CASE4.「消えた梟の銅像④」
・・
「…………あの銅像は元々偽物だったんだよ。」
私立探偵『Loto ~ロト~』
探偵[コレレス(18)]
[性別:男][血液型:B型]
【10月8日 PM19:14】
【私立探偵事務所『Loto ~ロト~』】
「えぇえ!!?どうゆうことよ!?」
コレレスの親友 警察官 警部
[グラン・アミーゴ(28)]
[性別:中性]
と、勢いよくグランは立ち上がった。
その後、興奮した様に早口で話し始める。
「銅像は運搬されて、美術館で盗まれたのよね?」
「それが……そもそも偽物だったってことぉ!?」
「でも、どうして犯人は偽物を盗んだの?あ……犯人はそもそも本物と思ってるわよね…」
「……。」
「でも、なんで銅像を盗もうと思ったのかしら。そして、なんですり替えられていたの…?いつ…?」
「……グラン、ちょっと落ち着けよ。あんま騒がれると耳がいてぇ。」
「あ、ああ…ごめんなさい。」
と、再び座ったグランに、コレレスは静かに話し始める。
「飾られた銅像は偽物だ。それは間違いねぇ。と思う。」
「その上で何故犯人が、美術館に忍び込んでまで……あの『枝木に止まる梟の銅像』を盗んだのか。」
・・・・・・・
「それは……あの銅像の中に麻薬が入っていたからだ。」
「ま、麻薬ですって!!?」
「それは本当なの!?」
「そのためにオマエに聞いたんだよ。4日前のマトリ捜査の情報をな。」
と、事務所のテレビで流れていたニュースを、コレレスは思い出していた。
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静かな事務所内に、テレビからニュースキャスターの声が響く。
『……上院議員のポペ・ヒリング氏が、裏金問題の告発を受けて、辞任されたとのことです。』
『それに伴い、農業施設への被害はかなりなものと思われるでしょう。この件については………』
『……続いてのニュースです。10月4日ーー組織『ガサナ』の組員が、ーーで目撃されたと情報が入りました。また、リーダーの名前が判明。』
『…リーダーの名前は『サシオン』と名乗っていると思われます……ーーー』
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「アジュに聞いた話によると……」
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【PM18:07】
「ええ、グランさんが言うには、4日前のマトリ捜査で、麻薬密売組織『ガサナ』の組員2人と体格のいい人物が話している場面を目撃したとのことですよ。」
私立探偵『Loto ~ロト~』
助手[アジュ・フロルダンテ(28)]
[性別:女][血液型:O型]
「その時は、取引はしていなかったそうで…ただ数分間、話をしていただけだった。と。」
と、アジュはコレレスに話していた。
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「その組織の人間が、美術館の銅像を盗んだんだ。」
「でも、どうやって?」
「どうして麻薬が中にあるって知っていたの?」
「それは…… 『枝木に止まる梟の銅像』を納品した"本人"が組織の人間に教えたからだよ。」
「!!!」
「何ですって!!?」
「なんでそんなことをする必要があんのよ!!」
「……それは」
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【PM18:14】
「でも、なんで依頼人のカンタロはそんなことをしたんだ?」
と、コレレスはアジュに尋ねていた。
「カンタロ氏は、多額の借金があったのです」
「借金?ヤツは、広大なブドウ畑の土地を持っているだろ?金ならあったハズだ」
「………今朝のニュースをお忘れですか?」
「ニュース…?…………。そうか!」
「ええ。ポピ・ヒリング氏の辞任によることが影響しているのです」
「カンタロ氏の卸売のパイプとして、ヒリング氏が関与していたんです。そこにヒリング氏の裏金問題が発覚した。」
「つまり、パイプが無くなったせいで、商品を売れなくなったのか…」
「はい。あとは、被害額の賠償ですね。」
「ヒリングの失脚が発覚し、カンタロは麻薬売買に手を染め……その借金を返済しようとした。って訳か。」
「ええ。その通りです。ニュースが出たのは本日でしたが、おそらく4日前より以前からこのことがバレて、カンタロ氏は動き出していたんでしょう。」
「なるほどな。」
「それであの時、暗い青色だったのか。」
と、コレレスは依頼された頃を思い出していた。
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「で、その晩…何者かによって美術館に侵入され、銅像が奪われた。と」
「そうじゃ。」
「……」
指を口元に当てて、何かを考えるコレレス。
…ジーー……。
モヤモヤァ。
と、コレレスは依頼人[カンタロ]の胸元を見つめていた。
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「どこか後ろめたさを感じ取れたからな。何か隠してるとは思ったが……まさか本人が、犯人に教えていたとはな。」
「食えないオッさんだな。」
「ん?まてよ……でも、それなら銅像を探す必要はないじゃねぇか」
「だって、オッさんは麻薬密売組織に麻薬を渡せたんだよな?」
と、ソファに座っていたコレレスは、思いっきり振り返り事務所の机を掃除していたアジュに質問した。
ピタッ。と机を拭く手を止め、アジュは答える。
「……。」
「あの銅像の中には、麻薬はなかったんです」
「なんだと?」
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【PM:19:16】
「つまり、納品者のカンタロさんは、借金を返済する為に、麻薬組織の組員と4日前…捜査官が見た時に話をしていた。と。」
「ああ。」
「でも、それじゃあ、銅像を盗ませて終わりのハズよね?」
「それに、どうやって美術館に入ったのよ?警備員もいたのに」
「あと、どうしてコレレスちゃんの所に、銅像を探して欲しい。なんて相談に来たの?」
「鍵については、鍵師がいたんだろ。正面玄関の鍵は旧式だ。センサーとかも付いてねぇしな。」
「警備員は、事前にカンタロから巡回時間とコースを聞いていたのかもな。何度が納品しているらしいし。館内のことも詳しいんだろう。」
「で、オレのとこに来た訳だが。」
「最初に言ったよな?元々…あの銅像は偽物だったんだよ。」
「すり替えられた銅像。つまり、本物の麻薬が入っている銅像の在処を探してくれって意味だったんだ。」
「おそらく、あの犯行当日の夜…ーーー」
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【10月7日 PM20:46】
「こ…これさえあれば…!!」
「ああ!オレたちは大金を稼げるぞ…ヘヘヘッ!!」
……ブロロロロロ〜〜…。
暗闇の中、車に乗った2人組の男達は、勢いよくアクセルを踏み込みそのまま走らせていった。
【PM21:12】
しばらく走らせた後、組織の2人組の男は銅像をハンマーでかち割った。
「!!!!」
「何だこれは!!?」
「どこにも…何も入ってないぞ!?どうなってる!?」
「カンタロの野郎……ハメやがったのか…?」
「おい、すぐにヤツに電話しろ!!」
…プルルルルルッ。… プルルルルルッ。ガチャ。
「はい、カンタロだが。」
「テメェ!!オレたちを騙しやがったのか!?アァ!?」
と、電話越しに聞こえてきた怒鳴り声に、カンタロは驚いていた。
「な、何のことじゃ…!?」
「銅像なら、今日展示されたハズじゃ…」
「…ああ、その銅像はオレたちの手元にあるよ!粉々になってなぁ!」 ・・
「だが……肝心のブツがねぇじゃねぇか!!」
「どうなってんだ!?オイ!!このままだとテメェ……オレたちのボスに殺されるぞ?」
「!!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
「中身がなかったじゃと…!?そんなバカな…。確かに入れたハズじゃ。」
「ねぇモンはしかたねぇよなぁ……。2日やる。必ずブツを持って来い!!!いいな!!」
…ブチッ。ツー…。ツー…。ツー…。
(ど、どう言うことじゃ!?何故中身がないんじゃ…。クソッ!!このままじゃワシは……!!)
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「……みたいな感じだったんだろう。」
と、コレレスは話していた。
「で、だ。なら、本物の銅像はどこに行ったんだ?ってことになるよな。」
「ええ。どこに行っちゃったのよ?」
「本物の銅像を盗んだのは……」
「カンタロの屋敷で働く給仕……[ウェルター]だ。」
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【PM18:24】
「なら、その本物の銅像は誰が盗んだんだよ?」
「……屋敷で働く給仕のウェルターさんです」
「あの給仕が?なんで?」
…トントントントン。と、包丁で食材を切りながらアジュは答えた。
「まず、容疑者となりそうな人物は誰かわかりますか?」
「んーー…まあ、『トランスポルテ』の運送作業員だろ?」
「あとは、館長のおっさんミージオか。あ、メイドのなんだっけ?一階で掃除してたヤツか?」
「メイドは無理か、鍵問題があるし…なら、執事とかだろ?」
「ええ。コレレス様のおっしゃる通り、その方達が今回の事件の容疑者候補となるでしょう」
「しかし、彼らにはアリバイがあったり、犯行を行う動機が無いのです。」
「というと?」
「まず……運送会社は事件当日の移動時間や会社での行動を見るに、不可能でしょう。あの2人が共犯であれば、その可能性はあると思いますが……麻薬の存在を知っていた。とは思えません。」
「続いて、美術館『オミュジオ』の館長[ミージオ]さんは、動機がありません。そもそも、館内に飾るために納品依頼を出し、その後盗まれてからは警察に連絡し、協力までしております。」
「それは他のヤツらもそうだろ?」
「ええ。しかし、彼はコレクターです。おそらく、多大な額でカンタロ氏に依頼していたのでしょう。お金に困っている様子も無さそうでしたし。」
「まあ、多少動機が曖昧な気もするが、まぁいい。他の奴らよりは確かに可能性は低そうだな。」
「そもそも、本命がいるみたいだしな。」
「続いて、カンタロ氏の屋敷で働くメイド[ドメスティカ]さん。直接お話はお伺いしておりませんが、彼女は倉庫の中へは入っていないでしょう。」
「は?それだけで済ませるつもりか?」
「ええ。」
「何故なら、執事の[ヨルドモ]さんの証言が正しいからです。」
「何故そう言い切れる?」
・
「ヨルドモさんも、カンタロ氏と共犯だからですよ。」
「彼はカンタロ氏から、借金の話を聞いて、影から策略を練っていたんです。」
「おそらく、あの手紙は…組織宛の手紙では無いかと思われます。」
「警察に疑われないよう、データでのやり取りの証拠を消し、手紙であれば燃やしてしまえば簡単に証拠の隠滅ができますからね。」
「なるほど…。」
「そして、共犯者である執事のヨルドモさんは、あの倉庫に誰も近づけたくなかったハズです。」
「なので、廊下に来る人物を把握できる為に、倉庫の扉を開けて整理をしていたのだと思われます。」
「それで扉を開けていたのか。」
「何かおかしいと思ったんだよな。」
と、感心して話を聞いているコレレス。
「ここまでで、見てきた色と一致していない方はおられますか?」
「いや、オマエの話通りなら大体合ってるよ。」
「館長のおっさんは白や赤、話を聞いたメイドは白とピンク、執事とカンタロの野郎は黒だった。」
「そう……給仕の[ウェルター]も…黒だった。」
「やはり。彼女で間違いありませんね。」
「でもなんで、給仕が真犯人なんだ?」
「コレレス様は何か違和感に気がつきませんでしたか?」
「違和感?……ん〜メガネの形と汚れくらいか?」
「流石ですね。しかし、他にもあるんです。」
・・
「彼女はずっと手袋をしていたのです。」
「……!!確かに、庭から戻ってきた後も、手袋をずっとしていたな!」
「でも、ソレが何の関係があるんだ?」
「彼女は、おそらく石膏をしていたのでしょう。」
「石膏だと?」
「ええ。偽物の銅像を自ら作り上げたのです。そして、その作業の為にあの防塵メガネを着けていた。」
「コレレス様が見た時に付いていた白い汚れは、石膏をした際に付いたものでしょう。」
「それを拭き忘れていた彼女は、咄嗟にネギ類を切る時に使用している。と答えて誤魔化した。」
「しかし、爪の間に残った汚れまでは……完全に落ちなかったのでしょう。」
「だから…手袋をして隠していた。と…。」
「ええ。」
「経緯は分かりませんが、4日前…おそらく食事でお呼びする為に、カンタロ氏の部屋を訪れていた彼女は……カンタロ氏とヨルドモさんの会話を偶然聞いてしまったのでしょう。」
「そして、彼女は欲が出て、自身が趣味として行っている石膏を利用して、本物そっくりの銅像を作り、麻薬を横取りして売ろうと考えた。その後彼女は数日で銅像をつくり出し」
「運送される前にあらかじめ、執事の管理するための扉の合鍵を作り……カギを盗んだ。型取りなども容易にできたのでしょう。」
「そして、本物そっくりの偽物の銅像と本物の銅像を入れ替えた。」
「その後は、普段通りに生活をし事件当日を迎えた。」
「と、いうわけです。」
「……確たる証拠としてはどうなんだ?」
「彼女の部屋には、ボウルと泡立て器がありました。そして…… 「石膏スタッフ」があったんです。」
「石膏…スタッフ?なんだそりゃあ?」
「石膏スタッフとは、石膏像を作るときに、石膏を補強するために使用する天然繊維のことです。白っぽい透明のような色をした繊維質の素材です。」
「あー!!あの春雨みたいなやつか!」
「ボウルと泡立て器も石膏で使うのか?」
「ええ。粉を水と混ぜ合わせる時に使いますね。」
「なるほどね。」
(てっきり料理で使ってんのかと思ってたぜ。)
「なら、あの部屋にはそれだけの石膏像を作るための道具が揃ってたってわけか…」
「はい。」
「おそらく、彼女の部屋のどこかを調べれば…例のモノが見つかるのでは無いかと思います。」
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「なるほどねぇ〜ん…そういうことだったの!」
「凄いわぁ〜!!コレレスちゃん流石ね♡」
「うるせぇ!離れろって!!考えたのはアジュだよ。いつもそうだろ!」
と、再び抱きついてきたグランの顔を、手で押さえ込むコレレス。
「っつーわけで、カンタロの屋敷に行って、給仕の部屋を調べてみろ。それか給仕に事情を聞いてみろよ。」
「分かったわ〜〜!!ありがとね!アジュちゃん!コレレスちゅぁ〜ん!!」
料理も食べ終えた所で、グランは帰って行った。
「ふぅ〜〜。さてと、今日は疲れたし、ゆっくりしてから寝るとするか〜〜」
「そうですね。ほんとうにお疲れ様でした」
と、2人はその日を終えた。
エピソード1「消えた銅像」でした!
長かったですがここまで読んで頂き、ほんとうにありがとうございます!
後日談は次のエピソードの始まりとなります!
一応長編予定ですが、考えるの時間かかるので、更新は遅めかもしれません。
感想やご指摘、評価などお待ちしております!
また、Xもしておりますし、他の連載作品もありますので、興味があればご覧下さい!