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CASE2.「消えた梟の銅像─②」



【11:59──

 依頼人[カンタロ]の屋敷 2階エンプレアの部屋】



「なるほどねぇ……」


私立探偵『Loto ~ロト~』 

  探偵[コレレス(18)]

    [性別:男]



 コレレスは2人の胸元を見つめ、再び考え事をしていた。



「なら、全員8時半から10時までのアリバイはないわけだ」

「各々が行動できる時間はあったわけだな」



「──!!」


 ウェルターとエンプレアが驚くが、すぐさまウェルターが反論した。



「それはムリです!!」

「銅像が置かれていた倉庫は

 1階の奥の部屋にあります」


「そのため、

 必ず通路を通らないと行けないんです!」



「なので、

 誰かに見られてしまう

 可能性が高いと思いますが?」



「一階の掃除をしていたメイドなら

 出来るんじゃねぇのか?」



「それも不可能です!」

「倉庫の部屋は窓もなく

 部屋の入り口には鍵が付いております」


「鍵のある場所は

 執事のヨルドモさんが管理されてるので

 ワタシたちには入ることもできないのです。」


「なので、掃除もご主人様からは

 基本的にしなくていいと伺っております。」



「なるほど。」

「なら、ほかのメイドに話を聞いても同じか。」


「執事はもう帰ったのか?

 彼の話を聞いて終わりだな〜」


 コレレスが3人に告げると、コレレスとアジュは部屋から出て行こうとしていた。

 その後を慌てて追いかけるウェルター。



「ちょっと、コレレスさん!

 どちらに行かれるんですか?」



「執事が帰るまで

 さっきいた客間にいようかなって」


「物理的に目がチカチカして疲れたからな。」



「……?」


「……分かりました。

 紅茶を淹れなおしますので。

 客間でお待ち下さい」


「お部屋は分かりますか?」



「ああ。」


 コレレスは手をヒラヒラさせて階段を降りていった。



─────────────────────────



【12:06──

 依頼人[カンタロ]の屋敷 1階 客間】



「ふぁあ〜〜。

 眠たくなってきたな」



「……戻られたら、仮眠をとられますか?」


私立探偵『Loto ~ロト~』

  助手[アジュ・フロルダンテ(28)]

    [性別:女]



「ん〜〜そうだなぁ〜。

 執事の話を聞いたとしても

 16時までには帰れんだろ」


「3時間寝れたら良いな。

 うん。」


 退屈そうあくびをするコレレスは、腕を伸ばしながらアジュに問いかけていた。



「もう、大体分かったんだろ?」



「………。

 ええ。おそらくは。」


「ですが、まだ確認しておきたいことがあります。」



「………」


「なら、待つしか無いな。」

「それに、最後は照らし合わせないとな。」



「オマエの"推理を確定"させるためにも。」

    


    ・・・・

「はい。そこだけは

 いつも頼りにしてます。」



「そこだけダァ…!?

 ったく……とんだ居候だぜ、全く。」



「あ。」



「そういや〜……」

「今日の晩飯は何にする予定なんだ?」


 椅子に座りながら、白いテーブルクロスの上に肘をついて、手の甲に顔を乗せたコレレスは尋ねる。

 姿勢良く座るアジュは横目でチラリと見ると、饒舌《じょうぜつ》に語り出した。



「はい」


「ディナーは鴨(カモ)のロースト

 バルサミコソースとイチジクのワイン煮添え」

「生ハムとラディッシュのサラダ」

「アスパラとジャガイモのチーズ乗せグリルになります」


「ワインはロベール・グロフィエの『シャンボール・ミュジニー 1er レ・ゾードワ』の予定です」



「ふむ、悪くない。」

「さっさと終わらせて、頂こくとしようじゃないか」



─────────────────────────



【12:15】



 2人が待機していると、『ガチャッ』と客室の扉が開く。

 座っていた2人が扉の方を見ると、ウェルターと執事のヨルドモの姿が見えていた。



「遅くなってしまい申し訳ありません……

 タクシーが混んでいましてね。」

「都市部まで手紙を出しに行っておりました。」



「いえ」


 ヨルドモの言葉にコレレスが答える。

 ヨルドモが席についてしばらくすると、給仕のウェルターがヨルドモの分の紅茶を持ってきて、テーブルに置いていた。



「ありがとう。」


 ウェルターは、「いえ。では、私はこれで。失礼します。」と残しすと部屋から出て行った。



「事件当日のお話を聞きたいとのことでしたよね?」



「はい」

「当日の朝から

 銅像が運び出されるまでは

 何をされていましたか?」


 『……ズズゥ。』と、喋り終わると、コレレスが紅茶を啜《すす》る。

 隣にいるアジュも、紅茶を嗜《たしな》んでいた。



「当日の朝は6時には起きましたね。

 そして、6時半までは自身の支度をして

 旦那様がいるお部屋に向かいました」


「だいたい……6時40分頃くらいでしょうか

 旦那様の身の回りのお世話を行いました」


「7時から8時までは

 給仕のウェルターとメイド達に朝食の指示を出し」


「私は旦那様の書斎にて

 今後の経営方針について

 旦那様とお話をしておりました。」



「経営?あのオッさ……んんンッ。

 あのじいさんは何かしてるのか?」



「ええ。このヨージャの土地にある

 葡萄《ブドウ》畑を管理しているのです。

 そこから、ワインを造る業者やスーパー

 各方面にて、卸売《おろしう》りをされているのです」



「へぇ〜ブドウ畑をねぇ〜」

「それはそれは、儲かりそうだな。」



「………そうですね。」



「……?」



 違和感を感じたコレレスは、『……ジ───』と、ヨルドモの胸元を見ていた。



(まてよ……確か今朝のテレビで…

 いや、オレの勘違いか…?)



「………で、その後

 運搬までの間は何をしてたんだ?」



「ええ、それからは

 屋敷内の備品の在庫管理などをしておりました。」



「それは銅像があった倉庫か?」



「いえ、一階の右手にある奥の倉庫ですね。」


「左の奥のあの部屋は

 主に旦那様の美術コレクションばかりですので。

 私どもが開けることはそうそうありません」


「私が管理していたのは、主にワインになります。」

「年代モノのワインもありますので。」



「なるほどね。」


「倉庫の鍵はアンタが持ってるんだよな?」



「え、ええ。」

「しかし、用件がある際は……私の元へ報告がきて

 その後、必ず旦那様にお伝えしております。」


「それから私が鍵を持ち出して

 一緒に確認して見届ける。

 と、屋敷での決め事となっております。」



『……ジ───。』と、コレレスは再びヨルドモの胸を見つめていた。



「そうか、分かった。」

「あ、そうだ」


「最後にさ、8時半から10時までの間

 廊下で怪しい人物とかは見なかったか?」



「い、いえ。」


「私が倉庫にいる間に

 一階で掃除をしていたメイド以外の足音は

 しなかったと思います。」


「扉を開けておりましたし。

 誰かがきたなら気付きますね」


「確か、メイドのドメスティカも

 一度しか廊下の掃除には来ませんでしたから」



「ふ〜ん」

「そうか、ありがとう」


「聞きたいことはもうないから

 オレ達は帰るとするよ。」



「もうよろしいのですか?」


「ああ、十分だよ

 お茶うまかったって伝えといてくれ」



「かしこまりました。

 では、玄関までお送りいたしましょう。」


 3人は椅子から立ち上がりると部屋を後にした。



「じゃあ、解決したら警察に伝えるから

 あとは警察から話を聞いてくれ〜」

「オレの名を知ってるヤツが知り合いにいるから

 その後は任せることにするよ」


「報酬はここに振り込んでおいてくれ。」


 コレレスがヨルドモに伝えると、アジュが口座番号が書かれた紙を手渡した。



「かしこまりました。 お気をつけて。」


 そうして、2人はカンタロの屋敷を後にした。



─────────────────────────



「アジュ、確認したいことがある」


「はい。」



「──────について調べておいてくれ。

 オレは疲れたから帰って寝る」



「……。かしこまりました。」


「ごゆっくり休まれてください。

 夕刻には起こしますので。」


「それと、ディナーの時に

 グランさんをお呼びしておきますので。」



「助かる。

 オマエは仕事ができるヤツだな。」



「コレレス様のためですから」



「………。」


 2人は車道がある通路に出ると、タクシーを捕まえて事務所へと戻っていった。



─────────────────────────



【18:54──

 私立探偵事務所『Loto ~ロト~』】



「そろそろか〜?」


 まだ眠たそうに答えるコレレスは、ソファにだらしなく座っていた。

 左腕を背もたれにのし掛け、右腕はソファからはみ出しながら地面についていた。


 そして、顔を逆さまに向けると、キッチンにいるアジュの方を眺めて呟いた。



「はい、お呼びだてしたのは19時でしたので」


「アイツが時間とか守るタチかよ〜〜」

「絶対遅れてくるね。」



「……どうでしょう?」



 そのとき、『ガランッガラン。』と、事務所の扉が開いた。



「コッレレェェ〜〜〜〜ス!!!」


 大きな叫び声と共に、ガタイの良い茶髪の男が入ってきた。

 その人物は黒いスーツ姿で、赤いネクタイ、黒の革靴を履いていた。

 また、髪型は長髪でウェーブが少し掛かっているようだった。



「……なんで今日は早いんだよ…」



「だあってぇぇぇ〜〜ん!!

 コレレスちゃんのためだもの〜〜!!」


コレレスの親友 警察官 警部 

   [グラン・アミーゴ(28)]

   [性別:中性]



「今日は例の事件の真相が分かったんでしょ〜?」



「ああ、まぁな」




【19:00】



『……コトッ。コト。』と、テーブルに料理を置いていくアジュ。



「生ハムとラディッシュのサラダ」

「アスパラとジャガイモのチーズ乗せグリルになります。」



「あら〜!アジュちゃんまた腕を上げたわね〜!」

「いつか良いお嫁さんになれるわよっ♡」


 グランが褒める中、再びキッチンの方に戻りながらアジュは答える。



「いえ。ボクなんて…。」

「このまま独り身で大丈夫ですよ。」


 無表情のまま返事をするアジュは、焼き上がった鴨《カモ》のブロックをスライスし始めた。


『スクゥ〜。スクッ。スゥ〜。』と、鴨を5ミリ幅にスライスしていき、薄い白のお皿にこんもりとクレソンやレッドボールなどのベビーリーフをのせると、その上に扇形になるように5枚ほど──鴨のローストをのせた。

 そして、スプーンですくった少しトロみのある赤黒いバルサミコソースを、鴨肉の上からお皿にはみ出る様に左右に垂れ流していった。


 最後に、鴨肉とベビーリーフの隣に、赤ワインで煮詰めた角切りにしたイチヂクを少し添えた。


 左手の手の甲の親指と、手首でバランスをとりながらひと皿置き、左手の親指と残りの指を広げて下から2枚目のお皿を持った。

 そして、右手で最後のお皿を持ち、テーブルへと運んで行った。


 『コトッ。……コト…コト。』



「鴨のロースト~バルサミコソース~イチジクのワイン煮添えになります。」



「サンキュ〜」


「んん〜〜〜っ

 ありがとう〜〜アジュちゃん!!」



「ワインも注《つ》いできますね。」


 2人が料理に目を輝かせる中、アジュは再びキッチンへと戻った。



─────────────────────────



【19:13】



「それでぇ〜〜?

 今回の『枝木に止まらなかった梟《ブーオ》の銅像《エスタトゥア》事件』の真相はどうなのよぉん〜?」



「──ッ!」

「あんまり近寄んじゃねぇよ!

 バカが移るだろうが。」


 顔をすりすりしてこようとしたグランは、コレレスの手によって弾かれる。



「それに、何だよその変な名前は……」



「警察署内《ウチ》で取り扱ってる部署で

 流行ってる事件名なの。ウフッ。」


「止まってるハズの枝木から

 梟が逃げ出したからつけたのよ〜〜ん!」



「ハァ……そんなこと考えるヒマがあるなら

 まともな捜査をしてくれよな。」


 グランがウインクをする中、コレレスは呆れていた。



「で、例の件は調べたんだろうな?」



「え、ええ。

 アジュちゃんから聞いてちゃんと伝えたわ。」



 『…チラッ。』と、コレレスがアジュの方を見ると、アジュが頷いていた。



「結論から言うと──」


           ・・

「───あの銅像は元々偽物だったんだよ。」




【10月8日 19:14──

 私立探偵事務所『Loto ~ロト~』】




「えぇえ──!!?

 どどど、どうゆうことよ!?」



 勢いよくグランは立ち上がると、興奮した様に早口で話し始めた。



「銅像は運搬されて

 美術館で盗まれたのよね?」


「それが……そもそも偽物だったってことぉ〜〜!?」



「でも、どうして犯人は偽物を盗んだの?

 あ……犯人はそもそも

 それを本物と思ってるわけよね……。」



「………」


 グランの独り言を聞きながら、コレレスは眉間にシワを寄せていた。



「でも、なんで銅像を盗もうと思ったのかしら。

 そもそと、なんですり替えられていたの…?」


「一体、いつ…?」



「……グラン、ちょっと落ち着けよ。

 あんま騒がれると耳がいてぇ」



「あ、ああ…ごめんなさい。」


 再び席に座ったグランに、コレレスは静かに話し始める。



「飾られた銅像は偽物だ

 それは間違いねぇ。と思う。」

「その上で何故犯人が美術館に忍び込んでまで

 あの『枝木に止まる梟《ブーオ》の銅像《エスタトゥア》』を盗んだのか。」



        ・・・・・・・

「それは……あの銅像の中に麻薬が入っていたからだ。」



「ま、麻薬ですって!!?」

「それは本当なの!?」


「そのためにオマエに聞いたんだよ。

 4日前のマトリ捜査の情報をな」


 事務所のテレビで流れていたニュースを、コレレスは思い出していた。



➖ ───────────────────────



 静かな事務所内に、テレビからニュースキャスターの声が響く。


 

『──上院議員のポペ・ヒリング氏が

 裏金問題の告発を受けて辞任されたとのことです。』

『それに伴い。

 農業施設への被害はかなりなものと思われるでしょう。

 また、この件については──』



『──続いてのニュースです。

 10月4日───組織『ガサナ』の組員が、───で目撃されたと情報が入りました。

 また、リーダーの名前が判明。』


『──リーダーの名前は

 『サシオン』と名乗っていると思われます───』

 


────────────────────────➖




「アジュに聞いた話によると……」



➖───────────────────────



【18:07】



「ええ、グランさんが言うには──」


「4日前のマトリ捜査で

 麻薬密売組織『ガサナ』の組員2人と

 体格のいい人物が話している場面を

 目撃したとのことですよ。」


「その時はまだ取引はしていなかったそうで

 ただ数分の間話をしていただけだった。と。」



 グランが事務所を訪れる前に、アジュはコレレスに時間の真相を話していた。



────────────────────────➖



「その組織の人間が

 美術館の銅像を盗んだんだ。」


「でも、どうやって?」

「どうして麻薬が中にあるって知っていたの?」



「それは…… 」


「『枝木に止まる梟《ブーオ》の銅像《エスタトゥア》』を

 納品した"本人"が組織の人間に教えたからだよ。」



「──!!」


「何ですって!!?」

「なんでそんなことをする必要があんのよぉ!!」



「……それは」



➖───────────────────────



【18:14】



「でも、なんで依頼人のカンタロは

 そんなことをしたんだ?」


 コレレスはアジュに尋ねていた。



「カンタロ氏には

 多額の借金があったのです。」



「借金?」

「ヤツは、広大なブドウ畑の土地を持っているだろ?

 金ならあったハズだ」



「………。」

「今朝のニュースをお忘れですか?」



「ニュース…?

 …………そうか…!」



「ええ。」


「ポピ・ヒリング氏の辞任によることが

 影響しているのです」


「カンタロ氏の卸売のパイプとして

 ヒリング氏が関与していたんです。」


「そこにヒリング氏の裏金問題が発覚した。」



「つまり、パイプが無くなったせいで

 商品を売れなくなったのか……」



「はい。

 あとは、被害額の賠償ですね。」



「ヒリングの失脚が発覚して

 カンタロは麻薬売買に手を染め……

 その借金を返済しようとした。って訳か。」


「ええ。その通りです。」

「ニュースが出たのは本日でしたが

 おそらく。4日前より以前からこのことがバレおり。

 カンタロ氏は動き出していたんでしょう。」



「なるほどな。」

「それであの時、暗い青色だったのか。」


 コレレスは依頼された頃のやり取りを思い出していた。



➖ ───────────────────────


「で、その晩……何者かによって美術館に侵入され

 銅像が奪われた。と」



「そうじゃ。」


「……」


 指を口元に当てて、何かを考えるコレレス。



「今もまだ警察が調べているが

 まだ、犯人の足取りを掴めておらんのじゃ。」



『……ジ──』と、コレレスは依頼人カンタロの胸元を見つめると、影のようなモヤを見つめていた。



────────────────────────➖



「どこか後ろめたさを感じ取れたからな。

 何か隠してるとは思ったが──」


「まさか本人が、犯人に教えていたとはな〜

 食えないオッさんだぜ」


「ん?まてよ……

 それなら銅像を探す必要はないじゃねぇか?」


「だって、オッさんは

 麻薬密売組織に麻薬を渡せたんだよな?」


 ソファに座っていたコレレスは、思いっきり振り返り事務所の机を掃除していたアジュに質問した。


『ピタッ。』と机を拭く手を止めたアジュは答える。



「……。」

「あの銅像の中には、麻薬はなかったんです」



「なんだと?」



────────────────────────➖



【19:16】



「つまり、納品者のカンタロさんは

 借金を返済する為に

 麻薬組織の組員と4日前──

 捜査官が見た時に話をしていた。と。」


 グランが質問すると、コレレスは頷いた。


「ああ。」



「でも、それじゃあ

 銅像を盗ませて終わりのハズよね?」

「それに、どうやって美術館に入ったのよ?

 警備員もいたのに」


「あと、どうしてコレレスちゃんの所に

 銅像を探して欲しい。

 なんて相談に来たの?」



「鍵については、鍵師がいたんだろ」

「正面玄関の鍵は旧式だ。

 センサーとかも付いてねぇしな」


「警備員は、事前にカンタロから

 巡回時間とコースを聞いていたのかもな」


「何度が納品しているらしいし。

 館内のことも詳しいんだろ」



「で、オレのとこに来た訳だが。」


「最初に言ったよな?

 元々……あの銅像は偽物だったんだよ。」


「すり替えられた銅像

 つまり……」


 ・・・・・・・・・・・・・

「本物の麻薬が入っている銅像の在処(ありか)を探してくれって意味だったんだ。」



「おそらく、あの犯行当日の夜───」



➖───────────────────────



【10月7日 20:46】



「こ……これさえあれば…!!」



「ああ!

 オレたちは大金を稼げるぞ…ヘヘヘッ!!」



……ブロロロロロ〜〜


 暗闇の中、車に乗った2人組の男達は、勢いよくアクセルを踏み込みそのまま走らせていった。




【21:12──】



 しばらく車を走らせた後(のち)、組織の2人組の男達は銅像をハンマーでかち割った。



「「───!!!」」


「──何だこれは!!?」


「どこにも……何も入ってないぞ!?

 どうなってる!?」


「カンタロの野郎……ハメやがったのか…?」

「おい、すぐにヤツに電話しろ!!」



『…プルルルルルッ。… プルルルルルッ。ガチャ。』

『はい、カンタロだ』



「テメェ!オレたちを騙しやがったのか!?

 アァ!?」


 電話越し怒鳴る組員の声に、カンタロは驚いていた。



『な、何のことじゃ…!?』

『銅像なら、今日展示されたハズじゃ』



「……ああ。

 その銅像はオレたちの手元にあるよ。」


「……粉々になってなぁ!」



       ・・

「だが、肝心のブツがねぇじゃねぇか!!」



「どうなってんだ、オォイッ!!

 このままだとテメェ……

 オレたちのボスに殺されるぞ?」



『──!!?』

『ちょ、ちょっと待ってくれ!!』


『中身がなかったじゃと…!?

 そんなバカな……』


『確かに入れたハズじゃ…!!』



「ねぇモンはしかたねぇよなぁ……。」


「2日やる。

 必ずブツを持って来い!!!」


「いいなッ!!」



『…ブチッ。ツー…。ツー…。ツー…。』


 電話を切られたカンタロは、受話器を握ったまま驚いていた。


(ど、どう言うことじゃ!?

 何故中身がないんじゃ…)


(クソッ!!

このままじゃワシは……!!)



────────────────────────➖



「──みたいな感じだったんだろう。」


 コレレスの話した内容を静かに聞いているグランに、コレレスは話を続ける。



「で、だ。」

「なら、本物の銅像はどこに行ったんだ?

 ってことになるよな」



「ええ。

 どこに行っちゃったのよ?」



「本物の銅像を盗んだのは──」



               ・・・・・

「カンタロの屋敷で働く給仕……ウェルターだ。」



➖ ───────────────────────



【18:24】



 グランが来る前に、アジュからの推理を聞くコレレス。



「なら、その本物の銅像は誰が盗んだんだよ?」



「……屋敷で働く給仕のウェルターさんです」



「あの給仕が?」

「なんで?」



『トントントントン。』と、包丁で食材を切りながらアジュは答えた。



「まず、容疑者となりそうな人物は

 誰かわかりますか?」



「ん──。

 まあ、『トランスポルテ』の運送作業員だろ?」


「あとは、館長のおっさんミージオか。

 あ、メイドのなんだっけ?

 一階で掃除してたヤツか?」


「いや、メイドは無理か

 鍵問題があるし。

 なら、執事とかだろ?」



「ええ。

 コレレス様のおっしゃる通り

 その方達が今回の事件の

 容疑者候補となるでしょう。」


「しかし、彼らにはアリバイがあったり

 犯行を行う動機が無いのです。」



「というと?」



「まず、運送会社は事件当日の移動時間や

 会社での行動を見るに不可能でしょう。」


「あの2人が共犯であれば

 その可能性はあると思いますが。

 ──麻薬の存在を知っていたとは思えません。」


「続いて──

 美術館『オミュジオ』の館長ミージオさんは

 そもそも動機がありません。

 館内に飾るために納品依頼を出し

 その後、盗まれてからは警察に連絡し

 協力までしております。」



「それは他のヤツらもそうだろ?」


「ええ。」


「しかし、彼はコレクターです。

 おそらく──

 多大な額でカンタロ氏に依頼していたのでしょう。」

「お金に困っている様子も無さそうでしたしね。」



「まあ、多少動機が曖昧な気もするがまぁいい。

 他の奴らよりは確かに可能性は低そうだな。」


「そもそも、本命がいるみたいだしな。」



「続いて──カンタロ氏の屋敷で働く

 メイドのドメスティカさん。

 直接お話はお伺いしておりませんが

 彼女は倉庫の中へは入っていないでしょう。」



「は?」

「まさか、それだけで済ませるつもりか?」



「ええ。」


「何故なら

 執事のヨルドモさんの証言が正しいからです。」



「何故そう言い切れる?」 



       ・

「ヨルドモさんも、カンタロ氏と共犯だからですよ。」



「なんだと!?」



「彼はカンタロ氏から借金の話を聞いて

 影から策略を練っていたんです。」


「おそらく、あの手紙は───」



「組織宛の手紙では無いかと思われます。」



「警察に疑われないように

 データでのやり取りの証拠を消した。

 手紙であれば、燃やしてしまえば

 簡単に証拠の隠滅ができますからね。」



「なるほど……」



「そして、共犯者である執事のヨルドモさんは

 あの倉庫に誰も近づけたくなかったハズです。」


「なので、廊下に来る人物を把握する為に

 倉庫の扉を開けて整理をしていたのだと思われます。」



「それで扉を開けていたのか」

「何かおかしいと思ったんだよな〜」


 感心して話を聞くコレレス。



           ・

「ここまでで、見てきた色と

 一致していない方はおられますか?」



「いや、オマエの話通りなら大体合ってるよ。」


「館長のおっさんは白や赤

 話を聞いたメイドは白とピンク

 執事とカンタロの野郎は黒だった。」



「そう……給仕のウェルターも───"黒"だった。」



「やはり。

 彼女で間違いありませんね。」


「でも、なんで給仕が真犯人なんだ?」



「コレレス様は

 何か違和感に気がつきませんでしたか?」


「違和感?

 ……ん〜メガネの形と汚れくらいか?」



「流石ですね。」

「しかし、他にもあるんです。」


        ・・

「彼女は、ずっと手袋をしていたのです。」



「──!!」

「確かに、庭から戻ってきた後もずっとしていたな!」


「でも、ソレが何の関係があるんだ?」



「彼女はおそらく──

 "石膏"をしていたのでしょう。」



「石膏だと?」



「ええ。偽物の銅像を自ら作り上げたのです。」



「そして、その作業の為に

 あの防塵メガネを着けていた。」


「コレレス様が見た時に付いていた白い汚れは

 石膏をした際に付いたものでしょう。」


「それを拭き忘れていた彼女は

 咄嗟にネギ類を切る時に使用している。

 と答えて誤魔化した。」



「しかし、爪の間に残った汚れまでは

 ……完全に落ちなかったのでしょう。」



「だから…手袋をして隠していた。と…。」


「ええ。」



「経緯は分かりませんが。

 4日前…おそらく食事でお呼びする為に

 カンタロ氏の部屋を訪れていた彼女は」


「カンタロ氏とヨルドモさんの会話を

 偶然聞いてしまったのではないでしょうか。」



「そして、彼女は欲に負け。

 自身が趣味として行っている石膏を利用して

 本物そっくりの銅像を作り

 麻薬を横取りして売ろうと考えた。」


「その後、彼女は数日で銅像をつくり出し。

 運送される前に

 あらかじめ扉の合鍵を作り……カギを盗んだ。

 型取りなども容易にできたのでしょう。」



「そして、本物そっくりの偽物の銅像と

 ──本物の銅像を入れ替えた。」



「その後は、普段通りに生活をし事件当日を迎えた。」



「──というわけです。」



「……確たる証拠としてはどうなんだ?」



「彼女の部屋には、ボウルと泡立て器がありました。

 そして…… 『石膏スタッフ』があったんです。」



「石膏…スタッフ?

 なんだそれ?」



「石膏スタッフとは

 石膏像を作るときに

 石膏を補強するために使用する天然繊維のことです。

 白っぽい透明のような色をした繊維質の素材です。」



「あー!!あの春雨みたいなやつか!」

「ボウルと泡立て器も石膏で使うのか?」


「ええ。粉を水と混ぜ合わせる時に使いますね。」



「なるほどね。」

(てっきり料理で使ってんのかと思ってたぜ。)



「なら、あの部屋には

 それだけの石膏像を作るための道具が

 揃ってたってわけか…」



「はい。」

「おそらく、彼女の部屋のどこかを調べれば……

 例のモノが見つかるのでは無いかと思います。」



────────────────────────➖



「なるほどねぇ〜ん。

 そういうことだったの!」


「凄いわぁ〜!!

 コレレスちゃん流石ね♡」


「うるせぇ!離れろって!!」



「それに、考えたのはアジュだよ。

 いつもそうだろ!」


 再び抱きついてきたグランの顔を、手で押さえ込むコレレス。



「っつーわけで、カンタロの屋敷に行って

 給仕の部屋を調べてみろ」


「それか給仕に事情を聞いてみろよ。」



「分かったわ〜〜!!ありがとね!」

「アジュちゃん!コレレスちゅぁ〜ん!!」



 話が終え、料理も食べ終えた所でグランは帰って行った。


 

「ふぅ〜〜。

 さてと、今日は疲れたし

 ゆっくりしてから寝るとするか〜〜」



「そうですね。ほんとうにお疲れ様でした」



エピソード1「消えた梟の銅像」でした!

長かったですがここまで読んで頂き、ほんとうにありがとうございます!

後日談は次のエピソードの始まりとなります!


一応長編予定ですが

考えるの時間かかるので、更新は遅めかもしれません。

感想やご指摘、評価などお待ちしております!


また、Xもしておりますし、他の連載作品もありますので、興味があればご覧下さい!


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