねたアメは隣で頭を抱えていた。



「……はぁ…。

 ダメダメだなぁ〜」



「えっ…なに!?」

「まさか……こ、告白ぅぅぅ〜!!?」


バレシロ高校1年[リブロス・ミア(15)]

        [性別:女]



 なんでそうなるんだよ……

 僕、まだ何も言ってないんだけどなぁ。



「あ、いやっ…!!

 ちがっ!……くて…」



「あ、違うんだ。」



 えぇっ……?

 何その反応!?

 感情が激しいのかな。



「で……?

 なんか用?」



「……ぷくくくっ。ふふっ。」



(アメのヤツ〜……

 絶対楽しんでるだろ!)


(あとで覚えとけよ〜……

 クソォ……。

 これだから女子は苦手なんだよ〜〜)


(なんか、目つきもちょっと怖いし……。)



 眉間にシワがよるミアの様子に、流石にマズイと思ったのか、アメがフォローをしてくれていた。



「あーえっとなぁ〜

 コイツが、本が好きな金髪女子を探しててさ〜

 本を借りに来てる子の中に金髪の子とかいない?」



「…えっ…!?」


「変た…ぃ…?

 うわぁ〜…」



「ちょっとアメ〜〜!!

 誤解するような言い方はやめろよっ!!」



「でも、目的はそうだろー?

 あははっ!」



「……そうだけどさぁ〜。」



「なに。なんか訳アリって感じー?」



(アレ…?

 この件(くだり)、さっきやったような…)



「じ……じつは───」



─────────────────────────

─────────────────────────



「はぁ〜〜なるほどねぇ〜

 それで金髪の子を探してたのね!」


「任せて!

 私も探してあげる!」



「良かったな!」


 アメはそう言ってくれたけど。

 正直、彼女の性格は少しだけ苦手だった。



「う、うん。」


「ありがとう。

 えっと……」



「ミアよ!」



(ん……?ミア?

 どっかで聞いか事があるような……

 どこだったっけ…?)



「とりあえず

 今週の名簿の中にはいなかったし

 ワタシの友達にも聞いてみるね!」


 そうして、結局手掛かりは掴めないまま僕たちは図書室を後にした。



─────────────────────────



【13:43 バレシロ高校 1年3組】



 昼休みが終え、教室で次の授業の準備をしていると、教室に入ってくる2人組の女子生徒が視界に入った。

 その瞬間、僕とその人物の1人と視線が合うと声を上げた。



「あっ──!!

「──あっ!!」



「えっ!?」

「なに…?」


 隣の女子は『ポカーン』とした顔で僕たちを眺めていた。

 その人物は金髪の女の子で、声を上げた人はさっき図書館で話したミアという女子だった。



「ブフゥッ──。」



(ああ、ほんっと。)


 後ろから聞こえるアメの様子が頭に浮かぶ。

 きっと手を塞いで誤魔化しながら笑ってるんだろう。

 そんなことを思いながらも、しばらくの間。僕は開いた目を引き攣(つ)っていた。



「さっきの!」



「はは……どうも〜。」


(女子と話すの苦手だから

 あまり見ないようにしてたけど……)


(同じクラスだったとは。

 ……これは盲点。)


(そっか、聞いたことあったのは

 あの時だったのか。)



➖───────────────────────



「どうしたのエニータ?」


「そんなに落ち込んで、大丈夫だって〜!!

 明日もテストはあるんだし!」


「がんばろ?」


「う、うん!

 ありがとうミアちゃん!」


 教室の左前側ではしゃぐ女子生徒2人を眺めていた僕は、後ろから脅かされた。


「ワッ!!」



────────────────────────➖



「この子はカルタ・エニータ!

 私の親友よ!」


 元気よくミアが紹介すると、隣にいる金髪の女子生徒は僕の目を見て話し始めた。



「……あ、どうも。

 ミアちゃんの友達のエニータです。」

(いてて……目にゴミでも入っちゃったのかな……)



 うわぁ〜。

 なんか、心なしか目が引き攣ってるような……。

 僕のこと、奇声を上げる変なヤツって思われてそうだなぁ。

 うぅ〜……。



 目を擦るエニータは、そのまま続けて話す。



「話は聞いたけど

 本はべつに好きじゃないわ」


「あ、でも……。

 おばあちゃんが本好きで

 小さい頃はよく読んでもらったことはあるかなぁ」


「でも、そのおばあちゃんも

 最近亡くなっちゃったから」

「だから、本ももう売っちゃったし。

 人違いなんじゃないかな?」



「あっ……」


「そうだったんですね。

 ……それはお気の毒に。」



「ありがとう」

「まあ、ミアちゃんが乗り掛かった船だし

 私も協力するよ!」



「おお〜!

 良かったじゃんエンコ〜!」


「探す仲間は多いほど頼もしいしなっ!」



「う、うん。ありがとう……!」


 そうして僕達4人は、図書館を利用する金髪の女子生徒を探すことになった。



─────────────────────────



【16:10 バレシロ高校 図書室】



 放課後の図書館に僕たち4人は集まった。

 静かな空間の中、僕は受付の奥に座る先生を見つけていた。



「こんにちは!

 アミガーさん〜!」



 元気よく挨拶したのはミアだった。

 そっか、彼女は図書委員だったんだ。



「あら、ミアさん

 こんにちは」

「お久しぶりね。」


学校司書[メホール・アミガー(92)]

    [性別:女]



「お友達を連れて来たの?」


「あ〜えっと、そんなとこです!」


「ふふっ。

 みなさんこんにちは。

 ゆっくりしていってちょうだいねぇ。」



 優しそうな人だなぁ。

 姿勢が綺麗で、上品な人だと思った。



「彼女はアミガーさん

 学校司書で週に一回来てもらってる人だよ」


「えっと……僕はトラル・エンコです。

 こんにちは。」


「アメ・リサールっす!

 こんちゃっす!」


「こんにちは

 カルタ・エニータです」


 元気よく挨拶をするアメとは反対に、エニータさんは礼儀正しく落ち着いて挨拶をしていた。

 そして、エニータさんの名前を聞いたアミガーさんは、何かに気が付いたようにエニータさんに質問していた。



「あら……カルタって……

 もしかして。」


「間違ってたらごめんなさいね。

 貴女のご家族に

 カルタ・レシビルって女性はいるかしら?」



「えっ?」



─────────────────────────



「そうです。

 私のおばあ…祖母の名前です」


「でも、どうして」



「やっぱり〜

 カルタって苗字はあまりいないものね。

 私はね、彼女と同級生だったのよ。ふふふ。」


「──!」

(うそっ

 こんな所でおばあちゃんを知る人と出会うなんて)



 どんな関係なんだろう。

 もしかしたら、万年筆のことが聞けるかも……。



「そうなんですか?」


「ええ。それも、親友だったのよ?うふふっ。」



 ええっ!?親友って!

 ホントに聞けちゃうかも〜!



「あ、あのっ!」

「おばあ……祖母の──」


「なぁなぁ!アミガーさん!

 ここ最近さ、金髪の女の子とか来てないっすか?」



 ちょっと!なにコイツっ──!!

 あぁ〜〜ん。あとちょっとで聞けると思ったのに〜。


 まぁ……元々は人探しから始まったわけだし。

 ……仕方ないか。


 先にこっちの問題を解決しちゃえばいいか!



「そうねぇ……」


 ほ〜ら、アミガーさん困っちゃってるじゃない。

 校内《うち》にどれだけ金髪の女子生徒がいることか。


 さっき話した時に聞いたけど

 もっと特徴とかないわけぇ?

 それじゃあ分かんないでしょ。



「私はあんまり来ないから

 それに、放課後の時間も短いでしょう?」


「でもぉ〜

 記憶力はいいから覚えてるかもしれないわぁ。

 他の特徴とかは分かるかしら?」



「どうなんだよ、エンコ」


「え、えっと……金髪ってことくらいしか…

 聞いていなくて……」

「……ごめんなさい。」



 はぁ…そんなの

 どうやって探せば良いのよ……



「あ、でも」



 ん?

 まだ何か手がかりがあるの?



「その人が古本屋に売った本があるんですけど。

 その本の名前なら分かります。」



 はぁ。本の名前かぁ〜。

 でも、古本屋に売ったんなら

 ここで探す意味なくない?



「どんなタイトルだったのかしら?」


「『TE(テ) ENVIO(エンビオ)』って本です。」



 ───えっ?

 それって……



「……!

 あら、懐かしいタイトルねぇ。」



「知ってるんですか!?」


「ええ。それはよく知ってるわぁ……

 本当に懐かしい。」



 目を閉じて、優しく、お淑やかに呟くアミガーさんの姿を私は驚いたまま見つめていた。

 でも、次に瞼《まぶた》が開いた視線は、どこか悲しそうに私の顔を見つめていた。



「レガロくんと一緒に……貴女の祖母。

 レシビルちゃんに贈った本《プレゼント》だったからねぇ。」



 アミガーさんの言葉を聞いた周りのみんなは驚いていたけど、私はもっと驚いていた。

 そして、アミガーさんは穏やかな声で続きを話してくれた。



「あれはちょうど

 私たちも学生の頃だったかしらね。」



─────────────────────────



【75年前──バレシロ高校

 メホール・アミガー 17歳】



(今日は何を読もうかな〜)


 図書館の窓から吹き抜ける風が心地よかった。

 この空間は静かで、とても落ち着ける場所だったから。


 私には大切な親友が二人いる。


 幼馴染のレガロと、高校で初めて友達になった

 カルタ・レシビルちゃん。


 

 とても綺麗で、可愛らしくて。

 私が赤い薔薇だったとしたら、彼女は白い薔薇のように清楚で美しかった。


 見た目だけじゃない。

 とっても優しくて、本が好きって趣味だっておんなじだった。


 そう。私と似ていたから……


 好きになった人も、おんなじだった。



「よっ!」

「なーにしてんの?」


メホール・アミガーの幼馴染

カルタ・レシビルの恋人  [アルセ・レガロ(17)]

             [性別:男]



「なんだ、レガロか。」

(えっ、うそ。

 なんでここに?)



「なんだとはなんだよ……

 せっかく俺が来てやったのによ〜」



 ふふ。嬉しいわよ。

 アンタの顔が見れただけでも。



「で、何読んでんの?」


「『TE ENVIO』。

 知ってる?」



「俺が知るわけないだろ?

 お前らじゃないんだから、ははっ」


 そう。私とレシビルちゃんしか知らない。

 この本は、大切な恋人に想いを届けたい主人公が

 ある木の下で落ち合う駆け落ちモノの本だから。



「読んでみれば〜?」

「今度デートに誘うんでしょ?」


「ここ最近できたって、ほら

 はちみつ入りの紅茶が有名なカフェ」

「そこの紅茶とケーキが美味しいらしいよ」



「え!まじで?

 レシビルって、甘いもん好きだったよな?」


「……うん。」

(私も好きだよ。……ハハ。覚えてない…か。)



「内緒で予約しておくか!」


「マジサンキューな!

 あ、このことは

 レシビルには内緒にしといてくれよ?」


「あ、それから

 その本も借りてくわ!」



「えっ!?ちょっと……」



「お前の本のセンスはいいもんな!

 レシビルも言ってたし!へへっ!」


 なにそれ……。

 嬉しいけど、そんな顔で言わないでよ。

 その顔は……レシビルが。


 なんでそんな笑顔が出来るの……。

 私にはもう。



「んじゃ!俺いくわ!」



「あ……うん。」


 そう。私は二人を応援してる。

 心の中ではモヤモヤしてるけど、私がそこにはいるのはダメだって思ったから。

 じゃないと、今の関係が終わってしまうのが怖かったから。



「……本当は、私が……」


 何考えてんだろ。バカみたい。



「はぁ〜〜〜!

 なんか読む気分でもなくなっちゃったな〜」


 背伸びをしながら窓の方を見た私は、何かが飛んでいることに気が付いた。



「あ、みつばち。」


 窓の近くの棚に置いてあったシクラメンの花に、一匹の蜜蜂が止まっていた。



「そっかぁ……キミもはぐれちゃったんだね。」



─────────────────────────



「私と貴女の祖母はね。

 恋敵……と思っていたのは

 最後まで私だけだったわね。ふふ。」


「でも、本当に応援していたのよ。

 あの出来事が起こるまでは……」



─────────────────────────



「そういえば

 この前のデートはどうだったの?」


「おう!

 それがさ、誕プレ渡してなかったから

 こっぴどく怒られちまってさ!」


「なんかいいプレゼントとかないかな?」


「ん〜そうねぇ…」


 誕生日プレゼントかぁ。

 私は日記をあげたけど……



「あ!そういえば」


「ん?」


「彼女、本を書いてみたいって言ってたの!

 だから、万年筆とかはどう?」



「まんねん、ひつ?」


 ああ、そうだった。

 コイツはそういうのに疎いんだったわ。


「ペンのことよ。

 まあ、それなりにお値段が張るけどね〜」


「でも、きっと喜ぶわよ!」



「おお〜!いいじゃん!

 なら、それ買うわ!」


「………。」



 考え事?

 レガロがこんな悩むなんて珍しいわね。



「どうしたの?」



「なぁなぁ!

 ちょっとやってみたいことがあるんだ!」



「そんな張り切ってこわっ!

 なによ………

 まさか、変なことじゃないでしょうね。」



「いや、ちょっとした遊びだよ!」



─────────────────────────



 それから、私はレガロと本屋さんに向かった。

 そして、『TE ENVIO』を買うと、次の日にまた図書室で落ち合う約束をしていた。



「来たわね」


「おう、色々考えたんだけどさ

 やっぱり───」



─────────────────────────

─────────────────────────



 机の上には事前に用意しておいた鉛筆と、二枚のメモ。

 そして、開かれた『TE ENVIO』が置かれてあった。



「こんな感じでどう?」


 鉛筆を握り、一枚のメモに文字を羅列する。



「バッチリじゃん!

 アミガー、お前すごいな〜!」


「えへへ。そ、そうかなぁ?

 でも、本にはアンタがやりなさいよ?」


「間違ったりはしないことね!」



「おう!任せろって!

 これなら謎解きも楽しめるし

 約束の場所としても分かるよな?」



「そうね

 あの子なら多分……

 気付くと思う。」



 そう。このメッセージは、私ではなく。

 彼女だから気付けるメッセージ。


 これが私だったら、どれだけ嬉しかったかな。

 レガロからのプレゼントかぁ。


 いいなぁ……私も欲しかったなぁ。



─────────────────────────



「それで!

 おばあちゃ……祖母と!

 レガロさんはどうなったんですか?」


 前のめりに話を聞く私は、アミガーさんには申し訳なかったけど。

 話の続きが気になって仕方がなかった。



「約束の日。

 レシビルはその場所に来ていたわ。」



 あれ……?

 でも待って……このまま上手くいったら

 おばあちゃんは、レガロさんと結ばれていたのよね?


 じゃあなんで私の苗字は……

 おばあちゃんの苗字のままなの?



 おばあちゃんの家に、おじいちゃんが婿入りしたから?

 え、でもそれだったら……名前が…



 なんで、おじいちゃんの苗字は───



─────────────────────────



【17:56 私立探偵事務所『Loto ~ロト~』】



 外が暗く始める中、オフィスの電気を付けたアジュ。

 2人が上着や帽子を脱ぐと、コートハンガーにかけていた。



「腹減ったな〜」


「アジュ、晩飯頼む」


私立探偵『Loto ~ロト~』 

  探偵[コレレス(18)]

    [性別:男]



 ソファーに寝そべるように寛《くつろ》ぐコレレスは、一枚の用紙を手にしていた。

 そして、アジュは奥にあるキッチンへと向かっていった。



「かしこまりました。」


私立探偵『Loto ~ロト~』

  助手[アジュ・フロルダンテ(28)]

    [性別:女]



「……暗号はこれで合ってるよな〜?」



『コンコンッ』と、卵をいくつか割って、同じボールに入れていくアジュは答える。



「はい。おそらくは。」


「ですが、日付に関しては

 どの日にちが正しいのか分かりませんね。」


 その後も手際よく食材を調理していく。



「まぁ、それは

 この本の持ち主に聞かねぇとだなぁ〜」

「トラルのヤツ、何か掴めてるといいけど。」



『──プルルルル。──プルルルル。』


 その時、タイミングよくコレレスの携帯が、オフィス内に鳴り響いていた。



「おっ、噂をすれば……

 もしもし。オレだ」


『あっ!コレレスさん!

 すみません、いま、大丈夫ですか?』


「おう、飯もまだだし

 そっちは何か分かったか?」」



『そ、それが……』


 電話越しに震える声に、コレレスはトラル・エンコが興奮気味に話しているのを感じ取っていた。



『とんでもないことが分かったんです!!』



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